第15話 安達カズキはナオの友達

安達「いやぁ~、マイやっぱ美人さんやねオッパイ大きいし」


「……」イラッ!


安達「最初はもっと中身も年上かと思ったけど俺と1つしか変わらんやん!

駅で待ち合わせして同じ電車に乗ってくれるって、優しいね!

はぁ~マイちゃん、仲良くなったらめちゃめちゃ可愛い顔で笑ってくれるやん、来月からの通学が楽しみですぅウハッ」


「……」イライラ!


安達「それで今日さ―…」


夕飯の後、ナオの部屋に入ってきてペラペラ喋る安達カズキ



安達カズキ(18)滋賀県のお寺の息子で次男

春から神戸の大学へ通う

高3の夏頃に推薦で大学が決まり、それからハメを外して、やんちゃし過ぎた。

反抗期拗らせた息子の素行を心配した両親と跡取りの兄が、大学へ入る前に京都本山の山奥にある更生寺に預けていた。


神戸の大学には駅近の格安学生マンションから通う予定だったが

安達カズキ自身も「藤原ナオユキの家から通えばよくね?」

となり親も同じ宗派の寺と言う事で

「他所のお寺へ修行?いいわねぇ!学生マンションから行かせるより安心だわ!

だってあそこの住職は厳しいので有名だもの、ウチのバカ息子もきっと今よりマシになるわ!」


※ナオの祖父が厳しくて跡取り孫が逃げ出した話はそこそこ有名。お祖父ちゃんがいない所でお正月の集まりのネタにされてる


両親は諸手を挙げて息子の下宿先を変更し

学生マンションの家賃分をナオのお寺に入れる事で話はまとまった。

安達家は光熱費と食費が浮いて行儀見習いが出来る、大変良きかな。

ナオの家族も、同年代の男の子が来たら少しはヤル気が出るかな?と受け入れた。何より既に更生寺で同じ釜の飯を食う仲になってるはずだと。



家の中がギスギスしていたが、安達カズキが入って来たことで淀んでいた空気が流れた。

3月中旬に引っ越しと挨拶に安達家の両親と跡取りの兄が来た。

両親は息子をよろしくと低姿勢で来たが、跡取りの兄は違った。


兄「ナオユキ君の兄の話は聞いてるよ、寺を継ぎたくないとサラリーマンになったそうじゃないか。君も大変だね…フッ」でも君も愚弟と同じ更生寺に預けられてたよね?


ナオとカズキには、声に出さなくても兄の本音マウントが聞こえた。


「至らない弟ですが、一生懸命な所もあるんです。どうぞよろしくお願いします」と涼しい顔で親たちと挨拶を交わす安達兄。


カズキは「うるさい…」と小さく呟き悔しそうな顔をして兄を見ていた

ナオは、まるで優秀な兄と比べられてきた自分を見てるようだった。

ただ、自分の兄はここまで嫌味なクソ野郎では無かったと思い、ナオはマイに電話した。


今日は引っ越し作業があるから来るなら夕方からおいでと言っていたのだが

「人手が足りないから今から手伝いに来て」と頼む。


10分もしないうちにマイが自転車に乗って、大きな胸をポヨンポヨンゆらして来た。

体にフィットする薄手のニットにナオはグッときた(※普通のニットとカーディガン)


安達父と兄は腰を抜かした。


マイ「こんにちわ、ナオちゃんお手伝いに来たよー。あ、これお母さんが持ってけって、いつもお世話になってますって」(※煎餅)


祖母「あらありがとう、マイちゃんいらっしゃい」


安達母「まぁ!綺麗なお嬢さんね。ナオユキくんの彼女さん?美人さんねぇ。こちら息子のカズキです、よろしくお願いします」


マイ「内藤マイです、カズキくんとは先日京都でお会いしました。友達もまたカズキくんに会いたいっていってましたよ」


安達母「その節は息子がお世話になりました。お友達にもよろしく伝えて下さる?碌なお礼も出来なくて、マイさんにお会いできてよかったわ」


安達母は見えない人のようだった

見える人には異様に見える、マイを取り囲むドス黒い影。

彼女はとんでもないものに憑かれてる、なのになぜ彼女は平気なのだ?

