第十五話 主人公、謎の連続殺人事件発生を知る、そして、第六のダンジョンへ向け旅立つ

 僕たち「アウトサイダーズ」が、元「槍聖」たち一行の討伐を終えたため、サーファイ島の南東にある海水浴場で、一日だけのバカンスを楽しんだ日の夜のこと。

 午後11時過ぎ。

 サーファイ島の南側の港に停泊している「海鴉号」へと戻り、夕食や風呂などを済ませると、僕以外のパーティーメンバーは全員、眠りに就いた。

 僕は「海鴉号」のメインキャビンを出て、デッキへと出ると、それからタラップを上り、フライブリッジにもある操縦席へと座った。

 フライブリッジの操縦席に座り、周りに誰もいないのを確認すると、左手のグローブを外し、指輪を嵌めている左手の小指を口元に近づけた。

 左手の小指に嵌めているこのシグネットリングは、僕がラトナ公国を治める大公、クリスティーナ・ニコ・ラトナよりもらった物で、ラトナ公国子爵の証であり、僕がラトナ大公家の一員でもあることを示す証だ。

 そして、この指輪には、盗聴器兼発信機兼通信機の機能が実装されており、僕がクリスと極秘裏に連絡を取るための通信連絡用アイテムでもある。

 装着する僕のプライバシーを侵害する機能が一部、備え付けられてはいるが。

 しかし、情報通であるクリスとの連絡が取れるアイテムでもあるので、それなりに重宝している。

 僕はクリスと連絡をとるため、呪文を唱えた。

 「コール。」

 僕がそう唱えると、指輪が一瞬、キラリと光った。

 「もしもし、クリス。聞こえるか。僕だ。宮古野 丈だ。」

 『もしも~し、こんばんは、ジョー君!愛しい愛しい君の声が聞こえて、私はとても嬉しいよ!元「槍聖」たち一行と海賊団の討伐、改めてお疲れ様。後、メルちゃんを保護してくれて本当にありがとう。幼い彼女がドルフィン族の連中に悪用されるのを未然に防げた上、ドルフィン族本家の誇る「占星術士」の力が手に入るサプライズプレゼントまでもらえて、本当に最高だよ。ところで、私に一体何の要件かな?まぁ、察しは付いているけどね。』

 いつも盗聴しているから、僕の声はいつも聞いているだろうし、僕がサーファイ連邦国で今、何をやっているか、これから何をしようとしているか、全部筒抜けだろうに。

 「メルの件は本当に感謝しているよ、クリス。メルをラトナ大公家に迎え入れてくれて、ありがとう。話は変わるが、僕から君に頼みがある。僕は次に「風の迷宮」がある、ゾイサイト聖教国へ向かう予定だ。恐らく、元「弓聖」たち一行が「風の迷宮」を攻略するため、ゾイサイト聖教国にすでに向かっている可能性が高い。今のところ、ゾイサイト聖教国で元「弓聖」たち一行が暴れている、という情報はこちらでは聞いていない。けれど、今度の相手、元「弓聖」の鷹尾は、元勇者たちの中で一番、頭が切れる奴だ。元勇者たちのインゴット王国王城からの脱獄を手引きしたのは、恐らくあの冷徹クソ女に違いない。何か、ゾイサイト聖教国で元「弓聖」たち一行に関わる情報を君の方で掴んでいないか?知っていたら、是非、教えてほしい。」

 『ゾイサイト聖教国かぁ。あそこはリリア聖教の狂信的な信者たちばかりで構成された、超封建的で閉鎖的な国でね。インゴット王国とは友好関係を築いてきたけど、私の治めるラトナ公国も含め、他の国とはそんなに仲がいいわけじゃなくてさ。国交自体はあるけどね。ただ、政府の連中もリリア聖教の教えにどっぷりと浸かった連中で、情報の開示を求めても、素直に渡してくれない、頑固なところがあって、少々面倒な相手だよ。おっと、いけない。話が脱線してしまったね。元「弓聖」たち一行に関係があるかは分からないが、二月ほど前からかな、ゾイサイト聖教国で奇妙な連続殺人事件が起こっているそうだよ。元「槍聖」たちの件もあるし、案外、逃亡中の元「弓聖」たち一行が犯人の可能性も無くはないかも。』

