第十五話 主人公、弓聖と再会する、そして、復讐する(閉幕)

 僕たち「アウトサイダーズ」が元「弓聖」鷹尾たち一行を討伐するため、鷹尾たち一行と「白光聖騎士団」が立てこもる「ブラッディ・モンスター・ハウス」の中へと乗り込んだ日のこと。

 僕は元「弓聖」たち一行がいる、ブラッディ・モンスター・ハウスの中央にある巨大な塔、通称デス・タワーへと入り、元「弓聖」たち一行と死闘を繰り広げていた。

 そして、「弓聖」鷹尾を除く六人の勇者たちへ復讐し、殺した。

 さらに、「傲慢の堕天使」プララルドを除く五人の堕天使たちの封印にも無事、成功した。

 デス・タワーの一階から七階までを制覇し、僕は最後の復讐のターゲット、「弓聖」鷹尾と「傲慢の堕天使」プララルドがいる、デス・タワーの最上階である八階を目指し、八階までの螺旋階段をゆっくりと上っていた。

 時刻は午後1時過ぎ。

 階段を上がり、八階の部屋の入り口の扉の前まで辿り着くと、僕は千里眼で八階の部屋の中を調べた。

 「ふむ。なるほど。最後まで本当に悪趣味な部屋だな。全くどの部屋も見ているだけで気分が悪くなる。最後の復讐の舞台としては、まぁまぁだな。だが、あの冷酷クソ女らしいセレクトではある。上手く立ち回れば、この部屋で僕を罠に嵌めて一気に仕留める算段なんだろうな。けど、お前の卑劣な罠におめおめと引っかかる僕じゃあない。僕はお前の激甘な計算の枠外にいるんだよ。超計算外の復讐をお前にお見舞いしてやる。さてと、それでは、処刑ショーのフィナーレの最後を始めるとしよう」

 僕は笑みを浮かべながら、処刑ショーのフィナーレの幕を下ろすべく、扉を開け、最後の復讐の舞台である八階の部屋の中へと入った。

 部屋の中に入ると、僕は部屋の入り口の扉から十歩ほど歩いて立ち止まった。

 室内は他の階とほぼ同じ内装で、違いと言えば、周囲には、白い石でできた、両手で頭を抱えながら苦しそうに座り込む、裸の人間の彫刻がいくつも広い室内に建っている。

 そして、八階の部屋の中央には、藍色の髪に、エメラルドグリーンのメッシュが入った、ロングストレートヘアーの髪型で、エメラルドグリーンの瞳を持ち、左手には藍色のロングボウを持ち、一見涼しそうな表情を浮かべているが、部屋に入って来た僕に対し、鋭い眼光の眼差しを向ける一人の女が、僕を待ち構えていた。

 最後の復讐のターゲットである、「弓聖」の鷹尾 涼風である。

 さらに、鷹尾と同じ姿、顔、武器装備を持った、鷹尾そっくりの七人の女性たちが立っていて、計八人の鷹尾が部屋の中央に立って僕を待ち構えていたのであった。

 僕は目の前に現れた八人の鷹尾に動じることはなく、笑顔で鷹尾に向かって話しかけた。

 「よぅ。久しぶりだなぁ、鷹尾。そんなに怖い顔をして僕を見るのはどうしてだ?ああっ、分かった。ご自慢の犯罪計画とやらを全部僕にブチ壊されたからか。せっかく時間をかけて、ご自慢の天才的な頭脳をうんと捻らせて、自信を込めて立てた完全犯罪の計画だったもんなぁ。僕がちょっかいを出さなきゃ、今頃は計算通り、ゾイサイト聖教国を乗っ取って、国家元首になれたし、勇者にも戻れた。薔薇色の異世界生活を送る予定だったのに、せっかく立てた人生設計プランはほとんど白紙になった。手下のヴァンパイアロードたちも、お仲間の六人、いや、六人の手駒も全員、死んだ。五人の堕天使も僕に封印された。残るはお前とプララルド、後、偽者の七人だけか。おっと、忘れちゃあいけない。史上最低最悪の元勇者で連続殺人鬼のテロリスト、っていう肩書もあったな。異世界史上最低最悪の犯罪者になる夢が叶って良かったな。長年の犯罪研究の努力の賜物だな。本当におめでとう。良かったら最後に感想を聞かせてもらえるかい?」

 僕は笑みを浮かべ、軽く拍手をしながら、鷹尾に向かってそう言った。

 だが、鷹尾からの応答はなく、僕から挑発を受けても、表情はあまり変わらず、僕に鋭い眼差しを向けて睨みつけてくる。

 そして、一番右端にいる鷹尾が左手に持つ弓をゆっくりと構え始めたのを合図に、残りの七人の鷹尾も弓を構え始めた。

 八人の鷹尾たちは、一斉に僕の方向に弓を構えると、背中の矢筒から実物の矢を取り出し、矢を弓に番え、発射体勢に入った。

 八人の鷹尾たちを見て、僕は笑みを浮かべながら言った。

 「せっかく再会したってのに、何にもおしゃべりしてくれないなんて悲しいなぁ。コミュ障の僕が勇気を振り絞って話しかけたのに無視するなんて、ちょっぴり傷つくよ。まぁ、史上最低最悪の三流犯罪者以下の下劣な犯罪者であるお前となんて実際、口も利きたくないのが本音だけど。プララルドとか言うお前の相棒も全然、大したことないなぁ。僕に散々やられっぱなしな上に、ビビッて恨み言一つ言えないんだもんなぁ。何が最強の堕天使だよ。自称最強の、最弱の堕天使の間違いだろ?ほら、何か言ってみろよ、自称最強のクソ雑魚堕天使?」

 僕がさらに鷹尾とプララルドの二人を挑発した瞬間、八人の鷹尾が一斉に僕に向かってロングボウより矢を放った。

 僕は瞬時に霊能力を解放し、紫色の霊能力のエネルギーを全身に身に纏うと、瞬間移動能力を発動し、八人の鷹尾たちの目の前より姿を消した。

 八人の鷹尾たちが僕が消えたのに驚き、急いで背中の矢筒より矢を取り出し、次弾の矢を発射しようと構えながら、消えた僕を探し始めたその時、中央にいる一人の鷹尾の背後に、S&W M29そっくりの黒い大型拳銃を右手に持った僕が現れ、拳銃の銃口を鷹尾の後頭部へと向けた。

 「ここだ、冷酷クソ女。」

 僕は拳銃のトリガーを引き、紫色の霊能力の弾丸を放った。

 中央にいる鷹尾の一人は、後頭部に弾丸を撃ち込まれ、頭部を木っ端微塵に吹き飛ばされて死亡した。

 残る七人の鷹尾たちが僕に向かって同士討ちを避けながら、二発目の矢を発射するが、僕はふたたび瞬間移動で鷹尾たちの前より姿を消した。

 混乱する鷹尾たちの左斜め後方50mの位置に、僕は瞬間移動した。

 そして、左から二番目にいる鷹尾に向かって銃口を向けながら言った。

 「こっちだよ、冷酷クソ女。」

 僕はすかさず、トリガーを引き、左から二番目にいる鷹尾の頭部に弾丸を撃ち込み、頭部を木っ端微塵に吹き飛ばして破壊した。

 残り六人の鷹尾たちが慌てて三発目の矢を僕に向かって発射するが、僕は瞬間移動でふたたび姿を消した。

 そうやって、残り六人の鷹尾たちを振り回すように、鷹尾たちの前後左右、四方八方へと瞬間移動を繰り返しながら、拳銃より弾丸を鷹尾たちの頭部へと撃ち込み、鷹尾たちの頭部を木っ端微塵に吹き飛ばして殺していく。

 そして、一番左端にいる鷹尾だけが、最後に残った。

 僕は一番左端にいる鷹尾の背後、後方30mの位置へと瞬間移動すると、笑みを浮かべながら鷹尾に向かって話しかけた。

 「偽者は全員、死んだ。残るは本物の冷酷クソ女、お前一人だけだ。ドッペルゲンガー・マスクを使った茶地な偽者を用意したところで、そんな小細工、僕には通用しないぞ、自称天才の犯罪オタクの冷酷クソ女。偽者との連携自体は悪くはなかったが、本物と偽物を見分けるくらい簡単な話だ。洗脳して上手く調教したはずだったのに残念だったな。それで、他にいくつ、無駄な小細工を用意しているんだ、冷酷クソ女?後、最弱のクソ雑魚堕天使?」

 僕に正体を見抜かれた本物の鷹尾が、一見静かながらも怒りを露わにし、先ほどより鋭い眼差しを向け、僕の顔を睨みつけながら言った。

 「流石ね、宮古野君、いえ、「黒の勇者」。下の階にいた七人全員を倒してここまで辿り着いたのにも驚いたわ。あなたのそのスピードにも驚かされたけど、あなたは何時までそのスピードを維持できるのかしら?あなたの持つ拳銃に込める魔力は十分残っていると言えるのかしら?」

 『ギャハハハ!スズカ、その生意気で目障りなクソガキ勇者にはほとんど魔力は残っていねえぜ!奴の体からは一切、魔力を感じねえ!全身に纏っているあの紫色の魔力はもうすぐ底をつくはずだぜ!高速移動もできねえはずだ!このクソガキが、よくもこの俺様を最弱のクソ雑魚堕天使だとか馬鹿にしやがったな!テメエはここで終わりだ!今すぐぶっ殺してやるぜ!スズカ、あのクソガキ勇者に止めを刺せ!』

 「了解よ、プララルド。残念だけど、あなたの快進撃はここでお終いよ。さようなら、「黒の勇者」。」

 鷹尾は口元に笑みを浮かべながらそう言うと、僕に向かって聖弓のレプリカを向け、背中の矢筒より矢を番えると、僕に向けて矢を発射しようと構える。

 「撃てるもんなら、撃ってみろ、冷酷クソ女ども。お前の矢は必ず外れる。断言しよう。ほら、とっとと撃てよ、ノーコンの自称「弓聖」。」

 僕は笑みを浮かべ、皮肉の言葉で鷹尾に言い返した。

 「最期まで一言多い男ね。なら、死になさい、「黒の勇者」!」

 若干苛立ちの表情を露わにした鷹尾が、僕に向かって矢を放った。

 矢が僕に向かって飛んで来る中、僕は瞬時に霊能力をさらに解放し、「浮闇沈闇」を発動して重力を操作し、重力の方向をランダムに変え、光さえも屈折させる闇のバリアーを作り出した。

