第69話 取り憑かれてる?
「コホン。では次は打ち込みじゃな。スキルは使うなよ」
少し間を取って爺ちゃんと対峙する。
その時、いきなりウインドウが開いた。
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勝負をしますか? Yes / No
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え?
「どうした朱鷺。集中せんか!」
爺ちゃんが怒鳴る。
鍛練の時は厳しくなるから、早く集中しなきゃヤバい。
「ハイッ」
爺ちゃんに返事をしたら、画面に"勝負を開始します"と出て消えた。
凄く気になるが、今は考える時間がない。
目の前の爺ちゃんに集中する。
すぅと長く息を吸い込んでから、ゆっくり吐き出して息を整える。
「ハッ!」
気合いを入れて正面から打ち込む。
ガキンと金属音がして押し戻される。
その勢いで後ろに下がってから、今度は踏み込みと同時に水平に払う。
キンと掠めるように下に受け流されてしまうが、そこから逆袈裟に切り上げる。
それも軽く受け流されて左に払われて、身体が泳ぐが、爺ちゃんからの反撃はない。
流れた身体に逆らわず、摺り足で左に回り込む。
もう一度逆袈裟に見せかけて、
右の太ももを狙ったが、読まれていたのか右に受け流されて、左手が離れていたために身体が開いたところに、首に刀を突き付けられた。
はぁ、はぁ…
ホンの数合だけの攻防だったが、汗が吹き出て息が切れる。
実戦で怯まないために、殺気を少し混ぜてくるから、たまにホントに切られるんじゃないかと、気が抜けない。
「ふむ。最後の刺突は良かったが、意表をつくなら視線も誘導せんとな。払われて身体が流れるのは、身体の芯が通っておらんからじゃな。しかし力と速さが上がったから、打ち込みは良くなった。どの攻撃も刃がきちんと立っておった。わずかとは言え上がった身体能力も、使いこなせておるようじゃな。今日はここまでにしようかの」
「ありがとうございました」
一礼して模造刀を鞘に納める。
すると、またウインドウが開く。
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勝負が終わりました。
勝敗:負け(レベル差100以上)
状態:無傷(疲労度8)
リザルト:経験値152 技術値128
攻撃力2 精神力3 体力2 知力1
運力2 ALLガチャチケット[E]1枚
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「終わったか」
ビクッ。
画面の信じられない内容に硬直していると、隣の板張りの方で高速の素振りをしてた父さんが、息も乱さず声をかけてくる。
「うん。父さんはもういいの?」
ゆっくり振り向いて平静を装う。
「今日はダンジョンに行ったから、軽く流すだけで構わん」
「そうなんだ」
軽くても目に止まらない速さだけどね。
「何?」
ジッと見つめられて、もしや勘で何か気付かれた?
「あー。何かわからんが、気になるんだ」
やはり勘が発動?
「そのな、何かこの辺がもやもやするような?」
俺の左肩の辺りを手で囲むように回す。
………なんだって?
画面の事じゃなかったようでホッとするが、そのサイズ感に見覚えが…
まさかな?
「嫌だな~。何か霊にでも取り憑かれてるとか?」
左肩をパタパタ払いながら、笑ってみる。
「霊の感じではないな。初めて感じる気配のような、匂いのような?よくわからんが悪い感じもしないな」
まさか、父さん霊とか感じる人?
初耳なんだけど…
「そうなんだ?悪い感じがしないなら、気にしなくて良いんじゃない?」
「ああ、そうだな。ただ…何か気になる」
「蓮よ、そんな風に言われると、朱鷺も落ち着かんじゃろ?悪いものでないなら、とりあえず放っておけ」
「そうだな、すまん朱鷺」
爺ちゃんナイスアシスト!
「気にしてないよ。父さんの勘には、いつも助けられてるし」
それに多分、原因もわかってるから。
「身体が冷えん内に戻るか」
「うん」
「ああ」
一瞬、今度こそ職業を見せて貰おうかと思ったけど、何か色々と頭の中を整理しないといけないので、これ以上はキャパオーバーだ。
父さんの勘じゃないけど、明日になれば解決しそうな予感がするし、ギルドに丸投げしとこ。
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