フェイガンズ・クロス

ハナでの滞在も今日で最後だが、やはり天気は今一つ、いや、雨だ。

最後にフェイガンズ・クロスからの景色を見てみたくなった。

ポール・I・フェイガン・シニア、カリフォルニア出身であるが、マウイ島ハナで牧畜を始めた人であり、ホテル・ハナ・マウイの開設者でもある彼の功績を記念して1960年に建てられたそうだ。


彼は、ハナが辺鄙な場所であったことから、サトウキビ産業がうまくいかずに、茎用に陥っていた時期にハナを訪れて、その苦境を救うべくモロカイ島から牛を持ってきて、牧畜を開始するなど、ハナの再生に尽力した功績が称えられ、ハナの丘の上に彼の功績を記念して十字架が建てられた。


彼は1960年十字架が建てられた年に亡くなっているが、彼が眠るのはハナではなく故郷カリフォルニアである。

晴れていれば、ハイキング気分で登れる緩やかな坂だが、今日は雨、仕方なく車で行くことにした。


十字架に行く道は、牧場への道でもあるので、ゲートには鍵が掛かっている。

ホテルフロントで鍵を借りて、車を進める。ハナハイウェイを挟んで、丘に続く道がある。


ゲートにたどり着いて、ホテルで借りた鍵を開けて車を進める。

道は牧場の中を進み、丘の右手からぐるりと半周するような形で登っていく。

車だと直ぐに丘の上に着く、駐車できるスペースには、雨風に打たれたのかティアレの花びらが散っていた。


やはり雨なので視界は悪いが、ホテルやその先の半島や町の様子が一望できる。ハナの町を望むには、一番いい場所だという言葉に納得した。

ある意味ポールフェイガンが手掛けたハナの町が一望できるこの場所は、やはりフェイガンのために設けられたのだと感じた。


しばらく佇んでいたら雨は小降りになってきた、さて、戻ることにした。

一旦ホテルに戻り鍵を返す。時間を確認すると、まだ午前の早い時間だったので、最後にレッドサンドビーチを拝んでおくことにした。


幸い、雨は止んだみたいだった。

レッドサンドビーチまでホテルの敷地を横切って歩いていくと、やがて木々の合間からビーチが見えてきた。天気のせいか海は結構荒れていた。


赤土だからか、それとも赤系統の溶岩だからなのだろうか、色は赤土色みたいに見えた。

そういえば、ここのビーチ、自称夕陽評論家という俳優さんが実際に来たということを聞いたのか、テレビの番組で見たのかを思い出した。

彼は、ニイハウ島にも足をあしを伸ばしたらしい。ニイハウ島は、なかなか行くことが出来ない島である。一度訪れてみたいが、などと思っているうちにいい時間になってきたので、そろそろ戻ることにした。


ビーチを後にして、コテージに戻り荷物をまとめて、メイン棟まで歩く。

呼べば、迎えに来てくれるが、やはりのんびりと歩く方がここの風景にあっている。

ホテルのフロントでチェックアウト手続きをする際に、滞在中のチップをまとめて支払って、手続きは終わりだ。


既に車も用意してくれていて、いつの間にか荷物も積み込んでくれている。

帰り際にふと気が付いたことがあった。ここのホテルのスタッフは、ホスピタリティにあふれているが、なんとなく似た顔の人が多いように感じた。


どうも、スタッフの人たちは、親族繋がりがあるようで、そのせいなのか、他のホテルのような形式ばったホスピタリティとは少し感じがしたのかなと思った。


車のキーを受け取り、スタッフにありがとうと言って、車に乗り込み、手荷物を助手席において、車をスタートさせる。

さて、容赦ないカーブを抜けて日常に戻ろう

(了)

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旅の記憶 @stray___cat

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