 僕の半径5m以内の空間が暗闇に覆われ、球状の黒い闇のバリアーがたちまち、僕の全身を覆った。

 そして、鷹尾の放った矢が闇のバリアーに接触した瞬間、矢は闇のバリアーに跳ね返され、重力の方向変化により強制的に軌道を変えられ、あらぬ方向へと飛んで行き、天井付近まで飛んで行った後、そのまま威力を失い、床へと落ちて行った。

 鷹尾とプララルドが、矢を僕の闇のバリアーに防がれ、言葉を失う中、闇のバリアーの中から僕は笑いながら、鷹尾たちに向かって言った。

 「ハハハ!やっぱり僕の言う通りになったろ、冷酷クソ女。「弓聖」としての弓の腕前は全然、大したことないなぁ。狙いは悪くなかったが、パワーもスピードも大したことはない。クソ雑魚堕天使と融合して、Lv.200にまでなったのに、そんなへなちょこな矢しか撃てないなんて、お前、よくそんなんで「弓聖」を名乗れたもんだな。僕に止めを刺すとか自信満々に言ってた癖に、恥ずかしくないのか?おいおい、何をポカンと間抜け面を浮かべているんだよ?矢ならまだ背中にたくさん入ってるだろ?さっさと撃ってこいよ。それとも、計算外の事態とやらで何もできないのか、ええっ、自称天才の三流以下の下劣な犯罪者の冷酷クソ女?クソ雑魚堕天使、お前も何か言い返してみろよ?最強の堕天使とやらの実力はこんなものなのか?」

 僕の挑発に怒りを露わにしながらも、鷹尾とプララルドは計算外の事態に激しく動揺し始めた。

 「くっ!?この私が三流以下の下劣な犯罪者ですって!?好き放題に言ってくれるじゃない、この死にぞこないがぁ!?プララルド、「黒の勇者」はもう魔力が底をついたはずじゃなかったの!?あなた、適当に鑑定してるんじゃないの!?真面目に戦っているの、あなた!?」

 『お、俺様は真面目に戦っているぜ、スズカ!俺様はちゃんと奴の肉体を鑑定したぜ!奴の体からは一切の魔力を感じねえ!もう魔力は残っていねえはずだ!俺様は嘘なんか言ってねえぞ!くそがっ、一体、何をしていやがる!?』

 「もう一度よく「黒の勇者」を鑑定して!他から魔力を供給されている可能性はないの!?」

 『い、いや、奴の周囲からは魔力を感じねえ!全く魔力を感じねえ!魔力自体がねえ!な、何なんだ、このクソガキは!?あの黒い結界の中心から歪で禍々しい、とんでもねえ量の別のエネルギーを感じるぜ!ま、まさか、こ、コイツ、魔力を持っていねえのか!?魔力以外の別のエネルギーを使っているっていうのか!?そ、そんなことはあり得ねえ!?あり得るわけがねえ!?』

 「魔力以外の別のエネルギーを使っている!?プララルド、それは本当なの!?宮古野君の、「黒の勇者」のエネルギー源は何なの!?」

 『俺様にだって分からねえんだよ!?奴の体から感じるエネルギーは歪で複雑に入り乱れていて、魔力にも似ているが、性質が違う!奴の使う力は、エネルギーは魔力じゃねえのは確かだ!量だって桁違いだ!こ、このエネルギー量は、なっ!?魔力換算でSSランクモンスター200体、いや、それ以上だと!?こ、コイツは、ば、化け物だ!?くそがっ、あのクソ女神、一体このガキにどんな改造を施しやがった!?このガキは天使よりもはるかに上の力を持っていやがる!くそっ、こんなふざけた化け物が勇者だと!?くそっ!?』

 「だ、SSランクモンスター200体以上・・・プララルドの約40倍以上の戦闘能力、そ、そんな馬鹿げたことがあり得るわけが!?魔力ではない別のエネルギーを使っている!?こんなことは計算外どころの事態じゃない!?くっ、何故、何故、宮古野君がそんな力を持っているの!?まさか、女神が私たちの動きを察知して彼に対策を施してきたと言うの!?いえ、最初から私たち他の勇者とは違う力を彼に与えていた!?全て女神の計算内だったとでも言うの!?」

 鷹尾とプララルドが混乱する中、僕は鷹尾たちに向かって言った。

 「僕を無視して二人だけで勝手に話を進めないでくれないか?お前たち、いくら計算外の事態が起きたからって戦闘中に余所見をするのは良くないぞ?ぶっちゃけ、混乱しているお前たち二人を瞬殺することだってできるんだぞ?初めに言っておくが、僕は魔力を一切、持っていない。クソ女神の加護なんて全くもらっていない。ジョブもスキルも持っていない。僕の戦闘能力は生まれつきだ。後、冒険者として実戦を積んだ成果だ。女神からチート能力をもらって、聖武器のレプリカをインゴット王国からもらって、おまけに堕天使とも融合したのにその程度の実力しかないって、鷹尾、お前、この約半年間、何やってたんだ?ああっ、モンスター討伐に全部失敗して、「ボナコン・ショック」事件を起こして勇者をクビになって、それから犯罪者に堕ちて、殺人に誘拐、テロ紛いの犯罪をしでかしたんだっけ?最近は犯罪オタクの知識を生かして犯罪ごっこで遊ぶので忙しかったもんな。三流以下の下劣な犯罪者になって、最低最悪の犯罪を起こすことに夢中で、碌に戦闘経験を積んでいない。そうだろ、冷酷クソ女?相棒は口先だけで威張ることしか能のない、馬鹿で最弱のクソ雑魚堕天使だもんな。本当に残念だな、お前たち二人とも。」

 僕に馬鹿にされ、鷹尾とプララルドは二人とも激しい怒りを露わにした。

 「くっ!?私たちを馬鹿にするな!?女神の加護をもらっていない!?生まれつきの戦闘能力!?そんな見え透いた嘘に引っかかるほど間抜けじゃないわよ!あなたが女神公認の勇者であることぐらい知っているわ!女神から加護を与えられていない人間が勇者になれるわけがない!小さい子どもでも分かることよ、そんなことは!あなたが私たちの想定以上の力を女神から与えられていることは最初から分かっていたわ!想定以上の、計算外の内容に少し驚いただけよ!動揺を誘っても無駄よ!こちらにもあなたに対抗する手段はあるの!ここからが本番よ!そうでしょ、プララルド?」

 『お、おう!?その通りだぜ、スズカ!「黒の勇者」、テメエが俺様たちの想像以上に強ええのは良く分かった!人間の勇者にしては中々やるじゃあねえか!だがな、この命を賭けたギャンブルの主宰者は、ゲームマスターは俺様だ!テメエはこの「ブラッディ・モンスター・ハウス」に入った時点で敗北が確定してんだよ!俺様の能力の凄さをたっぷりと思い知らせてやるぜ!スズカ、このクソガキ勇者に俺様たちの本当の力を見せてやるぞ!良いな?』

 「ええっ!もちろんよ、プララルド!」

 鷹尾とプララルドが僕に対して改めて闘志を燃やし、鷹尾が右手を突き出し、能力を発動させようとする。

 「ちょっと待った!やる気を出してもらったのは嬉しいが、僕から少しだけ話をさせてくれ。恒例のネタバらしをしてから先に進めないと今一、気分が乗らなくてさ。僕の推理を聞いてくれないかな?そう、例えば、この部屋のルールと罠について、とかね。」

 僕の言葉を聞いて、鷹尾の手が止まった。

 鷹尾のクールな表情には若干だが、目から驚きの感情を感じられる。

 「この部屋のルールと罠、と言ったわね?」

 僕は笑みを浮かべながら、鷹尾の問いに答える。

 「その通り。では、一つ、僕から推理ショーを披露しよう。犯罪オタクのお前なら、ミステリー小説とか謎解きとかは好きだろ?僕もミステリー小説を読むのは大好きだ。クソ雑魚堕天使、お前にも僕の推理を聞かせてやる。正解なら拍手をくれ。まず、この八階の部屋には、殺し合いにおける特別な追加ルールがある。そのルールとは、ずばり、この部屋の中では魔力を一切使ってはいけない、というモノだ。もし、ルールを破ると、違反者は全身の魔力をこの部屋に吸い取られ、魔力切れを起こし、良くて昏倒、最悪死に至る、という罠が作動する。魔力はこのアダマスでは戦うため、そして、生きるための重要なエネルギー源だ。全身から魔力を奪われたりしたら普通は助からない。鷹尾、プララルド、お前たちは、僕がこの部屋で魔力を使ってお前たちを攻撃し、僕がこの部屋の罠に嵌まって魔力を吸い取られ、魔力切れを起こしたところを仕留める作戦を計画した。偽者を用意したのは、本物を殺されるリスクを減らすためと、攻撃の的を増やしてより魔力を僕に使わせる機会を増やすため、この二つだ。お前たちがスキルを使わず、実体の矢で攻撃するのは、自分たちが罠に嵌まって魔力を吸い取られるのを防ぐため。僕に先制攻撃を許したのもわざとだ。少しでも早く僕を罠に嵌めて、確実に僕の息の根を止める算段だった。そうだろ?ただ、僕は一切魔力を持っていない。それがお前たちの作戦の大きな誤算となった。この部屋の罠が全く作動しない時点で、僕が魔力を一切持っていないし、使っていないことも、頭の良いお前ならすでに理解しているはずだ。最後に、お前は「完全支配」の能力で僕の精神を支配し、その隙を突いて僕を殺そうと考えている。あるいは、この「ブラッディ・モンスター・ハウス」自体に「完全支配」の能力を使って、ハウス自体の構造を変えて反撃しようと考えている。「完全支配」、あらゆる生物の精神を完全に洗脳し、支配することができる能力だったな。同時に洗脳し、操れる生物の数に制限はない。でも、その能力は自分よりレベルの低い生物にしか原則、適用されない。僕とお前のレベル差、正確にはパワーの差だが軽く50倍以上の開きがある。お前の「完全支配」は僕には一切、通用しない。他の堕天使たち同様にな。それと、ミミックベースとは言え、このハウスのレベルはSSランクモンスター10体分くらいはある。お前の二倍あるかないかのレベルだ。このハウスを完全に支配することもできない。精々、5分くらいしか支配できないはずだ。このハウスに堕天使の能力を使うだけでお前は力の大部分を失うリスクが伴う。あまりに危険すぎる、勝率だって限りなくゼロに近い無謀な賭けとしか言えない。さて、以上が僕の推理なわけだが、何か間違いがあれば指摘してくれ、冷酷クソ女。クソ雑魚堕天使、お前も反論があればどうぞ。ご清聴ありがとうございました。」

