第41話 妖精界も格差社会

 B会議室に入るとサブギルマスがお弁当を並べていた。


 早良さんはお茶を用意しに行ったみたい。


「朱鷺君、どのお弁当が良い?」


 相変わらずの小首をかしげる仕草だが、全く可愛くない。


 先に選らんでと言われたから見てみると、ハンバーグと唐揚げと幕の内なら、唐揚げにしよ。


 席に着くと、ツルツルじゃないツルピーが、ガチャミは居るのか聞いて来た。


「この辺を飛んでます」


 俺の左前くらいを指差す。

 最初、俺の肩に座ろうとしたから断固拒否した。


 ツルピーはやっぱり見えないねと、八の字眉毛で小首をかしげる。

 カキピーを彷彿とさせる顔が何だかな…うん何も見なかった。


 そういや、ガチャミが羽ばたく度に光りの粒みたいなのが飛び散ってるけど、鱗粉じゃないよな?


『失礼な!ガチャミのキラキラは~皆を幸せにする祝福の光なんだよ~』


『毒にも薬にもならないヤツか』


『うきぃ~!朱鷺ってば~イジワルばっかり言うとサポートしてあげないぞ~』


『なら非表示で良いか』


『ごめんなさい~それだけはご勘弁を~』


 机の上に土下座するガチャミ。

 なんだ?非表示になると問題でもあるのか?


 しまった!みたいな顔をしているガチャミに、これは追及しなければならない予感がする。


 さぁ洗いざらい言えと、ジーッと眺める。

 びくびくと上目で伺ってきたガチャミと目が合うと、慌てて額を机に着けて非表示だけはダメなの~と泣き出す。


 非表示いらない子になると、不名誉な事として妖精界でバカにされて、スキル妖精として失格とされて、二度と選ばれなくなるのだとか。


 しかもスキル妖精に選ばれると名前が貰えるから、名無しの妖精とは格が変わるらしい。

 それが名前があるのに名無しと同じ扱いにされるとか。


『格が違うと何が変わるんだ?』


 皆の憧れの存在になってチヤホヤされる?それで毎日オヤツが支給される?あと大きな木に住める?

 あ、そう…それだけ?


 てか初めから、ガチャの妖精として生まれたとかじゃないのかよ。

 どんなスキルにも妖精がいるのか聞くと、どのスキルにもいるけど派遣されるのは、世界で初めてスキルを獲得した者だけだと。


 その後に同じスキルを獲得した者が現れても派遣されないから、スキル保持者が死亡したら妖精界に戻って、また違うスキル妖精に選ばれるまで待機チヤホヤされるらしい。


 そいつらにもステータス画面に、●●のお部屋があるのか…あるんだね。


『誰が名前つけるんだ?』


『それは~我らが妖精の女王~フェアリン様だよ~』


 妖精のネーミングセンスェ…


『スキル妖精に選ばれる度に、名前が変わるのか?』


 え?一番初めの名前のまま?

 じゃあ例えばムック出版物スキルでもガチャミになる場合があるって事?

 このギリギリを攻めたい気分。


ここ地球以外にも呼ばれたりする?』


 スキルがある世界なら、色んな世界に呼ばれると。

 なるほど、やっぱり異世界があるんだな!


『でも~この事は絶対に他の人には言わないで~』


『何故だ?ダンジョンが出来たくらいだから、別に異世界があるのは誰でも想像つくし、言った所で特に何もないだろ?』


『朱鷺はアーカイブに関わる権利を持ってるから~教えても問題ないけど~ホントは誰かに言ったら聞いた方にもペナルティがあるの~』


 何だってペナルティ!?

 そういやアーカイブって何かどこかで聞いたな…

 あ?ステータス獲得の時か!


『アーカイブに関わる権利って何だ?』


『それは言えないの~』


『ペナルティってどんなのだ?』


『ん~?記憶を消されるか~死ぬか~存在を消されるか~?』


 怖っ!

 何だよその3択…


『存在を消されると、どうなる?』


『今まで生きた記録がなくなるよ~誰も覚えてないし~何も痕跡が残らないよ~』


 マジか!?

 存在がなくなっても誰にも気付かれないとか、それは神の領域だな。


 でもひょっとしたら記憶を消されてても気付かないから、既に消されてる可能性もあるのか?


 誰かが消されても誰も気付かないとか、認識すら出来ないって事か。

 考えたらゾワゾワする。


『そういやアーカイブって何だ?』


『それは…えと…』


 ヤバい!消えるヤツか?


『何だっけ?』


 って知らんのかい!!


『あ~そうそう~記録の蓄積的な~?』


 そのまんまだな!

 何の記録だよ!?


『世界だよ~』


 すげぇ規模の話だな…

 もう、気にしない方向でいくわ。

 気にしても気にした事すら忘れてる可能性もあるからな。


 とりあえず、俺には片付けなければならない事がある。

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