第74話 瞬殺の分止め

 はい終了。


 うん、反撃なしでも歯が立たないのに、反撃ありの手合わせだもんね?


 手加減をメチャしてくれてるから、目に見える攻撃なんだけど、瞬殺されること十数回で終わりました。


「ありがとう、ございました」


 乱れた呼吸を整えながら、刀を納めて一礼する。


「うむ。昨日より動けているな。しかし上がった身体能力に振り回されて、隙が出来ておったぞ。もう少し走り込みと素振りが必要だな。フェイントは視線の誘導も出来ておったから、もっとそちらに意識を乗せて、本気で狙ってるように見せれば、なお良かったの」


「なかなか難しいね」


「ハッハッハッ。簡単に出来るなら、鍛練などせんよ」


「そうなんだけど、爺ちゃん達を見てたら簡単そうにやるからさ」


「そら何十年もして来たから、年期が違うわい」


 まぁね~。


 ストレッチをして今日の朝練は終わりだ。

 リザルトを確認する。


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勝負が終わりました。

勝敗:負け(レベル差100以上)

状態:無傷(疲労度10)

リザルト:経験値142 技術値116

攻撃力2 防御力2 体力2 速力1

魔力1 Jガチャチケット[E]1枚

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 負けはわかってた。

 無傷は全部寸止めだもんね。


 服に触る感覚はあるのに、身体に当たらないから、寸を超えて分止めかもしれない。


 そのため模造刀じゃなくて木刀にしてる。

 そうじゃなきゃ服が切れちゃうからね…


 まぁ木刀でも爺ちゃんなら切れるんだけど、模造刀より手加減しやすいからってさ。


 昨日より疲労度が多いから、リザルトは少し少ないか?

 ハッキリ数字を覚えてないけど。


 チケットが職業ガチャになってるな。

 リザルトの内容はランダムなのかな。


 ステータスを見たら、レベルアップはしてなかった。

 でもスキルが…後にしよう。

 職業は変化なしだな。


 風呂から出たら、髪を乾かしてダイニングへ行く。


「おはよう、母さん」


「おはよう、朱鷺」


 爺ちゃん達は先に食べている。

 朝は出掛ける時間がバラバラな事が多いから、席に着いた順番で食べる。


 姉ちゃんは、俺と入れ違いに鍛練に行ったんだろう。


 父さんが庭の端に弓の練習場を作ったから、そこで練習してる。


 藁の的を板で囲んでるだけの簡単なヤツだけど、家で弓をするのは姉ちゃんだけだから、贅沢な専用練習場だよ。


 俺も弓矢があるから習うかな?

 でも刀術を極めたいからなぁ。

 もしガチャで弓術が出たらやるか。


 俺が席に着くと、母さんがご飯を渡してくれる。


「ありがとう」


 今朝は和食だな。

 焼き鮭を見てサブマスを思い出す。

 なんか嫌な刷り込みが出来た…


「いただきます」


 佃煮海苔をご飯に乗っけるのが、俺のマストだ。


 味噌汁はジャガイモとタマネギだから、夕食の余りかな。


 ホウレン草の白和えの、ほんのりとした甘さが良いね~。


「ご馳走さまでした」


 食べ終わった食器はシンクに浸けておく。

 母さんが、姉ちゃんのお弁当の用意をしているから、後で洗うってさ。


「父さん、何時に出掛ける?俺は8時45分までに行けば良いけど」


「昨日の発表で受付が混んでるだろうから、余裕を見て8時過ぎに出たら間に合うだろう」


「わかった。それじゃ部屋にいるね」


「ああ」


 部屋に戻って、ガチャミを見てみる。

 寝てるな…

 あれ?二次元でも寝るのか?


 こっそり三次元にしてみる。

 キラキラっと画面が光ったら、ガチャミが空中に現れた。


 昨日のような派手な演出がないから、画面が光るのだけが本来のエフェクトか。


 寝てても空中に浮かんだままなのが、妖精の仕様みたいだな。


『オヤツ…もぐもぐ…』


 涎を垂らしながら寝言までオヤツとか、いっそ清々しい程の執着だな。


『起きろガチャミ』


『ふにゃ~』


『ガチャミ起きろ!』


 ちょっと強めに言う感じで念話する。


『うぅ…鬼畜の声が…』


『誰が鬼畜だ!?』


 ガシリと掴んでブンブン振ってやる。


『うぎゃ~!なに!?なに!?』


『起きたな』


『と、朱鷺?』


『ああ、おはようガチャミ』


『ヒッ…』


 ヒッてなんだよ?


『おはようガチャミ』


 びくびくしてるガチャミに、もう一度繰り返す。


『お、おはようございます~?』


 挨拶は基本だからな。

 キョロキョロと落ち着きなく、目を泳がせてるガチャミを離してやる。


『もう7時半だぞ?いつまで寝てるつもりだ?』


『もう~まだ7時半なら~後1時間は寝られるよ~』


 手を離した途端に元気になったな。


『ほぅ?朝御飯はいらないんだな?』


『えっ!?いります~オヤツ~』


 オヤツじゃねえよ!


『今後7時までに起きないと、朝御飯もオヤツも抜きにするからな』


『起きます~だからオヤツ抜きだけは~オヤツがないと生きていけないの~』


 飯よりオヤツかよ?

 昨日のガチャで出た迷宮バーガーを出してやる。


 ガシリ。

 かぶり付こうとしたガチャミを掴む。


『おい、食べる前に言うことがあるだろう?』


『ありがと~?』


『それから?』


『あ、いただきます~?』


 やれやれ、挨拶は基本だって言ってるのに、ガチャミはダメ妖精だな。

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