第5話 青春勘違い野郎
私がまだ高3の冬の事
同級生は受験勉強で苛ついてて、授業も殺伐としていた。
そんな時に、気晴らしか何か知らないけど日本史の先生が怖い話をしだした『死体を洗うアルバイト』とか『孤独死や自殺者の清掃員』とかグロいので省くけど
今にして思えば受験生に何してんだって感じ
でも暖房で火照った頭をスッキリさせることは成功したと思う、部屋の温度が下がった
その頃からクラスでそんなに仲良くなかったけど、私と同じように推薦が決まってるカナエと話すようになった。
(※女子は必ずどこかのグループに所属しなければならない暗黙のルールがあったが受験前は別)
内申点のために黒髪三つ編みをキープしてるカナエは、プライベートではカラーエクステ、バッチリメイクの冬でもミニスカにブーツのちょいギャルだった。
いつも通りの三つ編みでノコノコ待ち合わせ場所に来てしまった私に「そのダサい三つ編み普段からしてんの?」と言い放ち、ドラッグストアで安い化粧を買わされてメイクの特訓が始まった。
眉毛の手入れや黒髪でもお洒落に見えるヘアアレンジも欠かさない。
お洒落な服屋に行って試着するだけして「大学祝いとかで服は親に買ってもらえば?」と賢い指導もしてくれた。
前置きが長くなったけど、そんなカナエと放課後の図書室でお洒落な雑誌を見て研究してる時の事
その日は天気予報が外れてどんよりした曇り空だった。薄暗くなるのが早くて、図書室の電気が全て点灯した。
カナエ「キャッ!……見間違いかぁ」
「何?どうしたの?びっくりするから!」
カナエ「電気がついたら、マイの後ろの席にいた人が消えたように見えたの…あれ?逆かな、誰かと目が合った気がしたの」
後ろ振り返って見るけど、私の後ろにはテーブル席が無い。1メートルほど後ろに本棚があるだけだ。
カナエ「マイって霊感とかあるの?」
「無いかな?でも遊園地のおばけ屋敷は好きだよ?」
カナエ「〇〇ランド(遊園地)のおばけ屋敷は出るって噂じゃない?」
「その噂を聞いてからフリーパスで1日で20回くらい入ったけど分からなかった」
カナエ「行きすぎじゃない?…私が霊感あるって言ったらどう思う?」
「凄いと思う!」勉強もできて霊感あるの?凄っ!
カナエはニンマリ笑って中学校の七不思議を話してくれた。(※別の中学)
図書館の幽霊はありがちだよね
カナエ「マイの守護霊は強そうだしね、そのお陰かも?」
「どんなの?」
カナエ「私もそこまで見える方じゃないけど、体育会系かな」
「マッスーみたいな?」※ゴリっとした体育教師の増田
カナエ「違う違う!軍服が似合いそうなインテリ系の」
「ウハァァご先祖さま私も見たかったぁ!」
また別の日、その日も曇っていた。
図書室横の飲食できるスペースで、自動販売機の近くの席に座っていたのだけど、誰も通ってないのにガタガコンッといきなり缶が落ちてきた
ビビリまくったけど、ちょうど私は背中を向けてて見てなかった。
カナエは学ラン男子の姿を見たと言う
「カナエがその学ラン幽霊にストーカーされてたりして?」
カナエ「ムッ…キス〇イの〇〇君に似てるんだけど」※アイドル
「ぐはぁ!私の前にも姿を表して下だせぇ!!
ってか、そんなイケメンが何で死んだんだろうね?」
カナエ「闘病中の生霊かも?よく電車とかで拾ってきたりするのよ」
「病室が分かったらお見舞い行くのにね!
これ暖かいうちに飲んじゃう?〇〇君似の人ゴチになります!」
暖かいカフェオレは自販機がくれたし、備え付けの紙コップで分けて2人で飲んだ。
また曇り空の日の事
隣のクラスの男子が授業中に叫びながらウチのクラスに入ってきて近くにいた女子に倒れ込んでゲロぶちまける事件がおきた。
教室は阿鼻叫喚で授業が中断して、ウチのクラスで授業してた先生と隣のクラスの先生がその生徒を保健室かどこかに連れていった
ゲロ吐かれた子はショックで泣いてたし制服が汚れたし、6時間目でもう終わりだったから早退した。
別の先生が来て、ザッと掃除して受験ノイローゼとか何とか説明してほのかに薫るゲロ臭を残して、その後は自習になった。
自習になって自習する子と、遊んじゃう子がいるよね?私は前者だったけど
未だザワつく教室で「さっきの〇崎の肩に死体みたいな青白い手が見えた!」と誰かが言い出して一部の生徒が盛り上がった。
先月、クラスメイトがカラオケ店の火事に巻き込まれてお葬式があったけど、誰もその子の霊だとは言わなかった。
たまたま隣の席の男子が言い出しっぺだったから、カナエのおかげでオカルト的な事に抵抗が無くなったから……私は声をかけてしまった
「ねぇ、それってどんな手だった?学ランじゃなかった?」
「内藤さんもこの手の話に興味あったの!?」なんて盛り上がりに参加してしまった、もちろん
「私は見えないんだけど、カナエは見える子なの」とペロッと話してしまった。
静かに自習して真面目を繕ってたカナエは注目されて顔を真っ赤にしてしまった。
そしてチャラい系イケメン男子がカナエの隣に座ってて「へぇー見えるんだ?」とからかい出した。
※この2人は卒業式の後で付き合い始めるのだけど、めちゃめちゃ怒られた
