第10話 

「ではこの闘技場でいいだろう」


 俺たちは放課後で人気のない闘技場にやってきていた。


 この学園では生徒同士の実力を測ったり、生徒同士で研鑽するために闘技場が設置されている。


 何もない平地、広さは半径百メートルくらいだろう。俺とマサムネは真ん中で対面する。


「じゃあ参ったと言わせるか、戦闘不能と判断した場合が終わりじゃ。では始めっ!」


 師匠の合図で決闘が始まる。俺は刀に手を添えて前へ。マサムネはバックステップで俺との距離を取る。


 見たところマサムネは剣や槍といった武器を持っていない。かといって弓や銃といった遠距離武器もなさそうだ。


 徒手空拳を得意とするかと思いきや、近接戦闘をしかける俺に対して距離を取った。


 つまり、マサムネは魔法を得意とする魔法型の天職だ!


「魔法型ゆえに近付けば容易と思っているだろう? 甘いな」


「ッ!?」


 マサムネが手をかざすと光が集まっていく。一秒足らずでそれは集まり、マサムネの言葉と共に解き放たれる。


「【穿光せんこう】」


「ッ!?」


 俺はすぐさま抜刀。刃でその魔法を受ける! ……重っ!?


「ほれほれ、そいつは伊達に副会長を名乗っているわけじゃないぞ。さあどうするのじゃ? 妾の可愛い弟子よ」


「私は大したことはないさ。ただ、これくらいで苦戦しているようじゃ、生徒会長の弟子を名乗るには実力不足が過ぎるがな」


「そこまで公に言ってるつもりはありませんけどね……っ!」


 刀でその光線を弾き飛ばす。くそっ! さっきので随分と距離を取られてしまった!


 相手は俺と間合いを取って、自分の有利なポジションにいると思い込んでいるだろう。ならその心理の弱点を突く!


「妖刀、解放っ!」


 刀に魔力を込めて刀に込められた力を解放する!


「何をするのか知らんが……ここは私の間合いだ」


「それはどうですかね!?」


 マサムネが光線を放ち、それとほぼ同じくして俺は刀を振るう。刀から斬撃が解き放たれ、それはマサムネの方に向かって飛んでいく。


「魔力を刃状にして飛ばしているのか! しかし、その程度の魔力なら穿光で……!?」


 次の瞬間、マサムネは明らかに目を見開く。自分の放った光線が、俺の斬撃によって斬り裂かれていくところに。


 魔法は魔力の量によって威力が変化する。より大きな魔力を込めた魔法が打ち勝つのは自然の通り。


 マサムネが言った通り、俺の斬撃よりもマサムネの光線の方が込められている魔力は大きい。しかし、斬撃はマサムネの光線を斬り裂き進んでいる。


 それは何故か。


「その刀による力かっ!」


「正解っ!!」


「ならこれはどうだ! 【光壁こうへき】!!」


 魔力を集めて壁を作る魔法。攻撃ではなく防御に特化した魔法ならとでも思ったのだろう。


 しかし、そんな単純に俺の斬撃は防げない!


「な……にっ!?」


 壁すらも斬り裂き、斬撃はマサムネへと肉薄する。マサムネは全身に魔力を纏わせて防御の構えを取り……斬撃はマサムネを傷つけることなくすり抜けていく。


 一瞬だけ呆気に取られたマサムネの隙をつくように、俺はマサムネの首元に突きを放つ。当たる寸前で止まるようにして。


「勝負ありじゃな」


「……なるほど、君の術中にまんまとハマったわけか。これは私の負けだな」


 俺は納刀する。初見殺しと意表をついた攻撃だったから勝てただけで、これが二度三度と通じることはないだろう。


「おー! よくやったぞ愛弟子!! ほれほれ〜〜! 初見殺しとはいえ、良くぞあの副会長に打ち勝った!!」


「うわっ! やめてください師匠!! 副会長の目の前ですよ!?」


 師匠が抱きついて、俺の顔におっぱいを押し付けながら髪の毛や顔を弄り倒す。


 うわ…….いい匂いと感触で頭がクラクラしてきた。


「なーに! 敗者に口出しはできんじゃろ! なあ?」


「……著しく風紀を乱すような行為だが、確かに口出しはできんな」


 ええ!? 止めてくれないのそこ!?


 てっきり止めてくれるものだと思っていたんだけど!?!?


「まあそういうことじゃ。覚悟しろよ弟子。そらそらうりうり〜〜!」


「や、やめてくれぇ〜〜! 副会長を止めてくださいよっ!!」


「ふふっ……いや、何。こうして見てる分には案外面白いものだな」


「俺の味方いないの!?」


 俺はその後、師匠が飽きるまで全身をいじり倒されるのであった。


 

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