 またしても、元勇者たちが謎の連続殺人事件を起こしたかもしれないと聞き、僕はうんざりした思いとともに、元「弓聖」たち一行の犯行ならば、すぐに連中を始末しなけばいけない、という思いを抱いた。

 「また、謎の奇妙な連続殺人事件か。嫌になってくるな、本当。それで、クリス、ゾイサイト聖教国で起こった、奇妙な連続殺人事件とは一体、どういう事件なのか、詳細を教えてもらえるか?」

 『ああっ、もちろんだよ。私も個人的にこの事件には興味を惹かれていてね。ゾイサイト聖教国が情報統制を敷いて、ほとんどのマスコミには伏せられているけど、事件の発生自体は一部のメディアや口コミで広がっているよ。この事件はその犯行の手口から、「フェイスキラー連続殺人事件」と呼ばれている。』

 「「フェイスキラー連続殺人事件」!?また物騒な名前の事件だな。」

 『事件の発生は今から二月ほど前に遡る。二月前、ゾイサイト聖教国の首都郊外の森の中で、近隣住民からの通報により、七人の人間の焼死体が発見された。死体はほぼ黒焦げで、身元を特定できる所持品等は死体の傍からは発見されなかった。だけど、この事件で最も興味深い点は、七人全員の死体の顔が、原型も留めないほど粉々に潰されていたところにある。正式な検死報告の情報は届いていないが、恐らく死体の顔面を先に潰した後、死体に火を放ったものと、私は推測している。そして、同様の事件が約5日から約7日おきのペースで連続して発生している。確認されているだけで10件、これまでに70人の顔面を破壊された焼死体がゾイサイト聖教国の各地で発見されているそうだ。ゾイサイト聖教国の警備隊や聖騎士団が事件の捜査を行っているが、犯人の特定には至っていない、とのことだよ。何故、犯人が死体の顔を潰すのか、その理由については私も考えがまとまっているわけじゃない。犯人自身が自分の容姿、特に顔に何らかのコンプレックスを持っていて、自分より顔の美しい人間を殺し、殺害した人間の顔面を破壊することで自身のコンプレックスを満たそうとする、サイコパスのシリアルキラーの可能性もある。後、犯人が複数いて、殺害した人間たちに変装してゾイサイト聖教国に潜伏するため、殺害した人間たちの顔面を破壊し、死体に火を付け、所持品を奪い、犯行を重ねている可能性もある。毎回、七人の人間が殺害されること、死体は必ず顔面を破壊され、被害者の身元が特定できないように処理されていること、犯行はゾイサイト聖教国内に集中し、約一週間おきのペースで発生していること、これらの謎を解明しないかぎり、事件の真相究明は不可能だ。そもそも、被害者に関する情報が一切分かっていないため、事件の謎を解く糸口さえ掴めていない状況だ。行方不明者の情報について、ゾイサイト聖教国が情報を公開さえしてくれれば、私たちの方で何か、事件を解決するきっかけを見つけることができるかもしれないが、ゾイサイト聖教国が厳格に情報統制を行っている以上、無理な話だがね。事件に関する概要は以上だよ。何か参考になったかい、ジョー君?』

