九杯目 初デート

翌朝…サヤのモーニングはというと…


「今日は眠れた~…デート、楽しみだな。レドさん、どんなスケジュール組んでくれたんだろ?甘いものずくしだったり?それとも映画とか…?」


色々な妄想を膨らませながら、目覚めのコーヒーを煎れていた。

緊張はありながらも、デートを心待ちにしていた。


反対に、レドのモーニングは…


「ヤバい…緊張する…!今日、プロポーズするんだよな!?心の準備が…」


慌ただしくあっちこっちを行き来したりしていて、緊張の方が強く見られた。

こんな調子でプロポーズするのは厳しいだろう…


「スケジュールは組んであるから…紙…書いた紙…あった!」


今日のスケジュールを紙にまとめていたレドは、それを見て試行錯誤を繰り返す。


「映画を入れた方が…いや、映画は長いし……このスケジュールでいこう。」


そして、ついにデートの時間。二人は同時刻に出発した。


「いつものカフェ前集合で、そのあとはレドさんに任せる…!うん、これで大丈夫だよね…?」


「いつものカフェ前に行くだけなのに…なんか違う感じがする…」


二人が歩いていると…


ドンッ


「あ、ごめんなさ…」


「すみませ…」


「「あっ…」」


まさかの二人がぶつかってしまった。

デートに気をとられて、前を見ていなかったのだ。


「レ…レドさん、おはようございます!今日はよろしくお願いします…」


「ああ、おはよう…その…ぶつかってすまなかった。」


「いや、私も不注意でしたし…こちらこそすみませんでした…」


ちょっと気まずい雰囲気…ぶつかったこともだが、何よりデートということだろう。


「デ…デートですよ!デート!今日はどこに行く予定ですか…?」


「えっと…紙に書いたんだ。ちょっと待ってくれ…」


ポケットに手をいれ、紙を探す。


「あ、あった!最初は…少し歩くんだが、いいか?」


「もちろんですよ~!景色とかですか?」


「ああ、そうだ。小説家って話、しただろ?出社するときに通る道なんだが…綺麗な景色でな。」


そう言うと、レドは道を案内し始めた。


(ていうか、私服って初めて見たか…?白いワンピース…かわいい…すごい似合ってる…)


「レドさん、私服どうですか?初めてだと思うんですけど…」


「…似合ってるよ…かわいらしくて、サヤさんに合ってると思い…ます。」


緊張してうまく話せない。

人生初めてのデートだ。本当はサヤもだが…レドは知らないので、なおさら緊張するだろう。


「今の間何ですか~?本当は思ってないとか…」


「…そんなわけないだろ?サヤさんはもともとかわいい人なんだから…」


「え?今かわいいって…」


お互い目を反らす。


(褒められた…かわいいって…好き…レドさん好き…)


(正直に褒めすぎた…!まずい、非常にまずいぞ?歩こう。とりあえず。)


気まずい中、レドが先頭で歩き続けていると…


ちょんっ


後ろから、誰かに手を触られた。

驚いて振り向くと…


「レ…レドさん…手、繋ぎませんか…?デートですし…」


「サヤさんさえ良ければ…もちろんです…」


「ありがとう…ございます…」


ぎこちなく手を繋ぎ、デート再開となった。

五分ほど歩くと…


「サヤさん、着きました。朝にしか見られない絶景です。」


「わぁ…レドさん、これ…」


視界には、眩しい朝日に照らされた美しい川が。

横に広く浅い川だったので、小魚が泳いでいる様子も伺えた。


「私、出勤するときにこの景色が見れたら、毎日朝早く通っちゃいますよ!」


「ここは川の近くで涼しいから、夏もいいんだ。今は秋だからあれだが…」


「デートはちょっと寒いくらいがちょうどいいんですよ?手繋いでも暑くないので…!」


サヤはそう言って、レドの手をぎゅっと握った。

レドも笑顔で手を握り返す。

はたからみたら普通にカップルだが、二人はまだ気づいていない。


「サヤさん、もう七時なので買い物に行きませんか?サヤさんの好きなものを見たいので、行きつけをお願いします。」


「はい!じゃあ本屋に行きましょう?私の好きな作家さん紹介したいので!」


二人は本屋に向けて歩き始めた…

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