第十八話 【処刑サイド:三悪獣人】三悪獣人、派閥から追放され、実家からも勘当される、そして、「黒の勇者」への復讐を誓う

 「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈と、主人公率いる「アウトサイダーズ」が元「槍聖」たち一行を討伐し、元「槍聖」たちの協力者であるワイヒー・ライアーの屋敷から、違法ポルノであるエロ写真を売買する裏ビジネスの証拠である、エロ写真の顧客リストと帳簿を入手し、そのコピーを各国政府と各メディアにバラまいた日から一週間後のこと。

 主人公が世界中にバラまいた、エロ写真の顧客リストと帳簿の写しが世界各国に大波乱をもたらし、世界各国で違法ポルノのエロ写真を買った者たちの逮捕並びに粛清が行われた。

 闇ギルドからエロ写真を買った約1,000万人の逮捕者たち、男性たちのほとんどが、3年以下の懲役、又は300万リリアの罰金刑が科され、逮捕者たちの多くは罰金を支払うか、執行猶予付きとなって釈放となった。

 しかし、逮捕者たちが、エロ写真を購入したことで、変態だの、女性の敵だの、性犯罪者だの、女神の敵だの、背信者だの、周囲から非難を浴びせられた。

 家族や恋人、妻、娘、姉妹などから、逮捕者たちは絶縁されたり、離婚されたりするハメになった。

 職場から左遷される者や、仕事をクビにされ、再就職先に困る者も多かった。

 エロ写真を購入して逮捕された者たちは皆、社会的に抹殺されることとなった。

 エロ写真を買った男たちは皆、社会的抹殺と言う名の処刑を食らって、破滅したのであった。

 獣人が治める国、主人公の仲間、エルザ・ケイ・ライオンが最高議会議長を務める国、ペトウッド共和国でも、闇ギルドから違法ポルノのエロ写真を買った者たちが現れ、全員、逮捕され、粛清され、さらに社会的抹殺と言う名の処刑を受けた。

 逮捕者たちの中には、ペトウッド共和国を治める、獣人六派閥の筆頭貴族で、現国会議員の子息たち、次期当主候補たちも名を連ねていた。

 ユリウス・アポロ・ホーク、ガッツ・ロック・モンキー、ライブラ・マギ・フォックスの三名は、ペトウッド共和国警備隊によって、違法ポルノの購入及び所持の罪で、全員逮捕された。

 何とか実家に頼んで罰金を払ってもらい、釈放されたものの、彼ら三人は、エロ写真を購入していたことを実家や派閥の者たちから厳しく叱責され、三人とも所属する派閥を追放、さらに実家から勘当されることになった。

 エロ写真を買ったことで、周囲の人間、特に女性たちから目の敵にされ、変態や女性の敵、性犯罪者と非難され、彼らもまた、社会的抹殺と言う名の処刑を受け、ペドウッド共和国内での居場所を完全に失ってしまった。

 午後11時頃。

 ペトウッド共和国の首都の小さな酒場で、ユリウス、ガッツ、ライブラの三獣人の男たちは酒を飲み、管を巻いていた。

 派閥を追放され、実家を勘当され、次期当主の座を失い、性犯罪者のレッテルを貼られ、共和国内で居場所を失った彼らは、酒を飲みながら、不平不満をお互いにこぼしていた。

 「くそ~、どうしてこの俺様が派閥を追放されなきゃいけねえんだ?親父にはしこたま殴られるわ、実家から勘当されるわ、ちくしょーが!」

 顔にいくつもの大きな青い痣を作った猿獣人派の元次期当主候補、ガッツが酒を飲みながら、愚痴をこぼした。

 「ヒック。若き天才魔術士と呼ばれていたこの私が~、何故、勘当されなければいけないのです?この私を熟女好きの変態と馬鹿にして~、好き放題嬲り者にしやがって~!本当に不愉快です、まったく!」

 ガッツ同様、顔にいくつもの大きな痣を作った狐獣人派の元次期当主候補、ライブラが酒を飲みながら、愚痴をこぼした。

 「くそっ!?「天空の貴公子」と呼ばれていたこの僕が、ペトウッド共和国一の美男子にしてホーク家の期待の星と呼ばれていた僕が、どうして実家から勘当されなきゃいけないんだ!周りの女どもも今まで僕に散々チヤホヤしてきたくせに、ロリコンだの性犯罪者だの、この僕をゴミを見るような目で見てきやがって!たかがエロ写真を買った程度で、どうしてこの僕が不遇な扱いを受けなきゃいけないんだ、くそっ!?」

 ガッツとライブラ同様、自慢の顔にいくつもの大きな痣を作った鷲獣人派の元次期当主候補、ユリウスが酒を飲みながら、愚痴をこぼした。

 「いや、ユリウスよ、お前は間違いなく変態だろ?小さいガキの裸のエロ写真買ってる時点でロリコン確定だろ?俺様もお前がエロ写真を買っていたのを知った時は驚いたけどよ、11歳だか12歳だかの胸も尻もないガキの写真なんてどこが良いんだ?間違いなく、俺様たちより性癖、歪んでるぜ、お前?」

