第11話 普通で終わる筈がないダンスパーティー②
――ローザンヌside――
夜会のダンスパーティーにドレスコードはただドレスであればいいというだけ。
無論、自分のドレスだと言い張れば――……俺の今着ている男装とてOKなのだ。
赤い髪を一つに束ね、キリッと目力の強い目をもっと際立たせ、赤い紅を塗って貰い、腰に模造剣を携え、太ももまである特性のヒールブーツを履けば……いかにも悪役のボスといった姿の完成だが、今回のドレスはライカの祖母と母による一点物として作られた、俺だけの特攻服。
「ダンスパーティーに男装なんてと思いましたが、やはり貴女にはパンツスタイルが絶対合いうと思いましたの。作って正解でしたわね」
「ええ本当に」
「フランドルフ家から一点物のドレスを贈られるなんて、社交界に出れば噂の的ですわね。ローザンヌ、とても似合っていますわ。この国のボンクラ第一王子より王子らしいのではなくて?」
「ははは! 美しいライカを守る為ならば模造剣であっても相手の首を斬りましょう」
「「「きゃ――素敵!!」」」
そう俺が言うとドレスの着付けを手伝ってくれたメイドたちは声を上げてしまったと頬を赤くし、母はこの上ない笑顔、ライカの祖母と母は満足げに微笑んでいる。
「ライカの服も赤で作りたかったんですけど……」
「あの子はハンカチとそれに沿えるブローチでしか赤を出せなかったのよ? もう恥ずかしいったらないわ」
「いえいえ、是非嫁いだ暁には私にはこのようなスタイルを、ライカにはドレスを着せたい」
「それは良いわね。ライカは美少女顔だし女の子用のドレスもきっと映えるわ」
「家の中でくらい……いいわよね?」
「まぁ、わたくしも見てみたいわ」
と語り合う家族と将来の家族たち。
この背にはその二つの家を背負っているという事は重々承知だ。
婚約を果たした者達は大体がそうなのだが、誰とも婚約していない女性や、毒婦には分からん事だろうな。
ロビーにて婚約者を待たねばならない為、一度全員で下に降りると何やら揉めている声が聞こえた。
寮母と毒婦だ。
「だーかーらー!! 私には迎えが来るんですってば!!」
「だから、誰がお迎えに来るの?」
「ライカ・フランドルフです!!」
「馬鹿をおっしゃい! あの方の相手は誰か知っているでしょう? 学園の者で知らない人なんていないわ!」
「筋肉ダルマより私を選ぶに決まってます!!」
「ほう? 余程の自信がおありのようだな? お嬢さん?」
「へ?」
カツカツとヒールを鳴らせて歩いて行く俺に、周囲の令嬢たちの視線は釘付けだ。
だが真っ直ぐ背筋を伸ばして歩く姿に誰もが見惚れ、毒婦すら一瞬頬を赤らめた後真っ青になって指を差してくる。
俺から愛しいライカを奪うつもりか……?
その首切り落としてやろうか……。
「ひ、あ……なん……なのよその恰好は――!!」
「フランドルフ家より賜った一点物だ。素晴らしいだろう?」
その言葉に女性たちは声を騒めかせ、どれだけ素晴らしい品なのかを理解したようだ。
流石の毒婦も【フランドルフ家より賜った一点物】と言う言葉には気が付いたようで、「何でアンタがそんな……」と口にしているが――。
「では、後は会場で会いましょうね?」
「ええ、お母様」
「ふふ、ローザンヌ。その姿でライカを更に骨抜きにしてしまいなさいな」
「そうでなくとも息子は貴女に骨抜きよ」
「はははは! 私の愛が良く伝わっているようで何よりです!」
「「「まぁ、ほほほほほ」」」
そう言って母やライカの祖母、そして母は去って行ったが、彼女たちは毒婦を一度睨みつけるだけで去って行った。
睨みつけられているとも知らず呆然としている毒婦リリーだが、既製品の服を買い渡されたのか、それとも悪趣味なドレスが好みなのか、ゴッテゴテのドレスに身を包んでいる。
悪趣味だな、本当に。
「ラ、ライカは私のものよ!! 何でアンタとなんか婚約するのよ!! 今すぐ婚約破棄して!!」
「する筈ないだろう。お前は馬鹿か?」
「なっ!!」
「どれだけ私とライカが愛し合っていると思っている。このダンスパーティーが終われば暫く私はフランドルフ家に世話になり、ライカと二人で領地へ向かう。正に新婚さながらな生活をするという訳だな!!」
「ひ、酷い……そうやって脅してるんでしょう!?」
「さてな? それはお前が見たい物しか見てないからそう見えるんじゃないか?」
「だってそうよ!! じゃないとアンタみたいな筋肉ダルマと美少年のライカが釣り合うはずないじゃない!!」
「持論を展開するのは結構だが、私のライカを侮辱するのなら、その首切り落とすぞ」
「ひいい!!」
そう言うと後ろに後ずさり尻もちをつく毒婦に、見下すように視線を落としながら口にする。
全く、このクソ女の脳みそどうなってるんだ?
馬鹿は死んでも治らないという事か?
「ライカが選んだのは間違いなく私だ。もし自分が選ばれたと思っているのなら、賭けをするか?」
「か、賭けですって?」
「このダンスパーティーの待合室で、どちらにライカが声を掛けるか。どちらに頭を下げ手を差し伸べるか……負けた方は二度とライカに近寄らない」
「……一方的じゃない」
「負けると分っているからだろう?」
「何ですって!?」
「もしこの賭けが怖いというのならサッサと寮母の元へ行け。話は以上だ」
そう言って壁に寄り掛かる事なく真っ直ぐ立つと、周囲の熱い目線を無視して目を閉じる。
どうやら毒婦リリーは寮母の元へ行ったようだ。
ふう……と溜息を吐くと、その頃外でも大きな問題が起きていることを知らなかった。
そこではキャットファイトなんていう言葉では言い表せない。
もっと激しい戦いが繰り広げられているとは誰が想像しただろうか――。
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