第71話 変えてから
あれから、色々な人がお見舞いに来てくれた。
ヒメカが伝えてくれたのだろう。
ダイキ、ユウマ、林、岡部は、俺がヒメカに告白した次の日に来てくれた。
「お前、相変わらず無茶するな!」
ダイキが言った。
「え、俺、無茶したっけ?」
「出会った時から、無茶ばっかりだよ」
ユウマがダイキより先に答えた。そのままユウマが続けて話す。
「あの食堂の日も急に話かけてくるし、最初の遠足ではダイキの喧嘩止めるし」
「それは言うなって!」
ダイキがユウマをヘッドロックをする。
それを見て、ヒメカ達が後ろで笑っていた。
俺はこの輪の中に自分がいれることが凄い幸せだ。
一番最初の人生では、こんな友達に囲まれることもなかった。
悪いけど、一番最初の人生含めての25年間で一番今が幸せに感じる。
まあ、それもこれも出戻りできたおかげだけどな。
うーん、でも、あの死女神にありがとうは言いたくないけど。
☆☆☆
そして、入院してから二週間くらい経った日、俺は遂に入院生活に終わりを告げた。
しかも、運がいいのか悪いのか冬休み明けの前日に退院できた。
俺はお父さんが運転する車に乗り、家に到着。
この二週間の入院のおかげで上手くなった松葉杖をまるで自分の両手のように使い、家の中に入ってベットの上で横になる。
「本当に俺はヒメカを救えたんだよな」
俺は一人真っ白な天井を見て言った。
そう言えば、全ての始まりはあの日に人違いで殺されてからで、それから何回も転生したんだよな。
あの階段を滑り落ちたあの日からやっとここまで来たんだよな。
その分、ヒメカのいないパラレルワールドも作ってしまったのは正直申し訳ないが、今の俺が一番の幸せになることがきっと他の世界の俺への恩返しになるのだろう。
☆☆☆
「久々の学校は緊張してない?」
ヒメカは言った。
「いや、まあ長めの冬休みだったと思えば、そんなに緊張はしていないかな」
俺はあの交通事故のせいで二学期の終業式に参加することができなかった。
まあ、それで何かあったわけではないが、久々ということで少し緊張していた。
ちなみに折れた足はまだ完治したわけではなく、まだ松葉杖が必要な状態だった。
だから、今もヒメカに鞄を持ってもらっている。
「まあ、私がいるから大丈夫だけどね」
ヒメカは笑顔で言った。
この笑顔を守れてよかったと心から感じた。
ってか、そういえば、最近あの死女神の声を聞いていないな。
いつもは俺が過去にしてきた後悔を超えれた時に教えてくれていたのに。
あれ、一番最初にあいつと出会った時にこう言ってたよな。
「山本さんは高校時代で合計10回の後悔をしているみたいなんです。だから、もう後悔しないように気をつけて下さいね」
だけど、いくら数えても8回しか後悔を超えていない気がするのだが……。
残り二つってなんのことなのだろうか?
「ハジメ、何難しい顔してるの?」
隣を歩いていたヒメカが言った。
「いや、ちょっとね」
「何かあったら何でも言ってね。私はそ……そのハジメの彼女……なんだし」
ヒメカは顔を真っ赤にしながら言った。
「お……おう」
俺もそのヒメカを見て、同じように恥ずかしくなった。
まだ一月で全然寒いのに顔が火照ったように熱かった。
学校に着くと、イツメンのダイキ達だけではなく、クラスメイト全員が俺に気を使ってくれる言葉をくれた。
一番最初の人生とは真逆すぎてビックリするが、改めてこの出戻り人生をくれた死女神に感謝しなきゃなと思わされた。
やっぱり、家に帰ったら久々にあいつを呼んでみようか。
俺はいつも通り、この日の授業(基本的に始業式だけで授業はないから午前中でお和えう)はなかったから、少し早めの時間でヒメカといつも通り帰った。
「ただいま」
「あら、今日は随分と早く学校が終わったのね」
「お母さん、今日は始業式だけだよ」
「あら、そうね」
お母さんと軽く会話をした後、すぐに自分の部屋に入った。
「死女神アケミ! 元気か?」
真っ白な天井に向かって俺は言った。だが、返事はない。
「おい! 俺が呼んだら、答えてくれるんだろ? 次の後悔ってなんだよ?」
続けて俺はそう言ったが、真っ白な天井から何も声は聞こえてこなかった。
なぜかは分からないが、心がキュッと締められるような感覚を覚えた。
まるで、ヒメカを救えなかった時のようにだ。
そして、それから約一か月経った今もあの死女神アケミから返事はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます