【1ー17】うわっ……私の護衛、強すぎ……?
【たたかう】
【さくせん】
【とうそう】
前回と同じようなコマンドが表示され、戦いの火蓋が切って落とされた。
前回とは違い作戦も逃走も選択できるようだが、逃げるつもりは全くない。それもこれも、強そうな体躯と凶悪な見た目の武器を所持している護衛のお陰だが。
ゴブリン達とスライムは俺達から少し離れた位置で停止した。肩が上下しているゴブリンに、ブヨブヨと蠢くスライムだがこちらに向かって来る気配はない。
「相変わらずのシステム奴隷。それならまずは……」
【さくせん】
【ガンガンいこうよ!】
【いのちはだいじよ!】
【めいれいさせてよ!】
【おれにまかせてよ!】
【かってにやってよ!】
「……これ、作戦っていうのか?」
どこかで見た様な気もするが、凡そ作戦とは呼べないものが表示された。
恐らくはただの行動指針。何も考えずにガンガンいくのか、命を最優先に行動するのか、勝手にやってくれと味方に自由行動させるのか。
俺に任せろはない、それだけはない。戦闘に対する知識などないので命令も出来ない。基本的にはガンガンか命か勝手にどうぞか。
【さくせん】→【かってにやってよ!】
まぁ、これでいいか。勝手にやれという事は、状況に応じて臨機応変に動いてくれという事だし。
間違いなく俺の命令より優秀な動きを取るだろう。護衛には自由に戦闘を行ってもらって、俺は自分の身の安全だけを考えよう。
【たたかう】→【ぼうぎょ】
自分の行動は防御を選択。想像通り護衛の選択は発生しなかった、命令させろを選択した時だけに表示されるのだろうな。
【ゴエイBのこうげき!】
それが表示された途端、修道服の護衛ちゃんがもの凄い勢いで魔物の群れに突っ込んで行った。
魔物三体に向かって突っ込んでいく様子に少しばかり不安を感じたが、次の瞬間にはその不安は吹っ飛んでいた。
【ゴブリン(緑)Aに78のダメージ!】
【ゴブリン(緑)Aをたおした】
「うげっ!?」
上段から勢いよく振り下ろしたメイスはゴブリンに直撃。ゴブリンは地面とメイスにサンドイッチにされ、爆散する。
辺りにゴブリンの血が飛び散った。ゴブリンを攻撃後、何事もなかったかのような表情で戻ってきた僧侶ちゃんの顔には血がこびり付いていた。
「お、お疲れ、僧侶ちゃん……」
「――――」
強すぎる。いやしかしグロすぎる。メイスは血で濡れ、頬についた血を気にも止めてない僧侶ちゃん。
もっとこう、ゲームっぽい感じの倒し方を想像していたのだが。
【ゴエイAのこうげき!】
【スライム(緑)に31のダメージ!】
【スライム(緑)をたおした】
グロさに引きつっていると今度はオッサンが突っ込んでいき、スライムを一刀両断してみせた。
ダメージは僧侶ちゃんに比べて低めだが、スライムは防御力が高いのかもしれない。
真っ二つに叩き割ってはいるがスライムなので、ゴブリンのようなグロさはない。逆に切断面が綺麗なので関心してしまったほどだ。
【ヨルヤはみをまもっている】
そして私は身を守ると。頭を抱えて防御姿勢を取ると、心なしか体全体が固くなったような気がする。
まぁそんな訳はないんですけどね……って、え? あれ?
【ゴブリン(緑)Bのこうげき!】
え? おい嘘だろ? なんかアイツ、俺の方に向かってきてね? まさか俺を攻撃するつもりか?
こんな頭を必死に守っている俺を? 普通、防御姿勢を取ってる奴を優先的に狙うか?
「ふっ馬鹿め。お仲間がどうなったのか忘れたのか? 俺には優秀な護衛が……あれ僧侶ちゃん? オッサン? なんで動かないの?」
なんか俺の護衛達が直立不動のままなんだが。ゴブリンと俺の間に割って入る気配もなく、ただただ近づいて来るゴブリンをジッと眺めている。
「う、嘘だろ!? 護衛対象が襲われそうになってんのに傍観する護衛がどこにいるんだよ!? く、くるなぁ! くるなぁぁぁぁ!!」
叫び声も虚しく、ついにゴブリンは俺の目の前までやってきた。
「や、やめろ! やめろぉぉっいってぇぇぇぇ…………って騒ぐ程でもなかった」
【ヨルヤに2のダメージ!】
なんだよ、大騒ぎするほど痛くはなかった。確かに痛みは感じたが、感覚的には大人の素人に肩パンをされたような感じ。
しかし2ダメージか。俺のHPが70だから、これを35回受けたら俺は死ぬのか? いくらなんでも死ぬとは思えないのだが。
いやでも顔面を今の感じで35回も殴られたら死ぬかも。それに当たり所が悪ければ気絶くらいはするかもしれない。
HPがなくなったら死ぬのか……? いや違う、そうだよ気絶だ、死にはしない、そう思い込んでおこう。
【たたかう】→【ぼうぎょ】
【ゴエイAのこうげき!】
【ゴブリン(緑)Bに75のダメージ!】
【ゴブリン(緑)Bをたおした】
再び防御を選択して戦闘が開始すると、オッサンが動き出してゴブリンの首を刎ねた。75ダメージだったようだが、あんなん即死の一撃でしょうに。
しかしみんな脳筋だからな。物理が効きづらい敵とか出てきたら詰むかもしれん。
【魔物の群れをやっつけた!】
【30の経験と60ゴルドを手に入れた】
いやしかし俺の護衛、強いな。この強さがあるならコマンドバトルじゃなくていいかもしれない。
さっきのように、敵側の数が多い場合はシステムの影響で俺が攻撃を受けてしまう可能性があるし。
流石にリアルタイムバトルなら護衛も俺の事を守ろうとするだろう。あんなぼーっと敵の攻撃を見過ごすわけがない。
とりあえず、次の戦闘はリアルタイムアクションバトルとやらを選んでみよう。
そう思いながら、その場を移動しようと足を動かした時だった。
「お~いアンタら! 素材は剥ぎ取らないのかよ!?」
俺達の背後から声が聞こえたため振り返ると、そこには数人の男女の姿があった。
身なりは冒険者のそれ。冒険ギルドに行った時、似たような装備をした者が複数いた気がするので、まず冒険者で間違いないだろう。
どうやら魔物から素材を剥ぎ取れって言っているようだが、一体は爆散してるし一体は首が落とされてるし、スライムに至ってはヘドロなんだが。
というか綺麗な死体があったとしても剥ぎ取りなんてしたくない。皮をバリバリ剥がすとか、そんな感じなんだろ?
ともあれ移動の出鼻を挫かれてしまったため、俺は冒険者たちが近づいて来るのを待った。
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