幕間4『タカの眼』

 凛が帰って行った一之瀬家。それを一人の男が双眼鏡で見つめている。

 その男は、一之瀬家からかなり離れたマンションの屋上で、一之瀬家を覗いていた。


 ガムを噛みながら双眼鏡で覗く男は、ふとこんな事を漏らす。


「やっぱりハズレかなぁ」


 違うのか、違わないのか。それだけを観察している男は「ふぅ」と溜息を零す。


 男がある人物から聞いた話いわく、名も知らぬ少年か少女が何かを持っているとの事だ。しかし、その気配は全く見て取れない。


 この家で事件が起きた後からずっと見張っているが、今の所収穫はない。


 収穫なしで報告するか、それとも収穫があるまで粘るか迷うところだ。


 そんな事を考えながら、男は一之瀬家を見張り続ける。このガムが全部なくなるまでは、鷹のように獲物に気を配らないといけない。


 それが、男に与えられた任務でもあるからだ。

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