クラス委員長の中田くんは「自習中!静かにしろよ」と一応注意していた。
そして中田くんは私と一瞬目が合って、キッと睨まれてしまった。私のせいかな?すまねぇ
ウチのクラスはこんなんだったけど
隣のクラスには自称霊感少女・少年がいてコックリさんに試験合格を占ったり、誰かに呪いをかけたりが一部で流行っていたらしい。
ちなみに叫んで吐いた男子は呪いをかけられた方なのだとか。
私の認識では、金縛りにあったりテストの点が落ちたりと呪いのせいかな?という程度。
ただ、隣のクラスでは
授業中に気色悪いうめき声が聞こえたり
天井裏に何かがいるような音がしたり
窓の外から「おい」と話しかけられたり(※三階)
1人で歩いてる時に何か分からないものに追いかけられたりと、けっこう気持ち悪い事件が一部であった
担任の先生がコックリさん禁止令を出したそうだ
それからクラスだけでなく、学校中で幽霊の話が広がった。
1年生にまで面白おかしく広がって尾ひれ背びれついて元の原型を留めていなかった。
1年生から逆輸入してきた話し
「受験を控えた3年生がどこかの神社に神頼みをしに行ったら、そこは廃棄された神社で逆に祟られて、精神を病んで死んだ」とか
「受験前に告白して振られて自殺して悪霊化した」とか
「そもそも、そんな生徒ははじめから存在していなかった。受験ノイローゼで集団で幻覚を見た」とか
件の生徒は翌日は休んだみたいだけど普通に登校してる。
ゲロ吐かれた女子も翌日には普通に来てる。
カナエ「無責任な噂話で隣のクラスの男子が不登校になったら悪いと思わないの?」
「ゴメンネ反省してます」
カナエ「マイは見えないからいいけど、見える方は最悪よ!
至るところで霊が負の感情にあてられて無害な浮遊霊まで悪霊化するんだから!
生きた人間のエネルギーの方が強いのよ学校は良くも悪くも集まるところだから
そうでなくても話してると集まってくるのよ」
「それは大変じゃん!じゃあ〇〇神社に御守り買いに行かない?」
どの御守が良いかわからなかったから、見た目で選んだ学業祈願をおそろいで買った。
冬の雨の寒い日
広い視聴覚室で映画視聴会が行われた。
気晴らしに参加する人はそこそこいて、何故かホラー映画だった
投票の結界だったそうだけど、規制すると返ってやりたくなるよね?教師側も妥協したのかな
全然関係ないけど、私とカナエの2人がお揃いで御守を持ってたから受験にご利益あるとクラスでプチブームになっていた。
また曇りの日
カナエが注目されて羨ましくなったのか自称霊感少女が出て来た。
前髪長い系の陰キャだった子が鼻息荒くして幽霊を見たって自慢気にまくし立てた。
詳細は省くけどカラオケ店で死んだクラスメイトの事をネタにしていた。
盛大に白けていたのに気づかず話し続ける彼女は痛々しかった…
彼女のおかげ?で幽霊ブームが終わった
卒業式の後、仲良い子たちグループでボーリング行った帰り
カナエ「実は私に霊感なんてないよ。私より賢くてムカついたからマウント取ってただけだったのに。まぁ退屈じゃなかったわ!じゃぁね」と捨て台詞まで格好良く去っていった。
おかげで大学で浮かずにすみました!
化粧がデフォルトなんて誰も教えてくれなかったから!
一軍には入れなかったけど……
私はギリ二軍(手抜きメイクの事)に入っていて
――ナオの家にて――
ナオ「マイちゃんは化粧しなくても可愛いじゃん?」
「プールで胸が無いからって水着を着ない女子はいないでしょ?化粧とはすなわち最低限の礼節なのだよ」
ナオ「意味が分からないんだけど?
ってゆーかそれは嫌味に聞こえるから他所で言ったら駄目だよ?(巨乳のくせに!)」
アルバムが見たいと言うから
わざわざ持ってナオのお家に行った
カナエとは今も連絡を取り合っていてバイトがない日の大学の帰りに最寄り駅で待ち合わせしてお茶したりする
実は、あの時に中田くんに色違いの御守を買って渡した。
お葬式の時と自習の時の事を謝ろうと思ったのだが、盛大にやらかしてしまった。
買った翌日に、靴箱の所でちょうど会ったから軽い気持ちで渡したのだ。
中田は顔を真っ赤にして、テレテレしながら受け取って
「あー、ありがとう(照)えっと……内藤さんの気持ちは嬉しいけど、そのっ大学合格してから考えてもいい?
俺は志望大学ギリギリだから今は勉強したいんだ(キリッ)」
あ!こいつ勘違いしてる!
私が告って振られたみたいになってる!
と中田の俺ってモテるんだ内藤さんが俺に?マジか!みたいな感情や雰囲気が伝わってきた
ここで「勘違いしてるぞお前!」とか言ったらせっかく買ってきた御守を捨てられそうだと思ったからあえて指摘せずに
「御守り渡したかっただけなの勉強頑張ってね」
と、どうとでも取れる返しをしてその場を後にした。
卒業するまで、たまにニヤニヤしながら見てくる中田くんに罪悪感がわいた。
中田くんを青春勘違い野郎にしてしまったけど私の胸に秘めてれば問題ないよね
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