 僕はクリスの話を聞いて、しばらく考え込んだ。

 それから、僕はクリスに話しかけた。

 「二月もの間に70人もの人間が殺害され、惨殺死体として発見されるなんて、極めて異常な事態だ。犯人がサイコパスのシリアルキラーである説をとる場合、何故、毎回、七人の人間を殺す必要があるのか、そこが気になるな。毎回、七人を殺す理由が分からない。殺された被害者の身元と、7という数字に何らかの関連性がある可能性は否定できない。一方、犯人が複数人でゾイサイト聖教国への潜入目的で犯行を行っているという説をとる場合、単純な推測にはなるけれど、犯人たちの人数に合わせて殺人を行っているなら、説明がつきやすい。犯人が七人いて、七人の別の人間に変装するため、毎回七人の人間を殺害している、そして、自分たちが別人になりすまして潜伏しているのを隠すため、死体の顔を潰し、さらに死体を焼いたり、所持品を奪ったりして、死体の身元が特定できないよう、処理を施している、という可能性が考えられる。ただ、引っかかるのは、何故、一週間おきに殺人を行う必要があるのか、という点だ。変装してゾイサイト聖教国に潜伏する目的があるとして、何度もコロコロ顔を替える必要があるだろうか?一週間おきに殺人を行うのは、自分たちの犯行が周囲の人間に知られるリスクを高める恐れがある。いや、待てよ、何度も顔を替えるのは、頻繁にどこか特定の場所を訪れる必要があって、顔を覚えられたくないから、とも考えられないか?だとしたら、複数人説も決して捨てきれない。クリス、ゾイサイト聖教国で何か重要なモノが盗まれた話なんかは聞いていないか?インゴット王国で元勇者たちが貴重なアイテムを盗んでいった前例があるしな。」

 『ゾイサイト聖教国で何か、特別重要なモノが盗まれたという盗難事件があった、という報告は聞いていないよ。まぁ、ゾイサイト聖教国政府が盗難に気付いていない、あるいは盗難事件の発生を隠蔽した可能性は否定できないよ。あの国は女神リリアのお膝元とも呼べる国だ。インゴット王国同様、元勇者たちに重要に保管していた危険なアイテムを盗まれ、悪用されることになったら、ゾイサイト聖教国の政府首脳陣は、リリア聖教の狂信的信者である国民から大バッシングを受け、首脳陣たちの進退に関わる事態になりかねない。何より、女神に仕える者としての誇りや名誉、女神からの信頼を失う最悪の事態にもなり得る。ジョー君の懸念どおり、元「弓聖」たちによって、ゾイサイト聖教国から危険なアイテムが盗まれている可能性もあるけど、ゾイサイト聖教国政府は多分、盗難の事実事体を全力で揉み消すに違いない。下手したら、インゴット王国より性質が悪いよ、ゾイサイト聖教国は。』

 「70人も死人が出ている連続殺人事件を隠そうとするは、インゴット王国以上に自国の不祥事を隠蔽しようとする性質の悪さ、腐敗っぷりとはな。リリア聖教の狂信的信者が治める国っていうだけでも行きたくなくなる気分なのに、行く前からすでに最悪だな、まったく。だけど、収穫はあった。もし、犯人複数説が合っていて、犯人グループの正体が元「弓聖」たちで、ゾイサイト聖教国の国内に潜伏し、国の重要施設などに侵入するため、頻繁に顔を替える必要があって、今回の「フェイスキラー連続殺人事件」を起こした、という可能性も無くはないはずだ。少なくとも、本物の聖弓を手に入れるため、「風の迷宮」を攻略するため、鷹尾たちは行動を起こしているに違いない。元「弓聖」の鷹尾は、僕の元いた世界では警察組織のトップの娘、犯罪を取り締まる警備隊の隊長クラスの男の子供だった。あの女は将来、警察官志望で、よく学校の教室や図書室で、犯罪学や法律に関する本を読んでいたのをおぼえている。頭も良かったし、犯罪に関する知識にも詳しい。何となくだけど、僕は今回の連続殺人事件の犯人が、元「弓聖」たち一行じゃないか、そう思えてしょうがないんだ、クリス。」

