幕間2『明石と凛と三橋』
翔達が帰った後、凛達は署内の休憩室に居た。
個別スペースに区切られた会議室のような休憩室の中で、三人は翔達の話を元に事件の事を話し合っていた。
「まず、証言者があの子だけっていうところを見ると難しそうですね」
「そうね。でも、逆を言えば犯人は計画的に襲撃している事になるとも言えるわ。証言者があの子だけになる事を考えて行った犯行とも見て取れる」
「確かに……」
「それに、かなりの手練れの犯行でしょうね。翔君が帰って来たのを感じて窓から出た事以外は、全てプロによる可能性が高い。指紋もないし、何より夫妻を一撃で仕留めているもの」
三橋が頷くのを見て、明石は凛へと尋ねる。
「凛ちゃんはどう見る?」
「明石さんの分析に相違ないです。ですが、私としてはやはり非通知先の発信履歴とあの窓に置いてあった何か、それから一之瀬夫妻の職業が気になります」
その言葉に明石はうんうんと頷いた。三橋は何が気になるのか分からなさそうな顔をして、凛へと尋ねる。
「どうしてそれらが気になるんですか?」
「一つは、一之瀬夫妻が科学系の研究職員だという事。しかも、MABの研究をしている職員。そこから推察出来る事は、非通知先の発信履歴はMABに関する事と言える」
「MABってなんでしたっけ?」
三橋の疑問に凛があっさり答える。
「my ability brand――――いわゆるSFに出てくるような今流行りの特殊能力。その研究を一之瀬夫妻はしていた。しかも、所長と部長として――」
「MABって事は――竜崎さんもですよね?」
三橋の言葉に凛が頷く。凛は手を組んで、口元を組んだ両手に合わせている。
「という事は、MAB絡みで二人は殺害された――」
「それって犯人もMABって事ですか?」
「可能性はあるわよね……」
明石の言葉に一同が沈黙する。それもそのはずだ。MABは所轄、明石達の専門管轄外だからだ。
MAB――マイアビリティブランドは、現在犯罪や世界的職業でも悪用又は活躍する異能力達の事だ。今現在、警察や政府が最も目を付けているのがこのMAB。その専門管轄は凛が所属している組織であり、なおかつ警視庁の管轄だ。
「そうなると、この案件は凛ちゃん達に引き継ぎって事になる?」
「分かりません。これはあくまでまだ仮定の事なので。しかし、夫妻が扱っていたとなると、すぐにこちらへ引き継がれると思います」
「合同捜査の可能性は?」
「あると思いますが、まだ私の一任で決められないので」
明石の質問に凛は答え、明石は難しい顔をして腕を組む。三橋はふむふむと分かったような素振りを見せているが、あまり理解はしていない。
「一先ず、この件はまだ明石さん達の方に任せます。進展があり次第お互いに連絡しましょう」
「そうね。この件、何かヤバい気がする」
凛がうんと頷き、三橋もうんと頷いた。
三人が真剣な面持ちを保ったまま話を続けるその頃、翔達は自宅に辿り着いた。
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