第5話 テンプレは起こらない

 ギルド入り口から見える広いエントランスの右手には丸テーブルと椅子が複数設置され、壁際には座り心地の良さそうなソファーまであり、待ち合わせしてる雰囲気の人が飲み物を頼んだりしている。


 どこぞのホテルのカフェかと思うようなオシャレな内装に、ファンタジー小説のテンプレな酒場を期待した人は軒並み裏切られる事だろう。


 左手はエレベーターホールとトイレの表示があり、エレベーターの手前の通路から奥に続いているようだった。


 正面には総合案内インフォメーションと表記された市役所とかにありそうな表示板がぶら下がるカウンターがあり、スーツ姿の女性と男性が座っている。


 何でもジェンダーレスが叫ばれる昨今では、受付嬢なんて決めつけは性差別だとか言われない様にしているんだろう。


 でも受付で女性は美人が多いのに、何で男性は普通のおっさんだったりするのかが謎だ。


 やっぱ受付になりたいと言う男性って少ないから?世間の認識と実情って見合わないと思う。


 向き不向きって職業にもあると思うから、何でもかんでもジェンダーレスとか言うのも如何なものかと思うけれど。


 まっ女性でもリンゴを潰すどころか鉄板に穴あけちゃう握力とか普通な現代では、力仕事をする女性もゴロゴロいるけどね。


 探索者はその代表みたいなものだし。


 とりあえず、男ならこっちでしょと、総合案内のお姉さんに向かって歩きだした。


 しかしカウンターと表示板のオフィス感と右手のカフェの内装とのギャップが酷すぎる。


 それこそホテルや空港のようなオシャレなカウンターとかにならなかったのかな。


 特に表示板の白い板に黒で文字だけが書かれているのが…せめて字体をオシャレなやつにするとかなかったのか。


 そんな益体もない事を考えながら近づくと、お姉さんが不自然にならない程度のさりげない笑顔で声をかけてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る