【中間選考突破!!】異世界が嫌いな俺が異世界をブチ壊す ~ジョブもスキルもありませんが、最強の妖怪たちが憑いているので全く問題ありません~
第十三話 【処刑サイド:光の女神リリア】光の女神リリア、元「槍聖」たち一行がエロ写真を世界中にバラまいたことを知る、そして、他の神たちからポルノスターと笑い者にされ怒り狂う
第十三話 【処刑サイド:光の女神リリア】光の女神リリア、元「槍聖」たち一行がエロ写真を世界中にバラまいたことを知る、そして、他の神たちからポルノスターと笑い者にされ怒り狂う
「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈と、主人公率いる「アウトサイダーズ」が元「槍聖」たち一行を討伐し、元「槍聖」たちの協力者であるワイヒー・ライアーの屋敷から、違法ポルノであるエロ写真を売買する裏ビジネスの証拠である、エロ写真の顧客リストと帳簿を入手し、そのコピーを各国政府と各メディアにバラまいた日から三日後のこと。
様々な世界の神々が住まう、雲の上の楽園のような場所、神界。
その神界の一角にある白いギリシャ神話風の神殿の建物から、光の女神リリアは、いつも自身が管轄する異世界アダマスの様子をそっと観察していた。
元勇者たちが全員、犯罪者となり、異世界アダマスを崩壊させかねないほどの暴走をするため、インゴット王国王女にして「巫女」であるマリアンヌに、「黒の勇者」とともに元勇者たちを討伐するよう、神託を授けた彼女だったが、同時に天敵である闇の女神、イヴが封印を解いて約3,000年ぶりに復活し、さらに「黒の勇者」とパーティーを組んで共に行動を始めたと知り、いつ、イヴから報復を受けるか分からないと、不安に駆られる日々を過ごしていた。
普段から自身の住まいである神殿に引きこもりがちの彼女であったが、ここ最近は神殿の警備を固め、より一層引きこもるようになった。
そんなリリアであったが、神界に住む知り合いの別の女神たちからお茶会の誘いが来たため、久しぶりに外出をすることになった。
イヴの報復を恐れてはいるが、イヴは元勇者たちの討伐に釘付けになっているから神殿の外に出ても問題はない、そう考えた。
それに、ずっと神殿に引きこもりがちで、自身がイヴの報復にビクビクと怯えている情けない女神だと、他の神々から思われたくない、という彼女のプライドの問題もあった。
異世界アダマスを管理する光の女神である自身と、自分の管理する世界を自慢したい、という欲求もあった。
リリアは久しぶりに神殿を出て、お茶会の会場へと歩いて向かった。
会場へと向かう途中の道で、リリアは何故か他の神々や天使たちとすれ違うたびに、自分がクスクスと笑われたり、自分を見てヒソヒソと陰口を言われたりされていることに気が付き、首を傾げるとともに、不快感と、得体の知れない胸騒ぎをおぼえた。
神界の一角にある、とある神殿の庭園が、お茶会の会場であった。
庭園の門をくぐり、色とりどりの美しい花々が咲き誇る庭園の中を歩いていくと、庭園の中央に位置する白いガゼボがあった。
ガゼボの中には、白いテーブルクロスが敷かれた丸いテーブルがあって、テーブルの前に、椅子が四つあり、テーブルの上には、ティーセットが四人分、並べてあった。
そして、テーブルの椅子にはすでに、三人の女神たちが座ってリリアを待っていた。
三人の女神はリリアが到着したのを見るなり、笑みを浮かべながらリリアに声をかけてきた。
「ようやく主役のご登場ね。お久しぶり、リリア。ポルノスターデビュー、おめでとう。」
そう声をかけたのは、身長175cm、ディープグリーンの、蝶柄の刺繍が施されたシースルーのタイトドレスを身に纏った、白い肌の20代前半の女性の姿をした女神であった。
フレッシュグリーンのロングストレートヘアで、前髪で右目を隠し、髪の左側にはライトグリーンの蝶型の大きなヘアクリップを一つつけている。
琥珀色の瞳を持ち、モデル体型で、落ち着いた雰囲気もありながら、どこか妖艶な雰陰気のあるこの女神の名前は、セクト。
