【3-8】コマンドバトルの醍醐味
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【6日目――――ショップ引換券セット(N、R、SR)】
この表示が出た日、そういえばストーリークリアーで引換券を貰った事を思い出した。
内容を確認してみると、なんてことはない。ショップに売っている物と文字通り引き換えできるようだ。
【ショップ引換券(SR)――――100万SHp分、ショップから購入できる】
現金で100万もらった事と変わらない。そう考えれば凄い事だが、色々と制限はあるようだ。
例えば引換券(SR)が二枚あっても、200万の商品が購入できる訳ではない。
あくまで単独消費、100万以内でお買い物をお楽しみくださいという事。クーポンの重複消費はできませんってアレだな。
あとはもちろんお釣りなんてない。100SHpの商品を買っても99万9千……なんてお釣りが来る事はない。
まぁそれはいい、黙って現金をくれとも言わない。問題は引換券(R)があれば今回の物資調達が全て賄えたということ……ぴえんである。
まぁそんな話もあったのだが、一先ず準備を終えた俺はヴェラのクエストを進める事にした訳だ。
「あ~、この馬ほんといいわね、欲しいわ」
「おい! その子にもちゃんと体力があるんだからあまり……って聞いてねぇな」
もの凄いスピードで遠ざかって行ったヴェラ・ルーシー。俺が召喚した従馬に乗り、縦横無尽に辺りを走り回っている。
俺達は現在、ベッチホストと呼ばれる北方の地方都市に向かっている。その都市の近くには中級とされているダンジョンが二つもあるのだ。
今回は二つともに攻略する予定である。
俺は踏破メダルを手に入れて売るために、ヴェラは冒険者の等級を上げるために……まぁヴェラもメインは売って金を稼ぐ事だろうが。
「ヨルヤ、大変です。馬が走る度に振動が……んっ」
「くっ……分かっているのに見てしまう……情けないっ!」
暴走冒険者に変態守護者。女性二人を連れた両手に花状態なのに、なぜかちっとも嬉しくない。
とはいえあまり強くは言えない。魔物の襲撃はまだないが、それが起こったら俺は彼女達に頼るしかないのだから。
そう思ってしまったからだろうか? 早速俺は、両手の花達に頼らなくてはならない状況になってしまう。
「ヨルヤ、ちょっと体を動かしたいわ……だからアレ、行きましょ」
「あれって……げっ!?」
ヴェラが近づいてきて、体を動かしたいとか言ってきた。
ヴェラの視線の先に目を向けると、そこにはクマのようなデケぇ化け物がいて、涎を垂らしながらこっちを見ていた。
まさか行くって、あの化け物と戦うとか言うんじゃないだろうな? 俺達の倍くらいデカいぞ。
「……戦うのか? あれと」
「そうよ? デッドリーベアの素材は高く売れるし、一石二鳥だわ」
あんな強そうな魔物と戦うだと? もう何人も食い殺してそうな凶悪な顔に、飢えてますといったような荒い息遣い、雰囲気はまさにデッドリー。
確かに今回、ヴェラは俺の護衛ではない。この旅のリーダーはヴェラであり、指示には従おうと思うが……忘れてないよな? 俺、ただの御者だぞ?
なぜスルー出来る魔物のわざわざ……と思っている内に、ヴェラは馬を降りてクマに向かって行ってしまった。
「ほんと猪突猛進女子だな! クロエ、行くぞ!」
「はい、イキます」
なんか微妙にイントネーションが違ったような気がしたが、指摘している余裕はない。
ヴェラは自信満々に向かって行ったし大丈夫だとは思うが、万が一がある。
俺はクロエを引きつれヴェラの後を追いかけた。
『バトルシステムを選択してください』
【ターン制コマンドバトル――――選択可】
【リアルタイムアクションバトル――――選択可】
【タワーディフェンスバトル――――選択不可】
【カードバトル――――選択不可】
【放置バトル――――選択不可】
あれ? ターン制コマンドバトルが選択可能なんだが、ヴェラがいるのになぜだ?
