第14話 断罪された4人と、その後のローザンヌとのやり取りで――。

「本来ならノザンに苦しめられるライカ様を私が救って、邪魔者になるノザンを殺してでも私を一途に愛してくれるヤンデレキャラがライカ様なのよ!? それなのにこんな筋肉ダルマと出会ってしまったから全てが可笑しくなったんだわ!! 本来なら私が愛されてフランドルフ伯爵家に正式に嫁ぐ筈だったの!! ノザンを殺してね!! なのに、なのに――!!」



そんな物語になってたいの!?

と驚きを隠せなかったが、ローザンヌは厳しい瞳でリリーを見つめ、その目は周囲も同じで……リリーが何を言っているのか理解しているのは私とローザンヌだけだが、今のリリーは余りにも周囲から異様に見られた。



「だからローザンヌは死んで? 死んだら元通りよ!」

「貴様は馬鹿か」

「は?」

「そんなくだらない自分本位で物事を見ていたのかと聞いているんだ、娼婦リリー!」

「なっ!!」

「そもそも、私とライカは既に愛し合っている仲であり、互いに恋して愛して止まない唯一無二だと言うのが何故分からん。何故自分の都合のいい様にしか見ない! なんてお前は気持ち悪い人間なんだ!! 反吐が出る!!」



そう怒りで叫んだローザンヌに、周囲も頷きリリーを見つめている。



「貴様を育てたと言う男爵も可哀そうになぁ……。貴様の所為で家はお取り潰し確定だ」

「な、なんですって!? 私が平民になるとでもいうの!?」

「「その通りだ!!」」



二つの声が重なる。

一つはローザンヌ、もう一つは……騒ぎを聞きつけてやってきていたこの国の国王陛下だった。

リリーは肩で息をし、馬鹿男3人は信じられないものを見るようにリリーを見ていたが、怒りに満ちた国王陛下を見て姿勢を正し、顔面蒼白で固まっている。



「まず馬鹿三人の婚約だが、男有責で婚約破棄を認めよう。ファボレ伯爵、カマン伯爵それで良いな?」

「「はい……」」

「「ち、父上!?」」

「そしてゼドール!! この度のそのフィフィリアン男爵令嬢に熱を上げて周囲の言葉も聞かず王家の威厳を使い自由奔放に動き回った責任を取らせる! 貴様は、幽閉だ!」

「なっ!!」

「子もなせぬよう去勢手術も行う! 覚悟するのだな!! そしてリリー・フィフィリアン男爵令嬢! 貴様の家は男爵の地位を返上し平民となる事を決定する!」

「はぁ!?」

「全ての責任を取れと言っているのだ。斬首刑では無いだけマシであろう?」



その言葉に「何で? どうして?」と言葉を繰り返すリリーに、ようやく溜息をついたローザンヌは私の肩を抱き「何とかなりそうだな」と小さく呟き、私も頷いた。

しかし――。



「平民に落とすっていうの!? この私を!? この世界の中心である私を!?」

「貴様何を言っているのだ?」

「だってこんなストーリー無かったもの!! やっぱりローザンヌの所為よ!! 殺してやるんだから!」

「平民風情がフォルデア公爵家のローザンヌを殺すと言ったか?」

「!!」

「その言葉、後悔する事になるぞ」



そうローザンヌが口にすると兵士が流れ込んで来てリリーを捕えると外へと引きずり出しして行く。

尚も叫び続けるリリーだったが、もうこれで学園にも来れなくなるだろう。

他、リリーの所為で婚約者を失った三人は呆然としており、床に膝をついてフルフルと震えている。

特に幽閉決定となったゼドールは顔色が悪い。

彼もまた兵士に連れて行かされ会場を後にし、残る二人は周囲と家族からの冷たい視線に耐えているようだった。

そして家族会議があるのだろう……ノシュ・ファボレとボール・カマンは父親に腕を掴まれ会場を後にし、今後の進退について話しがあるのだろうと思われる。

すると――。



「ノザン、よく見ておきなさい? 貴方もああなる運命に前はあったのよ」

「ほほほ、その時が来なくて良かったわねぇ?」

「……はい」



顔面蒼白になって何とか返事をしたノザンだったが、本当に顔色が悪い。

リリーと縁を切ったからこそ、彼女の可笑しさが際立って見えたのだろうか。

そう思っていると、陛下からお言葉があり、再度楽しいひと時をと言う事になったが――周囲の人たちの声はリリーと男三人の話題ばかりで、楽しい……とはとても言えない。

まぁ、ダンスパーティーだし折角だとローザンヌと共にダンスを踊り、「結婚したら三回目も踊りましょうね」と伝えると「何度でも踊ろう、その時は」と笑顔で答えてくれた。


このパーティーが終われば、数日後私とローザンヌはフランドルフ伯爵領に赴き、領地の視察などが待っている。

楽しみでもあり、愛するローザンヌと一緒に入れるのは嬉しいけど……嗚呼、襲われても良いかも知れないって思ってしまう自分は駄目かも知れない!

そんな事を思いつつ、一番格好よくて、一番素敵で、一番愛してるローザンヌにときめきながらの夜を過ごし、パーティーは終わりを告げた……。


まだチラホラと人が残る中、ローザンヌと二人少し離れた場所で飲み物を飲みつつ会話をする事になったんだけど――。



「私がヤンデレキャラだったなんて初めて知ったわ」

「ははは! 俺は知っていたがな」

「そうなんだ」

「ゲームも発売されていて、そこでの隠しキャラだったからな」

「ヤンデレ隠しキャラ……」

「ああ、ちなみに人気投票は堂々の1位だった」

「うわ……」

「まぁ何にせよ、本来ならこの場で俺が断罪されて終わり。ハッピーエンドって言う奴だったが、随分と拗れたものだな」

「拗れていいんです。私はどんな目に遭ってもローザンヌと一緒に居たい」

「ふふ、君は俺を喜ばせるのがとても上手い……」



そう言ってぶどうジュースを飲む姿すらも絵になって……はぁ、私の婚約者最高にかっこいいわ。中身は男性で見た目は女性だけど。

――こうして波乱に満ちた学園ダンスパーティーは終わり、私もローザンヌも明日には学園から家に帰ると伝え、数日後ローザンヌは必要な物と侍女を連れてやってきて、一日滞在してからフランドルフ伯爵領へと向かう事になるのだった――。


ランドルフ伯爵領では、ストーリーが全く変わってしまった為恙なく事は終わり、冬期休暇が終わりローザンヌの最後の学校生活が始まる頃、件の問題を起こした生徒三人の情報が入ってきた。



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