「虫の女神」と呼ばれ、異世界アダマスとは別の世界を管理する女神の一人である。
「おっす。久しぶり、リリア。ポルノスタースターデビューとはマジで驚いたぜ。」
そう声をかけたのは、身長185cm、露出の多い赤いボンテージを着ている、ルビー色の長い髪を、ウルフパーマにしている、褐色の肌の20代前半の女性の姿をした女神であった。
手足は筋肉が付いて引き締まっていて、全体的に細マッチョな体形をしている。
両耳に、ジャガーの顔の形の、金色のピアスを付けている。
少しつり目がちで、金色の瞳を持ち、野性的で好戦的な印象がうかがえる、この女神の名前は、ベスティア。
「獣の女神」と呼ばれ、異世界アダマスとは別の世界を管理する女神の一人である。
「ニッシッシ。おっひさ~、リリア~。ポルノスターデビュー、おめでとう~(笑)。」
そう声をかけたのは、身長145cm、白と黒の生地の、水玉やストライプの模様が施された、ミニスカートのピエロ風のドレスを纏い、頭には白と黒のピエロ帽を被り、足には厚底の黒いゴシック風のロングブーツを履いている、紅色の髪を内巻きにカールにしたショートヘアーの、10代前半の小柄な少女の姿をした女神であった。
顔全体を白塗りにし、赤いアイラインと赤い口紅を塗り、ピエロ風のメイクをしている。
黒い瞳を持ち、ニヤニヤと笑っていて、ふざけているようで、どこか不気味さのある雰陰気を漂わせているこの女神の名前は、ティーズ。
「遊戯の女神」と呼ばれ、異世界アダマスとは別の世界を管理する女神の一人である。
セクト、ベスティア、ティーズの三人の女神から、挨拶がてら、いきなり「ポルノスターデビュー、おめでとう。」という、身に覚えないのことを言われ、リリアは驚いた。
「お久しぶりです、セクト、ベスティア、ティーズ。ですが、ポルノスターデビュー、おめでとう、とは、一体何を言っているのですか?身に覚えのないことで誹謗中傷をされるのは不愉快です。久しぶりに会った友人のこの私に失礼だとは思わないのですか?」
三人の女神の態度に怒りを口にするリリアであったが、セクトたち三人は苦笑しながら、リリアに訳を説明し始めた。
「ごめんなさい、リリア。まさか、あなたが知らないとは思ってなかったから。イヴから久しぶりに手紙をもらってね。それに、面白いプレゼントをもらったものだから。あなた、イヴから本当に何も聞かされていないようね。」
セクトが、イヴから久しぶりに手紙をもらったと聞き、リリアの表情は一瞬で青ざめた。
「い、イヴから手紙をもらった!?それに、面白いプレゼントをもらった!?一体、手紙には何と書いてあったのです?面白いプレゼントとは何です?」
動揺し、興奮して訊ねてくるイヴに、セクトは苦笑しながら、答えた。
「そう興奮しないで、リリア。ちょうどイヴから届いた手紙とプレゼントを持っているから、今、見せてあげるわね。」
セクトはそう言うと、右手の指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、テーブルの上に、黒い封筒に入った一通の手紙と、紐で括られた四冊の本のセットが現れた。
「この手紙を読めば、すぐに私たちの言ったことの意味が分かるわ。」
セクトから手紙を渡され、イヴは慌てて手紙を読み始めた。
手紙には、以下の内容が書かれていた。
拝啓 親愛なるセクト様
お久しぶりだ。
妾は異世界アダマスを管理する、闇の女神イヴだ。
長らくの間、妹のリリアと喧嘩し、封印されていたが、この度無事、復活を果たした。
妾が封印されている間に、リリアが別の異世界、チキュウより召喚した勇者たちが全員、犯罪者となり、アダマスを崩壊させるほどの暴走を引き起こすため、勇者たちの暴走を止めるべく、アダマスを旅している最中だ。
妾が手紙とともに送ったこの四冊の本は、リリアが異世界より召喚した「水の勇者」と呼ばれた男が、女性の奴隷たちをモデルに作成した、エロ写真と呼ばれる違法ポルノを世界中にバラまき、販売した裏ビジネスの証拠である、エロ写真売買の顧客リストと帳簿の写しである。
嘆かわしいことに、リリアが召喚した勇者の作ったエロ写真を、アダマスの各国を治める王族や貴族、役人、騎士が、大金を支払って大量に購入する、という、世界中で逮捕者続出の大スキャンダルが巻き起こることとなってしまった。
さらに残念なことに、我が妹リリアの姿を模した、女性の奴隷の、全裸や半裸を精巧に写したエロ写真が、世界中で好評を博し、最も売り上げの高い商品として、世界中の男たちに買われることまで起こった。
我が妹リリアは今や、異世界アダマスの、世界中の男たちから憧れる、世界的ポルノスターとしてデビューしてしまった。
どうか、世界的ポルノスターとしてデビューした妹リリアのデビューと、今後の活躍を是非、応援してほしい。
食人鬼や海賊などになって暴れ回る元勇者たちの討伐が終わり、落ち着いたら、挨拶に伺うつもりだ。
今後とも、妾とリリアのことをよろしく頼む。
闇の女神イヴより
追伸
妾はチキュウ出身の「黒の勇者」と呼ばれる人間の男と婚約した。
今は「黒の勇者」とともに、暴走する元勇者たちを討伐する旅をしている。
少し早いが、義理の娘もできた。
子育ても「黒の勇者」とともに頑張っている。
いずれ、盛大に結婚式を行う予定なので、その時は是非、アダマスにお越しいただき、妾と「黒の勇者」との結婚式に参加してほしい。
「黒の勇者」の詳細が気になる場合は、妹のリリアに訊ねてほしい。
妾は今、とても幸せである。
イヴからセクトに届いた手紙を読み終え、リリアはその場で驚きのあまり、口をポカンと開けて、硬直して立ち尽くした。
それから、ハッと意識を取り戻し、手紙とともに添えられていた、エロ写真売買の裏ビジネスの顧客リストと帳簿の写しに目を通した。
顧客リストの内容を見て、リリアの青い瞳は血走り、怒りのあまり、激高した。
「あの出来損ないの勇者めぇー!?奴隷を使ってこの私のエロ写真を作って世界中に売り捌いていたとは、絶対に許しません!エロ写真を買った馬鹿な人間の男どもも絶対に許しません!今すぐ、神託を下し、全員、処刑してあげます!それに、イヴ、この私がポルノスターとしてデビューしたなどというデマを流すとは、あの女めぇ、こうなったらもう一度封印してやらねば!」
我を忘れ、激怒するリリアを見ながら、セクト、ベスティア、ティーズは、クスクスと笑いながら、リリアに話しかけた。
「お怒りのところ、申し訳ないんだけど、リリア、まずは他の神々にきちんとあなたがポルノスターとしてデビューなんてしていない、って事情を説明するのが良いんじゃない?私だけでなく、神界に住む他の神々や天使たちの下に、同じモノがイヴから届いているみたいよ。みんな、あなたが、女神であるあなたのポルノを作って売るような性犯罪者を勇者に選んだって言って、騒いでるわよ?」
「アタシのところにも、イヴから同じ手紙とエロ写真の顧客リストや帳簿の写しが届いているぜ。中身を見た時はマジでおったまげたじゃん。「水の勇者」だったか、お前が加護を与えた勇者が、お前をモデルにしたエロ写真を作って世界中にバラまいていると知った時は、驚きを通り越して、マジで笑ったぜ。アタシだったら、即その変態勇者を見つけてぶっ殺すぜ。つーかよ、お前の信者の人間もヤバくね?女神をオナネタに使うとか、マジ狂ってるぜ?お前、自分の世界、ちゃんと管理してんのか?」
「ティーズも、イヴからの手紙と、エロ写真の顧客リストを見て、超笑ったし。超ウケるんですけど~。闇落ちしちゃう勇者がたまにいるけど~、女神のエロ写真作ってばらまく奴とか、聞いたことないんですけど~。てかっ、勇者が全員、闇落ちして世界をぶっ壊そうとするとか、マジ終わってるって感じ~。リリア~、ちゃんと女神のお仕事してますか~(笑)」
セクト、ベスティア、ティーズに笑われ、さらに神界中に、自分がポルノスターとしてデビューしたという内容の手紙と、勇者がエロ写真を作って世界中に売っていた証拠である、エロ写真の顧客リストと帳簿の写しがイヴによってバラまかれ、自分が神界に住む他の神々や天使たちから笑い者にされている事実を知り、リリアは激しい怒りを抱くとともに、何とか釈明しなければ、という思いに駆られた。
「三人に言っておきますが、確かに私は今回、異世界から勇者を召喚し、勇者たち全員が犯罪者になり、暴走する失態を犯しました。ですが、すでに暴走した勇者の大半は討伐済みです。「水の勇者」、「槍聖」に選んだ男が奴隷を使ってエロ写真を作って売り捌いていたことは初耳でしたが、エロ写真の関係者は全員、粛清させるので大した問題ではありません。チキュウから召喚したあの異世界人たちに勇者としての素質がなかったことと、現地人たちの勇者への杜撰な教育と管理が、勇者たちの暴走の原因なのです。元勇者たちの討伐が終われば、私の管理する異世界はふたたび安定を取り戻します。イヴが余計な茶々を入れさえしなければ、私の女神としての異世界の管理は全く問題ありませんので、どうかご心配なく。まったく、イヴの悪趣味な悪戯にも、未熟で愚かな人間たちにも困ったものですよ。」
リリアはセクトたち三人の前で取り繕うのであった。
そんなリリアを見ながら、セクトがリリアに訊ねた。
「ちょっと気になるんだけど、リリア、あなた、今、チキュウから勇者を召喚して、勇者が全員、犯罪者になって暴走している、そう言ったわよね?だけど、イヴの手紙には、イヴはチキュウ出身の「黒の勇者」っていう人間の男と旅をしながら、元勇者たちの討伐をしている、と書いてあるわ。イヴと婚約したこの「黒の勇者」っていう男も、あなたがチキュウから召喚して選んだ勇者の一人なんじゃないの?勇者は全員、犯罪者になったとあなたは言ったわ。じゃあ、この「黒の勇者」は勇者じゃないってこと?そもそも、あなたといまだ喧嘩している様子のイヴと、あなたが選んだ勇者が婚約した上、一緒に元勇者たちの討伐をしているって、一体、どういう状況よ?リリア、あなた、本当はイヴや「黒の勇者」に面倒なことを全部押し付けて、遊び惚けているんじゃないの?」
セクトからの鋭い質問に、イヴはギクッとなり、一瞬言葉に詰まった。
「へ、変な言いがかりは止めてください、セクト!?わ、私は女神としてきちんと異世界の管理を行っています。決して、イヴや「黒の勇者」に仕事を押し付けるような、そんな適当で無責任な仕事はしていません。失礼ですよ、まったく。」
リリアは慌てて、セクトに返事をした。
「ふ~ん。じゃあよ、この「黒の勇者」とかいう人間は何者だよ?お前が召喚した勇者たちと同じ、チキュウ出身って手紙には書いてあるが、全員犯罪者になったはずの勇者が、何でまだ一人、勇者として残っているんだ?「黒の勇者」について知りたきゃ、お前に聞けとイヴの手紙に書いてあるが、コイツは一体、何者だ?何て名前だ?どんな能力を持ってる?お前が加護を与えたんなら、アタシらにも教えろよ?あの研究一筋でお堅くて、天才と呼ばれていたイヴが婚約者に選ぶなんて、相当な逸材って奴だろ?もったいぶらずに教えろよ、なぁ?」
ベスティアから「黒の勇者」の詳細について訊ねられ、「黒の勇者」のことをほとんど何も知らないリリアは返答に困った。
「え、ええっとー、「黒の勇者」は私がチキュウから召喚した勇者たちの中で、唯一良心を失うことなく、才能を開花させた、真の勇者と呼ぶにふさわしい少年です。対勇者に特化した、特別の加護を与えた、私の切り札なのです。他の犯罪者になった元勇者たちとは一緒に行動しない、単独で行動する一匹狼的なところがあります。反抗的なところもありますが、正義感が強く、勇者としての実力は確かです。イヴとは元勇者たちの討伐をする旅の途中で偶然、知り合ったようです。まぁ、私が目をかけた史上最高の勇者ですから、あの恋愛に全く興味がなかったイヴが思わず惚れてしまうのも不思議ではありませんが。」
「ほぅ。中々面白そうな奴じゃあねえか。誰とも群れない、ワイルドな一匹狼の勇者なんて、結構いい男じゃねえか。勇者の素質と男らしさがあるってのは分かった。それで、「黒の勇者」の名前は何て言うんだ?対勇者に特化した力ってのは、具体的にどんな力何だよ?お前やイヴだけで独占するなんて、ズルいじゃねえか?アタシらにも紹介しろよ。」