 『謎の連続殺人鬼、フェイスキラーの正体が、元「弓聖」たちではないか、君はそう睨んでいるんだね、ジョー君?犯罪に関する知識が豊富な元「弓聖」なら、今回の連続殺人事件を起こしても不思議はないと、そう言うんだね?確かに、元勇者たちはこれまでに国家の安全保障を揺るがすレベルの犯罪、テロ事件をいくつも起こしてきた。元勇者たちは自分たちの目的のためなら、大量殺人に平然と手を染める、凶悪な連中だ。人間を食う化け物にもなるくらいだしね。案外、君の推測通り、フェイスキラーの正体は元「弓聖」たちかもしれないね。だとしたら、何か大掛かりな犯罪計画を連中が起こそうと、ゾイサイト聖教国で秘かに活動している可能性がある。我がラトナ公国、そして、世界の平和を守るため、君たち「アウトサイダーズ」にはゾイサイト聖教国に行ってもらい、元「弓聖」たちの討伐を頼むよ。引き続き、元勇者たちの討伐をよろしく、「黒の勇者」様。』

 「了解だ、クリス。元「弓聖」たち一行は必ず僕たちで全員、始末する。」

 『何かゾイサイト聖教国で困ったことが起こった時は、いつでも私や、ゾイサイト聖教国にあるラトナ公国大使館を頼ってくれたまえ。元「弓聖」たちも厄介だが、ゾイサイト聖教国の人間たちも別の意味で厄介な連中だ。大変だとは思うが、頑張ってくれ。ところでジョー君、最後に私から君に一つお願いがあるんだけど、いいかなぁ?』

 クリスから、最後に僕にお願いしたいことがあると言われ、僕は顔を顰めながら訊ねた。

 「僕にお願いしたいことって何だ、クリス?」

 『いやぁー、君のために私も今回、色々と頑張ったわけだしさー。ゾイサイト聖教国や連続殺人事件に関する情報収集も頑張ったわけだし、そんな献身的な私のために君からご褒美が欲しいなぁー、と思ってさ。「今夜は寝かさないよ、愛しいクリス。」って言う、心のこもったセリフをご褒美に聞きたいなぁーって。お願~い、ジョー君?』

 クリスのリクエストに頭を抱える僕であったが、クリスには今回も大変世話になっているし、断りづらかった。

 正直に言えば、断りたい。

 が、クリスには今後も色々と世話になることがあるだろうし、僕は止む無く、彼女のリクエストに応えることことにした。

 「はぁー。分かったよ。一度だけしか言わないからな。今夜は寝かさないよ、愛しいクリス。」

 『ウピョオーーー!耳に染みるーーー!最っ高だよ!今夜はぐっすり眠れそうだ!お休み!愛してるよ、ジョー君!ハングアップ!』

 大声で喜んだクリスは、それを最後に僕との通信を切った。

 クリスとの通信を終え、僕はため息をついた。

 「はぁー。いつもながら、疲れる。一応、上司で親戚で仲間ではあるけど、あの変人っぷりは、もう少しどうにかならないものかな。錬金術師としても、政治家としても、情報屋としても凄く優秀だし、良い女性なんだけど、盗聴とか、愛の告白みたいなセリフをリクエストしてくるところとか、その欠点を何とか直してもらえるとなぁー。一生、直ることことないだろうけどさ。」

 僕は今後もクリスの無茶ぶりや盗聴に振り回され続けることになるのだと思い、頭を抱えるのであった。

 翌日。

 午前9時。

 朝食を終えた僕は、メインキャビンにパーティーメンバーを集め、クリスから聞いた、ゾイサイト聖教国で発生している「フェイスキラー連続殺人事件」に関する情報と、連続殺人事件の犯人、通称フェイスキラーの正体が、指名手配中の元「弓聖」鷹尾たち一行ではないかという、僕とクリスの推測について話した。

