第18話 続・青春勘違い野郎

怖い話をしようと思う

俺は高3の冬…受験に落ちた


足元から崩れるあの恐怖…知らない奴は知らなくていい


理由ワケのわからない自信があって、本命一本だけで滑り止め無し

俺はそこそこ成績もよかったのに何故か落ちた


確かに試験当日は少し風邪気味だった気がするけど

5本あった鉛筆の2本がポリッと折れたし(※芯ではなく鉛筆が折れた)

それまで使っていた消しゴムが途中でボロッと千切れ、そのせいでズシャッと違う答えも消えた。

書き直したけどあれのせいで落ちたのか?


俺の高校の友達はみんな大学生になっていて、就職やフリーターになってる奴はいなかった

みんな最初は気を使って連絡をくれたけど、大学で新しい友達が出来たのか疎遠になっていった。


落ちた原因と言うと女々しく聞こえるけど

高3の受験前にクラスの女の子から告白されたんだ。

彼女は派手なギャルと違って、隠れファンの多い優等生タイプと言うと伝わるかな?

可愛いのに目立たない大人しい感じの。


あの時は、受験前だからと振ってしまった。その事をずっと後悔していた


あっちは推薦で大学が決まってて、気楽に告って来たと思ったから

後で考えたら(※ずっと悶々と考えてた)

毎年福男で有名な神社の学業祈願のお守りをわざわざ買ってきてくれて、俺に告白してくれたのにな

(※数駅先の神社でそんな手間でもない)


あの時の彼女の何とも言えない、ちょっと困ったように笑った顔が忘れられない。


「お守り渡したかっただけだから」と言うと、それ以来話しかけて来なくなった。真面目で大人しいコだったけど、俺に気を使ってくれたんだと思う。


彼女は卒業に近づくにつれ、どんどん垢抜けていった。


市松人形みたいなパッツン前髪が切り分けられ、ほんのりピンク色のリップか何かで唇がプルンとしてて

膝下まである長いスカートが膝上になって、スタイルの良い長い脚が栄えていた。

指定服の紺無地のダサいベストも脱いで、流行りの明るいクリーム色のカーディガンになり

髪も三つ編みのおさげから、今風のハーフアップアレンジ?みたいな可愛い感じで

卒業する頃には、派手ではないけど一軍のイケてる可愛い女子高生になってしまった。


失恋したら女の子って髪切ったりするだろ?

俺には分からないけど、多分ちょっと切ったんじゃないか?前髪とか変わってるし

漫画とかでよくある、イメチェンってやつかな?

俺に振られて彼女は自分を変えたかったのかもしれない

俺って罪な男だよな、ふっ


1年は長かった…

何度も誘惑に負けて挫けそうになったが、そのたびに彼女がくれた合格祈願のお守りを眺め

彼女が応援してくれてると思い踏ん張った


大学合格するまで連絡しないと自分で願かけしてたから1年開いてしまった。

ドキドキ震える指先で、文章を3日かけて考えてメールをすると

アドレスが変わってたのか繋がらなかった


久しぶりに高校の友達や知り合いに連絡を取り、彼女の連絡先を辿るけど

「勝手に他人の連絡先を教えるのはちょっと…

代わりに向こうに教えておくから、返事を待ったら?」

と言われ、待てども返事は来ない


まだ春休み期間中だったから、高校の友達を何人か誘って久しぶりに会った



山西「みんな久しぶり!中田おめでとう、お前が落ちたって聞いて、あの時はビビったよ」

上田「本当それな!」

佐伯「一番頭良かったのにな、何で滑り止め受けなかった?まぁ今更か。受かって良かった!お祝いしようぜ!この後、飲みに行くだろ?飲屋に17時予約入れといたから」


みんな大学デビューして垢抜けてた

山西はメガネからコンタクトに変えて、上田と佐伯も茶髪の今風になっていたし

みんな服装にも気を使ってるようでオシャレだ!

