第4話 爺の戯言
「僕を思い出していた?ご冗談を。でも、ガロンさんもお元気そうで何よりです。」
「いやいや、君は印象深かったし、いつも輝いていたからね。今日はなにかちと疲れていそうだが。ちょうどいい、今ね、ちょうど隣のみっちゃんがキャルキャンをまた多めに持ってきてくれてね。食べきれないから、一緒に食べない?」
「せっかくですが、今急いでいるもので。また今度、寄らせてもらいますよ。」
「あらら、そうかそうか。でもダリア、君なんだか猫でも殺しに行くような怖い顔しているよ。そんな君も、美しいがね。君も色んな顔を持っているんだね。」
「いやいや、逆ですよ、バロンさん。実は、もう会えないと思っていた家族が見つかってね。嬉しい日ですよ。彼に会いに行こうと思って今日はこう遠出していたんですよ。」
何かを見透かされたと感じたダリアは、つい少しおしゃべりになった。
「なんだ、そういうことだったか。そしたらね、ちょうどいい。君にちょっとだけ聞いてほしい話があるんだ。ほんの少しでいいから、寄って行ってくれないか。
猫もね、この年になると、元気な若者が人生を変えようってときに、少しでもそれにあやかりたいって気持ちがあってね。ほんの少しでいいんだ。頼むよ。」
ガロンの妙に温かい言い方に、ダリアはつい少し、この奇妙な老猫が何を伝えたいのか気になった。
「ガロンさんがそこまでいうなら。少しですが、寄っていきます。」
「ありがとう。うれしいな。この前とれた木の実もあるんだよ。もしよかったら食べておくれ。キャルキャンだって食べきれないし、助かった助かった。」
しずかな威厳のある老猫だと思っていたが、変な爺だな。ダリアは突然の思いもよらぬ老猫のテンポに、つい引き込まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます