第6話





あまり詳しくはないと前置き、

話してくれた宿の人。


原生林のある

この町出身ではないが、

わりと近くの出だという。




子供の頃から

それとなく聞いてきた話。


その原生林には

妙な逸話が

幾つかあった。






深夜。


原生林の

とある場所で

それは起きる。




原生林に行くと言って

出かけたきり

戻らなかった人。

連絡もつかぬまま、

消息不明のまま現在に至る。



死体となって発見された人。

野生動物に襲われたでもなく、

ただ死んでいた。




幽霊が出るでもなく。

ただナニかいる、

ナニかある。




目撃した人。


数人と思われる集団が

近づいて来たのだと。


数人とは言うが

人かどうかハッキリとは判らない。

動物とも思えず。

幽霊でもなく。



見えた時の

なんとも言い難い怖さ。


それ以上

見続けることは出来なかった。



声のような音のようなものを

聞いた。

あとを絶たない。




そんな

掴みどころのない話が

昔から伝わっているのだと。




原生林にはナニかいるのだ。

地元の人は

信じている。


だから、

そのまま手を加えず

今だ原生林のままになっている。




土地神とちがみ

付喪神つくもがみ


そんなものが原生林に棲んでいるのだと。




「日が暮れてから

 森に行くと引っ張られるぞ」


そう言い聞かせられていたそうだ。


具体的に、ナニがどうなるか。

なにも知らないが

とても怖い場所だと思っている。



知る限り教えてくれた宿の人は

そう言った。










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