ベスティアからの「黒の勇者」に関するさらなる追求に、リリアは困った。
「そうよねぇ。あなたやイヴだけでいい男を独占するのは、ちょっとズルいわよねぇ。私たちにも是非、紹介してほしいわね。イヴが婚約するくらいだから、優良物件確実だし、私もちょっと味見したくなったわ。」
「ニッシッシ。圧倒的な力でソロプレイしまくる勇者とか、超王道だし~。ティーズも「黒の勇者」のこと、もっと知りたいなぁ~。ティーズの作る最高難易度の激ムズダンジョンを攻略できるほど強い勇者とか、マジ欲しいし。ねぇ、教えてよ~、リリア~。」
セクトとティーズからも興味津々に「黒の勇者」のことを訊ねられ、リリアはますます返事に困った。
「そ、そう簡単には教えられませんねぇ。なんせ私が選んで育てた、史上最高の勇者ですし。イヴもきっと本当は教えたくないでしょうし。イヴの自慢癖は本当に困りますよ、まったく。」
苦笑してその場をごまかそうとするリリアであったが、そんなリリアの反応を、セクトたちは見逃さなかった。
「ねぇ、リリア。あなた、本当は「黒の勇者」とかいう人間について、何も知らないんじゃないの?イヴがあなたに聞けって手紙に書いたのは、あなたが彼のことを何も知らない、聞いても無駄だって意味なんじゃないかしら?大体、あなたは自分が選んだ史上最高の勇者だって自慢するけど、それじゃあ、イヴより先に、あなたが婚約するはずじゃない?もし、私があなたの立場で、目の前に、とんでもなくいい男の勇者がいたら、迷わず即ゲットするわよ。リリア、あなたもしかして、「黒の勇者」の名前も知らないどころか、女神の加護も与えていないんじゃないの?だから、私たちの質問に答えられない、そうでしょ?」
セクトの鋭い指摘に、リリアは「うっ!?」と、図星を突かれ、返答に詰まった。
「おいおい、本当かよ、リリア?別の世界の人間を召喚したなら、異世界でも生きていけるよう、最低限の女神の加護を与えるのが筋ってもんだろ?チキュウの神々からもらった人間に、何の加護も与えず、放置とか、いくら何でも酷すぎるぜ、おい。なるほど、さっきからフワっとした答えしか聞けねえと思ったら、お前、異世界から召喚した人間に加護も与えず放置した上、元勇者たちの討伐なんて面倒事を押し付けたわけかよ。そりゃあ、お前じゃなくて、イヴを選ぶわ。お前、絶対嫌な女、いや、嫌な女神だと思われてるぜ。逆に「黒の勇者」の奴、お前にそんな酷い扱いされても勇者続けてるって、マジで男だぜ。」
「うっわー、リリア、何のスキルも装備も与えずに戦わせるとか、マジないわ~。普通なら即ゲームオーバーの無理ゲーじゃん。女神の加護抜きで異世界を生き抜くとか、勇者になってソロプレイして無双できるとか、マジすげえわ~、「黒の勇者」。生まれついての天才プレイヤーって奴かも。ますます欲しくなったし~。てかっ、リリア、イヴに勇者寝取られてんじゃん。くっそ、ダサ~い(笑)」
ベスティアとティーズから、「黒の勇者」のことを何も知らず、女神の加護も与えず、元勇者たちの討伐を押し付けていることがバレて非難され、リリアは恥ずかしさのあまり、赤面した。
「リリア、私たち神々は基本、お互いの管理する世界のこと、自分たちのプライバシーには一切不干渉を貫いているけど、一つだけ言わせてもらうわ。本人の意思を無視して、異世界から召喚した以上、召喚した異世界でも無事、生きていけるよう、最低限の女神の加護を与える。これは常識よ。異世界から召喚した人間、その人間をいただいた世界を管理する他の神々に対する、最低限のマナーでもある。まして、勇者なんて言う、自分の管理する世界の平和維持活動という大事な仕事を任せるのなら、丁重に扱うのが筋よ。あなたが加護を与えた勇者たちが全員、犯罪者になって、あなたの管理する異世界を崩壊させるほどの暴走を起こしている、その原因は勇者たちや現地人だけでなく、勇者召喚を提案し、異世界を管理する、女神であるあなたにも責任がある。「黒の勇者」って子はきっと、あなたから何の加護ももらえず、相当苦労したはずよ。一匹狼になったのも、一人だけ勇者の力をもらえず、周りから孤立したから。