第5話 2回目の校外学習
「ハジメー、朝よ! 起きなさーい」
お母さんの声で目が覚めた。いつもの癖で自分の頭の近くにあるデジタル時計を取り、時間を確認する。
――4月2日――
予想通り、俺は入学式の次の日まで戻っていた。
春が始まったばかりの時期に戻ったからか寒く感じる。
ベットから起き上がり、大きく体を伸ばして、少しだけ懐かしい空気を吸い込んだ。体がゆっくりとリラックスしていくのが分かった。
その後数秒息を止めてから、勢いよく息を吐き、自分自身に気合を入れた。
「もうあんなへまはするかよ」
俺は小さく言った。
その為にも、今日のうちにヒメカに同じグループになろうと伝えておこう。そうすれば、これ以上後悔することはないし、次の日に進めるはずだからな。
☆☆☆
「ヒメカ、今月末にある校外学習一緒の班にならないか?」
俺の家の外で待っていたヒメカに会うなりすぐにそう聞いた。
「え? 全然いいけど、早くない?」
「ま……まあ、確かにそうかもしれないけど、結構楽しみだから、仲のいい人と行きたいなーと思って……」
俺はなんとか理由っぽいことを言った(正直、言い訳にもなっていないと思うが)。
「なるほどね、それなら……全然いいよ」
ヒナは少し顔を伏せながらそう答えた。
よかった……。
とりあえず、これで随分と安心できた。俺はヒナがいない側の左手で小さくガッツポーズした。
だって、これで後悔を超えられるなんて最高でしかないだろ?
以前とは違い、いつもより太陽が明るく見えた気がした。
そして、それから前回と同じように順調に日が過ぎていく。
だけど、今回は前回と気持ちの軽さが全然違う。正直なところ、ワクワクが止まらない。
もはや、早くこの班決めがしたくて仕方がないくらいになっていた。
そして、遂にお待ちかねの班決めの日が来た。
「じゃあ、来週の校外学習に向けての班分けします。好きな人たちで集まって6人組でグループ作ってください」
担任の先生が前回と全く同じことを言った。
でも、あの日のような恐怖は無いぜ。だって、ヒメカと約束していたからな。
俺は一呼吸をしてから、席を立ちあがろうとした瞬間、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、今まさに探そうとしていたヒメカがいた。
「ハジメ! 同じ班になろう?」
ヒメカがそう言った。
「おう。勿論」
俺はさも当然のようにそう答えた。
まあ、心の中ではまるでサンバでも踊ってるかのように気分が上がっていたが、実際の年齢は25歳なのだから、ポーカーフェイスでやりすごした(つもりである)。
こうして、俺は予定通りにヒメカと同じ班になり、初めて余りものにならなかった。これで完璧なはずだ。
だが、なぜか俺の頭上から「はぁ……」とあの死女神のため息が聞こえてきた。
☆☆☆
一番最初の人生含めて3回目の校外学習の日が来た。
「今日楽しみだね」
学校へ向かっている道中でヒメカがそう言った。
「おう。そうだな」
俺は淡々とそう答えた。
が、実際はテンションが上がりに上がっていた。
そのおかげか、俺の足は前回より足が軽やかになっていることに気づいた。こんな状況で後悔なんてするはずもないだろ。あの死女神の驚く顔が目に浮かぶな(実際の顔はマントをしていたせいで見えなかったけど)。
「じゃあ、出発しましょうか」
担任の先生は点呼をした後、そう言い、バスに乗り込むように指示した。そのバスの中での席だが、隣がヒメカだったこともあり、つい寝てしまった。
「ハジメ……ハジメ、着いたよ」
ヒメカがそう言って、俺を起こしてくれた。
「マジでよかったわ……」
ついそう言ってしまった。
「うん? 何が?」
「いや、なんでもない。行くか」
俺はそう答えた。
ヒメカは不思議そうな顔をしていたけど。
☆☆☆
「ヒメカ、ジャガイモ切ってくれないか?」
「うん。いいよ」
俺とヒナは絶妙なコミュニケーションで今日の校外学習で作るカレーを作っていった(この校外学習では、自分達で材料を買ってきて、カレーの具を決めることができる)。
やばい、めっちゃ楽しい。見知った仲の人がいるだけで、こんなに楽しくなるんだ。
そのおかげもあり、俺達の班は順調にカレーを作り、ヒメカ、班のメンバーと一緒に食事をした。
他の班の人達も俺達が作ったカレーを美味しそうに食べながら、談笑してくれている。とりあえず、これで間違っていないよな。
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