第10話 問題児大集合
しばらくして教室に到着し、黒板に書かれた席順に従い着席しようとしたところで声を掛けられる。
「おっ、ハルノも同じクラスだったのか!」
「リックスか、偶然だな」
「おう!」
そう言って満面の笑みを浮かべたリックスに微笑み返してから、今度こそ俺も椅子に腰を下ろした。
「席も近いしテストの時はカンニングさせてくれよな!」
「馬鹿を言うな」
そうやって他愛のない会話に花を咲かせていると、背後から声を掛けられる。
「先程の騒ぎを拝見しておりましたが、お見事な立ち回りでしたハルノ様」
それはとてもよく聞き覚えのある声だった。
まさかなと思いながらそちらへ目をやると――。
「なっ!? ――アリネ!?」
そう、我がターミア家唯一のメイドであるアリネが居たのだ。
動揺する俺に構うことなく彼女は続ける。
「ですが仮にも決闘なのです。やるのであれば、もっと徹底的にやるべきでした。あれではより相手に恨まれ、付きまとわれることになりましょう。甘さも露呈しましたしね。命取りになりかねませんよ」
「……おい、ここは魔法騎士学園の高等部だぞ? なんの冗談だ? 関係者に見つからない内に出ていくのだ。そもそもお前の年齢では入れないはずだろう?」
「若く見えるとはお得でございますね」
「いや年齢を詐称するな!?」
「レディーに歳のことを言うのは貴族どころか紳士らしくすらありませんね」
「――ぐぅっ!?」
「ぐうの音は出るのでございますね」
「……なぜここに居るのだ!?」
「ハルノ様が心配だと旦那様に申し出ましたところ、ではアリネも受験してはどうかと勧められ、学園というものにも興味がありましたのでそのお言葉に甘え、自費で受けることにしました」
「じゅ、受検の時から居たのか!?」
「まったく気付かれず、寂しい思いをさせられました」
「マジか……」
「マジにございます。これからは私も学友として、よろしくお願い致しますね?」
「なんという悪夢だ……」
悪夢はそれだけでは終わらない。
タリアとライナライアも同じクラスのようで、教室へやって来たのだ。
早速頭痛の種が増えた。
「ハルノ貴様!? もしやタリア様と同じクラスになるべく仕組んだな!?」
「えっ、あっ! ハルノ君っ!? おーいっ!」
「あまり関わり合いになるのはお止め下さいタリア様! こいつはナチュラルに平民と人を見下すような男ですよ!?」
「でもハルノ君は悪い人じゃないよ? 人よりもちょっとだけ口が悪いだけで……ちょっと?」
「ほら、自分で言っておいて違和感を覚えているではありませんか!」
「口が悪いから悪い人ってことにはならないもんっ!」
二人の会話に、俺は大きく傷付いた。
「っていうかララちゃん、ハルノ君と席隣だよ?」
「なっ、なっなっなっな――!?」
「そういうことだからハルノ君、ララちゃんをよろしくねっ! あっ、私も席近いからよろしくねっ! えへっ」
さらには――。
「チッ、なんとついてない……」
「田舎伯と同じクラスかよー。さっきの賤民も居るしさー」
なんとルーベンスとマルクトー、そして――。
「口を慎みなさい」と、パンジーまでやって来る始末。
これは賑やかな学園生活になりそうだと俺は机に突っ伏し、現実逃避を試みるのだった。
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