【3-3】うわっ……私の守護者、痴女すぎ……?




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【4日目――――GP回復材(R)】


 4日目ショボ……なんて事を思い出したキャラクリが終了したその日。


 朝も早くから従馬に跨り王都の外へとやって来ていた俺は、いつもの森へとやって来ていた。


 聞いた話だとこの森にはダンジョンが一つあるが、現れる魔物は弱いものばかりでなので初心者の冒険者や傭兵がよく訪れるらしい。


 そんな穏やかな森の中で行う事は、もちろん守護者を召喚する事である。



「あ~流石にねみぃ、まずは眠々打破……よし。そしていよいよ守護者召喚……来い、クロエ!」


 守護者召喚を念じると、護衛召喚を行った時と同じような靄が地面から立ち上ってきたが、その靄の色は黒ではなく赤かった。


 真っ赤な靄が徐々に人型を形作っていき、数秒後には俺がキャラクリで作成した者と全く同じ容姿をした、守護者クロエが出来上がった。


「おぉっ! あの時のSSR護衛と全く同じ……いやそれ以上だな!」


 以前護衛として召喚した事のある、ランダム生成SSRの黒髪エルフ。


 あまりの美しさのためシッカリと記憶していた、あの黒髪貧乳エルフである。


 本来は難しいキャラクリだが、念じるだけで数値が変わり念じた通りの顔になっていくので、簡単だったと言えば簡単だった。


 黒髪のエルフだから名前はクロエに。キリっとした目に抜群のスタイル、そして巨乳。


 何時間もかけて作った甲斐があった。まぁ一部俺の好みが入っているが、キャラクリとは自分の好みや性癖を反映するものだからな、うん。



「俺はランダムの奇跡を再現して見せたぞ! がっはっはっは!」

「――――きも」


「……ん? ヴェラ? いまヴェラのような声が……」


 態とらしく出した大笑い声に混じった女性の声。キモいと聞こえたような気がした。


 辺りを見回してみるが、ヴェラの姿はない。いるのは俺が召喚した守護者だけ……なんだろう、気のせいか?


 しかしまさかと思うが、この子が言ったのかと思い様子を窺ってみる。


 いやいやそんな訳がない。この子は俺の好みが反映されている性癖ぶっ刺さり設定。


 キモいなんて言葉は発しないはず。そんなのヴェラだけで間に合っている。



「……なぁクロエ」

「なんでしょうか? ヨルヤ」


「おぉ会話できる! あ~そのさ? 頭、撫でていいかな?」

「いいに決まっていますが、そういう事をいちいち聞くからヨルヤは童貞なんですよ。クロエで卒業いたしますか?」


「…………」

「なんですかその目は? その目だけで妊娠してしてしまいそうです。しかしクロエを妊娠させるならそのご立派な一本槍でお願いします」


 ……え、なんなのこの痴女は。


 俺、こんなん作った記憶ないんだけど。もしかして俺、酔っぱらってやっちまったか?


 まぁ一人称を名前に設定したのは覚えている。可愛いかと思ったのだが……ちょっと違ったかもしれん。


 いやしかしそんな事は些細な事。もっと大きな問題が発生している。


 めっちゃ表情豊かだし、めっちゃ可愛いしめっちゃ美人なんだけど……なんでその綺麗な顔をしてそんな事を言うの?


 黙っていれば綺麗でカッコいい黒髪エルフなのに、口を開くと痴女エルフになる。


 いや嘘だ、俺は信じんぞ!



