#08 必ず... 凛side
琴音ちゃんの手を引いて、観覧車乗り場までやってきた。
他の人もみんな、遊園地の最後は観覧車だと言わんばかりに、めちゃくちゃ混んでいた。
それは、家族連れの人も。そして、恋人同士の人も。
僕と琴音ちゃんは60分待ちの列の一番後ろに並んだ。
しばらく一緒に待っているけど、お互いに無言だった。
それは決して気まずい雰囲気ではなかった。
「懐かしいよね」
「え?」
「覚えてない?」
「私の家族と凛の家族、一緒にここに遊びに来て、最後に観覧車に乗った時、凛って大泣きしてたんだよ?」
「えっ...?」
え?そんなこと覚えてないんだけど...
「まあ、それもしょうがないかな?」
「どういうこと?」
「観覧車が上まで行ったとき、高いのが怖いせいか凛が大泣きし始めて、それで泣いたまま、観覧車降りた後、凛のお父さんの腕の中ですやすや寝ちゃってさ」
「あはは...なんか今それ言われると恥ずかしいね...」
そんなことあったんだ...
全然記憶に残ってないし、あの時は気づいたら、家にいたって思っていた気がするし、今その話を聞いてなんとなく納得したような気がする。
...恥ずかしすぎるけど。
でも、おかげで、残りの30分待っている時間は自然と琴音ちゃんと話すことができた。
あの話は琴音ちゃんなりの気遣い...だったのかな?
♢♢♢
「うわぁ!綺麗だね!」
「そ...そうだね...」
「...凛は楽しくないの?」
「そんなことない!ただ...」
景色を楽しむよりも今は、この後のことに緊張しすぎて、それどころじゃなかった。
...それに、今でも高いところは若干苦手だし。
けど、もうその時間まで、もうすぐ。
もうすぐで、観覧車は頂上に着く。
だから、僕はここで...
「琴音ちゃん」
「...はい」
いままでの弱虫で、琴音ちゃんの後ろに引っ付いていた僕が...
「僕は、琴音ちゃんのことが...」
「...」
「好きだよ!」
「っ...」
琴音ちゃんは何も言ってくれない。
けど、それは僕のことを拒否しているわけではないことは、琴音ちゃんの顔を見ればわかる。
「琴音ちゃんのことはさ、昔からこんなおどおどとしていて、弱虫な僕なのに、一緒にいてくれて、それで、今日までずっと一緒にいてくれた」
「...うん」
「僕はさ、この見た目があんまり好きじゃなかったんだよ」
「え?」
「見ての通り、僕は小さいころからなぜか体は成長しなくて、女の子っぽくて、でも、琴音ちゃんの隣にいて恥ずかしくないようにしたかったんだよ」
「...」
琴音ちゃんは僕の言いたいことが終わるまで、静かに頷きながら聞いてくれている。
「でも、この間琴音ちゃんの部屋で偶然見つけた漫画...あれ見て僕はちょっと悲しかったんだよ?」
「それは...ごめんね」
「別に謝ってほしいわけでもなければ責めてないから。それに、悲しかったけど、僕はちょっとうれしかったんだよ」
「...え?」
まあ、そりゃ、男子の僕が、女の子のそれも好きな人の好みが女性だって知ったら、普通は多少なりとも軽蔑するか、なんか負の印象を抱くと思う。
僕だって、最初はもちろん戸惑ったよ。
心の整理がつくまでは、心の中でいろんな感情が渦巻いていたさ。
けど、最後に残った思いは、それでもやっぱり、琴音ちゃんが好きだという事実だけ。
それに.
「それに、琴音ちゃんが女の子のことが好きだって知っても、僕は琴音ちゃんのことは諦めきれなかった」
「...うん、それは今を見たらわかるよ」
「あはは。だよね。まあ、僕は、少なくとも男らしくなくても、女の子みたいに見えても、それで、琴音ちゃんが笑って隣に立ってくれるなら、それでもいいかなって」
「...」
「僕は、琴音ちゃんのことが好きだよ。それ以上に、琴音ちゃんが笑ってくれるのが一番うれしい。だから...」
「...うん」
「僕と付き合ってください。そして僕の隣でいつまでも笑っていてほしいです。」
「...」
「...」
「...正直に言って、凛のことは好きだよ」
「っ!」
「好きだけど、その好きが恋愛感情なのか、それとも小さいころから一緒に過ごしてきた家族愛なのかは、まだはっきりしてない。ごめんね」
「そっか...」
「それに多分、告白してくれた凛には悪いけど、多分今の気持ちは、女の子になってる凛にむけてだと思う...もちろん、男の子の凛が嫌いってわけじゃないから」
「..うん」
「だから、今度は私の番。まだこの気持ちがあやふやだけど、こんな私でもいいなら、付き合ってください!」
「いいよ」
「えっ?即答...」
「もちろんだよ!僕は間違いなく琴音ちゃんのことが好きだからね。琴音ちゃんに男の子の僕でもこの姿の僕でも、どっちでも好きになってもらうために、もう躊躇わないからね?」
「っ!」
「だから、これからも...よろしくね」
チュ
「っ!」
「ふふっ」
それは軽い、お互いの唇がほんの少し、一瞬だけ触れ合うようなキスだった。
それを琴音ちゃんがどうとらえるかは、僕にはわからない。
けど、僕にとってそのキスはある意味琴音ちゃんに対しての宣戦布告。
僕を好きになってもらうための、ね。
必ず、堕としてあげるよ...だから待っててね?
ーーーーーーーーーー
あとがき
遅くなってごめんなさい!
これにはマリアナ海溝よりも深いわけがありまして...
はい、まさかのコロ助とインちゃんに同時にかかりまして、1週間近く起きるのがつらいほど熱を出しました。
幸い、もうほぼ完治しました。
投稿が遅くなりましたが、これにて、本編は完結になります。
アフターストーリーを2話分考えているので、近いうちに上げます。
ぜひお楽しみに~
お読みいただきありがとうございます!
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好きな幼馴染が女の子好きだと知った僕は... みたくししょー @Mitakusisyo-
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