 僕は鷹尾たちに向かって、部屋のルールや罠、鷹尾たちの作戦、鷹尾たちの能力、次の行動について、ネタバらしと推理を披露してみせた。

 僕の推理ショーを聞いて、鷹尾とプララルドの二人は困惑を隠せない。

 「私たちの作戦も能力も初めから見破っていたと言うの!?スロウラルドから私たちの能力やこのハウスの仕掛けに関する情報を聞いていたとしても、作戦を見抜くことまではできるわけが!?ハウスの仕掛けを私たちが作り変えていた可能性だってあると言うのに!?次の行動まで読まれているなんて!?いつの間にそこまで私たちの情報を掴んだと言うの!?」

 『スロウラルドはこのハウスの仕掛けは、特にこのデス・タワーの仕掛けについては知らねえはずだ!?あのグウタラ女はこのハウスのことを嫌ってたはずだ!?俺様たちがこのハウスの話をしても興味ねえと言って、全く話を聞こうとはしなかった!?何で俺様たちと同じくらい、このハウスの構造に詳しいんだ!?何で俺様の「完全支配」の能力を持ち主である俺様と同じくらいに詳しく知っていやがる!?こ、このクソガキ、一体、どんだけの能力を持っていやがる!?ま、まさか、ステータスの鑑定能力を持っているのか?俺様たちよりはるかに高性能の奴を!?思考を読む能力まで持っているのか!?こ、こんなのデタラメ過ぎる!?あのクソ女神、人間をとんでもねえ化け物に改造する技術を手に入れやがったに違いねえ!くそがっ、本当に忌々しいクソ女神だぜ!』

 「正解なら拍手をくれ、間違いがあるなら指摘してくれ、そう言ったはずだ。質問を質問で返すのは、論破中毒の、自分のことを天才だとか論理的人間だとか言って、屁理屈や詭弁をさも常識みたいに言って他人を馬鹿にして見下す、性質の悪い迷惑なナルシストのすることだぞ。ああっ、お前たち二人とも、平気で自分の都合で他人を裏切ったり、犯罪を行ったりして、それをさも当たり前のことだとか言う、傲慢で詭弁家で性質の悪いナルシストの犯罪者だったな。せっかくの僕の推理ショーが台無しだ。だから、お前たちみたいな悪党は嫌いなんだよ。僕の能力を一々全部、お前たちに説明する気はない。少しは自分たちで推理して当ててみろよ。正解できた頃にはとっくに地獄に落ちているだろうけど。お前たちに付き合うのもいい加減、飽きてきた。攻撃してこないなら、このまま一気に止めを刺す。分かったか、自称天才の、間抜けで、下劣な犯罪者の、冷酷クソ女ども?」

 僕は闇のバリアーの中で呆れた表情を浮かべながら、鷹尾たちに向かって皮肉と挑発の言葉を述べた。

 「くっ!?この私を何度も間抜けだの、下劣な犯罪者だの虚仮にするのもここまでよ、「黒の勇者」!私の能力と作戦であなたを確実に仕留めてあげるわ!行くわよ、プララルド!」

 『了解だぜ、スズカ!俺様も全力で手を貸すぜ!生意気なクソガキ勇者、テメエは俺様たちが殺す!散々虚仮にしてくれた借りを100倍にして返してやらぁー!行くぜ、スズカ!』

 融合するプララルドからサポートを受ける鷹尾が、全身を藍色に光らせながら、「完全支配」の能力を発動する。

 さらに左手に弓を持って前に突き出しながら、弓に藍色の魔力のエネルギーを流し込み、弓から強風を発生させ、風を小さな竜巻状に変えると、小さな竜巻を全身に纏い、自身の半径5m以内の空間に風の防御壁を作り出した。

 加えて、背中の矢筒に入っていた数本の実体の矢を竜巻の中に投げ入れ、矢が竜巻状の風の防御壁の中を、高速で移動するカッターの刃のようになってグルグルと風に乗って回っている。

 「さぁ、どこからでもかかってきなさい、「黒の勇者」!」

 僕は千里眼で鷹尾の行動を観察し、分析すると、数秒考えこんだ後、対策を思いついた。

 僕は笑みを浮かべながら、闇のバリアーを解除すると、霊能力のエネルギーをさらに解放し、右手に持つ黒い拳銃へと注ぎ込んだ。

 それから、部屋の右側の壁に向かってトリガーを引き、弾丸を放った。

 「浮闇沈闇」の効果を持つ弾丸が部屋の右側の壁に撃ち込まれ、炸裂した瞬間、部屋の重力の向きが右方向へと変化した。

 僕は弾丸を放った直後に右側の壁へと瞬間移動し、右側の壁に垂直に立つように自分の肉体にかかる重力の方向を変えた。

 一方、突然部屋の重力の方向が右方向に強制的に変えられたことで鷹尾は思わず体勢を崩し、自身と右側の壁の間にある彫刻に勢いよく体をぶつけた。

 「キャッ!?がっ!?ぐっ!?」

 彫刻をいくつか砕きながら、体勢を崩して転んだ状態のまま、鷹尾は右側の壁に引き寄せられていく。

 体勢を崩され、彫刻に何度もぶつかったショックによる痛みで精神が乱れ、鷹尾の風の防御壁は解除されてしまっている。

 僕はすかさず今度は部屋の天井側に向けて弾丸を放ち、天井に撃ち込んだ。

 部屋の重力の方向が、天井側に向かうように上方向へと変化する。

 僕は瞬間移動能力を使い、重力操作を使い、天井から逆さに立ったような状態になるよう、自身の肉体にかかる重力の方向を操作する。

 一方、鷹尾は、今度は右側の壁から一気に天井へと、重力の方向変化のために引き寄せられ、先ほど同様、室内の彫刻にいくつかぶつかりながら、背中から転げ回るように天井へと強制的に引き寄せられる。

 僕はそれからも、部屋の左の壁、部屋の床などにそれぞれ弾丸を撃ち込み、部屋の重力の向きを強制的に弾丸を撃ち込んだ方向へと変化させ、鷹尾の体勢を何度も崩させ、床や天井、壁などに何度も引き寄せ、彫刻に体をぶつけさせ、間接的にダメージを与えながら、鷹尾の方向感覚を狂わせていく。

 「がっ!?はぁ、はぁ、な、何が起こっているの!?何故、この私ばかりにダメージが!?プララルド、ちゃんとサポートをしてちょうだい!」

 『お、俺様はちゃんとサポートしているぜ、スズカ!くそっ、何だ、一体どうやって俺様たちに攻撃していやがる!?』

 右側の壁側にある彫刻に両手でしがみつき、傷だらけになりながら対策を考える鷹尾とプララルドの前方10mの位置に、右側の壁に垂直に立つような状態で重力を操作する僕が笑みを浮かべながら、鷹尾たちに向かって言った。

 「「完全支配」の能力とやらも全然、大したことはないなぁ。この部屋に能力の使用を限定することで、能力を使用できる時間を延ばし、さらにルールと罠を変更することで僕を仕留めるつもりらしいが、詰めが甘いな。敵に直接攻撃を加えてはいけない、か。新ルールに違反した違反者は、敵に仕掛けた攻撃が自分の方向に強制的に軌道が変わり、自分の攻撃で自分を傷つけることになる。風を操作して風の防御壁を作り、僕にわざと攻撃させ、罠に嵌めて仕留める。だが、残念。その程度の小細工は僕には通用しない。バトルフィールドに介入する能力を僕は持っている。お前を直接攻撃せずとも、バトルフィールドであるこの部屋にちょっとした工夫を施して、お前の動きを封じることも、間接的に攻撃を加えることもできる。まともに立つこともできない状態でまだ、無駄な勝負を挑む気か、冷酷クソ女?」

 「くっ!?バトルフィールドに介入する能力!?こちらと似たような能力を持っていると言うの!?プララルド、ルール変更よ!防御ではなく攻撃主体にチェンジよ!こちらから攻撃を仕掛けていかなければ「黒の勇者」には勝てない!分かったわね?」

 『了解だぜ、スズカ!次から次に面倒臭ええ能力を出しやがって、本当にムカつくクソガキだぜ!次で確実にテメエを仕留めてやるぜ、クソガキ勇者!』

 鷹尾が全身を藍色に発光させ、掴んでいた彫刻からパッと手を離し、左手に持っていた弓をサッと構えると、風の矢を生み出し、僕に向けて放った。

 風の矢は超高速で飛びながら、途中で分裂し、五本の風の矢へと分裂した。

 五本の風の矢は僕の前後左右、頭上に向かって一本ずつ飛んできて、僕を取り囲んで、僕の体を射抜こうとする。

 僕は瞬間移動能力で部屋の床へと移動し、重力操作で重力も通常の状態に戻した。

 五本の風の矢には自動追尾能力もあり、尚も執拗に僕を追いかけてきて、僕の前後左右、頭上から僕の体を射抜こうと襲い掛かってくる。

 僕はさらに「闇零磨滅」の能力を発動すると、右手に持つ拳銃より「闇零磨滅」の効果を付与した霊能力の弾丸を五発、素早く発射した。

 前後左右、頭上に向けて一発ずつ弾丸を撃ち、弾丸と風の矢が近づいた瞬間とほぼ同時に、僕の放った弾丸が風の矢とぶつかる前に途中で炸裂し、風の矢ごと僕の周囲の空間を消去した。

 それから、僕は重力操作が解除されて、右側の壁付近より床に落下して尻もちをつき、体勢を崩したため、床から起きようとしている鷹尾の胴体目がけて、「闇零磨滅」の効果を持つ弾丸を放った。

