【1ー14】車体にエンジンに護衛代を含めますと……!?






 エカテリーナとのやり取り後、俺は昨日と同じく城下町の方に出て来ていた。


 ちなみに王城を出る際にまたお小遣いを貰ってしまった。昨日貰ったのが残っているからと断ったら、王に渡すように命令されているので受け取ってもらわないと困るとか。


 一日5万ゴルド。学生たちを含めて30人ほどいるので、単純に一日150万を俺達に与えている事になる。


 俺達がこの世界にどれほど貢献できるのかは分からないが、この国は俺達を召喚したというアドバンテージがある。


 将来、真っ先に恩恵を受けるのはこの国だ。いい国だと俺達が思えば他の国に行く必要もなく、この国に留まる事だってあるだろう。


 ある意味、会社経営と変わらない。俺達にこの国は投資している、待遇を良くして他国へ人材の流出を防いでいるのだ。



「さて、そんないい国の物価はと……」


 目についた道具屋に片っ端から入ってみる。物を買うつもりはないので、完全なる冷やかしであるのだが。


 道具屋、鍛冶屋などを数件回って物価を調べた。多少は値段に差はあったが、おおよその値段を調べる事ができた。


 その結果、インベントリ内のショップとの差は。



「……ショップの方が高いな」


 店売りの物に比べて、一割から二割ほどショップの方が高かった。回復材などは微々たるものだが、武器とかの数十万もするものは中々に差が出てくる。


 インベントリに収納できるというメリットの差か。極端に言えば、ショップで全ての物を揃えれば手ぶらでどこへでも行けるという事だからな。


「武器とかは店売りを買って、回復材は……」


 ショップで揃える事にしよう。武器なんかは一つあればいいだろうが、回復材なんかは数が増えると嵩張るし。


「さて次は馬車を……って馬車ってどこで売ってんだ? すみませ~ん!」


 最後に入った道具屋は個人商店のような所で、馬車なんて売っている雰囲気はなかった。


 店員に聞くと、馬車を専門に扱っている商店があるらしい。自動車メーカーのような、そんな感じだろうか。


 店員さんに馬車商会の場所を教えてもらい、俺は店を出た。



 ――――



「――――いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 教えられた馬車を扱っている商店に入ると、腰の低い感じの店員がすぐさま話しかけてきた。


 店員の身なり、商店内は整っており羽振りが良さそうである。


「馬車を見に来たのですが……」

「ありがとうございます。使用用途をお聞きしても?」


「用途は人の運送……いや輸送って言うのかな?」


 そう言うと店員は該当の馬車を展示している場所へと案内してくれた。馬車なんてどれも同じだろうと思っていたのだが、色々と種類があるようだ。


 屋根がない荷馬車のようなもの、車輪が片側に一つずつしかない小さな馬車、天幕が張られた馬車など、様々な馬車が展示されていた。



「輸送馬車となるとこの辺りになります」

「おぉ、立派な馬車です……ねぇっ!?!?」


 一、十、百、千、万……十万……ひゃ、百万……!?


 値段がまんま自動車だ。馬鹿な、馬車だぞ? 馬車ってそんなに高かったのか!?


 知らなかった。勝手に手ごろな値段だろうと思ってしまっていた自分が恥ずかしい。



「こちらなど最新の馬車ですが、いかがですか?」

「は、はは……いい馬車……ですな」


 五百万オーバーの最新馬車。車輪が片側に四つもついている大型馬車のようだが、どこら辺が最新なのか分からない。


 中はゆったりとした空間が広がっており、作りも実に細やかだった。王族や貴族が乗っていてもおかしくない内装ではあるが、問題は乗り心地だろう。


 意外にも馬車には金属が使用されていた。馬車って全てが木造のイメージだったが、所々を補強するような感じで金属が使われているようだ。


 全体を見れば木造の馬車。サスペンションが使われていたのは意外だが、交通の要となっているのであればある程度は発展するか。


 問題はそのサスペンションの質が悪かった事。そもそも使われていなければアドバンテージを握る事が出来ただろうが、使われているとなれば話は別だ。


 サスペンションという知識があるだけで、俺には作れないし取り付け方だって曖昧だ。質を向上させるといってもその知識はない。



「(くそ、なんでサスが使われてんだよ!? その知識は俺が持ち込む予定だったのに!)」


 暗雲立ち込める。サスペンションを搭載して乗り心地を向上させ、集客を図る予定だったのだが。


 仕方がない、馬車で勝負できないであれば他で差を付けるしかない。


 観光馬車に全振りするしかなさそうだな。馬車の快適性はそこそこに、護衛の方に金を掛けるとするか。



「こちらはいかがでしょう? 他国産の馬車ですので、この国では中々に見られない造りとなっておりますよ」

「外車……い、一千万オーバー!?」


 俺にとっては馬車自体が珍しく、全てが外車みたいなものなんだが。


 聞くとあまり質は変わらないようなので、単純に他国産だから値段が高くなっているようだ。馬車で他国とか……何か月かかるんだ?



「ちなみに馬は付いてきますよね?」

「いやいや、馬は馬で購入してもらわないと! 馬を専門に扱っている商店をご紹介しますか?」


「まさかのエンジン別売り!? まぁ、そうですよね」


 馬っていくらするんだろう? サラブレットは数千万や億するイメージだけど、例えば農耕馬とかは安いのか?


 安くても痩せ細った馬なんかは馬車なんて引けないだろうし。ある程度の馬となるとやはり数百万するのだろうか?


 それにおそらく一頭じゃ足りないよな? 最低でも二馬力は必要か?


 まぁとりあえず馬車の目星はつけた。仕事が軌道に乗るまでは安い馬車でいいだろう、馬車もそんなに大きくなくてもいいし。


 店員に礼を言い、馬を扱っている焦点の場所を聞いて俺は馬車屋を出た。




 ――――




 そして俺は今、冒険ギルドという所に来ている。


 あれから馬屋へ行き、馬の事を色々と聞いた。簡単にいえば馬はそこまで高くはなかった。


 どうやら馬は過剰供給になっている様子。需要はあるがそれ以上に馬の数が多いらしい。まぁそれでも数万から数十万はするっぽいが。


 その後、俺は護衛を雇うにはどうすればいいのかと冒険ギルドにやってきたのだ。護衛を雇う方法、相場を調べに来たのだが。



「ちょっとアンタ! どこ見て歩いてるのよ!?」

「いや、そっちがぶつかって……」


「ボーッと突っ立てんじゃないわよ! もう最悪! ほんっと男って嫌いっ!」

「…………」



『ヒロインリストにヴェラ・ルーシーが追加されました』


【好感度――――5】

【関係性――――他人】

【状態――――オコ】

【一言――――男ってどいつもこいつもムカつくわッ!】



 え~、これ俺のヒロインなの? 嫌なんだけど、こんな怖い女。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る