#06 欲望には... 琴音side

誰?って思ったけど、間違いなく凛のはず。

この間見た時と印象とかもなかなかに違うけど、それでも凛だとなんとなくわかった。

凛自体、元が良かったとしても、ここまでなる?って正直に言って思う。

だって、どこからどう見ても女の子にしか見えない。


おっと、凛に見惚れて返事してないでいると、不安そうに見つめられた...


「大丈夫。今きたとこだから。それよりも、凛、可愛いよ」

「...ありがと。琴音ちゃんも...可愛いよ」

「っ」


どことなく不服そうだけど、まあ、可愛いものは可愛い。

しかも恥ずかしがりながら、私のことも褒めてくるとか私を尊死させたいの?

それに言うセリフがなんかラブコメに出てきそうなものばかりで、さっきから心臓がバクバク。

...このままお持ち帰りしていいかな?いやダメダメ。今日はせっかく凛が誘ってくれたんだし、最後まで楽しまなきゃ!


「行こっか」

「うん」


お互い若干の恥ずかしさから、いつもより明らかに口数が減っていた。



♢♢♢



休日では合ったものの、電車は比較的空いていて、予定通り遊園地に着いた。


「久しぶりに一緒に来たね」

「そうだね。僕たちが一緒にここに最後に来たのって、中3以来じゃない?」

「たぶん。なつかしいなあ」


凛も私と遊びに行った時の思い出をちゃんと覚えていてくれたみたい。


「まずはどこ行く?琴音ちゃんの行きたいところから行こうよ!」

「私の行きたいところかあ...そうだなあ、じゃあまずはあれ行こうよ!」


やっぱ、遊園地といったら、アトラクションだよね。

その中でも序盤で乗るっていったらメリーゴーランド一択。


「うん。いいよ。行こう!」


そう笑顔で言われて、鼻血が出そうになるのを必死に抑えて、凛と一緒に歩き出した。

その時、どこからか、私の手を握るものが現れた。

って言っても、横を見れば、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めている女の子...いや正確には...凛がいた。


「琴音ちゃんって...以前来た時はしゃぎすぎて迷子になったでしょ?だから...迷子に...ならないように...って」

「うん...」


最後の方は消えそうな声で言われたけど、ちゃんと聴こえていたし、何より私も恥ずかしかった。

私も、凛の手を握り返したら、リンはさらに強く握りしめてきた。

まあ、全然痛くはないんだけど。

そのまま、私たちはゆっくりとメリーゴーランドへ歩き出した。


ここのメリーゴーランドは珍しく2階建てになっていて、私たちはせっかくと言うこともあって、2階の方に並んだ。

流石に2階の方が人気だし、並ぶ列も1階より長かった。


わたしたちの順番が回ってきて、二人で向かい合わせに座る、馬車の形をした席に座った。


向かいの席に座りながら、外の景色をキラキラした目で眺めていた。


「ふふっ。本当に楽しみだったんだね」

「もちろん!久々に一緒に遊園地へお出かけしてるんだし、それに...」


言いたいことを途中で切り上げて、どこか不安そうに私を見つめてきた。

私がそれに着いて何か言おうとした時、凛の方から、話しかけてきた。


「今はやっぱりいいや。それよりもさ、せっかくなんだからもっと楽しまないと!」


ずっと、一緒に過ごしてきたからわかるけど、楽しそうな顔をして、どこか不安な様子も伺えてくる。

けど、今それに付け入るのもなんか違うと思って、少し心配しながらも、考えを逸らすことにした。


「うん...そうだね」



♢♢♢



「うぇ〜...本当にここ行くのぉ?」

「私の行きたいところでいいって言ったの凛でしょ?」

「そうだけどさあ...」


メリーゴーランドを楽しんだ後、凛の言葉に甘えて、私が行きたい次なるアトラクションにやってきた。

それは...ずばり!お化け屋敷!

と言っても、実際は全て3D映像で、映像に合わせて、座席が動くと言った感じのアトラクション。

まあ、その映像がホラーではあるんだけど。

そして、なんと言っても、凛は怖いのが大の苦手。


ふふ。鬼だの悪魔だの罵られようが、美少女(男の娘)が絶叫するシーンは1度でいいから見てみたいのだ。

あわよくば、腕に抱きついて...


おっと、下心がダダ漏れに。


「うぅ...僕が怖いの無理だって琴音ちゃん知ってるよね⁈」

「もちろん。でも、やっぱり遊園地といったらここでしょ?」

「絶対に違う!...やっぱり他のところ行こうよぉ」


今にも泣きそうになっている凛に罪悪感は湧くが、ここだけの欲望には逆らえなかった。


「ほらほら、私が一緒にいてあげるから」

「一人だと怖くても一緒に見れば案外怖くないからさ、ね?」

「...うん、わかった。頑張ってみるよ...」


ふふふ。

ごめんね、凛。


そして、上映が始まって、しばらくして...


「ぎゃぁあああ!」


「こわいぃぃぃ!」


「もう無理いぃ!」


って、凛が隣に座った私の腕にしがみついてきた。

私?私はもう幸せですよ。

それじゃなくて、ホラーが平気かって?グロ好きなければ無問題。

まあ、私のせいで、散々怖い思いしている凛には本当に申し訳ないけどね。


「ぐすっ...ぐすっ」

「よしよし...ごめんね。私のわがまま無理やり通して?」

「ぐすっ...怖かったよぅ...ぐすっ...」


お化け屋敷から出た頃には、凛は泣き出していた。まあ実際には、もっと前から泣いていたけど。

流石に、ここまで泣くとは思ってなかったなあ...

以前行った時も凛が大泣きしたんだけど、あれから時間も経ってたし大丈夫かと思ったけど、まだ全然ダメだったか...

本当に悪いことした。


まあでも、美少女(男の娘)が私の腕に抱きついて、しかも頭を撫でることができたのはよしとしますかね...へへへ、欲望にはね...


「ごめんね。ほら、今度は凛の行きたいところ行こ?」

「...ぐすっ...うん」


そして、リンが落ち着いたところで、次行くところの相談をした。

 

結果、ちょうどお昼の時間帯ということもあって、近くのフードコーナで昼食を取ることにした。

凛はオムライスを頼んで、私はスパゲッティを頼んだ。


「ん〜。おいしい〜」


向かいで美味しそうにオムライスを食べている。

こうしてみると、本当に感情表現が豊かで、失礼にはなるけど、高校生には見えない。


「...なんか、へんなこと考えられた気がする」

「そ、そんなことないよ?」


怪しいとばかりに、ジト目を向けてくる。

...こういう時、めちゃくちゃ感が鋭いんだよなあ。



ーーーーーーーーーー

あとがき



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