お昼休み、休憩室の隅でお弁当を食べていると、後輩たちが恋話で盛り上がっていた。


 恋話には特に興味はないが、その中で「三ノ宮さん」と出て来てしまったので、自ずと会話が耳に入って来てしまった。


 いや、聞きたくて聞いたわけではない。

 盛り上がって大きな声で話すから聞こえてしまったわけで……。


「三ノ宮さん、彼女と別れたらしいよ」


 どこの情報だ、と思うが、後輩の中に情報通の子がいた。本当にどこから話しを拾ってくるのだろうか不思議でたまらない。


「でも三ノ宮さんていつも長続きしないんでしょ?」


 ああそれは聞いたことある。

 長くても半年とか。短いとひと月とか。


「飽きやすいってこと?」

「本気にならないってことでしょ」

「遊び?」

「かる〜い!」


 三ノ宮さんはそんな人じゃないよ!

 付き合ったことないから、……知らないけどさ……。


「ちょっと誰か三ノ宮さんと付き合ってみてよ。そしたら真相分かるじゃん」

「その発言もサイテーだけどね〜。でも興味はある〜」


 やめて、三ノ宮さんを弄ぶようなこと!

 そんなことするくらいなら私が付き合ってみたいよ!!


「おためしで?」

「いいじゃん、ひと月くらい!」

「思い出くらい出来るかも?」


 ――おためし、ひと月、思い出。

 全部自分に言われてるような気がしてきた。


 1ヶ月半後にはもう会うこともない人と、最後に思い出が出来るなら……。


 この気持ちを伝えてもいいのかもしれない。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る