 「私も同意見です。さすがに未成年の、年端もいかない少女のエロ写真を買うのは、誰がどう見ても、ロリコンの変態にしか見えませんよ。共和国一のイケメンと呼ばれていたあなたがロリコンだったことには驚きましたよ。あなたのファンだった女性たちは、10代後半から30代前半の、もっと成熟した女性たちだったはずです。あなたもよく、彼女らに愛想を振りまいていましたが、どうして幼い少女の写真を買ったりしたのですか?」

 「黙れ!お前たちだってエロ写真を買った変態だろうが、巨乳好きのガッツに、熟女好きのライブラ!ファンだった女たちが勝手に僕の美しさに惹かれて、勝手にチヤホヤしてくるから、最低限のマナーで応えていてやっただけだよ!僕が本当に求める理想の女性は、優しく、美しく、何者にも穢されていない、純粋無垢な、天使のように可愛い女の子なんだよ!年を取って、男に媚びを売ることしか能のない、汚れ切ったババアどもの相手なんて、こっちからお断りだ!11歳から12歳ごろの、心も体も発育途上で、純粋無垢な少女たちこそ、女性が最も美しく輝いている時なんだ!どうして誰も僕の求める美を理解しないんだ!?みんなこそ、間違っている!?」

 ガッツ、ライブラの前で、自身の性癖について熱く語るユリウスであった。

 そんなユリウスの気迫に少々、押され、引き気味のガッツとライブラではあったが、それ以上、ユリウスのことは刺激しないよう、考えた。

 「そもそもの間違いの始まりは、僕たちがこんな目に遭った全ての元凶は、「黒の勇者」、あの男のせいだ!あの男がペトウッド共和国に現れて、対抗戦でこの僕をみんなの前で、顔だけのナルシスト野郎だと言って、虚仮にして、あの男に敗れたことが発端だ!対抗戦の第一試合目であの男に馬鹿にされ、再起不能にされ、僕は「天空の貴公子」のあだ名を失った。家族からは期待外れだと言われ、同じ派閥の連中から「堕ちたナルシスト野郎」と陰口を叩かれ、周りの者たちからも笑い者にされた!ファンだった女の子たちが大勢離れていった!今回のエロ写真を買った件で逮捕されたのも、「黒の勇者」、あの男が証拠をバラまいたせいだ!あの勇者さえいなければ、この僕が、「天空の貴公子」の名声が地に落ちることはなかった!本当に忌々しい男だ!」

 ユリウスが、「黒の勇者」こと、主人公への逆恨みを口にした。

 「その通りだぜ、ユリウス!俺様たちが人生どん底まで落ちぶれることになったのは、あの「黒の勇者」のせいだぜ!対抗戦の時、この俺様を脳筋馬鹿といって馬鹿にした上、俺様に真っ向から力比べを挑んで、奴のせいで、俺様も、俺様の部下たちも、奴にぶっ飛ばされて再起不能にされて大恥をかかされた!おかげで、「モンキー家最弱の男」だの、「脳筋馬鹿のダメ息子」だの、周りから散々馬鹿にされるハメになった!対抗戦の時の奴のニヤケ面は思い出しただけで、腹が立ってくるぜ!「黒の勇者」、奴がいなければ、奴が俺様たちがエロ写真を買ったことをバラしたせいで、俺様は破滅させられたも同然だ!マジでムカつくぜ、あの勇者が!」

 ガッツも、「黒の勇者」こと、主人公への逆恨みを口にした。

 「ええっ、お二人の言う通りですよ!私たちが次期当主候補の座を失い、底辺を彷徨うところまで落ちぶれることになった元凶は全て、あの憎たらしい「黒の勇者」のせいです!対抗戦の時、この私のことを、うぬぼれが強い世間知らずの阿保と侮辱し、この私が編み出した至高の魔法を、カスみたいな威力の魔法と、馬鹿にしたこと、今でも忘れていませんよ!「黒の勇者」との魔法対決に敗れ、この私は、「フォックス家の出来損ない」だの「カス魔法使い」だの、周りから毎日、馬鹿にされることになりました!今回、エロ写真を買ったことで逮捕されることになったきっかけは、あの憎たらしい笑みを浮かべる、「黒の勇者」、あの男のせいです!あの男に仕返しをしない限り、この私の怒りは収まりそうにありません!」

 ライブラも、他の二人同様、「黒の勇者」こと、主人公への逆恨みを口にした。

 他の二人からも「黒の勇者」への恨みを聞いたユリウスは、真剣な表情を浮かべて、ガッツとライブラに向けて、提案した。

 「ガッツ、ライブラ、提案がある。僕たち三人は共に「黒の勇者」によって破滅に追い込まれた同志だ。このまま、「黒の勇者」に復讐することなく、「黒の勇者」や世間に怯えて、陰でひっそりと生きていく、そんな屈辱にまみれた人生を送るのは、真っ平ごめんだ。僕たち三人で力を合わせ、ともにあの憎き「黒の勇者」に復讐しようじゃないか?」

