第27話 ララちゃん

 真剣に悩み込んだライナライアに、タリアが提案する。

「だったらみんなにも私みたいに、ララちゃんって呼んで貰ったらいいんじゃないかなっ? それだけでもかなり印象変わるんじゃないっ?」

「おっ、それいいね! ラーラちゃん!」

 早速そう呼ぶリックス。

「なっ!?」

「ほら、ベルも呼べよ!」

 そう促されたベルも「ララちゃん」と続いた。

「うっ!?」

 二人は懲りずに「ララちゃん」を連呼する。

 すると最初こそ戸惑っていたライナライアだったが、徐々に受け入れていった。

「……本当はタリア様だけの呼び方なのだが、まあ悪い気はしないし、私もやぶさかではない。許容しよう」

「イエーイ!」と、リックスとタリアがハイタッチする。

 それからライナライアは照れた様子で、チラリと俺の方を見てから言った。

「お、お前も呼びたければララちゃんと呼んでもいいのだぞ? 入学前から、色々と世話にもなっているしだな……」

「っていうかほんとは呼んで欲しいんでしょっ? ララちゃんっ!」

「タリア様っ!?」

 タリアに突っ込まれたライナライアは耳まで真っ赤にし、モジモジと再び俯く。

 しかし、俺は――。

「いや、私はいい」

「えっ」

 ライナライアは驚いて顔を上げ、一瞬悲しげな表情を浮かべたのち、無理矢理に口角を上げてから言った。

「……そうか」

 そんな彼女を見て、タリアは「ララちゃん……」とだけ呟く。

 そんな中、俺は続けた。

「ライナライアという美しくも強い響きを持った名が、貴様にぴったりだからだ」

「~~ッ!?」

 ボンッと、ライナライアの顔から湯気が上がる。

「……なんだ? 顔が耳まで赤いぞ? 熱か? 風邪ならば大事な試験前にうつされてはかなわんから席を外せ。そしてすぐに帰宅しろ」

「ばっバカァッ!?」

 ライナライアより先に、タリアがそう怒鳴った。

「な、なぜだ……。間違っていないだろう?」

「そう言ってる時点で間違ってるしっ! ララちゃんは風邪じゃないもんっ!」

「ま、まあ風邪でないのならそれに越したことはないが……」

 空気を変えたかった俺は、ここまで一度も自身からは言葉を発していないベルに訊ねる。

「そ、そうだベル、今日は楽しめているか?」

「君を見ているだけで楽しい」

「ならよかった」

 すかさずリックスが突っ込んだ。

「おい多分馬鹿にされてんぞ!」

「構わん」

「いいヤツッ!?」

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