22話『疑問』

 面接を受けたその日の夕方、翔の元には合格通知が早々に届いた。翔は嬉しさもあってすぐに優達へ報告した。優は「お寿司ー!」と喜び、武爺と貴美子婆は心の底から喜んでくれていた。


 そんなやりとりが終わり、早速ばかりに回らないお寿司屋さんに行った後の事だ。翔は一つの疑問を考えていた。


 なぜ、合格になったのか。


 その疑問が晴れず、翔は凛に直接聞けないかと思い、募集センターへと電話した。折り返しの電話があると言われ、暫く待っていると翔の元へ電話が掛かってきた。


 凛と少しだけ話すと、直接訪れると言われた。翔が小一時間待っていると、凛が自宅を訪れた。武爺と貴美子婆が何度も何度もお礼を言う中、翔は自室に凛を招き入れた。


 翔はベッドに腰かけ、凛は机の前の椅子に腰かける。


「忙しいのにごめん。来てもらって」

「構わないわ。仕事が丁度終わった所だから。話しって言うのは合否の事?」


 翔は頷き、こう言う。


「なんで合格になったのかって思って。普通なら入職なんてさせない。なのに、なんで合格にしたのかなって」


 翔が疑問をぶつけると、凛は「そうね。普通なら入職させない」と遠慮なく言った。


「それでも、あなたにはやりたい事があるのでしょう?」

「そうだけど――でも」

「あなたの言い訳はいくつでも出来る。こちらの言い分もある。それでも若い情熱に負けた――ってところかしら。良いじゃない。目的がないより目的がある方が」


 凛はそう言い切って、フッと微笑む。


「――ありがとう」

「そういういお礼は仕事で返して」

「うん、ありがとう」

「ひとまず、ゴールデンウィーク明けからだから、体調管理とかその辺りはちゃんとしとくように」

「分かった。わざわざ来てもらってありがとう。頑張るよ」

「ええ。頑張ってもらうわ」


 凛は笑いながら言い、翔は凛を玄関まで見送った。武爺達は凛に改めて「宜しくお願いします」と言い、凛は深々とお辞儀をしてから帰って行った。


 仕事始めはゴールデンウィーク明け。学校はそこから少ししてからに決めた。


 もうじき目まぐるしい四月が終わり、若葉が芽吹く季節がこれから始まるのだった。

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