私、精神病院で神を斬ることを学んでいます。

第3話 ノック

部屋に戻った林七夜はドアを閉めた。

彼はライトをつけなかった。

夜が深まり、窓の外には星が散りばめられ、暗い部屋の中、林七夜は机の前に座り、ゆっくりと目の上の黒いサテンを取り外した。

机の上の鏡には、端正な少年の顔が映し出されていた。

林七夜は非常にかっこよく、目隠しの黒いサテンを外せば、少し手入れをすれば、不思議な高冷で深遠な雰囲気を携えた、まさに学園のアイドルのような存在だ。

ただし、彼は常に目隠しをしていて、障害者であることもあり、彼の輝きは完全に遮られていた。

鏡の中で、林七夜は目を閉じていた。

彼の眉は微かに寄り、目の上に覆われたまぶたが震え、目を開けようと苦労しているようだ。そして、彼は拳を握りしめ、力を込めていた。

1秒、2秒、3秒...

彼の体は長い間震え続け、ついには耐え切れずに一気に緩んで、荒い息を大きく吸い込んでいた。

数滴の汗が林七夜の頬を伝っていき、彼の眉間に怒りの表情が浮かぶ。

ほんの少し... もうほんの少しだった！

なぜいつも、ほんの少しだけ足りないのか？

いつになったら、再び目を開けて、この世界を自分で見ることができるのか？

彼は見えると言った、嘘をついた。

彼の目は全く開けられず、目を細めることさえできない。

しかし、彼は嘘をついていない。

目を閉じていても、周りのすべてを鮮明に「見る」ことができた。

この感覚は非常に不思議で、まるで体中に目ができて、すべてを全方位に無死角で感知できるかのようであり、しかも元の目よりもはるかにクリアで遠くまで見える。

最初はできなかった。失明して最初の5年間、彼は他の本当の盲目の人々と何ら変わりなく、この世界を感知するために声と導盲杖を使わざるを得なかった。

しかし、なぜか、5年前から彼の目にはいくつかの変化が現れ、彼自身も周囲を初歩的に感知し始めた。

最初は数センチしかなかったが、時間の経過とともに、彼はますます遠く、ますますクリアに「見る」ことができるようになり、今では5年後、彼は約10メートルまで「見る」ことができるようになっていた。

通常の人が10メートルしか見えない場合、その人の目は基本的には役に立たないかもしれませんが、視力を失った少年にとっては、その10メートルがすべてを意味していた。

最も重要なのは、彼が「見る」ことができる10メートルは、障害物を無視した10メートルだということです。

つまり、林七夜の周囲の10メートルの範囲では、彼は絶対的な視野を持っており、俗に言うと透視できるとも言えますが、高尚に言えば、彼は空気中を漂う塵一粒、機械の内部のすべての部品、テーブルの下でさえもマジシャンの細かな仕草まで見ることができるのです。

そして、この能力の源は、まるで10年間密閉されていた黒いサテンの下の目のようです。

このほぼ超能力のような力があるにもかかわらず、林七夜はまだ満足していません。10メートルの絶対視野を持つことは素晴らしいことですが、彼は自分の両眼を使って、この世界を直接見たいと思っています。

これは少年の執着心です。

今日は目を開けることに失敗したかもしれませんが、彼ははっきりと感じています...

真の目を開くまで、もう遠くないと。

林七夜は身支度を整えた後、いつものように早く寝る準備をしてベッドに入った。これまでの盲目の生活もすべてが悪いことばかりではなく、少なくとも早寝の良い習慣は身につけた。