それでも、彼はめげることなく、才能と努力で成長し、今日まで異世界を生き抜いた。あなたが適当に管理する異世界を、あなたが適当に選んで放置し、暴走する元勇者たちから守るため、自己の強い正義感に基づいて戦ってきた。孤独といくつもの修羅場を乗り越え、あなたの管理する異世界の人間たちを守るため、何の加護も与えなかったあなたの要求も聞いて、戦い続けている。イヴがあなたから「黒の勇者」を奪っても、あなたに文句を言う資格はないわ。「黒の勇者」、私は一人の女神として、彼に敬意を抱くわ。あなたが選ばなかった男が真の勇者になった、皮肉なものね。チキュウの神々に、立派な人材をくださってありがとうございましたと、ちゃんと御礼を言うのよ。じゃあ、私は今日のところはこれで失礼させてもらうわね。」
そう言い残すと、セクトはリリアの前から去っていった。
赤面し、俯くリリアに、ベスティアが言った。
「リリア、アタシからも一言、言わせてもらうぜ。お前はもっと真面目に仕事しろ。お前の仕事は、異世界の知的生命体の進化を見守り、時には促し、そして、正しい方向に導くことだ。お前の管理する世界の人間たちを守り、正しい方向に導く手伝いをさせるため、別の異世界の人間たちを勇者として召喚させたはずだ。だが、お前は勇者たちを正しく導くこともせず、放置した。干渉し過ぎるのも良くはないが、全く干渉しないのも良くない。お前がきちんと管理していれば、勇者たちは勇者として正しく成長できたはずだ。それと、別の異世界から召喚した人間に何の加護も与えず、放置して、どうとでもなれ、なんて態度は、知的生命体を、人間を守る役割を請け負った女神の態度じゃねえ。「黒の勇者」、きっと訳も分からないまま、お前に異世界に召喚され、みんなから仲間外れにされ、きっと寂しくて辛かったはずだろうぜ。異世界で生きるための女神の加護もなしに、生き抜いたその努力と根性、タフさには脱帽するぜ。おまけに、お前の尻拭いまで引き受けるなんて、どんだけ男前の良い奴なんだよ。真面目なイヴが惚れるのも無理ねえな。アタシも「黒の勇者」のことがますます気に入ったぜ。暇があったら、アタシから会いに行ってみるぜ。リリア、お前、「黒の勇者」にちゃんと謝りに行けよ。もし、行かなかった時は、アタシの鉄拳をお前にお見舞いしてやる。じゃあ、またな。」
そう言い残して、ベスティアはリリアの前から去っていった。
「ニッシッシ。リリア~、異世界の管理ができないなら~、イヴに譲って、別のお仕事でも探したら~?まぁ、ティーズたち女神は不滅だし、別に仕事する必要ないんだけどさぁ~。でも~、何にもしない女神なんて~、ダサいし~、ただ存在してるだけだし~、その辺の石ころと変わらない無機物同然だしねぇ~。「黒の勇者」かぁ~、女神の加護もないのにモンスターや勇者と戦えちゃうなんて、マジ凄いよねぇ~。チキュウ出身って聞いたけど、今のチキュウに女神の加護なしで異世界で生き残れるほどのポテンシャルの人間がまだいたなんて、驚きだわぁ~。元勇者たちの討伐が終わったら、ティーズの世界に彼を招待してあげようっと。女神の加護抜きでティーズの作った激ムズダンジョンを攻略できるか、挑戦させてみたいし~。マジで攻略できた時は~、ティーズ、イヴから奪っちゃおっかなぁ~、なんて。今から「黒の勇者」を招待する準備しよ~っと。じゃあねぇ、リリア~。異世界の管理より、ポルノスターのお仕事の方が向いてるかもねぇ~。」
そう言い残すと、ヒラヒラと左手を振りながら、リリアを馬鹿にしたような口調で、ティーズはリリアの前から去っていった。
ティーズたちが去り、一人お茶会の会場に残されたリリアは、その場で赤面し、俯きながら、しばらく立っていた。
それから、顔を上げると、ティーセットの乗ったテーブルを蹴飛ばし、青い瞳を血走らせ、怒り狂った。