声にならない顔で安達父と兄は驚愕したまま固まっている


何故かドヤ顔のカズキとザマァとほくそ笑んでるナオ

にこやかに手伝いを買って出るマイ

アチャー…みたいな顔のナオの家族


ナオの祖母がフォローに入った

「マイちゃんは春から大学ニ回生なのよ、カズくんと同じ〇〇駅から神戸線に乗って途中まで一緒よ」


安達母「まぁ!そうだったの。後で電車の乗り方を教えてもらえるかしら」(もうお勤めしてるのかと…え?じゃあ息子カズキと1つ違い?)


その後

何とか気を持ち直した安達父と兄は、マイの事が気になって仕方ない

しかし、マイ本人が見えてない事を察して聞くに聞けず

ナオの祖父と父もよくわからないから聞いてくれるなと話をそらす

安達母は母親同士の世間話ししかしない


荷物を運び一息つくと、昼に寿司の出前をとった。

その頃には安達父と兄はマイの影はマイを取り囲むだけで特に害が無いことが分かった。ようやくまさかの守護霊か?!と。

そうすると、黒い影に薄っすらと光るマイの本質が見えてきて、その陰影のコントラストが神秘的ですらある。

よく見なくても美人のマイがにこやかに座ってる

安達父は拝みたくなり、兄はお近づきになりたくなった


カズキ「ほぉー…あっマイ先輩って呼んでいいですか?いつも朝は何時に駅にいるんです?

まだ慣れてないから電車が不安なんで、一緒に行ってくれませんか?帰りも出来れば!

そうだ、連絡先教えて下さい!

ナオと付き合って長いんですか?

いつもどこに遊びに出かけてるの?

コーヒー派?・紅茶派?」


ナオ「誰が兄さんやねん!電車くらい1人で乗れば?こんな所でマイの個人情報を聞くなよ」


マイ「まぁまぁナオちゃん。高校生のノリなんてこんなものよね?ここらへんの事が分からないんだから心配なのよ。

ここから駅までバスか自転車か歩いても行けなくはないよ。

私は神戸線の〇〇駅でおりるのよ、カズキくんの大学はその3つくらい先の〇〇駅ね」


カズキ「駅前のス〇バで帰りにお茶して下さい、ここらへんの事知りたいんで!」


安達母「ナオユキくんとマイさんにすっかり懐いちゃって、(別人みたい…)息子をよろしくお願いします」


マイ「こちらこそ、ウチの2つ下の弟より可愛いです」ニコニコ


カズキ「グハッ!おとうと…」

ナオ「ププッ」


その後、帰り際に安達兄がマイに近づき挨拶をするが

マイ「カズキくんのおさんとおちゃんもお疲れ様でしたお元気で」ニコニコ


マイの守護霊アレに緊張して2人共老けた


カズキ「ワハハッ今日1日で老けたもんなぁ!じゃあなトーサン!ワハハッ」

ナオ「アハハッ!マイちゃんソレお兄さんなんじゃないの?プククお父さんってアハハッ」


マイ「え?!あっスミマセン間違えました!」


安達兄の更にくたびれた顔が見れて満足したナオとカズキの2人だった。



それからナオはマイを自室に連れ込んだ


ナオ「何でお前までついてくるんだよ、お前の部屋は下にあるだろ!猿はマスかいて勉強でもしてなさい!

今日はもう疲れたよな?寝ろよ」(※昼の3時)


カズキ「やだなー、僕も仲良くなりたいから!

お寺の息子同士、仲良くしましょー?