しかもまだ19歳なのに飲みに行ってるの?!

予約し慣れてる感が!

みんなに置いていかれた大学の1年間の大きさが身にしみる…


そして、初めての酒に調子に乗った訳じゃないけど口走ってしまった

「俺さ、高3の時に内藤さんから告白されて断ったんだ」


佐伯「またまたぁ」

上田「内藤さんってあの内藤さん?」

山西「他のクラスの内藤さん?他のクラスにいたか知らんけど」


「うん、同じクラスの内藤マイだよ。

受験前に合格祈願のお守りくれて…ほらこれ!」


上田「マジで?内藤さん中田が好きだったの!」(ショック)

山西「あ、だから連絡先知りたがってたの?へぇー」(ちょっとショック)

佐伯「断ったのに何で今更連絡とるの?」(ここ最近で一番ショック)


「大学受かったら今度はこっちから告白して付き合おうと思って…」


上田「あぁ…去年は落ちたもんな」

山西「ちょっオイ!…まぁ結果的に国立受かったしな!でもじゃあ1年待たせたけど大丈夫なの?ってかずっと連絡取ってなかったの?」

佐伯「向こうからしたら告って振られて中田が連絡してこない時点で諦めてるんじゃ?」


それは俺もちょっとだけ考えたけとな?

「待ってるかもしれないだろ!彼女一途な所もあるしさ?」


佐伯「もう大学で新しい彼氏作ってるんじゃないか?推薦決まってから、だんだん可愛くなったし。俺、最後の委員会が一緒だったからけっこうしゃべったな」(※業務連絡)

山西「地味に可愛かったけど、雰囲気が明るくなったよな。俺も最後のクラス替え後ろだったから、たまに話しかけたよ」(※プリント配る時だけ)

上田「俺もって、ちょっ中田落ち込むなよ!えっと、内藤さんって〇〇大学だよな?バイト先に同じ大学の奴いるから今度聞いてやるよ」


「うん、ありがとう」


山西「今日は飲もう!」

佐伯「今日は中田の大学祝いだしな」

上田「他にも心当たりないか聞いてやるからな」


初めての酒は楽しかったけど、飲み過ぎがどのくらいかわからないから結局吐いた、次の日二日酔いでめっちゃ気分悪かった


それから、皆がどう連絡を取ったか知らないけど

内藤さんは大学のクラスに仲の良い男はいるけど、どうも付き合ってるわけじゃないみたいだった。(※矢部の事)


もしかして俺のことを忘れられないんじゃ?

やっぱりそうだ彼女は今も俺が好きなんだ!(ドキドキ)


いろんな奴らに連絡とってたら、高校の時のグループラインが復活して、連絡が来た。

同窓会やろうぜってなって

それからクラスのカースト上位の奴らが仕切って

その中でライブハウスでバイトしてるやつが

昼間の2時間なら貸し切りに出来るからと

会費5000円でちょっと高いけど、ケータリングでフードとドリンク付きの同窓会を計画した。

計画した段階で10人くらい参加希望だしてて、ポツポツと参加希望者が増えていった。


佐伯達も行くって、内藤さんに会えるんじゃないかって話が進んだ。


3月末の同窓会―…

女子も男子もみんな雰囲気変わってて、でっかいピアスつけてるやつとか、髪の毛ピンクとか明るいオレンジにしてるやつもいた。


俺もあれから美容院に行って、服も気を使って、みんなより1年遅れの大学デビューだ!


開始時間になったのに、彼女はまだ来てなかった…そして終わる頃に幹事に聞いたら

彼女はバイトが入ってて来れなかったって。

せめて一ヶ月前なら休めたかもと、元クラスメイト40人中10数人くらいは来てなかった。担任ももちろんいない。


何故か幹事が最近の内藤さんの写真を持っていた

隠し撮りかよ!(※でも見る)


高校の時より可愛くなってる!