もしかしてヴェラはパーティーの一員という事になっているのだろうか? 明確にパーティーを組んだ訳ではないが、確かに今回は一応パーティーとして行動している。
……まぁいいか、別に困る事はない。ここはいつも通りリアルタイム……いや待てよ?
『ターン制コマンドバトルで戦闘を開始します』
【さくせん】→【めいれいさせてよ!】
【たたかう】→【ヨルヤ】
【ヴェラ】
【クロエ】
おぉ! 出来るぞ! 命令できる! なんて面白……凄いシステムなんだ!
今ヴェラがどんな風に感じているのかは表情からは読み取れないが、槍を構え真剣な表情のままクマと対峙して静止している。
クロエの様子も同じだ。弓を構えたまま鋭い目でクマを睨んでいるが、全く動く気配がない。
傍から見れば、いやお前ら何やってんの? なんで睨み合ったまま動かないの? といった状況だ。
いやすげぇ。まさかヴェラの行動をコマンド操作できるとは……なんかエロい操作とかないかなぁ……ないわな。
【たたかう】→【ヴェラ】→【こうげき】
【とくぎ】
【まほう】
【ぼうぎょ】
「うほほほっ! すげぇ! ヴェラの特技すげぇ! いっぱいある!」
色々と所持しているようだが、これはスキルギフトなのだろうか? 魔法も確認してみたが、初級魔法のようなのしかなさそうだ。
魔法を使えるだけ凄いが……ウケる、こいつ脳筋じゃん。
なにか強そうな特技……これとか凄そうだな? これにしよう。この数字はなんだろう……? 消費ポイントか? それにしては少ないが。
お次はクロエだ……こいつもすげぇ!? これが戦闘職というやつなのか!
しかも魔法の中に精霊召喚ってのがあるぞ。流石はエルフ、クロエはこれだ、精霊を見てみたい。
【ヴェラ】→【とくぎ】→【金獅子奮迅】
【クロエ】→【まほう】→【精霊召喚】
【ヨルヤ】→【ぼうぎょ】
よし、これでよし、バトルスタートだ。
仲間が増えた時のコマンド操作ってワクワクするよな。少ししたら面倒になって適当になるけど。
【ヴェラの金獅子奮迅!】
【ヴェラの瞳が金色に輝き出す! ヴェラは槍を両手で構え、荒れ狂った金獅子の如き勢いで突撃する!】
【デッドリーベアに1209のダメージ!】
【デッドリーベアをやっつけた!】
「ひっ……ひぃぃぃっ!?!?」
な、なんだその攻撃力、そしてなんだ今の黄金の爆発は!? 武器は槍なのに、槍を突いただけなのに、なぜクマが爆発するのだ!?
こいつ、こんなに強かったのか……? ダメージがいきなりインフレしやがった、数字ダメージは心臓に良くない。
戦闘終了のファンファーレと経験値獲得の表示が出ているが、それどころではない。
俺は今、命の危険を感じている。脳筋なんて言ってごめんなさい。
ダメージ1200って……万が一あの技を俺がくらえば、当たり前のように即死……?
「……あら? やりすぎちゃったかしら。ごめんヨルヤ、素材が吹っ飛んじゃったわ」
「あ……あぁいえいえ! いいのです! 何の問題もございません!」
「なによ急に? どうしたのよ?」
「いやいや! それよりお疲れではないですか? お肩、お揉みしましょうか?」
「だ、だからなんなのよ……まぁ、揉んでくれるって言うならお願いするけど」
俺は急いでヴェラの背後に回り、彼女の肩を揉みほぐした。めっちゃ柔らかい……柔らかいのに、あの攻撃力はどっから出てくるんだ?
