第13話 正義の戦士ミリア
根岸くららが受験勉強をしているころ、ミリア・アンネ・ファーリアは歓楽街である神宮町に来ていた。
神宮町は有人たちが住む地方都市で一番の歓楽街で、平日の夜とはいえ多くの人たちで賑やかであった。ただ十代美少女が出歩くには治安はあまり良くないと思われる。
その文字通り夜の町をミリアはトレンチコートを着て、闊歩していた。
ミリアは長身でスタイル抜群であるため、そうして歩いているたけでも絵になることは間違いなかった。その証拠にミリアとすれちがう人間、ほぼ男性であるが間違いなくふりかえっていた。
ミリアはその神宮町にある雑居ビルに入っていく。
ビルの外は多種多様な人間たちで耳が痛くなるほど騒がしいのに、その雑居ビルだけは静まり返っていた。
かつかつと足音をたて、ミリアは階段を上がっていく。五階に到達してもミリアは息一つきらしていない。
「やあミリア来てくれたか」
階段を上ってきたミリアに声をかける人物がいる。それはミリアの旧知の人物でファーリア王国からともにこの世界にやってき人物だ。
身長は百五十センチメートルほどでその人物は小柄だ。くららと違いそのスタイルはがっちりとして筋肉質だ。作業服を着ていて、腕まくりをしている。その二の腕は引き締まっていて筋肉質だ。
それにけっこう胸が出ているのでこの人物が女性だということがわかる。
濃い茶色の髪をポニーテールにしている。
顔立ちは美人というよりは愛嬌があるという感じだ。
「マーズご苦労さま」
ミリアはその小柄な女性に声をかける。
彼女の名はマーズ。二つ名は火星である。
火星のマーズといえば前の勇者の
種族はドワーフである。
マーズはぱっと見ただけでは小柄な人間にしか見えない。ドワーフ特有の樽のような胴をしていないので小柄な人間の女性にしか見えない。
「一応結界を張ったけどそれもあとどれぐらいもつかわからない」
マーズは言い、壁の端を指さす。
そこには数枚の羊皮紙が貼られている。
その羊皮紙には複雑な紋様が刻まれている。
それは魔法陣であった。
マーズはこの魔法陣でこの雑居ビル五階の奥の部屋からとある怪物が出てこないように封印していた。
「わかったわ、わたくしが全滅いたしますわ」
ふふっと頼もしい笑みをミリアは浮かべる。
すっとトレンチコートを脱ぎ、マーズに手渡す。
トレンチコートを脱いだミリアはなんと一月の真冬にビキニアーマーというスタイルであった。しかもそのビキニアーマーは明らかにサイズが小さくて下手したらミリアの乳房がこぼれるのではないかと思われた。
ミリアが歩くたびにそのメロン並みの巨乳が揺れる。
ミリアはハイヒールのロングブーツを履いていたので歩くたびにかつかつとと高い音がする。
ミリアは空中に手をかざす。
アイテムボックスの
それはモーニングスターであった。
鋼鉄の棒の先には鉄球のついた鎖が三つついているという凶悪なものだ。
ミリアは廊下を一人歩き、とあるドアの前に立つ。
マーズの話ではこの先に魔物たちがいるという。
ミリアはためらうことなくそのドアを開ける。
その部屋はかなり広くて、おおよそ学校の教室と同じぐらいと考えられる。
事務机がいくつかあるのでどこかの会社が借りていたのかも知れない。
そこには人間がいない。
そこにいたのは元人間と言える死体と魔物たちだけであった。
くちゃくちゃという咀嚼音が聞こえる。
その魔物は
女性の死体が見える。その女性は裸にされ、べたべとした汚い液体で汚され、死んでいた。
この事務所にいた男は
ミリアはその残酷な光景を見て、怒りに身体が支配されるのが理解できた。それは自分への怒りでありこの魔物たちへと向けたものでもあった。
この魔物たちはおそらくミリアたちがこちらに来たときにできた次元の狭間に紛れて来たものと思われるからだ。
自分たちが来なければこの魔物たちはこの世界に来なかったのだ。
ミリアは魔物たちの群れに突撃をかける。
ミリアの豊満な肢体を見た
おそらくミリアを新しい獲物と思ったのだろう。
だがミリアは魔王を倒した勇者パーティーの一人だ。けっして下級の妖魔たる
モーニングスターを振り上げ、一気に
床に汚らしい青い血が散らばる。
ミリアはモーニングスターを振り回し、
ミリアにかかれば
しかし
つい先ほどまでミリアがいた場所に彼女はいない。
「こちらですわよ」
ミリアは人食い鬼の真後ろに立っていた。モーニングスターを両手でもち振りかぶる。裂帛の気合をこめて振り下ろす。
時間にして三分もかからずミリアは魔物の群れを全滅させた。
モーニングスターを肩に担ぎ、残敵がいないかを念ため確認する。
その部屋の端に一人の人物を視認した。
チカチカと光る蛍光灯のもと、和服の女性が立っていた。背が高く、おかっぱ頭の女性だった。
細い目でミリアをじっと見ている。
白い手でパチパチと拍手する。
「さすがは異世界の姫君。素晴らしい戦闘力ですね」
ねっとりとした声でその女性は言う。
「おまえは?」
モーニングスターの先端を和服の女に向けてミリアは訊く。
「申し遅れました。私は
ていねいな口調で和服の女はそう名乗った。
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