雰囲気が大人っぽくなってて、間違いなく一軍の女子になってた

何て言うの?色気が出てエロ可愛くなってた…(ゴクリ)

内藤さんキレイになったな

幹事に頼んでその画像を送ってもらって保存した。

いずれ俺の彼女になるんだしいいよな?





カナエ「―…って感じで、同窓会の時にマイの隠し撮りっぽい画像が回ってたのよ。

一応本人に了解取ったのか聞いたら、取ったって…嘘よね?」


マイ「何それ知らない!怖っ」


カナエ「やっぱりね!あいつら大学生になってもいい加減よねぇ

しかも会費5000円もしたのにショボイフードサービスと薄い酒しか出なかったわよ。マイは行かなくて正解よ!金返せって感じ」


マイ「行かないんじゃなくてバイトだったの」

先週急なお休みもらって、もう休み取れなくなったから

(※リーマンの件で姫路へ行った)


今、大学の帰りに駅のス〇バでお茶をしてる

マイは同窓会の様子が知りたくて

カナエはマイ絡みのネタで半分からかうために

既に同窓会から数日たってる。


カナエ「マイの彼氏って大学の男じゃなくて幼馴染って言ってなかった?」


マイ「うん、バレンタインに告白したの(照)」 


カナエ「写真ないの?マイはSNSとかやってないもんね」


マイは、そう言えば付き合って一月以上たつのに写真が無い事に驚愕した


今度のデートでナオの写真とってカナエには見せよう

夜景スポットとか京都とか姫路へ行ったのに撮ってないなぁ

…夜景はともかく、他は写真って感じでも無かったけど。

カナエはSNSもしてるし、大学で新しい彼氏が出来たと学際か何かの画像を見せてくれた。


カナエ「それでさ、委員長の中田っていたじゃん?あいつがマイの彼氏を自称しててマジキモかったわ」


マイ「え、なんで??中田くんと接点ないよ?」


カナエ「マイが告って振られた事になってんのwウケるぅw」


マイ「え!?私、告ってないよ??」


カナエ「何を勘違いしてんのか知らんけどw

同窓会の連絡が回って来た時に、やたらマイの連絡先聞かれたから変だと思ったw」


マイ「えー、意味わかんないんだけど?」


カナエ「合格祈願のお守りがクラスで一時流行ったじゃん?うちらと偶然お揃いのを持ってて自慢してた」


マイ「お守り?………あっ!!思い出した!

うん、勘違いなんだけど、勘違いだわ!うわぁ」


高3の時に、中田にちょろっと迷惑かけたお詫びと言うか、自分たち用のついでに買って、ほんの軽い気持ちで渡したお守りの事だと思い至った。

渡す機会がなければ弟に流れたやつだ。


わけを説明するとカナエ大爆笑


マイ「卒業するまでチラチラ見てきて罪悪感いっぱいだったの。忘れてたぁ…ってかまだ勘違い続いてたの?うわぁ、どうしよう……助けてカナエちゃん!」


カナエ「オッケー!私に任せなさいw」


その時飲んでたコーヒー&ドーナツ写真と一緒にSNSで面白おかしく拡散された。

(※上手に撮って、バックにマイも写ってる

後日… カナエ「〇万いいねキタ!ヤバッw」)



その日のバイト終り―…


ナオ「ねぇ、マイちゃんバカなの?

そのクラス委員長の中田ってヤツのフルネーム教えて?ついでにクラスのマイちゃんの写真持ってそうな野郎も全て」全員死刑じゃ呪い〇す!


マイ「うん悪い事したと思ってるよ。…えっと、下の名前なんだったかなぁ」アルバムに載ってるかな?


ナオは、この天然無自覚女め!と悪態をつきたくなった。


マイ「そんな事より私、ナオちゃんとデートに行きたい!」そして自然に写真撮る!


