第11話

「ふふん。さてさて、副会長からの了承も得られたわけだし、こうして堂々とくっつけるな〜〜」


「了承を得たと言っていいのかそれ……?」


「そういう風にくっつくことを了承したわけじゃないぞ。馬鹿者め」


「ぐぇっ……! なんじゃなんじゃ! もう弟子ということは認めるんじゃろ!?」


 ひっつこうとする師匠を副会長は首根っこを掴んで抑制する。


 カエルみたいな声を出したな師匠……。


「彼が弟子として相応しい人物というのは認めよう。仮にも私の不意を突いて勝ったわけだしな。ただし、著しく風紀を乱すような行動は看過できんな」


「ぐぅ……! 師弟関係として適切な距離関係だと思うがのぅ。なあ弟子」


「適切じゃないでしょ。どう考えても……!」


 こんな距離感が適切であってたまるか!と俺は思う。


 ふてくされる師匠を横目に見つつ、俺たちは元の倉庫に戻る。ここから倉庫の片付けをしなくちゃならない。


 そんな道中、ふと副会長が俺の刀に視線を向けていた。


「……君は天職なしとは理解した。しかし、その刀から発せられた魔力。あの斬撃。一体どんな能力なんだ?」


「この刀のおかげですよ。師匠曰く、故郷に伝わる刀の一種だとか」


「なんだと……!? おい、生徒会長! 貴女もしや……!!」


 副会長は振り向いてふてくされていた師匠へ視線を向ける。急な反応に師匠は思わず首を傾げていた。


「貴女、もしかして天職なしの少年に妖刀だなんてものを渡したというのか!?」


「ああそうじゃよ。天職なしの無才の剣士が、妾と張り合う。妾と戦うために修行する。なら、それは必要な物じゃろ」


 そういえば修行がある程度進んでから同じようなことを言われたな。


 この二振りは必要な物だと。


「だからと言って鬼の里の妖刀を人間に渡すのか!? しかし、それを扱う君も君でなかなかのものだな……」


「え? これってそんなにやばいやつなんでしょうか?」


 この二振りが妖刀とは知っていた。しかし、副会長の反応を見るに、どうやら妖刀以上の価値を持つ刀のようだ。


「そうじゃよ。鬼の里で鍛えた妖刀じゃ。使い手が悪かったらそもそも抜けもせんし、使用者を傷つける。まあ、妾は弟子のことを信じてそれを渡したのだがなガハハ!」


「そ、そんな話初めて聞きましたよ!? というか、そんなやつだったんですかこれ!!」


「うむ! まあお主は実際使いこなしておるしな。妖刀は天職があったとしても必ず使える物ではない。それはお主の才能じゃ。ゆえに誇れ」


 誇れと言われても、こんな危険なものを腰にぶら下げていただなんて今でも信じられない。


「そ、れ、にっ! 今日の勝利はそれだけじゃ得られぬ物じゃ! 妖刀の特性を活かした初見殺し。斬撃を放った直後に、それを追って走り出す胆力と判断力。少し見ぬうちに強くなったな弟子よ」


 師匠はふっと微笑む。普段はおちゃらけているけど、時々見せるこんな笑顔に、俺の心臓はバクバクと心拍数を上げていく。


「ということでご褒美じゃ! ほれほれ〜〜そのまま妾に誘惑されて生徒会に入っても良いぞ〜〜!!」


「うわっ!? いい雰囲気が台無しに……!?」


 師匠が俺の顔を抱きしめて、そのでかいおっぱいに埋める。せ、せっかくいい感じの雰囲気だったのにこんなことある!?!?


「止めてくださいよ副会長!! ちょ、何を笑っているんですか!?」


「いや、何、あの生徒会長がこんなにはしゃぐとは珍しくてな。君は誇るといい。彼女をこんな風に楽しませているのは君だけだろう」


「というわけじゃ! ほれほれ〜〜うりうり〜〜!

 師匠の偉大さに惚れちゃってもいいんじゃぞ!!」


 そんなこんなしていると時間は過ぎていき、結局倉庫の片付けは終わらず、後日師匠は一人で担当することになったらしい。



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