第20話 学園長VSシヴァ 再び

「なんでここにいるんですか?学園長」


「なんでだと思いますか?シヴァくん」


学園長は笑みを崩さずそこに立っている。


「俺を殺しに来たんですか?」


「話し合いに来ただけですよ」


「意外と素直なんですね」


「そこが私の取り柄です」


会話を交わしながらカマをかけ相手の腹の中を探る


「あなたの考えは話し合いによって変えられると思いますか?」


「変える…ですか。難しいと思いますけどね、可能なんじゃないですか?」


俺は嘲笑しながら答える


「やはり、あなたは全人類を滅ぼさないと不満ということですか」


「不満という言い方は引っかかりますがそのとおりですね」


「人の心というのは流動的です。常に不動の心などない。人は一期一会ともあるように人と会うと必ず別れる。人の寿命は無量といえど必ず死ぬ。この世に常住なんてものはないんですよ。あなたの心も、全人類を滅ぼしたあとになにか感じませんか、考えは変わりませんか?」


「俺は感情を感じたことがないわけではない。ただ感じないようになるべく最小限に抑えている。とある古の哲学者は言った。『希望を抱かぬものは、失望することもない。』と。人は正の感情を抱くと必ず負の感情が存在してしまう。期待したあと、それが叶わなかったときの失望は計り知れない。だから俺の考えは変わらない。動かすほどの感情がないからな。万が一変わるとしてもその前に自身で自分を殺す。」


「悲しいですね、人の可能性というものを信じてみないんですか?」


「この世に可能性というものは存在していない。偶然というのは存在していない。偶然という皮を被ったが世界を支配している。」


「なるほど、あなたの考えはわかりました。これは話し合いをしても無駄ですね」


「俺もそう思っていたところだ」


「ならばさっさと片付けましょう」


「そうだな」


そして学園長は能力を使う。


『コピー:陰陽道【氷河】』


「俺の能力をコピーしているのか」


「私があなたの能力を見逃さないと思いました?」


「ふっ、そのとおりだ」


『業火』


学園長がフィールドをすべて凍らせたのを俺の能力ですべて溶かす


『コピー:上限解放オーバードライブ


上限解放オーバードライブ


上限解放オーバードライブを使った学園長は地を蹴る。


俺の目の前で来ると正拳突きをかます。


俺が避けると俺のちょうど真後ろの壁に穴が開く


「制御できない力ほど厄介なものはないですね」


「そのとおりだ」


そして俺は気を練り上げ学園長に近づく


『縮地』


学園長の目の前まで来た俺は学園長を仕留めにかかる


『発勁』


それは学園長の腹を貫いた。


…だが学園長はニヤリと笑って能力を使う


『コピー:無力化』


その学園長の手は俺にふれる


「っ!?」


「私の目的はあなたを殺すことではない。先に無力化しておくことですよ。この能力に私の残りの魔力と生命力をすべて賭けました。それはしばらく保つはずです」


俺の腕は学園長の腹を貫いたまま。自身を犠牲にすることで俺の能力を一時的に無力化した。


「なぜだ…なぜそんなことをする!」


学園長は口から血を流しながらも話す


「ゴホッ…言ったでしょう、人類の希望にかけると。あなたはあなたの考えを信じているように私は私の考えを信じている。人類に賭けたのですよ」


「なぜ…自身を賭してそんなことをするんだ」


「私は希望を信じている…それは絶望につながるかもしれない。それでも人間は考えることができる、その絶望を転換させることができる…それは面白くないですか?」


学園長は相変わらずの笑みを崩さずそう答える


「だが…だが未来は確定していない。過去とは違う。絶望を転換させて希望に変えることができるとは限らない…なぜそんな薄い希望にかけるんだ!」


「そんな希望には賭けていないんですよ。過去は変えられないが未来は変えられる。そんなものは当たり前です。問題はなぜ確定していない未来を確定させられるのか…それは現在が存在するからです。現在と言うものは唯一…不確定の未来を確定させられる。あなたはいつを生きているのですか?未来?過去?違いますよね…現在です。我々は未来に賭けているのではなく、現在を一生懸命生きているのです…そして結果的に絶望を変えることができるのです…ゴホッ」


学園長もそろそろ限界そうだ。


「だからシヴァくん。私が言いたいことはこれをやめろ、ということではありません…今を一生懸命に生きてください…それ…が…私のねが…い…です…」


そして学園長は息絶える。


「今を一生懸命いきろ…か…」


学園長はいい人だった。あの学園テロを起こしたのもしっかりと国のことを、みんなのことを考えて自らが悪役になったのだ。


「学園長が生まれなければ…人類が存在しなければ…彼はこんな思いをしなかった…」


俺は…




―――








シヴァ・テトラの青い眼が黒く染まる。

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