 僕の放った弾丸が超高速で鷹尾の胴体を撃ち抜き、鷹尾の胴体を撃ち抜いた瞬間、鷹尾の首から上の部分以外の肉体が、空間ごと消し飛んだ。

 「がはっ!?」

 口から血を吐き、首だけになって床に転がる鷹尾の姿があった。

 首だけになった鷹尾を見ながら、僕は呟いた。

 「次は必ず止めを刺すとか言って、自分が止めを刺されるなんて、やっぱり間抜けだな。戦闘中に防御をしてはならない、ねぇ。敵からの攻撃を体や武器、スキル、魔法を使って防ぐことも禁止。攻撃をかわすことも禁止。ルールに違反した場合、違反者に向かって天井と床から超強力な粘液が噴射され、違反者は全身を粘液まみれにされ、粘液が固まって動けなくなる、という罠が作動する。粘液が顔にかかって固まれば、呼吸ができなくなって死に至る。確かに凶悪なルールと罠だ。けど、攻撃を攻撃するなら、自分の攻撃に敵の攻撃を巻き込んで無力化するなら、ルール違反にはならない、自動追尾の効果を持つ風の矢を何本も放って、僕に防御させる魂胆だったんだろうが、やっぱり詰めが甘い。ぶっちゃけ、お前の風の矢なんぞノーガードでも十分耐えられるんだよ。敢えてお前の仕掛けた罠を利用させてもらったがな。手加減されるほどの実力差があることくらい、とっくに気づいていると思ったが、プライドの高い間抜けなお頭がそれを許さなかったらしい。何てあっけないやられ方だ。他の六人の方がもっと手ごたえがあったぞ。」

 僕がそんなことを呟いていると、床に転がっている鷹尾の首から突然、大声が聞こえる。

 「アァーーー!」

 僕が大声に気付いて鷹尾の首を見ると、鷹尾の首が藍色に眩しく光り輝き、それから、鷹尾の首から下より消し飛んだ肉体が、欠損していた肉体のほとんどがたちまち、一瞬で再生した。

 鷹尾は肉体を再生すると、床に片膝をつき、息を切らしながら、呟いた。

 「はぁー、はぁー!?ふぅー、ふぅー!?わ、私がこんなところで、あんな汚れた男に殺させるわけにはいかない!まだまだイケるわね、プララルド?」

 『ああっ、もちろんだぜ、スズカ!少し力を使ったが、あの程度の攻撃でやられる俺様たちじゃあねえ!「黒の勇者」、最初に言ったはずだ!テメエはこの俺様には絶対に勝てねえとな!この命を賭けたギャンブルのゲームマスターは俺様だ!俺様をテメエごときクソガキが倒そうなんぞ、1,000年早ええんだよ、ボケが!』

 復活した鷹尾とプララルドを見ながら、僕は言った。

 「なるほど。自称最強の堕天使とあって、素のスペックの再生能力は他の堕天使よりも高いと。だけど、その再生能力はそう何度も使える技じゃないよな?首以外を瞬時に再生させるとなると、相当のエネルギーを今ので消費したはずだ。僕と「完全支配」の能力を使いながら戦闘を続けるとして、先にエネルギー切れを起こすのはどう見てもお前たちの方だ、冷酷クソ女ども。お前の体を吹き飛ばした弾丸を全身にぶち込んで、お前もプララルドも木っ端微塵に吹き飛ばすなんて、何時でもできるんだぞ。何なら、今から試してみるとしよう。」

 僕は霊能力のエネルギーを右手に持つ拳銃のシリンダーに流し込み、霊能力の弾丸を込めると、照準を鷹尾の頭部に合わせ、銃口を向け、笑みを浮かべながら、鷹尾たちに向けて言った。

 「くっ!?S&W M29、44マグナム弾を連続六発発射できる大型リボルバーの傑作銃!?ダーティー・ハリーを気取るつもりかしら?汚らわしい犯罪者の子供が、この私に銃を向けるな!」

 普段は冷静沈着な、氷のように冷たい女である鷹尾が珍しく声を荒げ、激しい怒りの感情を露わにした。

 「汚らわしい犯罪者の子供?何を言っているんだ、冷酷クソ女?僕は別に犯罪者の子供じゃあないぞ。犯罪者の子供だからと言って、その子供が悪人になるとも限らないし、差別されることもあってはならない。犯罪者になるかどうかは、人間の心の持ちようだ。何を勘違いしているのかは知らないが、僕の実の両親はごく普通の会社員だ。祖父は小さな大学で民俗学を教える教授をしていた。僕に至っても、犯罪歴は全くないし、補導されたことも一度も無い。むしろ、補導されるようなヤンキーや半グレに虐められたり、難癖をつけられたりしたことがあって、完全に被害者だ。あっ、もしかして、僕の叔父のことを言っているのか?確かに僕の叔父は会社の金を横領した罪で逮捕されて刑務所に入っているが、あの叔父のことを言っているのか?言っておくが、あの虐待やネグレクトをしてくる叔父の下に実の両親が亡くなった後、一時期引き取られたことがある。けど、あの人間のクズで毒親の叔父と一緒に暮らしたのは小学校の間だけだ。中学生になってからは、僕は天涯孤独の身で、専属の弁護士さんのサポートを受けながら一人静かに暮らしていたんだ。僕の親戚で犯罪者になったのは叔父だけだし、僕も僕の家族も全く犯罪歴はない。叔父との縁も既に切れている。元から親戚とも家族とも思っていない。言いがかりをつけるのは止めてもらおう。それに、犯罪者はお前の方だろうが、冷酷クソ女。警察署長の娘の癖して、異世界だからって、連続殺人に誘拐、器物損壊、国家反逆罪、脱獄、テロ、数え切れないほどの罪を犯している本物の犯罪者はお前だ。三流犯罪者でさえ嫌うほどの下劣な行為を平然と行う最低最悪のクソ犯罪者のお前に、この僕を非難する権利は微塵もない。反論できるもんなら反論してみろ、冷酷クソ女!」

 僕は激しい怒りを露わにしながら、鷹尾の僕や僕の家族を侮辱する言葉に対して猛抗議した。

 「ぐっ!?犯罪者の下で育った汚らわしい男に、この私の何が分かると言うの!?私たちが勇者をクビになって犯罪者となるよう仕向けた張本人が、卑劣な罠で私たちを追い詰めたイカれた復讐鬼が、この私に正義を語るな!」

 『お、落ち着け、シズカ!?いつものクールなお前らしくないぜ?奴のペースに呑まれるんじゃねえ!冷静になって、奴を確実に仕留めることだけに集中しろ!奴と口喧嘩をしたところで勝率は1%も上がらねえ!分かったな?』

 「ふぅー、ふぅー。あ、ありがとう、プララルド。おかげでクールダウンできたわ。流石は「黒の勇者」、他の勇者たちを殺してきた本物の復讐鬼ね、宮古野君。私たちへ復讐するためなら武器にさえこだわるほどの復讐への執着心と覚悟、復讐を成し遂げるために得た能力の数々、緻密な計画、敵を翻弄する話術、実に見事だわ。あなたには一流の犯罪者と遜色ないほどの犯罪に関する無自覚の才能がある。それは認めるわ。警察署長の娘であり、犯罪研究に力を入れてきた私から見ても、あなたの復讐の完成度は素晴らしい。でも、あなたの復讐はここでお終いよ。私の知識も頭脳も、全てを使ってあなたを倒す!行くわよ、プララルド!」

 『よしっ、任せろ、スズカ!』

 鷹尾は落ち着きを取り戻すと、全身を藍色に発光させながら、僕から見て、正面より斜め左の位置へサッと移動しながら、風の矢を僕に向けて放ってくる。

 僕は瞬間移動能力で一旦、さらに30mほど後方の位置に移動すると、全身から紫色の霊能力のエネルギーを解放した。

 僕は全身に紫色の霊能力のエネルギーを纏いながら、両手両足に紫色の霊能力のエネルギーをさらに集中させる。

 「闇門開闔!オリャっ!」

 僕は目の前の何もない空間に向かって右ストレートのパンチを勢いよく繰り出した。

 パンチを繰り出した瞬間、右拳の先の空間に、ポッカリと小さな穴が開いた。

 そして、部屋の左側、僕から見て左斜め前方50mの位置で弓を構えている鷹尾の鼻先の空間にも、ポッカリと小さな穴が開いた。

 次の瞬間、鷹尾の鼻先の空間にポッカリと開いた小さな穴から、僕の右ストレートパンチが飛び出し、鷹尾の顔面にクリーンヒットした。

 「がっ!?」

 さらに、僕が右足で回し蹴りを繰り出すと、右足の先の空間にポッカリと小さな穴が開いた。

 鷹尾の左脇腹の横の空間にポッカリと小さな穴が開き、その穴から僕の右足の先が飛び出て、鷹尾の左脇腹に勢いよく回し蹴りがヒットした。

 「ゲボっ!?」

 左脇腹に突然、回し蹴りを食らい、部屋の左側の壁に勢いよく吹っ飛ばされ、さらに脇腹を蹴られた痛みで、脇腹を抑えながら倒れ込む鷹尾の顎の下の空間に、いつの間にか、ポッカリと小さな穴が開き、右拳より繰り出した僕のアッパーカットが、空間通しを繋ぐゲートを通して、勢いよく飛び出ると、鷹尾の下顎にクリーンヒットし、鷹尾の下顎を粉々に粉砕しながら、鷹尾を後方へとぶっ飛ばした。

 「ブベっ!?」

 空間を超えた僕の繰り出すアッパーカットを下顎に食らい、下顎の骨を砕かれ、口と鼻から大量の血を流しながら、鷹尾は後方に吹っ飛んで床に背中から倒れた。

 僕は右足を大きく振り上げると、勢いよく床に向かって振り下ろした。

 僕の振り下ろした右足の先の空間にポッカリと小さな穴が開いた。

 そして、仰向けになって床でのびている鷹尾の下顎が砕けた顔面の前の空間に、ポッカリと小さな穴が開いた。

 鷹尾の顔面の前の空間に現れた小さな穴の向こう側から僕の勢いよく床に向かって振り下ろした右足が、鷹尾の傷ついた顔面にヒットし、鷹尾の顔面を潰した。

 「セイっ!」

 「アガっ!?」

 僕は空間通しを繋ぐゲートから何度も勢いよく右足を振り下ろし、鷹尾の顔面を何度も右足で押し潰した。

 ドン、ドン、ドンという大きな音を立て、鷹尾の頭部がある床を割るほどの威力で、何度も僕の右足が鷹尾の顔面を情け容赦なく踏み潰していく。

 一分ほど右足で鷹尾の顔面を踏み潰し続けると、僕は「闇門開闔」を解除し、右足での攻撃を止めた。

 鷹尾の顔面は原型を留めないほどに顔中の骨が折れ、鼻や目が潰れ、歯は全て折られ、顔の皮膚が裂け、口と鼻から大量の血を流し、顔面はひしゃげている。

 鷹尾の無惨に顔面を潰され、床に倒れている姿を見ながら、僕は言った。

 「三流以下の下劣な犯罪者が、この僕を犯罪者と呼ぶな。僕は悪党が大嫌いなんだ。地獄に叩き落とすくらいにな。何より、この僕の復讐を、お前の卑劣で最低最悪の犯罪と同列に扱うんじゃない。虫唾が走る。おい、とっとと起きろ、三流以下の下劣な犯罪者の冷酷クソ女。プララルドの力で早く再生しろ。お前が自分の罪を認めて、自分が下劣な犯罪者であることを自白するまで、何度でもお前をぶちのめす。お前が再生できる限り、何度でもお前のその汚い悪人面をぶっ潰す。ほら、さっさとかかってこい!」

