【3-24】やる事が多いゲームは苦痛に感じる世代






「ほんじゃ、いってらっしゃい」

「おう! 今回は必ず踏破して見せるぜ!」


 ダンジョンに入っていくタゴナ達を見送った俺は一息ついた後、成長馬車の状態確認を行う。


 道中の移動は全く問題なかったが、バドス馬車を運行していた時と比べて感じる振動が大きくなっていた事が気になっていた。


 恐らくこれは馬車の性能、緩衝性の項目が影響しているのだろう。その項目を上げればサスペンションの性能でも上がるのか、振動は抑えられそうな気がする。


「うわ、嘘だろ……? 車輪にヒビ入ってんぞ……」

「どうやら速度を出し過ぎたようですね」


「結構抑えたつもりだったんだけどなぁ……」

「馬車の耐久性アップは急務かと」


「だよなぁ、この馬車の一番の売りだし。速さは重要だよな」

「速い馬車は好まれ、早い男は嫌われます」


 まずは緩衝性に耐久性アップが優先か。防音や断熱は後回し、座席や装備の追加なんてまだまだ先になるな。


 となれば何より、成長馬車素材を稼がなくてはならない。ゲームらしく魔物との戦闘で稼げる素材、今のような空き時間に行うにはもってこいのバトルシステムがある。



「よし、護衛をたくさん召喚して……放置バトル、スタートだ!」


 ゾロゾロと呼んだ護衛達が放置バトル会場へと向かっていった。俺はこの馬車付近で放置していればいいだけ、あとは護衛達が勝手に稼いでくれる。


 まぁここの森には強い魔物はいないから、稼げる素材量はたかが知れているだろうが、やらないよりはいいだろう。


「あとは……おぉ、馬車レベルが上がってるぞ、3になってる」


 まぁ上がっても馬車自体が強くなる訳ではなく、座席の追加や上等な装備を追加できるようになる、そういう意味でのレベルアップだが。


 解放された装備アイテムなどを見ながら時間を潰す。


 タゴナ達がダンジョンを踏破して出てくる時間の目安は六時間ほど。一度王都に戻るのは微妙な時間だし、待っていた方がいいだろう。


「暇ですね」

「そうだな。辺りの魔物は放置バトル会場に吸い寄せられてんだろうし……大型車窓、欲しいなぁ……おぉ、天窓ってのもある……星空見えるのかなぁ」


「まるで放置プレイですね」

「知らねぇよ、大人しく待っとけ……すげぇ、蛇口があるぞ……鏡に洗面台……個室便所は女性が喜びそうだよなぁ……」


「女性が喜ぶものなら、クロエにも意見があります」

「……いい、なんか変なこと言いそうだし」


 あと六時間もこの痴女と二人きりだという事を忘れていた。下手に会話をすると下ネタで返されるし、次はステータスや現在の状況などを確認しながら時間を潰そう。


 まずはクエスト。今発生しているのはメインクエストとサブクエストが一つずつ。メインクエストは今回の護衛馬車運行でクリアーされると睨んでいる。


 もう一つがエカテリーナのサブクエスト。こちらは期限が残り数日しかないが、エルフ酒を手に入れる目途は立っているので明日にでも向かうつもりだ。


 次はステータスとギフト。ここらで一度整理をしておこうか。



【名前――――ヨルヤ・ゴノウエ】

【職業――――御者】

【状態――――普通】

【名声――――35】


【STp――――40】


【LV――――42】

【HP――――120】

【GP――――150】


【STR――――62】

【VIT――――40】

【AGI――――40】

【INT――――12】

【LUK――――10】



 現在、ステ振りについてお悩み中。黙ってGPを上げておけばいいのか、護衛達の強化のために他のステータスに振っておくべきなのか。


 厄災なんて化け物が現れたのだし、護衛達の能力アップは急務であるのだが、御者としてもGPを使用するので悩ましい。


 それと名声という項目だが、どうやら認知度に近いものらしい。クエストが発生しやすくなったり、一定の名声ポイントがないと発生しないクエストもあるそうな。



【GIp――――140】→【GIp――――40】


【ジョブギフト】

【御者Lv5】


【スキルギフト】

【護衛召喚LvMAX】【眠々打破Lv1】【馬車結界Lv1】

【従馬召喚Lv2】140→120【従馬召喚Lv3】120→95【従馬召喚Lv4】


【ユニークギフト】

【守護者召喚Lv1】95→40【守護者召喚Lv2】


【オリジナルギフト】

【ゲーム化LvMAX】【カスタマーサポートLvMAX】



 ダンジョンクリア―などで手に入れたギフトポイントがあったので、ついでに従馬召喚と守護者召喚のレベルを上げておいた。


 今更だが、ダンジョンは結構いいギフトポイントの稼ぎ場なのかもしれない。初級ダンジョンで30、中級で50も貰えるのだから。


 時間があれば積極的に攻略していこうか。中級程度であればクロエだけでも踏破できるという事が分かったからな。


 さてお次はヒロイン様の好感度一覧だ。俺ももう25歳、商売が軌道に乗ったのなら彼女だってほしいし、結婚願望だってない訳ではない。



【ヒロインリスト】


【好感度・HEp】


【イネッサ・ランバドール・ウルディア――――28・10】

【ヴェラ・ルーシー――――52・90】

【エカテリーナ・リドル・フェルエンド――――40・40】

【ラリーザ・イシルス――――58・20】



 好感度の数値はこうなっていた。正直な所、この数値はコロコロ変動するのでなんとも言えない。先日のトリプルデート選択で大幅に下がった数値は、デート終わりにはほぼ元に戻っていた。


 選択肢以外でも彼女たちの好感度は増減する。そりゃ彼女たちはデータじゃないから、そうなってしまうのは当然なのだが。


 何を言いたいのかというと、選択肢に成功してもその後の言動で好感度だだ下がり……なんていう事もあり得るのだ。


 まぁ俺にぴったりなヒロインをギフトが選んでくれて、好感度上昇ポイントを教えてくれる恋愛ゲームとしてくれているのだから、文句なんてありしない。


 あとはヒロインポイントを貯めて、イベントを起こせばもっと仲良くなれると思うのだが、これが中々に難しい。


 一日に一度の選択肢恋愛イベントは極力行っているが、獲得ポイントはたかが知れている上に失敗もあるから中々貯まっていかないんだよなぁ。



「というか考える事が多くて疲れる……ゲームって忙しいんだな、現実の方がのんびりしてるぞ……」

「ゲームの利点は、やらなくてもいい……という事ではないでしょうか? 現実にはやらなければならない事が沢山あります」


「なんだよそれ……ゲームの利点は面白さ、楽しさだろ? やらなくてもいいって言うけど、一部がゲーム化している俺はどうなるんだよ?」

「ゲームをやらなくてはいけない、という事ではないでしょうか?」


 強制されるゲームプレイほど苦痛なものはない。


 ゲーム化ギフトによって与えられている恩恵は非常に大きいが、基本的には己の努力が必要だ。


「はぁ、ゲームというならチートギフトが欲しいよな」

「十分にチートだと思います。成長馬車や護衛の召喚など、他にはない力ですよ?」


「そりゃこの世界ではそうなのかもしれないけど……成長馬車を引っ提げて他の物語に行ってみろよ、鼻で笑われるわ」

「この物語、ジャンルで言えばスローライフですからね」


「いや、それは感じた事ねぇな……」


 そんな微妙に深いようで浅い話をしながら、タゴナ達のダンジョン踏破を待った。

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