 「クリスから昨夜届いた情報によると、次の目的地であるゾイサイト聖教国で二月ほど前より、「フェイスキラー連続殺人事件」と呼ばれる、謎の連続殺人事件が発生しているとのことだ。被害者たちは全員、殺害された後、死体の顔を原型を留めないほど潰され、さらに死体を黒焦げになるまで焼かれ、所持品を奪われた状態で、ゾイサイト聖教国の各地で見つかっているそうだ。これまでに確認された犯行は10件、殺された身元不明の被害者の人数は70人に上る。犯行は約5日から7日おきに発生し、必ず7人ずつ殺されている。顔にコンプレックスを抱いた、サイコパスのシリアルキラー単独犯説も考えられるが、僕とクリスは、今回の犯行は複数人によるものだと推測している。犯人たちは七名いて、ゾイサイト聖教国に潜伏し、そして、頻繁に国の重要施設等に侵入するため、顔を約一週間おきに替え、別人になりすます目的で、今回の連続殺人事件を起こしているのではないか、というのが僕たちの推測だ。物的証拠は何もなく、あくまで状況証拠のみしかないが、可能性は高いと見ている。また、今回の連続殺人事件の犯人、通称フェイスキラーの正体だが、元「弓聖」鷹尾率いる元勇者たちではないかとも、考えている。インゴット王国同様、ゾイサイト聖教国の重要施設から、何かしら危険なアイテムを盗むために、今回の犯行を計画し、実行した恐れがある。尚、「フェイスキラー連続殺人事件」については、ゾイサイト聖教国政府が情報統制を敷いているため、事件の詳細や捜査状況はほとんど外部には伝わっていない。ゾイサイト聖教国政府が自国内の不祥事を隠蔽するため、動いている可能性もある。だがしかし、元勇者たちはこれまでにいくつもの犯罪行為に手を染めてきた。大量殺人だって平然とやる、外道どもだ。今回の連続殺人事件に元「弓聖」たち一行が関わっている可能性は否定できない。特に、元「弓聖」の鷹尾は、犯罪の研究に興味を持ち、犯罪に関する知識を豊富に持った奴だ。証拠を残さない徹底ぶりからして、鷹尾がフェイスキラーの正体である可能性は高いと思われる。僕からの説明は以上だ。」

 僕からの説明を聞き終え、玉藻たち九人は顔を顰めた。

 「丈様の推測が当たっていた場合、元「弓聖」たち一行が何かしらよからぬ悪だくみを実行しようと企んでいる可能性があります。早急にゾイサイト聖教国へ向かう必要があります。しかし、ゾイサイト聖教国が素直にこちらに協力してくれるかは疑問です。自国の不祥事発覚を恐れ、わたくしたちを妨害してくる可能性も否定できません。」

 玉藻が、元「弓聖」たち一行の討伐に関する懸念を口にした。

 「ゾイサイト聖教国か。リリアの狂信的信者たちで構成される、閉鎖的でイカれた宗教国家だ。信者たちからの顰蹙を買いたくない、崇拝するリリアからの信頼を失いたくない、そんなくだらん理由から、連続殺人事件や元「弓聖」たち一行が起こす不祥事の露見を恐れ、隠蔽や妾たちの妨害を行ってくる可能性が濃厚だ。あの馬鹿女を妄信する連中の治める国に行かねばならんとは、吐き気がしてくる思いだ。」

 イヴが、ゾイサイト聖教国へ行くことへの不安や、ゾイサイト聖教国に対する嫌悪感を露わにした。

 「マリアンヌ、リリアと話をすることがあった時は、元「弓聖」たち一行が顔を替えていないか、どこで何をしているのか、など、詳しく情報をリリアから聞き出してくれ。元「弓聖」の鷹尾は、元勇者たちの中で一番頭が切れて厄介な奴だ。目的のためなら手段を選ばない、仲間だって不要とみなせばあっさり切り捨てる、冷酷極まりないクソ女だ。頼んだぞ。」

 「かしこまりました、ジョー様。リリア様から必ず、元「弓聖」たち一行に関する最新情報をお聞きし、お伝えいたします。」

 マリアンヌが、リリアから情報を聞き出すことを約束した。

 「まったく、また連続殺人事件を起こしたかもしれねえとはな。本当につくづく救いようのない、ゴブリン以下の外道どもだぜ、あのクソ勇者どもは。今度は一体、何をやらかすつもりなんだか知らねえが、この俺の手でぶっ潰してやるぜ。」

 「今度の相手は、丈君をあっさり裏切って処刑に賛同した、あの元「弓聖」のクソ女勇者。他人を都合の良い道具程度としか考えない、冷酷非情な、害虫以下の極悪人はこの世から抹殺すべし。」

