第66話 起死回生
「アケミさん、またですか?」
「許してよ」
「一回でもダメなのに、二回目もなんて」
「だから、言ったでしょ。きっと意味ないよって」
「そう言ってましたけど、本当にそうなるなんて」
「あ、後、神様に伝えていいよ。ハジメさんの後悔が終わるまで出戻りしちゃうって」
「い……いいんですか?」
「いいよ。私だって死女神だからね。前回は山本さんの覚悟を見たかっただけだから。昔とはいえ私に勝ってるんだから、当然だけどね」
またも真っ暗な部屋で誰かがそんな風に話をしている声が聞こえた。
でも、そんなのがどうでもいいくらい目が重い。
…………もう一回寝よう。
☆☆☆
チュンチュン……チュンチュン……。
鳥の囀りが聞こえてきて、目を覚ます。
でも、俺って確か……。
急いで、ベットの頭側にあるデジタル時計を確認する。
文化祭の次の日。つまり、出戻りできたのか。
「驚いてますね。まあ、でも、約束したじゃないですか。何度でも生き返らせるって」
何もない天井から死女神の声が聞こえてきた。
「お前、狸先生と知り合いだったんだな」
「あー、知り合いという程ではないですけど、山本さんと似ている感じです。担当してた死神も私じゃないので1回分の出戻りと夢に入れるになってましたけど」
「…………色々とありがとな」
俺がそう言うと頭上からズドンという重たい音が聞こえてきた。
何かを落としたのか?
「大丈夫か?」
「い……いや、は……山本さんから連続でありがとうを言われたのが久々だったので、びっくりしちゃって」
俺ってそんなにありがとうって言ってなかったんだっけ?
「そりゃ、俺だって何かいいことしてくれればありがとうを言うに決まってるよ?」
俺は反抗期の子供のように答えた。
なんせ、恥ずかしかったからな。
あ、そういえば、狸先生が言ってたな。
…………出戻りしようがしまいが一つのパラレルワールドだって。
「ア……死女神」
死女神の名前を呼ぼうと思ったが、結局恥ずかしくてできなかった。
「どうしました?」
「一個前の人生はどうなった?」
「うん?」
「一個前の人生の世界もあるんだろ?」
「あれ? 何で繋がってるって知ってるんですか? そんな話したことなかっと思うんですけど」
「まあ、ちょっとな。とりあえず、教えてくれよ」
俺は何となく狸先生から教わった事は言わない方がいいと判断して、そう答えた。
「松本さんは特に怪我もなくでしたよ。でも、幸せかというと全然そんな事はないです。自分が山本さんを殺してしまったんだと何度も自分自身を責めていますね」
「…………そうか」
心の奥がズンと重くなる。
なぜなら、ヒメカは身体的には救えたが、俺はヒメカを幸せにできなったという証明だからな。
「これで分かりましたよね」
「何が?」
「松本さんを幸せにするには私に勝つしか無いんです」
本当にその通りだと思う。
俺もヒメカも死んじゃいけない。
だから、俺が二人を救って見せる。
前回みたいに変な風には二度とならないと心に誓った。
だが、誓おうが何しようが、死女神に勝つには作戦を立てる必要がある。
でも、今まで培ってきた経験があるから、勝機はある。
…………まあ、その方法は相当のリスクもあるが……。
恐らく、俺はもう一度自分の命を天秤にかけることがこの作戦では不可欠だ。
けど、俺の大切な人、ずっと後悔していたヒメカの死を一緒に超えられるかもしれないと思えば、少しワクワクしてきている自分もいる(この死女神には癪に障るが感謝しないといけないなとも思う)。
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