 『おい、起きろ、スズカ!?このままだとマジで「黒の勇者」に殺されるぞ!?早く起きろ!再生能力はまだ使える!早く目を覚ませ!』

 プララルドが気絶する鷹尾に必死に呼びかける中、鷹尾がプララルドの声に反応し、ゆっくりと体を起こした。

 全身を藍色に光り輝かせ、再生能力を使いながら、必死に顔や体に受けた傷を再生させながら、口から折れた歯や血を吐き出すと、僕を睨みつけてくる。

 「ぺっ!はぁー、はぁー、こ、殺してやる!この私の顔を何度も土足で踏みつけやがって!「黒の勇者」、お前はこの私が絶対に殺す!お前を今すぐ排除する、この計画外のお邪魔虫が!」

 「ようやくお目覚めか。寝起きの気分はどうだ、冷酷クソ女?顔面は血まみれにされるより、糞まみれにされた方が良かったか?ボナコンの糞が大好きなお前にとってはその方がお似合いだもんな?お前が何をしようが無駄だ。敵の正面に立ってはいけない。それがさっきお前が能力を使って変更したこの部屋のルールだ。ルールに違反すると、部屋中から失明するほどの強力な閃光が放たれ、違反者も敵も、部屋にいる者全員が失明する、という罠が作動する。プララルドと協力して、何度ルールと罠を変えようが、僕はその度に対応する。お前たちの「完全支配」の能力は僕には通用しない。それに、今また再生能力を使ったせいでもう「完全支配」の能力を使えるほどの力は残っていないはずだ。この部屋だけに能力の使用を制限しても、連続30分が限界ってところだろ。既に僕と戦い始めてから20分が経過し、おまけに再生能力を二回も使ってしまった。おっ、どうやら「完全支配」の能力が解除され始めたようだな。この部屋のルールと罠が一番最初の状態に戻っていくのが分かるぞ。さて、どうする、冷酷クソ女?」

 僕は笑みを浮かべながら、鷹尾を挑発する。

 八階の部屋にかけた「完全支配」の能力が解除されていくのが鷹尾にも伝わり、鷹尾は焦り出した。

 「もうタイムリミットが来たと言うの?くっ、プララルド、「完全支配」をもう一度使うことはできないの?」

 『くそっ、もう「完全支配」の能力を使えるほどの力は残っていねえ!?完全に向こうにペースを狂わされて、想定以上の力を使っちまった!もうお前に貸せる「完全支配」の力までは残っていねえ!それに、奴のさっきの攻撃、あ、アレは間違いなく、空間操作能力だ!別空間通しを繋げて、お前に攻撃を仕掛けたんだ!空間操作能力は神かごく一部の天使にしか使えねえ能力のはずだ!くそっ、何で人間のガキが空間操作能力を使えるんだ!?あのクソ女神、何をしやがった!?なっ!?こ、コイツ、ま、まさか・・・』

 「空間操作能力ですって!?そんな桁違いな能力まで持っているなんて!?くっ!?プララルド、空間操作能力への対処法があったら教えて!今すぐよ!」

 『そ、そんな悠長なことを言ってる場合じゃねえ!今すぐここから逃げるぞ、スズカ!コイツは、「黒の勇者」は神と融合していやがる!どっかの神とこのクソガキは融合してるんだよ!空間操作能力を使える、神と融合しているコイツとまともに戦っても勝ち目はねえ!急いで逃げるぞ、スズカ!』

 「か、神と融合!?そ、そんな馬鹿なことが!?どっかの神って誰よ!?女神に協力する別の神がいて、「黒の勇者」と融合して攻撃してきたと!?こ、こんな馬鹿げた事態が本当に起きるなんて!?」

 『ボサっとしてんじゃねえ!?さっさと逃げるぞ、スズカ!』

 「くっ!?」

 僕が闇の女神と合体している事実に気付き始めたプララルドが、勝ち目がないと言って、混乱する鷹尾を叱り飛ばし、鷹尾に逃げるようアドバイスする。

 鷹尾が背中から黒い堕天使の二枚一対の翼を生やし、部屋の一番右奥に急いで向かうのを、僕は見逃さなかった。

 部屋の一番右奥の隅に置いてある、金色の小舟に向かって、僕は素早く右手に持つ拳銃の銃口を向けた。

 霊能力のエネルギーを拳銃に流し込み、「闇零磨滅」を発動し、拳銃のトリガーを引いた。

 拳銃から「闇零磨滅」の効果を付与した霊能力の弾丸が超高速で発射され、鷹尾を追い越し、金色の小舟へと撃ち込まれた。

 弾丸が金色の小舟を撃ち抜いた瞬間、金色の小舟は空間ごと消去され、跡形もなく消滅した。

 金色の小舟が消滅したのを見て、鷹尾は慌てて飛ぶのを止めた。

 「なっ!?ボ、ボートが破壊された!?くっ!?」

 『何だとっ!?くそがっ、これじゃあ脱出できねえ、くそっ!?』

 金色の小舟を破壊されて悔しがる鷹尾とプララルドを笑いながら、僕は言った。

 「ハハハ!お前たちの魂胆なんて最初から全部、お見通しだ!お前たちがいざという時のための、非常時の脱出手段を用意していたことくらい、調査済みだ!ゴールデン・パスボート、SSランクモンスター7体分の魔力を消費する代わりに、半径10㎞以内の好きな場所に転移できる、転移魔法を使える乗り物型の魔道具だ!僕との戦いに万が一やられるようなことがあったらいけない、そういうリスクまで計算してあらかじめ脱出用の手段を自分の手元に置いておく、お前はそういう奴だ、冷酷クソ女!この部屋に不釣り合いな物が置いてあると思って、この部屋に入る直前に鑑定して調べておいた!その魔道具を使われて逃げられたらいけないと思ってずっと探していたんだが、調べて正解だったよ!というか、やってることは死んだ沖水たちと全く同じだな!あの変態オタク食人鬼の方がもっと上手く逃げたぞ!まぁ、すぐに取っ捕まえて殺したけどさ!さてと、これで逃走手段は防いだ!デス・タワーの外は僕の仲間が包囲している!言っておくが、僕の仲間は僕よりもずっと強い!おまけに、お前たちは完全に消耗し切っている!立場が一気に逆転したなぁ、三流以下の下劣な犯罪者の冷酷クソ女!ご自慢の天才的頭脳では、実はこの事態になることは計算済みなのか?ほら、僕を殺すためのとっておきの作戦とやらを披露してみせろよ!命を賭けたギャンブルを自分から仕掛けておいて勝手に逃げるのはルール違反だぞ、ええっ、冷酷クソ女?ゲームマスターのクソ雑魚堕天使、負けを認めるんなら払ってもらうか、ゲームの報酬って奴を!報酬はお前たちの命だけどな!Are you OK?」

 僕に脱出用の魔道具を破壊され、逃げ道を完全に失い、鷹尾たちは動揺している。

 「くっ!?脱出用の魔道具の存在まで既に調べられていたなんて!?」

 『ま、マズいぜ、スズカ!?奴の存在は、力は俺様たちの想定なんぞ軽く超えちまってる!神と融合できる人間自体、まず、存在があり得ねえ!神の力は、存在は人間の肉体じゃあ受け止め切れねえほどのモノだ!だが、あのガキは、平気で神と融合していやがる!あのガキも異常だ!人間かどうかも既に怪しい!クソ女神の改造に加えて、どこぞの得体の知れねえ神と融合までしてやがる!さ、策が、奴を殺す策がねえ!?くそっ、何でだ、何でこうなっちまった!?何でまたクソ女神とクソ勇者どもにこの俺様がやられなきゃならねえんだ!?ああっ、イライラするぜ!』

 「こうなったら、一か八かの大勝負に出るしかないないわ!この手だけは使いたくなかったんだけど、仕方ない!切り札を出すとしましょう!」

 『き、切り札だと!?まさか、アレをここで使う気か?正気なのか、スズカ?』

 「他に手は無いわ。自分の運を信じるしかないわ。」

 鷹尾は僕の方を向くと、腰のアイテムポーチから一本の白い金属製の矢を取り出し、左手に弓を持って構えると、白い矢を番えて、矢を僕の方へと向けて立ち止まった。

 鷹尾の持つ白い金属製の矢は、ミストルティン。

 ゾイサイト聖教国で開発された新合金セイクリッドオリハルコンをベースにできた金属製の矢で、着弾地点より半径1㎞以内にある全てのモノを焼き尽くし、焦土と化す威力の炎の魔法が込められた大量破壊兵器である。

 もし、今、ミストルティンを発射され、ミストルティンがブラッディ・モンスター・ハウスのどこかに着弾した時点で、僕たちのいるブラッディ・モンスター・ハウスは一瞬で消滅する危険性がある。

 「お前のことだから、ミストルティンを一本くらい隠し持っているかとは思っていたが、いくら何でも敵を巻き添えに自爆することを選ぶことはないだろ?そんな面倒で物騒な代物はとっととしまえ。もっと頭を使った攻撃を仕掛けてくるかと思ったら、大量破壊兵器を手にして脅迫するか。切り札と聞いて少々、残念だよ。後処理が面倒なんだぞ、それ。自称天才の一流犯罪者が聞いて呆れる。警察官の娘として、これまでに犯した罪を償うため、大人しく捕まって処刑されるなり、自決を選ぶなり、そういう良心や正義がお前には全く残っていないのか、冷酷クソ女?恥ずかしくないのか、お前?」

