第24話 ダーツは投げてない

 テレテッテ~テレレ~♪

 テレテッテ~テレテ~レ~レ♪


 考古学者が冒険するテーマソングを何となく思い出しながら、入口をくぐるとイメージ通りのダンジョンが現れた。


 洞窟は仄かに光ってるような不思議な壁で出来ていて、数メートル先が見える程度には明るい。


 入口近くは少し広くなっていて、正面右側に高さ2メートルくらいの水晶体がある。


 この水晶体は5階層毎にある転移陣を利用して戻る事が出来て、1度利用した転移陣は登録されるから次から階層をスキップ出来る便利機能がある。


 ただし1度は必ず転移陣を利用しないと使えないため、初心者がスキップ出来るようなご都合主義チートは無い。


 このダンジョンは5階層しかないので、最終階層ボス部屋からの帰還専用になってるけどね!


 ちなみにボス部屋の周回は出来ない。

 ダンジョンによってサイクルは違うが、ここのボスは次の日にならないと復活しない。

 ただし別のパーティーが部屋に入ると普通にボスが出てくる。

 1度ボスを倒したメンバーが1人でもパーティーにいると出てこない。


 まぁ真夜中に日付を越える前に倒して、日付を越えてからもう一度ボス部屋に入ると2回までなら連チャン出来るけど。

 そこまでする程のレアドロップは出ないし、初心者にボス連チャンはキツイからね。

 そんな実力があるなら、別のダンジョンに行ってD級を目指すよ。


 今回もちろん転移は使えないからスルーして、正面左側にある道を進む。


 攻略済みのダンジョンはマップがギルドで公開されていて、ランクDまでは無料で閲覧可能になっている。


 ランクCからは有料になるがザックリした地図になるし、ランクBやAは地図がほとんどない階層もある。


 ランクCからは階層が段階的にどんどん広くなり、森林や山岳地帯などのフィールド系が多くなるため、隅々まで探索出来ていないからだ。


 一説には日本のダンジョンの総面積は、地球上の大陸を合わせたよりも広いと言われている。


 しかもダンジョンでは電子機器は使用出来ないため、魔道具を使うか地図作成マッピングのスキル持ちでもないと正確な地図にならない。


 ほとんどが手描きで、しかも戦闘しながらだとマッピングする余裕もなく、歯抜け状態の地図とかざらにある。


 それをギルドが組み合わせて継ぎはぎして正確性を上げてても、細かい間違いがあると逆に危険なため、ザックリしてる方が慎重に探索すると言う訳だ。


 その地図に自分たちで描き込んで独自の地図を作るのが、ベテラン探索者の常識だ。

 鉱山や薬草の群生地など、見つけたお宝はパーティーで秘匿しておいて何度も採集するのだ。


 ギルドはモンスターの情報も公開しているから、探索者は必ずチェックする。

 命に関わる情報なので、モンスターの情報は全て無料で公開している。


 こう言ったダンジョン内の情報はギルドが買ってくれるから、変わった事があればとりあえずギルドに報告するとよい。


 もちろんギルドで真偽を確認してから報酬が払われるし、ニセ情報を故意に流したらペナルティもある。


 例え利益にならなくても、正確な情報はギルドポイントを貰える。

 特にB級以上を目指すなら査定ポイントは必須になるため、情報を伝えるのは必要な事でもある。


 そんな感じで、講習の内容を交えて色々教えてくれながら、10分程進んだ所で、第1モンスターを発見した。


「チチッ」


 ネズミのような鳴き声はビッグラットだ。

 猫くらいの大きさのドブネズミみたいな姿で、名前はビッグマウスでも良さそうだけど、きっと大口ホラ吹きと間違うからかな?


 そこそこ素早いが動きは単純で、噛みつきに気をつければ、初心者でも蹴りで倒せるくらいに弱いそうだ。


「ふっ」


「チヂッ」


「へっ?!」


 今起きた事をありのままに言うぜ。


 イケメンが"ふっ"と息を吐く。

 ビッグラットが真っ二つ。

 俺が驚く←今ココ。


 ビッグラットが黒い煙になって消えるのをボンヤリ眺めながら、何が起きたかもわからず一瞬で終わった第1モンスターとの遭遇に、過剰戦力だもんねと遠い目をするのであった。

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