それに、なんだか反応が普通だな? ゲーム化ギフトでヴェラの行動を強制したってのに、それについての言及がない。
「な、なぁヴェラ……さっきの戦闘、どうだった?」
「どうって……んっ……なに、がぁっ?」
「エロ……じゃなくて! さっきの戦闘さ、俺の指示に従っただろ?」
「はぁ? なに言ってるの? なんで戦闘素人の指示に従わなきゃならないのよ?」
どういう事だろう? 指示というかコマンド選択だけど、俺の影響であの特技を使用したはずだ。
そもそも俺がコマンド入力を終えるまで待っていたじゃないか。明らかに不自然な待機時間があったはずだが、それすらもヴェラは変に感じていないようだ。
「じゃあなんであんな凶悪な特技を使ったんだよ?」
「特技ってなによ、あれはあたしのユニークギフトよ? なんでって聞かれると、ストレスを発散したかったから?」
「……あっそう。じゃあギフトを使う前の睨み合いはなんだ?」
「なにって、間合いとかタイミングを図ってたんじゃない。あいつは無策に突っ込んでいい相手じゃないわ」
「……あっそう。じゃああくまで自分の意志で動いていたと?」
「だから当たり前でしょ? まぁ日に数回しか使えない大技を使うべきではなかったわね」
ギフトの使用は回数制、確か日の恩寵とかいうやつだよな。ギフトを選択する時の数字は消費ポイントじゃなくて、使用回数の数字だったのか。
いやしかし、強制的に動いていると感じているのはギフト使用者の俺だけのようだ。
オリジナルギフトであるゲーム化、その力の一部であるバトルゲーム化。
影響者の行動を強制するどころか、思考すらも不自然に思わないように強制されると。
ほんと今更だが、ヤバくないかこのギフト。まぁ神の監視付きだから、変な事は出来ないようにはなっているのだろうけど。
「それより暗くなってきたわね。少し早いけど野営にする? 夜中に着いても入場手続きが面倒だし」
「あぁ、そうだな……クロエもいいよな?」
「はい」
「じゃあもう少し進んだ所に良さ気な野営地があるわ、行きましょ」
戦闘を終えた俺達は野営地へと移動する。ベッチホストへの到着は明日の朝になるだろうが、それでも随分と早いだろう。
野営時には護衛を数体召喚し、辺りの警戒及び炊事などを行わせた。
ヴェラもクロエも料理は苦手な様子、召喚した男護衛の方が料理上手ってどうなのよ?
今回の旅のために買い込んだ食料を盛大に消費していくヴェラ。文句を言われるかと思って野営セットはNではなくRの高級品を購入した。
「このテント、五人くらい寝れそうだけど……まさかアンタも一緒とか言わないわよね?」
「俺にどこで寝ろってんだよ……真ん中にクロエを挟めば問題ないだろ?」
「(ヨルヤ、他にクロエに挟んで欲しいモノはありますか?)」
「(いいから、ちょっと黙ってて)」
「問題あるけど……まぁいいわ。へ、変な事したら叩き出すからねっ!」
「そんな事をする前にクロエがアナタを叩き出します」
「あぁん? なんですって? やるって言うの?」
「ヨルヤに危害を加えると言うのなら排除します」
「喧嘩すんなよ……もう寝るぞ」
「はい。ではヨルヤ、腕枕をいたします」
「……そういうのは普通、男の俺がするもんじゃないのか?」
「いけません。クロエに腕枕をしたら、ヨルヤの腕が壊死してしまいます」
「お前の頭そんなに重いのかよ……」
「それにこれは、ヨルヤの頭を守護する為です」
「俺の頭は何に狙われてんだよ……」
「もううっさいわね! 早く寝なさいよ!」
こうして、きゃははうふふな夜は過ぎ去っていった。
「(ヨルヤ、もう寝ましたか?)」
「(…………)」
「(寝たのですか?)」
「(…………)」
「(……放置プレイですか?)」
「(いいから、もう寝てくんない?)」
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