 「黙れ!減らず口を叩けるのもこれまでよ!いくら神と融合しているあなたでも、ミストルティンの爆発に巻き込まれれば無事ではすまないはずよ!例えあなたが強力な再生能力を持っていたとしても、驚異的なスピードを持っていたとしても、無傷とはいかない!ミストルティンが爆発すれば私は最悪死ぬかもしれない!けど、外にいるあなたのお仲間はミストルティンの爆発に果たして耐えられるかしら?スロウラルドの能力で時間を巻き戻すよりもミストルティンの爆発のスピードの方が速い!大切なあなたのお仲間全員の命を守ることがあなたにできるかしら?お互いの命を賭けて、どちらが生き残れるか試してみるとしましょう、「黒の勇者」?」

 鷹尾が弓を構え、ミストルティンを弓に番え、真剣な表情を浮かべながら、僕に最後の勝負を挑んできた。

 僕はため息をつくと、口元に笑みを浮かべながら、鷹尾に言った。

 「はぁー。しょうがない。面倒臭いけど付き合ってやるよ。撃てるものなら撃ってみろ、三流以下の下劣な犯罪者。結論から先に言うと、お前はもう既に、僕に敗北している。ミストルティンを持ち出した時点でな。僕も僕の仲間たちも全員無傷、そして、お前はさらなる醜態を晒して自滅する。これは予測でも脅しでもなく、紛れもない確定した未来だ。ほら、早く撃てよ、ノーコンの自称「弓聖」の冷酷クソ女。何なら的を用意してやるよ。僕の左手をお前のへなちょこな矢が本当に射抜けるか、逆に試してやる。バリアーは無いんだ。今度は外すなよ、自称「弓聖」。」

 僕は左手を上げると、鷹尾を挑発した。

 僕から挑発され、鷹尾は鋭い眼光を向け、怒りの表情を浮かべながら、僕に矢を向ける。

 「ど、どこまでもこの私を馬鹿にして!?その人を舐め切った態度は本当に腹が立つ!良いわ!お望み通り、あなたの左手ごと、あなたをミストルティンで吹き飛ばしてあげる!この私を本気で怒らせたことを後悔させてあげる!」

 鷹尾は弓を構えながら、両腕に藍色の魔力のエネルギーを生み出すと、弓と矢に藍色の魔力を一気に流し込み、それから弓より素早く矢を発射した。

 「疾風必中!」

 鷹尾の放ったミストルティンには魔力が流れ、ミストルティンは点火した状態のまま、さらにミストルティン全体を竜巻状に高速回転する風が覆い、鷹尾のスキルによりスピードを強化され、超高速でミストルティンが、僕の左手を射抜いて爆発しようと飛んで来る。

 鷹尾の放ったミストルティンが僕の左手を射抜く直前に、僕は僕の左手に向かって飛んで来るミストルティンを目で捉えると、瞬間移動能力を発動した。

 ミストルティンが僕の左手を射抜くか射抜かないかという直前のタイミングで、僕の左手が一瞬、紫色に光り輝いた。

 その瞬間、僕の左手に迫っていたミストルティンが空中から一瞬にして消えた。

 「なっ!?み、ミストルティンが消えた!?そ、そんな馬鹿な!?」

 『ミストルティンを消しただと!?何だ、一体何をしやがった!?』

 自分たちの放ったミストルティンが消え、混乱する鷹尾とプララルドに向かって笑みを浮かべながら、僕は二人に向けて言った。

 「そんなことを気にしている場合か?ミストルティンより自分の心配をしろよ、間抜けの冷酷クソ女。」

 僕がそう言った直後、鷹尾の全身から藍色の魔力のエネルギーが強制的に流れ出し、部屋が鷹尾から全身の魔力のエネルギーを急速に吸い取っていく。

 「ああっ!?く、苦しい!?あ、頭が痛い!?」

 鷹尾は頭を抑えながら、呼吸を荒げ、その場に倒れ込んだ。

 鷹尾がミストルティンを使うために魔力を使用したため、八階の部屋の罠が作動し、鷹尾の全身から魔力を強制的に吸い取っていく。

 鷹尾は全身の魔力をほとんど吸い取られてしまい、魔力切れを起こして昏倒し、頭痛を起こし、全身をピクピクと震わせ、その場に崩れ落ち、意識朦朧といった感じだ。

 「ああっ、ああっ!?~」

 『ス、スズカ、しっかりしろ!?ここで倒れたら俺様たち二人ともお終いだ!俺様の力を使え!残っている力で回復するんだよ!急げ!』

 プララルドが必死に鷹尾を励まし、鷹尾はプララルドから与えられた堕天使の力を使い、力を振り絞って最後の再生能力を発動した。

 鷹尾の全身が藍色に一瞬光り輝いた後、鷹尾が息を切らしながらも、意識を取り戻し、片膝をついて、何とか体を起こした。

 「はぁー、はぁー。くっ、最後の再生能力まで使い切ってしまった!?こ、こんなはずじゃなかったのに!?」

 『スズカ、こうなったら逃げ回る以外に策はねえ!急いでこの部屋を出るぞ!』

 「おっと。誰がお前たちを逃がすもんか。お前たちのくだらない命を賭けたギャンブルとやらも、お前たちの下劣な犯罪も、そして、お前たちの命もここで終わりだ。約束通り、命をいただく。いい加減、地獄に落ちる覚悟はできたか、自称天才の下劣な犯罪者の冷酷クソ女ども。」

 鷹尾とプララルドの目の前に、瞬間移動した僕が現れ、鷹尾の頭に、右手に持つ拳銃の銃口を向けながら言った。

 「くっ、何故、何故、ミストルティンは消えたの!?どうやって、ミストルティンを防いだと言うの?」

 悔し気な表情を浮かべる鷹尾に銃口を向け、笑みを浮かべながら、僕は鷹尾の問いに答えた。

 「ハハハ!別に大したことはしていない!ミストルティンを別の場所に転送しただけだ!今頃は「魔の海域」、誰も近寄らない海の底で爆発してる頃だろうな!瞬間移動能力を応用してミストルティンを遠い海の底に転送して無力化した、それが真相だ!てっきり僕が瞬間移動できることにとっくに気付いているかと思っていたが、まさか、最後の最後まで気付いていなかったなんて、意外に観察力無いんだな、冷酷クソ女。」

 「しゅ、瞬間移動能力・・・こ、高速移動ではなく、瞬間移動をずっと使っていた!?」

 『ば、馬鹿な!?瞬間移動を使えたとしても、高速で移動する物体の転送なんて芸当、神にだってできる奴は早々、いねえ!静止した物体の転送ならまだしも、高速で移動する物体を別の場所に転送するなんぞ、そんなことはクソ女神よりよほど高位の神か、空間操作能力のエキスパートにしかできねえことだ!まさか、あのクソ女神に高位の神々が本気で手を貸してるって言うのか?あの性悪女神の戯言をマジで信じてるってのか!?くそっ!?』

 「高速移動も使えるぞ。僕が本気で走れば、雷よりも何倍も速く走ることもできる。でも、高速移動は僕にとっては基本的な技の一つに過ぎない。今回は敢えて瞬間移動を使った。僕や僕の仲間が瞬間移動を使えることを知っている人間は外部にはほとんどいないし、お前たちも流石に知らないだろうと思ってね。でも、空間操作能力があることを明かした時点で、僕が瞬間移動を使えることに気付くべきじゃないか?それと、僕の挑発に乗ったのも迂闊だったな。僕が左手を的にしろと言ったのは、ミストルティンの動きを正確に捉えるためだ。高速で移動する矢を別の場所に転送するなんて、正直面倒なことだ。ご丁寧に僕の左手を狙ってくれてありがとう。おかげで手間が大分省けたよ。さて、お前のアイテムポーチの中や衣服の中を調べるが、ミストルティンは無いようだな。正真正銘、最後の一本だったわけだ。魔力のほとんどをこの部屋に吸収され、スキルも使えない。堕天使の能力も、さっきの再生でほぼ使い切ってしまった。他に小細工や武器も持ってはいない。鷹尾、プララルド、お前たちにもう戦う手段は全く残っていない。お前たちの仕掛けたギャンブルは僕の全戦全勝、お前たちの完全敗北となった。僕の言った通りの未来になったな。終わりだ、冷酷クソ女ども。」

 僕は霊能力をさらに解放し、右手に持つ拳銃に紫色の霊能力のエネルギーを流し込んだ。

 ガチャンと音を立てて、拳銃のハンマーを起こし、トリガーに人差し指を当てた。

 僕が鷹尾に止めを刺す刹那、鷹尾が僕の顔を見ながら、落ち着いた表情を浮かべながら言った。

 「待って、宮古野君!素直に認めるわ!私たちの完敗よ!あなたが私に勝った、それが結果であり、事実であると!ここから逆転することは不可能よ!私もプララルドも女神の敵であり、犯罪者である!殺されても、封印されても文句は言えない!罪を償えと言うなら、潔く償うわ!この私はね!宮古野君、取引をしましょう!私は大人しく自首する、プララルドの身柄も引き渡す!その代わり、私の処刑については見逃してもらえないかしら?」

 『ス、スズカ、お前、何を言っていやがる!?俺様はお前のビジネスパートナーだ!俺様の協力があったからこそ、ここまでやって来れたんだろうが!?Lv.0の「犯罪者」で指名手配中の元勇者のお前が犯罪計画を実行できたのは、俺様の力を使えたからこそだろうが!?俺様を裏切って、俺様をこのガキや女神に売るなんて、そんなことは許さねえぞ!第一、このクソガキ勇者がお前を許すわけねえだろうが!?考え直せ、スズカ!』

 「あなたの協力には感謝しているわ、プララルド。でも、あなたの力を借りても、私の計画も目的も実現には至らなかった。あなたの能力は私とのビジネス契約を達成するには役不足だった。成果を出せなかったあなたこそ、契約違反よ。故に、あなたにはもう、私のビジネスパートナー足り得る資格はない。あなたはもう不要よ、プララルド。宮古野君、私とプララルドの契約は切れた。プララルドの身柄をあなたに引き渡すわ。自由に扱ってもらって結構よ。私は大人しく自首する。それだけでは不満だと言うなら、女神リリアからのいかなる不利な要求も条件も飲むわ。あなたからの要求も全面的に受け入れる。他の元勇者たちの討伐にも協力する。私の頭脳や知識も提供する。その代わり、私の命だけはどうにか助けてほしいの。地球へ強制送還でも構わない。私は元々、この異世界に興味は全くない。どんな形でも地球に戻れるならと、それで良いと思って行動してきた。あなたにとっても悪くはない話のはずよ。どう、私と取引してみるつもりはない?」

