第94話 反省会と茶番劇

 気を取り直して、隊列に戻って進む。


 また止まれの合図で、今度もビッグモール1体だな。

 まぁランクEはモンスター単体しか出ないんだけどね。


 ノリノリの番で、今度の指示は柔術スキルを使うように言われた。


 掴む所もないのに出来ないって文句を言ってるから、意識するだけで身体能力が上がるからと説明してる…サブマスが。


 まぁ結果は予想してた通り、力一杯振り下ろして、穴にメイスの先端が嵌まって抜けなくなった。


 モグラが消えて抜けたけど、他にモンスターがいたら、隙になるからと注意されて不貞腐れてたわ。


 ドロップはなかった。


 次はモンスターがなかなか出て来なくて、階段まで来ちゃったよ。


 降りたそうなバカは無視して、引き返す。


 漸くスライムが出てきて、俺の番。

 もちろんYesだよ。


 体術スキルを意識してサックリとコアを踏み潰したよ。


 走り抜ける感じで足を引き上げると、汚れないよ。


 ドロップは魔石が出た。


 安全地帯に戻って、椅子に座る。

 サブマスの結界を張ると、お茶が用意されて反省会だ。


「さて2回ずつ戦闘を行いましたが、反省する点はありましたか?先ずはヒノリさんから、お願いします」


「力一杯叩くのはダメって事かな?」


 はぁー、皆のタメ息の幻聴が聞こるようだよ。


「では、朱鷺君はどうですか?」


「ビッグモールは叩くより、横から払った方が良かったと思います。思ったより動きが遅かったので、その方が武器を損傷しないし、誰かの様に穴に嵌まるリスクも少ないです」


「なっ!朱鷺君、ひどいよ!それって私の事を言ってるんでしょ!」


 そうだよ?お前がちゃんと反省しないから、代わりに言ってやったよ。


「スライムはどうですか?」


「スライムは、倒すだけなら方法は何でも良いと思います。ですが体液で汚れない工夫をしないと、武器や防具の劣化に繋がります」


「そうですね。ダンジョンの地面などに触れていれば、いずれ体液も消えるのですが、服や武器に着いてしまうと、拭ったり洗ったりしないと、スライムの酸で劣化してしまいます」


「後は酸に強い武器や防具を使うのも、効果的だと思います」


 茶番劇だけど、バカにもわかる様に説明してやるよ。


「なるほど、それも有効ですね」


「それから、遠距離攻撃の出来るメンバーを入れるのも良いと思います」


「そうですね。自分が出来ない事を補い合うのも、パーティーの良い所ですから」


 口を開けてると虫が入るぞ?

 まぁダンジョンの虫はデカイから入らないけど。


「では、ヒノリさん。ダンジョンを探索している時の、反省点はありますか?」


「えっ?あ~お喋りしないように?」


「そうですね。敵に先に見つかると、不意打ちや、複数に囲まれる事もあります。例え戦闘中でも、なるべく大声を出さないし、音を立てないのは基本ですね」


「では、朱鷺君はどうですか?」


「歩く時は前の人だけでなく、他からの敵にも気を付けて、歩くポジションによって見る場所を考える事も大事だと思います」


「そうですね。前後左右どこから敵が現れても不思議ではありません。スライムは、天井近くの窪みから落ちて来る事もありますし、真ん中を歩いているからと言って、安全な訳ではありません。影が出来るような場所は、注意すると良いでしょう」


「わかりました。ありがとうございます」


 さて茶番とは言え、ちゃんと聞いてなかったら、今後は自己責任だよ?


 そのアヒル口が可愛いと思ってるなら、探索者は辞めてアイドルでも目指せよ。


 モンスターは人間の美醜なんて関係ないから、可愛いから許してくれるなんて思うなよ?

 問答無用で襲われるぞ。


「では、ダンジョンは常に危険と言うことを念頭におき、油断が死を招く事を肝に銘じて頑張って下さい。では報酬の分配をしましょう」


 魔石が1個と爪が1個だけど、爪は0円だから合計300円也。

 1人150円だね。


 爪は買取しないからお持ち帰りする。

 また朱鷺君だけ狡いとか騒いだけど、俺のスキルの効果だからで押し通した。

 まぁ幸運のおかげな所もあるから、嘘ではない。


 ホントはリザルトもあるから、爪を渡しても良かったけど、ガチャミの情報が気になるから確認したいからな。


 例の端末でカードの更新を行う。

 等級も変更されE(特)になった。


 ヤッフー!これで俺も探索者だ!

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