 ユリウスからの提案に、ガッツとライブラは驚いた。

 「だ、だけどよ、ユリウス?「黒の勇者」に復讐するって言ったって、どうすんだよ?対抗戦で見たはずだろ、お前も。あの「黒の勇者」の桁違いで化け物染みた強さをよ?空は飛べるわ、俺様たちの渾身のハンマーの一撃を受けても無傷で、逆にハンマーを砕いちまうあの頑丈さと馬鹿みたいな怪力、おまけに魔法も結界も全く寄せ付けねえっていう、正に怪物だぜ、あの勇者はよ?俺たち三人が束になってかかったところで、野郎に瞬殺されるのが落ちだぜ?本当に人生、終わっちまうことになるぞ?」

 「「黒の勇者」の能力は、我々の想像をはるかに超える、正に怪物と言って良い力です。悔しいですが、この私以上の恐ろしい威力の魔法も使いますし、あらゆる魔法をあの男は防ぐことができます。狼獣人を越える超スピードの移動能力に、獣人最強の「獣王」の全力を真っ向から打ち破るパワーまで持っています。ズパート帝国では前皇帝率いる軍隊を壊滅させ、サーファイ連邦国では、サーファイ連邦国を乗っ取った海賊団や闇ギルドを壊滅させた、とも聞いています。光の女神リリア様より、唯一無二の真の勇者とのお墨付きまで与えられた、あの化け物勇者を私たちだけで倒すことは無理ではありませんか?何か、「黒の勇者」に対抗できる秘策をお持ちなら、少しは事情が変わるかもしれませんが?」

 「黒の勇者」への復讐に懐疑的な意見を出すガッツとライブラに向かって、ユリウスはニヤリと笑みを浮かべながら言った。

 「確かに、今の僕たち三人が束になってかかったところで、「黒の勇者」に返り討ちにされるのが落ちだ。だが、何も僕たちだけで復讐をする必要はない。この世界には、「黒の勇者」によって僕たち同様エロ写真を買ったことで破滅させられ、「黒の勇者」へ恨みを抱く同志たちが1,000万人以上もいる。世界中の同志たちに声をかけ、「黒の勇者」へ復讐するための一大勢力を築くのさ。すぐお隣のインゴット王国には、国王も含め、600万人以上の逮捕者、同志たちがいる。女神の名の下に、正義を振りかざし、英雄を気取っている、あの憎たらしい「黒の勇者」によって破滅させられ、「黒の勇者」への恨みを持った人間が、僕たちのすぐ近くに大勢いるわけだ。インゴット王国に行き、僕たち三人で同志を集める。ついでに、インゴット王国から、強化アイテムを奪ってパワーアップすればいい。元勇者たちは、インゴット王国に保管されていたアイテムでパワーアップして、暴れ回っている。インゴット王国の同志に協力してもらい、強化アイテムをもらってパワーアップした軍勢を率いて、「黒の勇者」へ復讐するのさ。じっくり時間をかけて準備を整えて、確実に「黒の勇者」を葬る体勢を整えるさ。僕たちには時間はたっぷりある。「黒の勇者」に恨みを抱く世界中の同志たちとともに、今度は僕たちがあの忌々しい勇者を破滅させてやろうじゃないか?」

 「その話、乗ったぜ、ユリウス。あの「黒の勇者」に復讐できるってんなら、俺は何でもやるぜ。この俺様を脳筋馬鹿と虚仮にしたこと、この俺様を破滅寸前まで追い詰めたこと、100倍にして野郎に仕返ししてやるぜ。」

 「私も協力しましょう。あの人を小馬鹿にしたような薄ら笑みを浮かべる、憎たらしい態度の「黒の勇者」に、今度こそ、パワーアップしたこの私の至高の魔法をお見舞いして、焼き殺してあげますよ。この私を世間知らずの阿保だの、カスみたいな威力の魔法を使うなど、散々侮辱し、この私を破滅へと追いやった屈辱、恨みは必ず晴らしてみせましょう。」

 「では、二人とも、明日、三人で早速インゴット王国へと向かおう。共に「黒の勇者」への復讐を果たそう。」

 ユリウス、ガッツ、ライブラの三悪獣人は、自分たちを破滅寸前へと追いやった、「黒の勇者」への復讐を決意した。

 しかし、彼ら三人は全く分かっていなかった。

 エロ写真を買った罪で逮捕され、粛清され、社会的抹殺と言う名の処刑を受けただけで済んだことが、どんなにマシだったかを。

 「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈は、異世界の悪党どもへの情け容赦ない復讐を行うためなら、地獄に落ちる覚悟もできていることに。

 自身を虐げ、自身と敵対する異世界の悪党どもへの復讐に命をかけていることに。

 常に心の中に、異世界の悪党どもへの激しい憎悪と怒りの炎を燃やしていることに。

 自身の命を奪おうとする者には、容赦なく絶望を味わわせて、地獄のどん底まで叩き落す、凄惨な復讐を躊躇なく実行する非情さを持っていることに。

 三悪獣人たちは、主人公によって、全員、正義と復讐の鉄槌を受け、地獄に落とされ、完全に破滅することになる愚かな選択をしてしまったことに、誰も気付いてはいなかった。
















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