 鷹尾がプララルドを裏切り、僕に自分の命を助けるよう、取引を持ち掛けてきた。

 だが、僕の答えは最初から決まっていた。

 「答えは、初めからNo一択だ!間抜けで最低最悪の冷酷クソ女!お前みたいな、他人の命をただの道具程度にしか思っていない、自分の私利私欲のために他人を平気で裏切り、他人を殺す、悪党だって毛嫌いするほどの、三流以下の下劣な犯罪者と取引するだなんて、100%お断りだ!お前みたいな外道を生かしておく価値なんて微塵もない!処刑してもお前は自分の犯した罪を反省することも、償うことも絶対にしない!お前の下劣極まりない犯罪ごっこのせいで、大勢の人間が傷つき、命を奪われた!お前の狂った頭は、いつも自分のことと犯罪のことだけしか計算していない、人間の命や尊厳、心を平然と踏みにじる、糞以下の、史上最低最悪の頭脳だ!犯罪者は必ず裁きを受けなければならない!鷹尾、お前は裁きを受けても絶対に更生しない!僕を裏切り、また犯罪に手を染め、人を殺す!犯罪中毒のお前にできる罪の償いは、死んで地獄に落ちることだけだ!お前は、僕の正義と復讐の怒りに燃える復讐心を全く理解できていない!そのイカれた脳みそで、計算外の苦痛と恐怖と絶望を味わいながら地獄に落ちろ、下劣な犯罪者の冷酷クソ女!」

 僕は鷹尾との取引を拒否し、激しい怒りを露わにした。

 「くっ!?どこまでも話の通じないイカれた復讐鬼が!プララルド、再契約よ!この復讐馬鹿を殺・・・」

 「無間闇獄!」

 僕は目の前にいる鷹尾の足元の床に向かって、拳銃のトリガーを引き、「無間闇獄」の効果を付与した霊能力の弾丸を撃ち込んだ。

 僕は、瞬間移動で素早く後方20mの位置に移動した。

 そして、鷹尾の足元の床に撃ち込まれた弾丸が炸裂し、直径10mほどのブラックホールが現れた。

 ブラックホールは、その超重力でたちまち鷹尾の体をブラックホールの穴の中に引きずり込んでいき、鷹尾の全身を足からバラバラに引き裂いていく。

 「がぁー!?ぷ、プララルド、た、助けて・・・」

 『はっ!?知るか!とっとと地獄に落ちてろ、クソ女!あばよ!』

 「ギャアーーー!?」

 プララルドが鷹尾との融合を解き、霊魂の状態となって、鷹尾を見捨てて、急いでブラックホールから逃げて行く。

 鷹尾は悲鳴を上げながら、ブラックホールに全身を呑み込まれ、ブラックホールの超重力で全身をバラバラに引き裂かれ、木っ端微塵に破壊され、宇宙の塵となって消滅した。

 鷹尾をブラックホールを使って復讐し、殺した僕は、霊魂となって空中を移動して逃げるプララルドの下へと瞬間移動すると、左手でプララルドの魂をガッチリと掴んだ。

 『くそがっ!?この俺様に気安く触るんじゃねえ、クソガキ勇者!?離しやがれ、くそっ!?』

 「離すわけないだろうが。冷酷クソ女と一緒になって散々悪事を働いた悪党のお前を、主犯格の一人であるお前を、この僕がおめおめ復讐もせず、逃がすわけないだろ。命を賭けたギャンブルのゲームマスターを気取って調子に乗って、自分が負けたのが分かったらルールを無視して、報酬も支払わずに逃げ出すなんて、お前も所詮は三流以下の小物だな、ええっ、クソ雑魚堕天使?口先だけで大した力もない。馬鹿で間抜けで威張り散らすだけ。僕の知っている本物の悪党は、腕っ節はなくとも、常に飄々としていて、抜け目がなくて、僕の前で堂々とお菓子を食べながら僕に取引を持ちかけ、悪党としての美学を語る、僕に殺されることも地獄に落ちることも全く恐れていない、どこまでも冷たくて、硬くて、鋭く尖った氷柱のような悪党としての凄み、絶対的な悪党としての生き方を僕に見せつける奴だった。フロストに比べれば、お前からは鷹尾同様、一流の悪党としての凄みも覚悟も全く感じない。精々、半グレのオッサン程度にしか見えないな。さて、僕に封印されて地獄にまた落ちる前に、最後に何か言いたいことはあるか、自称最強の、下劣なクソ雑魚堕天使?」

 『クソ女神の犬が!テメエもどうせ、あのクソ女神に他のクソ勇者たちと同じように、散々こき使われて、いらなくなったら捨てられて、犬死にして地獄に落ちるだけだ!クソガキ、この俺様を、プララルド様をクソ雑魚堕天使と虚仮にした恨みは絶対に忘れねえ!必ず地獄を抜け出してテメエを今度こそぶっ殺す!テメエもテメエの仲間も、スロウラルドも、まとめて全員ぶっ殺す!テメエを絶望のどん底にまで追い詰めて、俺様の目の前で命乞いさせながら惨めったらしく殺してやるぜ!テメエがどんだけ化け物だろうが、絶対に復讐してやるぜ!覚えていやがれ、「黒の勇者」!』

 「はぁー。お前、何を勘違いしているんだ?僕がリリアの、あのクソ女神の犬だって?そんなの冗談じゃあない。誰があのクソ女神の手下になんぞなるか。100%拒否する。言っておくが、僕は勇者じゃあない。勇者なんてクソ食らえだ。あのクソ女神の加護なんてこれっぽっちももらっちゃあいない。クソ女神の言うことなんて微塵も聞くつもりはない。僕がお前をぶちのめして地獄に落とすのは、お前が僕の復讐対象である異世界の悪党だからだ。僕の相棒も、イヴも同じだ。僕は僕の意思で、異世界の悪党全員に復讐する。お前たち悪党に復讐して地獄に落ちる覚悟ならできている。悪党へ復讐するためなら、僕は喜んで地獄に落ちる。僕は、ただの優しい復讐鬼だ。そして、最後にこれだけは言っておく。僕の異世界の悪党への復讐に例外はない。クソ女神だろうが、勇者だろうが、堕天使だろうが、誰であろうが、悪党は必ず復讐して地獄に落とす。僕の復讐をまた邪魔するようなら、その時は僕もイヴも今度こそ容赦しない。よく覚えておけ。じゃあな、自称最強の、下劣なクソ雑魚堕天使。」

 『ま、待て、クソガキ!?お前はクソリリアの選んだ勇者じゃねえのか!?あのイヴ様がお前の相棒だと!?お、お前はもしかして・・・』

 「霊魂封印!」

 僕は霊能力のエネルギーをプララルドの魂へと注ぎ、プラトラルドの魂を封印した。

 僕の左手には、青白い色の、透明な野球ボールくらいの大きさの水晶玉のようになって封印されたプラトラルドの魂が握られていた。

 「これで最後の堕天使の封印完了だ。勝手に僕をクソ女神の勇者扱いしやがって、本当に腹が立つ。あのクソ女神の適当でデマばかりの神託を利用してはいるが、クソ女神とセットで扱われることになるのは気分が悪くなる。女神公認勇者の肩書きはやっぱり返上することにしよう。かえって復讐の邪魔になって、面倒の種が増えるだけだ。大体、僕は自分から一度も自分は勇者だと名乗ったことはない。クソ女神の加護だってもっていない。初めからそう言っているのに、あのクソ雑魚堕天使ときたら、僕を最後までクソ女神の勇者扱いしてきて、少しは人の話を聞けよ。プライドが高くて、力にも頭にも無駄に自信があって、周りの意見に全く聞く耳を持たない、自分の考えこそが絶対に正しいと思い込んで、失敗したら周りに当たり散らす、典型的なパワハラ上司やリーダーのそれだ。自分だって、クソ女神や勇者たちにパワハラを受けた被害者の癖に、自分も仲間や部下にパワハラをするような、傲慢で矮小なリーダーになったら本末転倒だろうが。ミイラ取りがミイラになる、って奴だ。おまけに、クソ女神同様、他人を平気で裏切り、使い捨ての道具のように扱う冷酷クソ女と手を組むなんて、はっきり言って人を見る目が全くない。スロウが言ってたように、クソ女神への恨みから本当に頭がイカれたようだ。自分が本当に復讐すべき相手を見失い、逆に良い様に利用されるとは、実に悲しい復讐の結末だ。地獄に落ちたら、お前はまず、本当の自分を取り戻すことからやり直せ、クソ雑魚堕天使。もう一度、本気でクソ女神に復讐する意志があるならな。さて、ついに最後のターゲットを仕留めた。鷹尾、お前の敗因は、お前の計画が全て失敗した最大の要因は、人間の感情を全く計算に入れていないことだ。お前は、僕のお前に対する復讐心を、復讐への覚悟を甘く見過ぎた。いや、計算にすら入れていなかった。犯罪も、犯罪者も、紛うことなき許されざる悪だ。自分の私利私欲のために犯罪を行えば、当然、正義の名の下に罪を償うことになる。何の罪もない大勢の人間を傷つけ、殺し、たくさんの罪を犯しながらも、何の罪悪感も抱かない。仲間も部下も平気で裏切り、使い捨ての道具のように扱い、平気で殺しもする。お前のために犠牲になった人たちの命も尊厳も心も、不要なモノと言って簡単に切り捨てる。計算という言葉を使って、どこまでも人間の尊厳を踏みにじり、自分の利益を追求するために下劣な犯罪に手を染める最低最悪の頭脳を持った、人間の皮を被った冷酷非情な悪魔、それがお前の正体だ、冷酷クソ女。犯罪研究に夢中になって、犯罪オタクになり、ついに犯罪中毒の本物の犯罪者になった。ミイラ取りがミイラになる、お前もその一人だったんだな。異世界に来たことが引き金になって、タガが外れてしまって、自分が警察官の娘であることを忘れ、自分が憎むべき犯罪者に、悪党に成り下がるとは。けど、警察官になるよりも犯罪者になる素質が元々あったのも事実だ。人を守るという正義の本質を理解できないんだからな。仮に生きて地球に戻ったしても、汚職警官になるか、犯罪者になるかのどちらかだったと思う。お前という更生の余地が全くない、最低最悪の下劣な悪党は、死んで真っ直ぐ地獄に落ちるのが正解だ。地獄に落ちても、お前は自分の犯した罪を反省しないどころか、犯した罪を数えることもしないはずだ。長年の夢だった本物の犯罪者になれて、地獄に落ちて犯罪者として扱われることになって、ずっとそのことを喜びながら、笑顔を浮かべて地獄で罰を受け続ける日々を送るんだろうな。三流以下だが、犯罪者としてデビュー出来て、地獄に落ちることができて、周りは犯罪者の先輩だらけで、犯罪研究を好きなだけできるんだから、まぁ良かったな、冷酷クソ女。ただ、周りからは小物扱いされ、陰でひたすら馬鹿にされるんだろうけど。さてと、冷酷クソ女への復讐も完了したし、とっととこの不快な化け物屋敷からは永遠におさらばするとしよう。」