「ヨルヤ、そんなに見つめられると濡れちゃいます……もっと見て下さい」


「…………(カスタマーサポート)」


【ユーザーネーム――――ヨルヤ・ゴノウエ】

【件名――――俺の守護者が18禁で痴女な件】

【お問い合わせ内容――――守護者召喚のキャラクリですが、内容を編集する事は可能ですか?】



【お問い合わせありがとうございます。お問い合わせについてですが、一度作成を完了した守護者の編集は行えません】


【なんとかなりませんか? 俺、クーデレエルフを作りたかったんですけど……】


【作成した守護者をテンプレートに保存したのち、新規作成を行いテンプレートの読み込みを行う事で編集が可能になります】



 どうやら性格などの変更を行うには、一度作った守護者を削除しなければならないらしい。


 削除か……いくら人間じゃないとはいえ、削除はな。


 護衛とは違い会話ができ、意思の疎通を図れるとなればもう人間と変わらない。


 削除して全く同じ容姿の守護者を作り直しても、いま目の前にいる痴女エルフは消えるんだ。


 間違ったのだとしても、俺が作った守護者に変わりない。少しくらい自分に合わない性格だったからって、消すのは酷すぎるか。



「……なぁクロエ」

「なんでしょうか? ヨルヤ」


「もうちょっとさ、なんて言えばいいか……15禁くらいでいかないか?」

「畏まりました、アオハルですね。アオハルといえば女子のリコーダー……おや? ここにクロエが舐めまわした短剣が……お舐めになりますか?」


「お舐めにならねェよ! もうなんなのお前!? 少しくらいってレベルじゃねぇぞ!?」


 痴女というかただの変態じゃねぇかよ。どっから地球の知識を……と思ったが恐らく俺からだろう。


 だがしかし、全く情は湧いていないが削除する事は出来なかった。


 もう少し様子を見てみようと思った俺は、クロエを引き連れて森の奥へと向かう。


 クロエの戦闘能力を確認する為だったのだが、彼女は何か勘違いしているようだった。


「ヨルヤ、危ないですので私から離れないで下さい」

「おぉ、急に守護者っぽいのな」


「こんな森の奥深くまで連れ込んで……クロエは一体、どんな格好をさせられどんな棒を奥深くまで入れられるのでしょうか?」

「お前もう黙っとけよ……」


 まぁでも、楽しくない……って言ったら嘘になるけどさ。




 ――――





「俺の守護者が強すぎる件」


 いやまさしく圧倒的であった。


 ここがいくら初心者の森だと言っても、ホブゴブリンに囲まれても涼しい顔で即殺するのだから。


 クロエの職業は射手、アーチャーだ。武器はもちろん弓矢、そして近接用に二本の短剣を腰に携えている。


 魔物を発見すると即座に靄から弓を生み出し、俺が気づいた頃には魔物の眉間が撃ち抜かれていた。


 アーチャーの弱点である矢切れが彼女にはない。靄で生成された矢は強力で、ホブゴブリンですら一射で頭部を爆散させている。


 そしてなんと、護衛では見られなかった行動を彼女は取っていた。



一射即殺エル・シット……領域細断エル・レッダ


 クロエはスキルギフトを使用して魔物を屠る事があった。


 その威力は絶大で、ただ矢を射る事や短剣で斬りつける事とは比べ物にならないほどの効果を出している。


 木漏れ日の中、弓を構える彼女はまさに森のエルフ。美しく神秘的な彼女の存在感は圧倒的だった。


 そんな彼女は魔物を倒すと小走りで駆け寄って来る。息切れ一つしていない彼女は真面目な顔で、俺に話しかけてきた。


「見て下さい、こんなに体液を掛けられて……

クロエ、汚されちゃいました」

「……ただの返り血だ、綺麗にしなさい」


「ヨルヤにぶっ掛けられる体液なら歓迎――――」

「――――いいから! 早く綺麗にしなさいっ!」


 いやどこが美しくて神秘的なエルフなんだよ!? ただエロくて卑猥なエルフじゃないか! いや美しいは美しいんだけど、それがなんか逆に嫌!


 そんなエロフは返り血が付いた箇所を確認し、靄で包み込むと何事もなかったかのように元通りとなった。


 ほんと便利な体である。後はもう少しお淑やかになってくれれば言う事なしなのだが。



「ったく、こんな調子じゃ人前に出せな……ん? あれは……」


 クロエが倒した魔物から魔石を回収している間に、辺りを見渡していると洞窟のような場所を見つけた。


 しかしただの天然洞窟ではない。洞窟の入口は整備され、明らかに人が作ったであろうテーブルが近くに設置されていた。


 そのテーブルに近づくと、台帳のような物が置かれている事に気が付いた。


「ダンジョン……入退場管理表……? ここ、ダンジョンなのか」


 どうやらこの洞窟はダンジョンで、この台帳はダンジョンに入った者を管理しているものらしい。


 入場と退場の記録がされている。上の方に目を進めていくと、タゴナの青銅級パーティーの入場と退場の記録もあった。


「しっかりしてんなぁ。え~と……今は誰も入ってないみたいだな」


 最後に記載されていたのは退場記録。つまりこのダンジョンには今、誰も入っていないという事になる。


 確かここは初級ダンジョンのはず。この森に巣くう魔物の強さや、タゴナ達が問題なく帰還したという事もあり難易度はかなり低いだろう。



「行ってみるか……お~い、クロエ~!」

「はい、なんでしょうか? ヨルヤ」


「これからダンジョンに潜るよ。準備はいいか?」

「はい、クロエは問題ございません。ヨルヤ、クロエに潜る準備は大丈夫ですか?」


「お前はダンジョンか何かなのかよ……」

「避妊具の準備は? あとスライムローションがあれば捗るかと」


「いや、いらないよね? ここダンジョンだぞ? どこと勘違いしてんだよ」

「なるほど、つまりなm————」


「――――いや言わせねぇよ!?」


 ほんと疲れる守護者だ。まぁこんなんでも戦闘に関しては頼りになるので、そこの信頼はあるのだが……護衛も召喚しておくか。


 護衛召喚で護衛を一体召喚する。大剣を担いだ厳つい大男が生成されたが、こちらは変わらずの無口である。


 守護者と護衛の関係性ってどうなってるんだろう? 上司と部下みたいな……と思って二人を見ていたのだが、特にクロエは反応を示さなかった。


「じゃあ大剣は俺の護衛で、魔物の排除はクロエに任せるよ」


「畏まりました」

「――――」


 管理表に入場記録を記載し、守護者と護衛を引き連れてダンジョンに足を踏み入れた。


 入った瞬間、不思議な浮遊感が体を包み込む。一瞬だけ目の前が暗転したが、ダンジョン内の光景には特に変化はなかった。



『ダンジョン攻略を開始します』


【ダンジョン名――――ミベールの洞穴】

【ダンジョン難易度――――初級】

【ダンジョンタイプ――――ノーマルダンジョン】

【ダンジョン特異性――――通常】


 う~ん、やっぱり色々なダンジョンがあるっぽいな。


 とりあえずこのダンジョンはドノーマル。特に問題なく踏破できるとは思うが。




――――――――――――――――

お読み頂き、ありがとうございます


小説家になろうにも投稿してあります

そちらには生成AIの簡単な挿し絵もありますので、宜しくお願い致します

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