マイは恥ずかしがって素直に写真が欲しいと言い出せなかった


ナオ「マイちゃんからデートのお誘いなんて珍しいね?」そろそろヤれるかな?ムフフ


マイ「4月に入ってから、新人バイトが来たの。大学生の1コ下の子で、土日どっちか休んで良さそうになったから」


全然関係ないけどチーフから

「内藤ちゃんも1年働いたからリーダーの仕事やっていこうか」と言われてしまった。

リーダーやると時給プラス100円で稼げるのだけど、プラス100円以上にプレッシャーを感じる

だって私のサブにつくのって、主婦のパートの先輩達だしねぇ?

若造の私が指示なんて出していいの?

指示を出す前に勝手に動いてくれそうだけど…

その新人バイトが慣れたら、私のリーダー教育が始まるのだ。私の心の準備ができるまで慣れないでほしい


ナオ「そのバイトって女の子だよね?」


マイ「そう、女の子だよ…ナオちゃん気になるの?」

(※会館のスタッフほぼ女性)


ナオ「別に?マイちゃんが仲良く出来そうかなって思っただけ」男じゃないならどうでもいい。


マイのバイト終わりにナオが車で迎えに来てそのままカフェへ

コーヒーが来た時に写真を撮り忘れてしまい、普段からあんまり撮ってないから栄える写真の取り方がわからない

スマホを見ながらモジモジしてるマイに、ナオは少しだけイラッとした


"誰からの連絡が気になるの?"

"俺がいるのにスマホが気になるとか浮気か?"

"思わせぶりな態度とるなよ!"

と出かかってグッと堪える。


幼い姿の守護霊マイがニコニコしながらナオの膝に乗り、いつも通りの無垢な瞳で見上げてくるから

生霊は嘘つかない、なぜなら純粋にナオを思って出てきて守護霊になってるから。


ナオ「スマホが気になるの?」貸せよ!ぐぅ!


マイは赤くなって照れる

「うん、その…カナエがね…」


ナオ「カナエちゃんがどうしたの?」焦らすな早く言ってよ!


マイ「カナエが彼氏の写真見せてくれたんだけど、私はナオちゃんの写真ないでしょ?

今度デートしたら一緒に写真撮らない?」(照)ふぅ言えた!あ、ナオちゃん驚いてる!うわぁ恥ずかしぃ〜…


ナオはマイが自分の写真を持ってないことに驚愕していた。


自分はたくさん隠し撮りしていて毎日眺めておかずにしてるのに、更にマイがバイトでウエディングモデルしたときの写真は額に入れて飾ってるのに。

マイが自分の写真を持ってないことに思い至らなかった、その事に驚きを隠せない


ナオはその場でスッと顔を寄せてパシャっと1枚カップル写真を撮った


ナオ「ハイ、なんだマイちゃんもっと早く言えばいいのに。これからたくさん写真撮ろうね。その写真送ってくれる?」

そのうちハメ撮りさせてくれるかな?


「ナオちゃんありがとう、へへ」

マイが照れながらとても嬉しそうに笑った


ナオは、その照れた顔が純粋ピュアで可愛くて眩しくて、ハメ撮りとか邪な事を考えた自分が薄汚れて見えて、ほんの少し良心がチクリとした。


ナオ「…マイちゃんまたね」

またねの挨拶チュウが切なくて胸がキューッとした


マイ「ナオちゃんまたね。おやすみバイバイ」




数日後、意外な所から噂が来た

マイと電車で通学中のカズキが世間話しとして爆弾投下


カズキ「俺の大学にさ、中田コウヘイってやつがいるねんけど。マイちゃんによく似たコの写真持っててさ。

しかも彼女だって言ってんねん。でも学年違うし気のせいかな?」


マイ「その中田ってどんな人?黒髪の前髪が真ん中でパカっと別れた感じ?」(※高校の時の中田のうろ覚えイメージ)


カズキ「あー、じゃあ別人かな。茶髪だから」(※現在の中田)


マイ「……このお守りの色違い持ってたら私の知ってる中田くんかも、最近友達から聞いたんだけど一浪してたから」


カズキ「あぁー、うん何となく分かった」


マイ「何がわかったの?」


カズキ「マイちゃんそのお揃いのお守りあげてるでしょ?

