第21話 スキルカード
周囲の風景が謁見の間から、見慣れた二本の街並みに変化すると同時に、マスコミに取り囲まれた。
「神楽さん、今のお気持ちを一言ください!」
「神楽さんおめでとうございます! 落命の森の攻略達成した今の気持ちを一言をお願いします!!」
「懸賞金は53億ですが、使い道は決まっておいでですか!」
「我々は、NPOのチャイルドセーバーです。恵まれない子供たちの為に、懸賞金を1割で結構ですので寄付してください!」
マスコミだけかと思ったが、怪しげな聞いた事もないNPO団体も混ざっており俺達は身動きが取れなくなった。
どうしたものか思案し、強引に突破するしかないかと考えた時。
「どけ! どけ!」
数十人の黒服がマスコミの群れをかき分け道を作った。
神楽家に仕えている人達だ。
「天成様、愛歌様。車へ!」
俺達は頷き、黒服達が作った道を俺達は進む。
すると、配信を見て駆け付けた一般市民たちから声援が沸き起こった。
「天成様! 愛歌様!」
「こっち向いてーー」
「し・が・ら・き! し・が・ら・き! し・が・ら・き!」
「お前らは世界最強の夫婦だ!!」
「天歌!」
「最!強!」
「天歌!」
「最!強!」
「天歌!」
「最!強!」
「聖剣使い達の仇を討ってくれてありがとう!!!!」
「天成様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「愛歌様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
俺達は頷き、黒服達が体を張って作っている道を通って車に乗り込んだ。
「はあ、助かったよ」
「当主様より、待機している様にとのご命令がありました」
「御爺様?」
「当主様は御二方の特訓を陰から見守られており、この度のご夫婦の挑戦には非常に期待をしておられました。きっと屋敷で喜んでおられるでしょう」
「御爺様……」
特訓の内容が内容なので、誰にも気付かれない様に気を付けていたのだが、当主様には気付かれていたのか。
ま、喜びに関しては愛歌の祖父としてだけではなく、神楽グループの総帥としての意味もあるだろう。
帰ったら、早速ダンジョンに関して話し合いがもたれるはずだ。
「あ、そうだ。愛歌はもうどのカードをスキルカード化するか決めたかい?」
「はい、わたくしはビショップのカードをスキルカード化します。天成様はどうなさるおつもりですか?」
「俺はポーンのカードをスキルカード化するよ」
カード。
それは聖剣に備わっている能力の一つだ。
カードにはそれぞれ、ポーン・ビショップ・ナイト・ルーク・キング・カイザーのカテゴリーがあり、聖剣のランク以下のカテゴリーのカードが使用可能だ。
そして、ルーク以下のカードは何の効果も宿っていないブランク状態であり、ダンジョンマスターの力を吸収させる事でスキルカードに変化させる事ができる。
獲得できる効果は、カテゴリーによって変化する。
ポーンなら攻撃系、ビショップなら搦め手系のカードに変化しやすい。
「決まっているのなら、スキルカード化しておくか」
聖剣を持ち、【展開】と口にする。
すると、ナックルガードが変形しアクティベーターへと変化する。
アクティベーターはスキルカードの発動に必要なモノで、カードを収めたカードデッキと、カードを設置するスタンド5つで構成されている。
俺はカードデッキからカードを一枚引き抜く。
それは表も裏も真っ白なカードだ。
俺はそのカードをポーチから取り出した迷宮皇の王笏にを差し込む。
続けて愛歌がビショップのカードを差し込みスキルカード化した。
真っ白なカードがスキルカードへと変化した。
裏は落命の森のダンジョンのエンブレムが、表はスキル名・イラスト・効果などが描かれている。
【アブソリュート・スラッシュ】
・カテゴリー:ポーン
・効果
攻撃力が0になる代わりに、視界内の対象を距離・障害物を無視して切り裂く事ができるアブソリュート・スラッシュを放てる。
【スレッドローン】
・カテゴリー:ビショップ
・効果
スレッドローンは毒針の代わりに糸を吐き出す。
どのカードも申し分ない効果を持っている。
このスキルカードを先程のアクティベーターにセットする事で効果が発動する。
発動したスキルカードは、発動中は何度でもその効果を行使できる。
入手手段が限られている分、効果もコストも良いのだ。
「さすがは落命の森のダンジョンマスターだ」
「はい、どちらもとても有用なカードです。天成様が部位を切断し、わたくしが糸で部位を絡めとる。強力な連携となりますね」
獲得できるスキルカードはダンジョンマスターの能力に依存する。
強力なダンジョンマスター穂とえられるカードの力は絶大。
ハイリスク・ハイリターンだ。
俺達が獲得したスキルカードに満足していると――
「天成様、愛歌様。着きました」
神楽邸に着いたようだ。
俺達はそのまま本邸の当主の元に向かった。
「おお、帰ったか。二人とも」
「はい、ただいま戻りました」
「御爺様、戻りました」
「うむ、無事で何よりだ。で、早速でなんだが、ダンジョンについて話を良いか?」
「はい、構いません。愛歌ともその件については事前に話し合いをしておりまして、ダンジョン採掘は神楽グループに委託しようかと考えています」
「おお、そうか、そうか。では、契約は後ほど詰めよう。次に聖剣だが……」
「その件ですが、本来であれば政府に渡し勇者選考会を行うのが筋と分かっておりますが、私は政府に渡す事に危惧を抱いています」
「ほう、危惧とな。何故、危惧を抱く?」
「なんでも、政府が保管している勇者不在の聖剣が偽物であり、本物が他国に渡っているという噂があるとか……」
「ははは、そんなものは都市――」
「伝説である事は分かっています。ですが、私は冤罪で死刑判決を受け、執行された身。自分の身に都市伝説ともいえる事が起こっては、他の都市伝説も馬鹿馬鹿しいと一笑に付すことも難しいのですよ。神楽家の方で私の懸念を払拭する事は出来ませんか?」
「……。ふぅ、分かった。天成の意向に添えるように前向きに検討する事を約束しよう」
「ありがとうございます」
当主が折れた。
落命の森を攻略した事が、神楽家内での影響力を大幅に上げたとみていいだろう。
都市伝説などを持ち出したが、勿論そんな話を信じている訳じゃないが、俺はどうしても神楽家で選考会を行いたい理由がある。
特訓の際に愛歌にはああいったが、本当はそれなりに理由があったのだ。
53本の聖剣の勇者選考会。
聖剣の数が多ければ多いほど、自分が勇者に選ばれるかもしれないと多くの人がやってくる可能性が高くなる。
そして選考会は47都道府県すべてで順番に開催される。
日本で、もっとも人を集める事ができるイベントだ。
そんなイベントなら、奴が来るかもしれない。
俺を罠に嵌め、10年の時間を奪った連続婦女暴行殺人事件の真犯人が……。
目的を達する可能性は低い。
だが、それが以外に方法がない。
ならば、やるだけだ。
どれだけ可能性が低かろうと、俺は諦めない。
奴に落とし前を付けさせるまでは……。
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