明けましておめでとうございます

 大晦日も残りわずかで、参加者には紙コップに入れられた甘酒が配布されて、皆年が明けるのを今か今かと待っていた。

「美里さん、この後の乾杯のあと、俺の甘酒飲んでくれない?俺苦手でさ」

「じゃあなんでもらったのよ。お汁粉とかジュースもあったじゃん」

「カッコつけたくて」

「また、男の子だから?」

「そういうこと」

「めんどくさいのね男って」


「椿さんって年明け何してたんですかね?」

「さあ?でもあの子は紅白をずっとみていたと思うわ。音楽好きだもの」

「律さん、結構酔ってますね」

「あら、そう見える?」

「だいぶ適当だなって感じがします」

「察しがいいのね。椿が絆されるわけだわ」

「椿さんが亡くなって、寂しいですか?」

「わからないわ。椿とは姉妹でも、病院以外で会ったことなんてほとんどないから、あの子のこと何も知らない。冷たいって思っても構わない。知らない親戚が亡くなった時とそう変わらなかったわ」

「そういうもんなんですね」


「あの、甘酒って、微妙にアルコール入ってるのに、未成年が飲んでもいいんですね」

「うん。法的にはね、アルコールが1%を満たない場合はソフトドリンクって扱いでいいんだよ」

「そうなんですね。じゃあ、急なんですけど、マスターの来年の抱負はなんですか?」

「抱負か〜……、お酒っていうものをただの嗜好品だと思わないでほしい。美しいものとして扱ってもらうために、これからも作っていきたい」

「そんなすごいこと夢見るなら、もっと栄えてるとこに堂々と開けばいいのに」

「ちょっと、無理……。お客さんいっぱい来たら来たできつい」

「きちいっすね」


 みんなそれぞれさまざまな心境のもと、新年を明けようとしている。誰だろうと年を越しのはドキドキする。1年が終わり新しい1年が始まる。人間が勝手に作ったものではあるが、神秘であることに間違いはないだろう。

 さあ、除夜の鐘が鳴り響く。

 今年はどんな年になるだろうか。

 彼らはどう生きるだろうか。

 恋をして、青春を謳歌して、自分を通すために戦って。

 

 明けましておめでとうございます。

 今年も大和滝をよろしくお願いいたします。

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お餅に包もう 大和滝 @Yamato75

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