駄目だよ?気軽に男にモノあげたら。男は単純だから、もらった方は俺に気があるかも?って勘違いしちゃうからね」


マイ「うっ…反省してます」


カズキ「ナオにバレる前に何とかせんとね」


マイ「え?もうナオちゃん知ってるよ?」


カズキ「え!?」なんでまだ中田は生きてるの?


マイ「先週、同窓会あったけどバイトだから後日に友達にどんなんだったか聞いたの。

その写真も、その時に誰かが見せびらかしてたみたい。

隠し撮りみたいって言ってたし気持ち悪いよね?友達に頼んで持ってる人に消してって頼んだんだけど」


カズキ「そういうのって消してくれんやろうな」


マイ「ほとんどの人は消したって聞いたよ?

友達が写真の方はもう大丈夫って言ってたし」SNSで実名晒すって脅したって…よくやるよね


カズキ「そーなんや」勘違い野郎の方はアカンかったんやな


マイ「…どうしよう?カズキくんからそれとなく伝えてくれる?」


カズキ「俺から言ってもええねんけどな、なんか刺されそうやわ」


マイ「え?中田くんは、そんな怖い感じの人じゃなかったよ?なら、やっぱり別人よ(ホッ)

それより、週末はバイト休みだからナオちゃんと〇〇行くの。ナオちゃん取っちゃってごめんね」(※マウントのつもり)


カズキ「デート行くん?良かったね」ついにヤられるんかな?



以下カズキ視点―…


マイちゃんが怖がるから黙ってたけど、中田のブログは架空のデート画像とか、プレゼント買いに行く動画とかが載ってるヤベェやつだった。


しかも

「彼女はお洒落に気を使ってるから」と女物のブランド化粧品買ったり

「普段から良いもの食べてるから」と有名ホテルのパンフレットを並べ

「今度の休みは彼女とU〇Jに行く」とチケット画像晒し

「昨夜はずっと俺の上からどいてくれないんだ」と乱れたベッドを映していた


マイの自宅もバレてるようで、近くまで送ってきたと最寄り駅のコンビニが写ってる…これ俺のバイト先のコンビニやん!

マジやべぇヤツやん(ゾッ)


俺がマイちゃんと知り合いって、知らんから中田はドヤ顔で楽しそうに自慢してくる。

何も知らん奴らが羨ましそうに「彼女可愛いな」とか言ってる…


滋賀出身で良かったと思う日が来ようとは


え?どうしたらええの?

俺の手に余るわコレ

完全にイッちゃってる中田に「マイちゃんは別の彼氏おるよ?」とか言ったら冗談やなく刺されそうやわ。

ってか、本当のこと言ったら中田は絶望で死ぬんちゃう?

俺やったらそんな妄想日記がバレたら羞恥で首括るから


蛇の道は蛇!

あいつに頼るしかない!俺には無理!

停車駅でマイちゃんが先に降りるから、バイバイしたらすぐにあいつに連絡した

「マイちゃんのストーカーいる!」

速攻で既読がついて即レス

「詳しく!」



出来るだけマイちゃんと一緒に帰って中田ストーカーから守ってあげようと思う

マイちゃんのドス黒い守護霊アレもストーカーからの遠巻きにジワジワくる恐怖からは守ってくれないと思ったから



そう思ったけどその日のうちに解決した。


中田をあいつに会わせる

場所は飲み屋…

酒に酔わせ弱みを握ると思ったけど奴は正攻法で進めるようだ。

熟練の刑事もびっくりなほど辛抱強く話を聞いて、決して否定せず全て肯定して、妄想話をそれはもう辛抱強く聞いていた。


俺はもう嫌になって帰りたくなった


中田は酔ってるのかポツポツと胸中を吐露していく――…

友達と楽しそうに笑ってる彼女の顔が可愛いと思ったとか

彼女がイメチェンしてから、クラスのチャラ男に話しかけられて困ってる所をよく見るようになって、そのたびに『やめろ、内藤さんは俺が好きなんだ!』と助けに入ろうか、心臓がバクンバクンしてた。

