第6話
「がんばれーアオイっ! ファイトだアオイっ! 負けたら勇者パーティーに入ってもらうからね!」
「めちゃくちゃだな!?」
俺はギガントに走って接近しつつ、腰の刀を抜刀する。
アカネは俺を応援するだけで手を出すつもりはなさそうだ。ここで不甲斐ない戦いを見せたら、アカネは勇者パーティーへの勧誘はさらに強くなるだろう。
師匠との約束を果たすまで、どこにも所属しない。その禁に賭けて、ここでは不甲斐ない戦いはできない……!
「おい、無能が来るんじゃねえ! お前に何ができる!?」
「はんっ! 無能が突っ込んでやがる! 無謀と勇気を履き違えたか!」
「おいおい、お前じゃギガントに傷一つ……え?」
「鬼刃流居合術、抜刀」
俺はヤジを飛ばしてくる他の生徒達を無視して、跳び上がりギガントの腕を斬り飛ばす。左腕の肘から先を失ったギガントは血を撒き散らしながら叫んだ。
『グオオオオオ!?!?』
「なっ!? あれは生徒会長の剣技じゃないか!? なんであんな無能が使えるんだ!」
「そ、それもギガントの腕を斬ったぞ!? 天職なしの無能にできるはずがねえ!!」
「どんなカラクリを使ったんだ!?」
「別に、走って斬っただけだ」
天職があれば、その道のプロフェッショナルになれる。これは周知の事実だ。
しかし、同時に師匠は言っていた。
その天職による才能は、努力によって覆すことができると。
『グオオオオオ!!』
ギガントが巨大な拳を俺へと振り下ろす。
強大な攻撃を正面から受けられるとは思っていない。俺は拳を素早くかわし、ギガントの手首を斬り飛ばす。
「おおっ! すごいよアオイ! ただ生徒会長の剣技ばかり使っていること以外を除けば!!」
「応援してるのかしていないのかどっちなんだそれは!?」
「べっつにぃ〜〜! 私は応援しようとしてるよ。ただ、あまり生徒会長の剣技ばかり見せられても気に食わないだけだもん! ちょっとくらい私の剣技を真似してくれてもいいのにさ!」
アカネは顔をそっぽに向けてしまう。
……もしかして嫉妬なのか? 嫉妬であんなことを言っているのか!?
女の嫉妬というのはいまいちよくわからないが仕方ない。
「師匠の剣技の方が……俺好みなんだよっ!」
「それって、私よりも生徒会長の方がいいってことぉ!? これは勇者パーティーに入ったら説教モノだよ!?」
「なんで入る前提で話進めてるんだ!? 仕方ないから……少しだけ懐かしい剣技を使うか」
俺は一刀を鞘に納めて、一本の刀を両手で構える。
師匠と出会うまでは一本の剣を使った戦い方だった。アカネと一緒に訓練したのもこの一刀流だ。
かつて僕らは色んな剣技を作っては名前をつけていた。いつの日か流派を作るために。
アカネの剣技はその昔の剣技を磨き上げた物だ。アカネの剣技は良くも悪くも昔から何も変わっていない。
「アカネほどのスペックはないから、やるとしたら一瞬……!」
アカネは大量の魔力でゴリ押す。それは勇者の天職を持つ彼女だからできる芸当であって、天職を持たない俺にはできないやり方だ。
だから一瞬。魔力による斬撃の強化を一瞬にすることで、アカネの剣技を再現する。
「確か名前は……
刀を頭の上、大上段で構えて一閃。
ギガントを縦に真っ二つにする。アカネなら魔力で消し炭にできるだろうが、俺がやると精々斬るのがやっとだ。
「……おおっ! おおおお、覚えてたの!? それ!?」
「忘れるわけないだろうアカネ。あれは二人で作った剣技なんだから」
アカネは驚いたような、少し興奮が混ざった声でそう言いながら俺へと駆け寄る。
そして、俺の答えを聞いて目を丸くした後、アカネは言葉を続ける。
「いや、で、でも! アオイは生徒会長に剣を教えてもらっているんじゃ……!」
「ああ、教えてもらっている。師匠に教えを乞うている理由は沢山あるが、そのうちの一つにこの剣技を完成させることも含まれている」
師匠から剣技を教えてもらうことで、この我流の剣技をより実戦的な物に仕上げる。
これは数ある俺の目標の一つだ。師匠の剣技は歴史もある立派な流派だ。その流派を取り込むことでより高次な我流の流派が作れるんじゃないかと思っていた。
「ふ、ふーん……。私のこと忘れたわけじゃないなら、もっとそう言ってくれればいいのに」
「……ごめん。何を言ったのか聞こえなかった。もう少し声を大きくしてくれないか?」
アカネは指をモジモジといじりながら小さな声でそう口にする。
「別にっ! なんでもないっ! それよりもやるじゃんアオイ、これなら私の勇者パーティーに即戦力として……」
「入らないからな。それにまだこれくらいじゃ、アカネにすぐ置いていかれてしまうからな」
「ふぇ……? いやいや、Bランクの魔物だよ? それをほぼ一方的に倒せれば十分でしょ」
「アカネや師匠はもっと強い奴らと戦える。俺にそれができる保証はない。だから、まだまだ一人で鍛錬すべきだと俺は思っているんだ」
これくらいで満足していたらまだまだだろう。これくらいの相手なら師匠は初手で終わらせていた。俺もそれくらいにならなきゃ、勇者パーティーの一員を名乗ることなんてできない。
「別に強くなればいいからさっ! だから入ろうよ勇者パーティー! いいところだよ!」
「ダメだ。俺は入らないからな!」
「ぶーぶー!! アオイのけちんぼ!!」
「なんとでもいえ。さあ授業に戻るぞ」
俺とアカネはそう言い争いながら、授業に戻る。そして数十分後、森林訓練は終わり、今日の成績発表のために、俺達はシドウ先生のところに集まるのであった。
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