 僕は鷹尾への復讐を終えると、瞬間移動でデス・タワーの外へと一旦、出た。

 デス・タワーの入り口前へと移動すると、既に「白光聖騎士団」の元聖騎士たちとの戦いを終えた仲間たちが集まっていた。

 僕は仲間たちの下に駆け寄り、声をかけた。

 「お疲れ様、みんな。デス・タワーにいた元「弓聖」たち一行は全員始末した。ついでにクソ勇者もどきもね。みんなも「白光聖騎士団」の討伐をありがとう。みんなが協力してくれたおかげだ。本当にありがとう。これにて、元「弓聖」たち一行の討伐任務は完了だ。後、プララルドたち堕天使も六人全員、封印した。ひとまず、大きな問題は解決だ。」

 「元「弓聖」たち一行の討伐、お疲れ様でございました、丈様。槌聖もどきどもは全員、暗殺いたしました。わたくしの方で一応、ハウス内の見回りを行いましたが、逃げ隠れしている吸血鬼の生き残りはおりません。討伐任務と復讐の成功、おめでとうございます。」

 「お疲れ、丈。槍聖もどきどもと、大魔導士もどきどもは、俺とグレイで一匹残らず、ぶっ殺したぜ。そこそこ暴れられたし、ゴブリン以下の変態吸血鬼どもを殺せて、俺は満足だ。お前も復讐が上手くいったようで何よりだ。」

 「お疲れ様、丈君。害虫以下の剣聖もどきどもと聖女もどきどもは、私とエルザで一匹残らず駆除した。駆除任務は完璧に遂行した。ゴミ以下の元「弓聖」たち一行が死んで、丈君も私も、みんながハッピー。異世界の粗大ゴミがまた一つ、地上から消え去った。」

 「お疲れ様である、ジョー殿。剣聖もどきどもは我が全員、成敗した。ジョー殿がくれた「黒獅子」も大変力になってくれた。素晴らしい剣をありがとう、ジョー殿。我は剣技にさらに磨きをかけ、これからも元勇者たちの討伐を手伝わせてもらうぞ。」

 「お疲れさん、ジョー。クソビッチの大魔導士もどきどもは全員、アタシの「黒狼」で串刺しにして地獄に送ってやったじゃんよ。ジョーのくれた「黒狼」の力は最高だぜ。アタシはもっとレベルを上げて、もっともっと速くなるからな。期待して待ってろじゃん。」

 「お疲れ~、ジョーちん。鳥女の弓聖もどきどもはウチが全員、速攻でぶっ殺したっしょ。いやぁ~、ジョーちんのアドバイスと読みが当たって、超余裕で勝てたっしょ。流石はジョーちんだわ。元「弓聖」たちとプララルドたちとの戦いも観てたよ~。ゾーイと一緒に遠くから観戦してたっしょ。イヴ様と合体したジョーちんの力、マジでパなかったわ~。つか、プララルドの奴、ジョーちんにマジでボコられてて超ウケたんですけど~。声までは聞こえなかったのがちょっと残念だったけど、ウチもゾーイも超興奮したし。いやぁ~、流石はウチの自慢の彼氏ですわ~。」

 「「「「「あ``っ!?」」」」」

 スロウが僕に話しかけ終えた直後、玉藻、酒吞、鵺、エルザ、グレイの五人が一斉に声を荒げ、スロウを睨みつけた。

 「いやっ、最後のは冗談、冗談。ア、アハハハ!?」

 玉藻たち五人に睨まれ、スロウは苦笑しながら言った。

 玉藻たちはスロウを睨みつけるのを止めて、落ち着いた表情へとすぐに戻った。

 「ええっと、とにかくみんな討伐任務、本当にお疲れ様。みんなは先に大使館へ戻っててくれ。すぐに大使館まで転送するから。僕は、この悪趣味な化け物屋敷の後始末をするよ。後始末が終わったら、すぐに僕も大使館へ戻るから。じゃあ、また後で。」

 僕は仲間たちに向かってそう言うと、霊能力を解放し、紫色の霊能力のエネルギーを全身に身に纏った。

 それから、左手の指をパチンと鳴らした。

 指を鳴らした直後、玉藻たち六人は、僕の瞬間移動能力で首都のラトナ公国大使館へと転送された。

 玉藻たちを先に帰した後、僕は銀色の霊能力のエネルギーを解放し、重ねがけするように身に纏うと、ブラッディ・モンスター・ハウスの外、シーバム刑務所跡地の外の上空へと瞬間移動し、空中に浮かんで制止した。

 僕は右手に持つ黒い拳銃の照準をブラッディ・モンスター・ハウスに合わせると、紫色の霊能力のエネルギーを拳銃に注ぎ込んだ。

 拳銃のトリガーに指を当てながら、僕は言った。

 「処刑ショーのフィナーレの舞台、お疲れ様、最低最悪の化け物屋敷。お前を木っ端微塵に破壊して、処刑ショーのフィナーレは幕を下ろすことができる。じゃあな、化け物屋敷。無間闇獄!」

 僕は拳銃のトリガーを引いた。

 銃口から、「無間闇獄」の効果を付与した霊能力の弾丸が発射され、超高速で真っ直ぐに、ブラッディ・モンスター・ハウス目がけて飛んで行く。

 シーバム刑務所を覆う結界も、ブラッディ・モンスター・ハウスを覆う結界も、二重の結界を弾丸はあっさりと突き破り、ブラッディ・モンスター・ハウスのデス・タワーの外壁を撃ち抜いた。

 弾丸がブラッディ・モンスター・ハウスを撃ち抜いた瞬間、弾丸が炸裂し、その直後、直径500mほどのブラックホールが現れた。

 ブラックホールはブラッディ・モンスター・ハウスを超重力の力で一気に穴の中へと引きずりこみ、超重力の力でブラッディ・モンスター・ハウスを粉々に粉砕し、破壊していく。

 「ギャオーーー!?」

 ブラッディ・モンスター・ハウスの大きな悲鳴が聞こえ、ブラッディ・モンスター・ハウスはブラックホールに完全に呑み込まれ、木っ端微塵に破壊され、宇宙の塵となって跡形もなく消滅した。

 刑務所跡の建物も瓦礫も結界も、ハウスと一緒にブラックホールに吞み込まれ、消滅したのであった。

 「化け物屋敷の後始末完了だ。これで、僕の処刑ショーのフィナーレは無事、幕を下ろすこととなった。鷹尾たち一行への復讐が成功して気分は大分、スッキリした。だが、まだ、悪党が一人、残っている。カーテンコールがまだ残っている。最後の後始末を楽しむとしようか。」

 僕は笑みを浮かべながらそう言うと、左手の指をパチンと鳴らし、ゾイサイト聖教国首都のラトナ公国大使館へと戻った。

 こうして、ゾイサイト聖教国での僕の復讐劇は無事、フィナーレを終えた。カーテンコールは残っているけれども。

 「風の迷宮」を攻略して、聖弓を破壊した。

 「弓聖」たち率いる元囚人のヴァンパイアロードたち、それから、「白光聖騎士団」の元聖騎士のヴァンパイアロードたちを壊滅させた。

 「弓聖」鷹尾たち一行の犯罪計画を全てぶち壊した。

 「弓聖」たちに協力するプララルド外五名の堕天使たちを封印した。

 そして、「弓聖」鷹尾たち一行に死と言う名の復讐を遂げた。

 超計算外の苦痛と恐怖と絶望をたっぷりと味わわせて、全員地獄に叩き落としてやった。

 僕はまた一つ、異世界への復讐計画を完遂したのであった。

 ざまぁみやがれ、鷹尾。勇者たち。インゴット国王たち。光の女神リリア。

 僕は復讐が成功したことを喜び、笑みを浮かべる。

 だが、僕の異世界への復讐は終わらない。

 僕を虐げる異世界の悪党どもはまだまだ大勢いる。

 今回、「弓聖」外6名、計7名の勇者を殺した。

 これで、残る勇者は5名となった。

 本当なら、残る勇者は6名になるはずだったのだが、つい先日、「勇者」にして「光の勇者」、島津 勇輝が、既にインゴット王国に再逮捕され、処刑されてしまったため、復讐のターゲットが減ってしまった。

 直接、島津にこの手で復讐し、地獄に落とせないことは少し残念である。

 姫城たち、花繰たち、沖水たち、そして、鷹尾たちまで僕に殺されたと聞けば、残りの勇者どもは、ますます恐怖で震えあがるに違いない。

 残る復讐のターゲットは、「槌聖」山田外4名のみとなり、僕は確実に復讐が成功している手ごたえを感じている。

 だからと言って、決して油断したりはしない。

 残りのクソ勇者ども、どこへ逃げ隠れしようが、どこでどんな悪事を働いていようが、どれだけパワーアップしてこようが、僕はお前たちを必ず見つけ出し、完膚なきまでに叩きのめし、皆殺しにしてやるのだ。

 勇者たち、インゴット王国の国王たち、光の女神リリア、僕と敵対する異世界の悪党たちよ。

 僕は必ずお前たち全員に復讐する。

 この広い異世界のどこにもお前たちの逃げ場はないのだ。

 お前たち全員、この僕の復讐から逃れることはできない。

 必ず追い詰めて、苦痛と恐怖と絶望をたっぷりと味わわせてから、全員地獄に叩き落としてやる。

 僕の異世界への復讐の旅はまだまだ続いていく。
















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