1度も助けに入ったことは無いけど…ヘタれでゴメンな

たまに目があうと、告白して振られたから気まずいのか困ったように笑って視線をそらす

その健気さにグッときた、彼女の初恋は俺なんだ


中田「だから大学に受かったら、改めてこちらから告白しようと思った。彼女の想いに答えてあげなきゃいけないと…思っていたのにぃ…ウゥゥ」


矢部「うんうん、君は間違ってないよ。だって彼女の初恋は間違いなく君だったから!」


中田「…そうかな?グズッ」


矢部「それに、彼女は間違いなく純粋で良い子だよ。ずっと君の心の支えだったんだろ?

周りがなんと言おうと、君の思い出の中の彼女を穢しちゃいけないよ」


中田「マイは、ずっと俺の事が好きだったよな?」


矢部「もちろんだよ!」


中田「本当にそうかな?…そうだよな!」


うわぁ…

その気にさせてどうすんねん?

いや、さっきまで死にそうな顔しとったけど

今は元気になってきてちょっとホッとしてるけどな?


矢部「マイちゃんは、真っ直ぐで真面目でいい奴な君の事がずっと好きだったんだよ!

ちょっと不器用な所も君の魅力だと僕は思うよ!

人間、誰しも完璧じゃないんだ。

だから欠点を補い合う相手を捜してるんだよ

僕はマイちゃんの初恋の相手が君でホッとしてるんだ…」


中田「…君もマイの事が好きなんじゃないのか?」


矢部「僕も同じだよ…初恋だったんだ

初恋は実らないって言うだろ?

綺麗な思い出として一生残しておきたい…

だって何年かして、大人になってから今を思い出した時にさ、振られたしょっぱい思い出じゃなく

俺の大学時代は美人の友達と楽しいキャンパスライフを過ごしてた…その方がいいだろ?」


中田「…俺を遠回しに諦めさせようとしてるのか?」


矢部はフッと余裕の笑みを見せて突きつけた

「知ってるかい?

大学時代から付き合って結婚する確率は3割だ!」

(※ソースはネット)


「んなっ!?マジか…」

中田はショックを受けた


矢部「幼少期に知り合って結婚する確率は2%以下だ!」ドン!(※ネット調べ)


カズキ「うわぁ…」

ナオの結婚率は絶望的やん!太平洋に浮かぶ木の葉をバタフライで探しに行くようなもんやな。まぁぶっちゃけマイちゃんにはもっと良い男と結婚して欲しいけどな。


矢部「悔しいが、仮に付き合ったとしても今の俺ではきっとマイちゃんを繋ぎ止めておけない…

彼女は優しくて良い子だけに、押しに弱い!

隙を見て盗まれる!民家に大きなダイヤモンドは飾っておけない、そうだろ?」


中田「くっ!確かにそうだ…」


「何も大学時代にカレカノ関係にならなくても、頼られる関係を続けて行くほうが彼女の心に残れるんだ!

学生の男女の恋人付き合いは、不良高校生バイト並の持続力だ!」(※矢部の偏見)


中田「ハッ!」


矢部「彼女が大学を卒業して、就職して2〜3年後が狙い目だ!」


中田「何故ですか!?」(※敬語になってる)


矢部「女性の結婚適齢期は20代後半、大学を卒業して2〜3年働いて、仕事に余裕が出来た頃に付き合う。余裕のない時に付き合っても、すれ違って会えなくて逆にストレスだ。

そして、1〜2年の交際期間の末にプロポーズする。周りが結婚しだす頃だからな!