「ああっ、くそっ!?言いたい放題言いやがって!?この私が女神失格!?女神として非常識だの、真面目に仕事をしていないだの、ポルノスターの方が向いてるだの、アイツら馬鹿にしやがってぇ!どいつもこいつもイヴのことばかり褒めて、この私を蔑ろにするとは、本当にムカつく!「黒の勇者」を加護も与えず、放置した、無責任な女神などと言いがかりをつけやがって!加護を与えたくても、与えられなかったんですよ!?何故かは分かりませんがね!?「黒の勇者」はこの私が見出した、史上最高の勇者です!「黒の勇者」はこの私のモノです!私の加護無しでも異世界を生き抜き、犯罪者へと堕ちた元勇者たちを討伐できる、逸材なのです!あえて手を加えなかった、野生にして、最強最高の勇者なのです!それに、真の勇者というお墨付きを与えました!アダマスのほぼ全ての人間が、この私が見出した「黒の勇者」を、真の勇者として認めています!女神の加護が無くとも、本人のポテンシャルさえあれば、最強にして最高の勇者になれる、そのテストプレイの成功した結果が、あの少年なのです!いまだ、どの神もなし得ることのできなかった、奇跡を証明したのです!この私が「黒の勇者」をイヴに寝取られたなどと馬鹿にされるなど、実に不愉快です!イヴ、この私がポルノスターとしてデビューしたというデマを流したこと、私が適当な仕事しかしていない、無責任な女神だと言いふらしたこと、この恨み、1,000倍、いえ、10,000倍にして返してあげます!「黒の勇者」との婚約も婚約破棄させてやりましょう!この私の魅力と才能を持ってすれば、「黒の勇者」を虜にすることなど、容易いこと!イヴ、あなたの目の前で「黒の勇者」を取り返してやります!ついでに、あなたの目の前で、この私と「黒の勇者」の結婚式を開いてあげましょう!セクト、ベスティア、ティーズ、あのクソビッチどもも近づけさせたりはしません!光の女神にして真の女神であるこの私の本気を見せて差し上げましょう!待っていなさい、イヴ、クソビッチども!」
自分の管理する異世界アダマスで、自分をモデルにしたエロ写真を勇者たちが世界中にバラまいたこと、自分が異世界アダマスや勇者たちを適当に管理する、杜撰な仕事をしていることを他の神々に暴露され、さらに、「黒の勇者」こと主人公に何の加護も与えず、放置し、暴走する元勇者たちの討伐を押し付け、イヴに「黒の勇者」を奪われたことを指摘され、光の女神リリアは、自身のプライドを傷つけられたと思い、イヴへの怒りと逆恨みを露わにした。
セクト、ベスティア、ティーズたちの他の女神たちにも、自身を侮辱したと思い、怒りを見せるのであった。
実際、イヴが手紙に書いて、エロ写真売買の顧客リストと帳簿を添えて暴露した内容はほとんど事実である。
セクト、ベスティア、ティーズの忠告や指摘も決して間違ってはいない。
リリアが異世界アダマスを適当に管理し、勇者たちも適当に管理し、自身が選び加護を与えた勇者たちが全員、犯罪者となり暴走している、世界崩壊の危機を招こうとしていることは事実である。
主人公を当初は計画の人柱と呼んで見捨て、何の加護も与えず、放置し、暴走する元勇者たちの討伐を勝手に頼んで任せっきりで、自分は神殿に引きこもり、遊び惚けている、これもまた事実である。
闇の女神イヴを主人公が心から仲間として、家族として信頼していることも事実である。イヴがリリアから「黒の勇者」を奪った、元より主人公がイヴの方を選ぶのは当然である。
しかし、女神としてのプライドの高さと、優秀な姉であるイヴへの嫉妬心から、リリアは、自身の無責任さや失態などを受け入れることができなかった。
イヴや他の女神への復讐と、イヴから「黒の勇者」を奪い返すことを誓ったリリアであったが、彼女の計画が実現することは何一つない。
「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈は常に、リリアへの激しい怒りと復讐心で心を燃え上がらせていた。
闇の女神イヴとともに、自身を破滅させるため、復讐の牙を研いでいることを、リリアは分かっていなかった。
光の女神リリアへの主人公の復讐はさらに過激さを増していくことになる。
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