あ、遊びに行くの?僕も連れてってよ!」


マイ「ナオちゃん、どこか連れてってあげたら?まだ時間あるし遊びに行こうよ、そうだ歓迎会しよ、ね?」


カズキ「マイ先輩さすが!」


ナオ「歓迎会はさっき寿司食べた!……はぁー、マイちゃんどこ行きたいの?」


カズキ「焼き鳥!」


ナオ「まだ開いてねーし!ってかお前に聞いてねねぇよ」(※昼の3時)


その後

ナオが運転して市内のラウ〇ドワン行ってボーリングとカラオケやった。


帰り際にまたねのチュウを見せつけてやって、マイは照れて帰って

ナオはドヤ顔でカズキを見下ろした


カズキ「……もうヤッたん?」

ナオ「うるせぇ」

カズキ「え、まだなん?何で?」

ナオ「うるせぇよ!大事にしてんだよ」


ブー…

カズキ「あ、マイちゃんからメールだ」


ナオ「え!?」


カズキ「今週末にみんなで遊びに行く計画あるって!

いやぁ~『僕キャラ』ってナオと被っててキモかったし、辞めようかと思ってんけどな?

可愛がってもらえる…ってどうしたん?」


ナオ「俺、誘われてない…」


カズキ「うわぁ…あ、枠じゃないから?

友達の中にカレカノ連れて来るヤツおらんやろ?残念やったな…代わりにマイちゃん守ったるからな、矢部っち狙ってるやろ?」


ナオ「矢部っ?」いつの間に!


カズキ「矢部っち、俺よりコミュ力高いよな…あぁどこぞのボッチと大違い」


ナオ「誰がボッチやねん!」


カズキ「あ、矢部っちからもメールが…わざわざ、ちゃんと誘ってくれたわ。

おぉ、ついでに電車で行けるオススメの遊び場も教えてくれてる、いい奴やん」


ナオ「クソ矢部ヤバのくせに!フン!マイは俺が行くなって言ったら行かないからな」


カズキ「うわぁ…引くわードン引き!

彼女が可哀想やん、ナオみたいなのの何処が良いんやろな?やっぱ顔?」


ナオ「うるせぇ!」チクショー


ブー…


ナオ「あ、マイからメールだ!…アハハッ勝った!

マイには俺がお前の相手してるように見えたのか?そんなわけないのにな!

可愛い焼き餅焼いてたからマイはお前に話しかけてたみたいだぞプクク

マイちゃんいいねぇ、俺のこと大好きじゃんアハハッ」


カズキ「そんな、エッ?俺に嫉妬してたん?ウソぉ!あっだから間に入りたがってたのか

なんだ…俺と仲良くしたいんじゃなかったのか」(ショック)


マイは3人で並んで座る時は真ん中に来ていた


更に「どこそこには何がある」と、地元の遊びスポットの話をたくさんして、自慢してマウントとってるつもりでいたのだ。

カズキからしたら、「どこそこは何がある」から今度遊びに行こうね(ハート)と誘われてると思っていた。



それから週末、ナオを置いて遊びに行った―…。


マイはに自転車の後ろにカズキを乗せて二人乗りで帰って来た。


カズキはもちろん、マイの腰にしっかり手を回してずっしりとした幸福感を腕に感じて帰ってきた。

冬のコートではなく、春用のカーディガン越しに


寺の駐車場まできて、カズキとは普通にバイバイして帰った。


カズキ「(ナオに)会ってかないの?」


マイ「うん、帰るだけなのにわざわざ呼び出したら悪いでしょ?ナオちゃんによろしく、バイバイまたね」


ナオはマイの守護霊アレに気づいて急いで出てきたが自転車に乗って行った後だった。


ナオ「マイ…。飯食ったら(部屋に)報告しに来い」


カズキ「了解ラジャー」自転車の後ろ乗りは黙っとこう…


風呂入って飯食って、そして冒頭へ至る

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