夜景の見えるレストランで、『俺が幸せにする結婚しよう!』これがExcellentだ!」

(※矢部チェリーの妄想未来予想図)


中田「矢部さん、すげー!!参考になります先輩!」(※同い年のチェリー)


矢部「君の心の支えを奪うつもりはないよ、俺にその資格はないから。

彼女は今、人生の黒歴史を歩んでるんだ…誰しも1つくらいはある人生の汚点。

真面目ゆえに彼女は一時だけ不良ワルが格好良く見えてる…真面目な娘にありがちだろ?」(※漫画知識)


中田「そんな!彼女を助けないと!」


矢部「心配ないさ、賢い彼女ならそのうち自分で気付く。

大学生と無職ニートでは住む世界が違うだろ?」


中田「グッ…確かにそうだ。大学生と浪人生ニートの壁は厚い、けど!」


矢部「どうせそんなの学生の今だけなんだ、無理やり引き裂こうとすれば余計に2人は燃える。よくある話だろ?(※漫画知識)

今は…彼女を温かく見守ろう。不良クソを振って傷心する彼女を慰めるのも友達のつとめだ、分かるだろ?」


中田「あぁ、その通りです…」


矢部「君のブログを少し見させてもらったけど、願望が詰まった青春の夢のブログだな。

俺は君のブログ好きだよ、表現の自由だ、いいと思う」


中田「…やめて下さい、もういいです。そのブログが俺の黒歴史です…今となっては恥ずかしい俺が間違ってました」


矢部「彼女を好きになったことは汚点じゃない、君の青春は今も輝いてるじゃないか

ちなみに彼女が使ってるブランドは〇〇〇〇だ!俺の姉貴も同じの使ってたから間違いない」ドヤ顔


中田「矢部さん!…あの…良ければ彼女の事、その、少しでいいので俺にも教えて下さい!」


矢部「あぁ、もちろんいいよ。友達として俺の知ってる彼女は大学の1年間だけど(※正確には友達歴一月程)

君は高校生の頃の彼女を知ってるんだろ?

彼女はどんな高校生だった?」


中田「はい、彼女はイメチェン前は―…」



カズキは、矢部もやべぇヤツだと今になってその真価を理解した。

コイツ教祖とかに向いてるやん怖っ!

あー、でもその場合マイちゃんがシンボル的なポジションでナオは邪神扱いになるな。

ナオは邪神で間違ってないけど、見た目と違って中身が庶民的なマイちゃんをそのポジションにおいたらアカンやろ


カズキ「君ら、本人の非公式ファンクラブでも作り?そっちの方が健全やわ」


矢部「おぉ!ファンクラブ!安達くん賢いね!」


中田「今なら会員一桁のナンバーですね!」


カズキ「会長は矢部っちで副会長が中田さんやね。No.1 No.2決まったやん良かったね」


矢部「では君はNo.7な!」


カズキ「間の5人は誰やねん!ってか俺もファンクラブ入ってんの?」


矢部「君もマイちゃんを見守ろうとしてくれてるだろ?」


中田「入会条件は見守り隊だ!」


ホンマやってられんわ!

俺は見守り隊じゃねーし!好きあらばヤってやんよ?

だって学生時だけでもマイちゃんと付き合いたいもん!オッパイプルンプルンしたい!

友達で終わるとか綺麗事やで童貞どもめ!


とか、どうでも良いことを考えて、何杯目かのチューハイをおかわりした。

(※カズキもチェリー)



後日―…

矢部「彼が純情ピュアボーイで良かった。うまく説得出来たな(ホッ)

不純な奴はそれでも彼女を欲しがるだろ?

フン、全く!マイを何だと思ってるんだ!なぁ?」


カズキ「ソッスネー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る