 「ジョー殿たちの話から察するに、元「弓聖」は頭の切れる冷酷無比な犯罪者で、これまで以上の強敵かもしれん。決して油断は禁物だ。心してかからねばならん。」

 「元「弓聖」ってのが、頭が切れる上に何を考えているか分からねえ、仲間だって簡単に切り捨てる、超下衆野郎だってことは分かったぜ。油断せず、確実にアタシの槍で串刺しにして地獄に落としてやるじゃんよ。」

 「パパたちが怖くて危ない人たちと戦うのが分かった、なの。気を付けてください、なの。」

 酒吞、エルザ、グレイ、メルが、元「弓聖」たち一行の討伐に関して、それぞれ言葉を述べた。

 「早速、ゾイサイト聖教国へ向けて出発しよう。ゾイサイト聖教国へ向かう途中も常に警戒を怠らないよう、注意してくれ。元「弓聖」たち一行が何かしら罠を仕掛けて、僕たちを待ち構えている可能性もある。とにかく、油断ならない相手だ。みんな、気を引き締めて、討伐を行おう。」

 僕たちはミーティングを終えると、サーファイ連邦国からゾイサイト聖教国へ向けて、出港の準備を整えた。

 出港の準備を整えると、僕は「海鴉号」の操縦席へと座った。

 「さぁ、出港だ!道中、また、よろしく頼むぞ、兄弟!行くぞ、「海鴉号」!」

 エンジンのスイッチをONにすると、僕は左手でハンドルを握り、霊能力のエネルギーを流し込みながら、右手でジョイスティックを操作し、「海鴉号」を離岸させた。

 停泊所から出ると、徐々に霊能力のエネルギーを流し込む量を増やし、両手でハンドルを掴みながら、船のスピードを上げていく。

 サーファイ連邦国の港を背に、僕たちの乗る「海鴉号」は次の目的地、ゾイサイト聖教国へと向かって、海をフルスピードで突き進んでいく。

 僕、宮古野 丈が、異世界アダマスに召喚されてから、五ヶ月の月日が経過した。

 サーファイ連邦国での元「槍聖」たち一行と海賊団の討伐を終えた僕は、新たな復讐のため、ゾイサイト聖教国へ向かうことになった。

 今度の相手は、「フェイスキラー連続殺人事件」を起こした可能性もある、元勇者たちの中で最も頭が切れる、元「弓聖」鷹尾と、元「弓聖」率いる勇者たちである。

 謎の連続殺人事件を起こし、ゾイサイト聖教国に顔を替えて潜伏し、元「弓聖」たち一行が何かしらの犯罪を企んでいる可能性がある。

 いまだ、所在も目的も明かさず、秘かに犯罪計画を進めている、不気味で狡猾で用意周到な新たな敵を前に、僕は身が引き締まる思いであった。

 これまで以上の激戦となる可能性があるが、僕は決して復讐を止めることはない。

 例え、顔を替えていようが、姿を消していようが、狡猾な罠を仕掛けて待ち構えていようが、どれだけパワーアップしていようが、僕は必ず元「弓聖」たち一行に復讐する。

 ゾイサイト聖教国の連中が、リリア聖教の信者たちが邪魔してこようが、容赦なく一緒に薙ぎ払うまでだ。

 待っていろ、「弓聖」たち。インゴット王国の国王たち。光の女神リリア。僕を虐げ、僕と敵対する異世界の悪党ども。

 お前たちがどんな悪事を企んでも、どんな罠を仕掛けてこようとも、この僕が全て粉々にぶち壊す。

 お前たち全員に苦痛と恐怖と絶望を味わわせ、地獄のどん底にまで叩き落としてやる。

 僕はどこまでもお前たちを追いかけ、必ずお前たち全員を血祭りに上げる。

 優しい復讐鬼となった僕の、正義と復讐の鉄槌から決して逃れることはできないのだ。

 広い海原を走りながら、僕は異世界の悪党どもへの次なる復讐に向けて、激しい闘志を燃やすのであった。

 




















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