しかし、ベッドに横たわると、無意識のうちに、彼の頭に再びその光景が浮かび上がった。

暗黒の宇宙の空の下、静寂の月の表面、灰白色の大地が薄暗い星明かりに照らされ、最も高く、最も大きな月のクレーターの中央に立つ、まるで彫刻のような姿。

その姿は静かにそこに立っていて、まるで古代から存在していたかのようであり、神聖な金色の輝きが放たれ、その威光はあらゆる生物を地に這わせるに足るものだった。

彼の背後には、太陽光線が背後から投影されるのを遮る、大げさな六本の羽根が開かれており、銀灰色の大地には巨大な影を残していた。

しかし、林七夜の脳裏に焼き付いて離れないのは、彼のその眼だった。

その双眸は神聖な威光に満ち、るつぼのように燃えるような瞳で、まるで近くの太陽のようにまぶしかった！

彼はその瞳を見た瞬間、彼の世界はただの夜に変わった。

10年前、彼は真実を言ったが、それは精神病と診断された。

しかし、彼は心の中で最もはっきりと知っている。何が現実であり、何が妄想なのか。

月の上で燃える天使を見てから、彼は知っていた、この世界は...見かけほど単純ではない。

そして、徐々に、林七夜は深い眠りに落ちていった。

彼は知らなかったが、夢の中に入る瞬間、暗い部屋で、彼の目の隙間から2本の輝く金色の光が放射され、一瞬だけ光り輝いた。

...

ダダ、ダダ、ダダ...

霧に包まれた世界で、林七夜は一人歩いていた。

周りの霧が渦巻き、果てしなく見えるようだ。虚無の中を歩いているようだが、林七夜が足を踏み出すたびに、鋭い衝撃音が響き、彼の足の下には見えない地面があるかのようだ。

林七夜は身体を見下ろし、ため息をついた。

"またこの夢...毎晩ドアを叩かれるのは疲れるなぁ？" 林七夜はあきれて首を振り、前に一歩踏み出した。

次の瞬間、周りの霧が巻き起こり、林七夜の前には風変わりなモダンな建物が現れた。

それを奇妙だと言うのは、はっきりとモダンなスタイルの建物であるのに、細部の処理において神秘的な雰囲気に満ちているからだ。

神々を彫刻した大きな鉄の扉、火のように燃えるような電灯、足元に浮かぶ浮彫の磁器のタイル...など。

まるで現代建築のスタイルと古代神話の寺院の要素が混ざり合っており、一種の不協和な美しさがある。

この建物、林七夜は知っていて、非常に馴染んでいるように見えた。

これは彼が以前に1年住んでいた陽光の精神病院と非常に似ている。最も強力な証拠は、入り口にかつて "陽光精神病院" と書かれていた場所に、別の行の文字に変わっていることだった。

- 神々の精神病院。

"理解できない場所だなぁ。" 林七夜は首を振りながら、前に一歩踏み出し、その大きな鉄の扉の正面に歩いた。

5年前、突然変化し始めたのは彼の体だけでなく、彼の夢でもあった。

五年来，彼は毎晩同じ夢を見続け、そしてこれらの夢の主役は常にこの神秘的な諸神精神病院だった。ただし、この精神病院の大門は常に閉じられており、どうしても開くことはできません。

林七夜は精神病院を何度も周り、正面に大きな鉄の扉が一つだけありますが、周りの壁は高くないものの、林七夜が飛び上がるとその壁の高さも増していくのが非常に奇妙でした。

蛮力について言えば... 林七夜が全身でぶつかっても、その大きな鉄の扉は一緒にもびくともしないでしょう。

入り口の方法は一つだけのようです。

ノックすること。

林七夜は大鉄の扉の取っ手をつかみ、深呼吸して、鉄の扉の表面に力強く叩きつけました。

鈍く響く音が精神病院に鳴り響き、大鉄の扉本体が揺れ、わずかに動きましたが、開きませんでした。

再び、鈍く響く音が聞こえましたが、鉄の扉はまだ開きませんでした。

林七夜はこれにあまり驚かず、イライラすることもなく、非常に辛抱強くノックを続けました。

この5年間、彼は夢の中のこのルールを痛感しており、ノック以外の手段では大鉄の扉を開くことができず、そしてこの夢の中では、彼はノック以外に何もできないようです。

幸いなことに、夢の中では彼は疲れません。そうでなければ、彼の体は早くもくたびれてしまったでしょう。

そのため、林七夜はまるで一生懸命働く労働者のように、辛勤に夢の中で一晩中ノックし続けました。