第95話 ヒロイン退場?

 カードの裏を見ると、報酬が150円の他にギルドポイントが入ってる。


 コーチャンを見ると、ニッコリとノリノリを指差す。

 あ~依頼扱いになるからか。


「では帰りですが、ヒノリさんは大牟田と巧乃さんに、送って貰いましょうか」


 あれ?父さんが残るの?

 あ、職業とか見てないもんね。


「あれ?朱鷺君は帰らないの?」


「まだ彼のスキル検証は終わっていませんから」


「なら私も終わるまで待つよ?」


 ホントにバカだな?

 呆れた目をサブマスに向ける。

 どんな教育してるのさ。


「ヒノリは、朱鷺君のスキル検証に必要ないから帰るよ」


「ずるいよ!朱鷺君ばっかり贔屓されて!」


「こら、ヒノリ!何を言ってるんだ」


 はぁ…どっちかと言うと、お前が贔屓されてるんだよ。


 普通はギルドが一般人に頼んでまで、個人のスキル検証なんかしないぞ?

 現段階で検証が出来なきゃ、有無を言わさず魔法で制約か封印だよ。


 サブマスの言葉も無視してるし、もうウンザリだ。


「あ~もう、今後は断らせて下さい」


「承知致しました。朱鷺君には大変不愉快な目に合わせてしまい、申し訳ございません」


「すまない朱鷺君。娘が迷惑をかけて本当に申し訳ない」


「早良さんのせいではないので、謝らなくていいです。サブマスはちゃんと教育して下さい」


「なんでよ!朱鷺君、私の事が嫌いなの?!」


 好き嫌いでしか物事を考えられないのかよ…


「ああ、そうだよ。我が儘でバカな女なんて、誰が好きになるんだよ?」


「なっ…酷いよ!」


「どっちが酷いんだ。お前、ホントに解らないのか?俺は、お前のスキル検証に付き合う義務なんかないんだよ。善意の第三者ってヤツだ。その善意を当たり前みたいに受け取って、礼も言わないくせに文句だけは一人前で、何様のつもりだ?しかも自分の好奇心のために人のスキルを詮索するなよ、鬱陶しい。その上お前が頭を下げる訳でもなく、ギルドの偉い人の頭を下げさせてるのを見ても、何とも思わないのか?」


 絶句して青ざめた顔に、ホントやってられないよ。


「こら朱鷺、言い過ぎだ。もっとオブラートに包みなさい」


 父さん、それ内容には同意してるんじゃ…

 途中で誰も止めなかったし。


「サブマスがハッキリと娘に言わないからだよ。優しいのはいいよ?でも甘やかすのは違うんじゃない?コイツは死にたいのかと思うくらいバカじゃんか。1人で勝手に死ぬなら構わないが、巻き込まれる人間は迷惑なんだよ。遊びで探索者の資格が欲しいだけなら、もう貰ったんだから、さっさと帰れよ」


 朝の絡み系元同クラ女子に、我が儘バカ娘と続けて地雷に出会うとか、幸運が仕事サボってないか?


「すまなかった、朱鷺君。ヒノリも皆に謝りなさい!それから、ちゃんとお礼も言いなさい」


「酷いよ、なんでそんな事を言うの?!パパも朱鷺君の味方なの?!」


「ヒノリ!パパはヒノリの味方だよ?でも今回はヒノリが悪いんだ。悪い事をしたら叱るのは当たり前だよ」


「ヒノリは悪くないよ!」


「ヒノリ、いい加減にしなさい!!」


「ヒッ…ふぅう…うわぁ~ん」


 うわ…ギャン泣きとか引くわ…

 あれ?でも何か記憶に引っ掛かるものが…

 痛ッ、何だ?

 なんでコイツを見ると、こんなにイライラするんだ?


「朱鷺君、すまない。今日はこれで失礼するよ。お礼と謝罪は後日また連絡するから」


「あ~気にしないで下さい。もう関わらないでくれれば、俺はその方が助かるんで」


「本当にヒノリとちゃんと話をするから、もう一度チャンスを与えてやって欲しい。皆さんにもご迷惑をおかけして、申し訳ございません」


「まぁワシの孫も口が悪いし、言葉が下手だからの。気にせずとも良いわ」


「そうだぞ。大牟田には、いつもお世話になってるんだ。ちょっとくらいの迷惑ならコイツの成長になるから、かけてやればいい」


 ちょっと爺ちゃんも父さんも酷くない?

 俺、今日は結構ガマンした方だぞ?

 茶番劇まで演じてさ、ノリノリ矯正に協力してただろ。


 泣きじゃくるノリノリを連れて、サブマスと爺ちゃんが出ていったけど、爺ちゃんは完全にとばっちりだね。


 こうしてヒロイン候補は退場した。

 いやメンヘラ属性や地雷属性は必要ないから。


 しかし振り返れば、オッサン率が高過ぎる。


 このままでは姉と従姉妹しか残らない。


 あ、受付の二十代のお姉さんは、左の薬指に指輪があったよ。


 贅沢は言わない、ほどほどに可愛くて、料理が上手で、話しが合って、性格は凶暴じゃなきゃOK。


 そんなヒロイン候補が来ないものかな。

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