第8話
「さて、今日中にこれを片付けるぞ。覚悟するのじゃ弟子」
「こ、これは……!」
俺は師匠と共に学園の倉庫にやってきていた。
倉庫の中は汚く、色んなものがとにかく整理整頓されずにぶち込まれたみたいな有り様だ。
これを綺麗にするのが生徒会の仕事らしい。
さて、ここで生徒会とは無縁であるはずの俺と、生徒会のトップである師匠、俺たちが生徒会の雑用みたいな仕事に来ているのか。
それは……。
「なんで俺がよりによって鍛錬と言われて、雑用手伝うことになってるんですか? 普通に考えておかしいでしょうに」
「文句を言うな文句を! なあに、しばらくお主と鍛錬しすぎて、副会長に文句を言われてな。この仕事を押し付けられたということじゃ!」
「それって、師匠の怠慢じゃないですか……!」
「ええい! お主のために妾が時間を作って鍛錬を見ているのじゃぞ!? たまにはこれくらいのことをしてもらわんとな!」
「そんな理不尽な……」
というか師匠、俺の鍛錬のために生徒会の仕事あまりやっていないのか。
まあそれだと俺にも少しは非がある。
幸い、そこまで大きい倉庫ではない。本気でやればすぐに終わるだろう。
「倉庫の片付けついでに備品の在庫確認も頼まれていてな。それも付き合ってもらうぞ」
「はいはい。早いところ終わらせましょう」
俺たちは倉庫の中の片付けに取り掛かる。
倉庫の中は混沌としていて、埃っぽい。魔法書や訓練用の武器、果ては魔道具や魔物の素材まで。様々なものが出てくる。
「キマイラの牙……。こんなものをよく放置してたな」
「ああそれは妾が暇つぶしに戦ったやつのじゃな。こんなところにあったのか!」
「ああこれ師匠のやつなんですね。これは……ワイバーンの鱗じゃないですか。それも結構上等な」
「ああ、それも妾が戦ったやつのじゃな。ふむふむ、今度これで武器でも作ってもらおうかの。そこに置いといてくれ」
始めてから数分が経過した頃。
魔物の素材が大量に出てくることに気がつく。それもワイバーンやキマイラ、ギガントなどのBランク以上の強大な魔物の素材ばかり……。
「ねえ、師匠。もしかしてここに放置されている魔物の素材ってほとんど師匠のものなのでは?」
「む……確かにテキトーにぶち込んでいた気がするな。いつか使うじゃろと思ってな。まあ忘れるんじゃがガハハハ!」
「ガハハハじゃありませんよ! 普段から整理整頓をうわっ!?」
「ちょ!? お主こっちにうおっ!?」
倉庫が薄暗いせいか、俺は足元に置いてあった木箱につまづいてしまい、近くにいた師匠のところに向かって転んでしまう。
師匠もそれに巻き込まれるようにして倒れる。
「し、師匠」
「なんじゃ……?」
「こう言うことがあるから日頃の整理整頓しましょうよ」
「う、うむ。確かにこればかりは弟子のいう通りじゃな。……む」
「どうしたんですか師匠? そんな黙りこくって……!?」
俺はその言葉の後、後頭部に当たる柔らかいものに気がつく。
師匠の主張がやたらと激しい二つの球体。それが当たっているのだ。……というかやたらと距離が近いな!?
「あ、師匠。この体勢は失礼だから起き上がって……わっぷ!?」
「なーに、誰も見ておらん誰も見ておらん。少しくらいはええじゃろ、このスケベ弟子めっ!」
「俺のせい!? 元を辿ると師匠でしょう!?」
「しらんな。それに男はこういうのが好きというのは知っておるぞ。これで誘惑して生徒会に入れてしまおうかのぅ」
「それが本音か!!」
アカネといい、師匠といい、俺を引き込むためになんでもするその必死さはなんなんだ!?
「師匠との約束を果たすまで、俺はどこの組織にも所属しないって決めてるんですよ!? それを……うわっ!?」
「それとこれは別物じゃ。それに妾は、妾を超えて対等になってくれと言っただけで、どこの組織にも入るなとは言っておらんじゃろ。まあ、勇者パーティーに入るのは許さんがな」
俺と師匠の約束。
それはいつしか師匠を超えて、師匠と対等以上の存在になること。
その約束を果たすことで免許皆伝。師弟関係は終わり、俺は勇者パーティーに入ることができるということだ。
「ふふん、それは師匠特権じゃな。師匠と常におった方が弟子のレベルアップに大きく貢献できるじゃろ! 違うか?」
「少し理に適っているかもしれませんが、その発言、アカネと大差ないですよ」
「む……。あの勇者と大差ないというのは困るな。じゃがな、妾の方が弟子に対する愛が重いということを証明すればいいじゃろっ!」
「愛って何!? おっぱい押し付けることが愛なんですか!?」
「うるさいっ! 妾もどうすればわからんのじゃ察しろ!!」
「そんな無茶な!?」
むっっっぎゅ〜〜〜とおっぱいを押し付けられる。ああいい匂いがしてきた……ってそんなこと考えている暇じゃねえ!!
こんなところ誰かに見られたら、事が事だ! 早く抜け出さなくては……!!
「失礼する会長。進捗を見にきた……これは?」
「…………あ」
それはどちらの声だっただろうか。倉庫の扉が開かれて長身のイケメン男子生徒が入ってくる。
彼はマサムネ。生徒会の副会長にして、生徒達からは鬼の右腕と恐れられている超堅物だ。
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