⑦
定時で会社を出た私は真っ直ぐ駅に向かわず、雑貨屋に足を向けていた。
三ノ宮さんにお弁当を作るならお弁当箱が必要だ。
「それから箸もいるよね」
お弁当箱と箸を探して店内を回る。男性だから大きめの弁当箱が良いだろう。
店内の一角にシンプルな弁当箱が陳列されている。その中で紺色の容器に透明の蓋が付いた弁当箱が目にとまる。三ノ宮さんのイメージにぴったりだと思ったのだ。箸も同じシリーズで揃えて会計してもらうと、なんだか頬が緩んでくる。
三ノ宮さんにお弁当を作るということがどんどん現実味を帯びてきて、胸がくすぐったい。
その後は電車に乗って家の近くのスーパーで買い物をする。
まさか自分の弁当みたいに冷凍食品を詰めるわけにはいかない。卵焼きと彩りにプチトマトとブロッコリー。それから冷蔵庫に常備菜が残っていたから、あとは2〜3品作ればいいだろう。
「唐揚げとハンバーグだったらどっちが好きかな?」
三ノ宮さんのこと何も知らないなと感じて少し寂しくなる。
「でも居酒屋で唐揚げ頼んでたし、唐揚げは好きだよね。よし、じゃあ鶏モモ買おう」
料理はそんなに好きじゃない。だけど誰かのことを考えながら誰かのためを思って作るのはちょっとわくわくする。
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