第九話 主人公、槍聖と再会する、そして、復讐する
僕たち「アウトサイダーズ」が怪盗ゴーストになり、元「槍聖」沖水たち率いる海賊団に予告状を送り付け、サーファイ連邦国最東端の無人島、ピグミーシャーク島へと連中を誘き出した日のこと。
見事、連中の目の前で予告通り「女神リリアの黄金像」を盗み、さらに、海賊団の海賊船と戦艦を全て沈め、逃げる海賊団の手下の海賊たちを、僕特製の大量の視えない機雷で爆破して全員殺害し、沖水たちと部下二人を残し、海賊団を壊滅へと追い込んだのであった。
ついでに、僕は霊能力の矢で沖水たち七人全員の男性器を射抜き、去勢してやったのであった。
ご自慢の海賊団が僕たちによって壊滅され、避難用のボートの上で、苦悶の表情と大粒の涙を浮かべ、股間を押さえながらのたうち回る、元「槍聖」沖水たちの無様な姿を大声で笑いながら、「海鴉号」のデッキから見物する僕たちだった。
「さて、では、処刑ショーの最後の幕を開けることにしよう。」
僕はそう言うと、声だけ認識阻害幻術を解除し、沖水たち一行に聞こえるよう、わざと大声で不気味に笑った。
「フ、フフフフフフっ、フハハハハハ!」
僕の笑い声を聞いて、股間を押さえながら、慌てた表情で沖水たち一行が、ボートの上からキョロキョロ首を回して、声の主を必死に探した。
「だ、誰なり!?何者なり!?姿を見せろなり!?」
僕は全ての認識阻害幻術を解除した。
「海鴉号」に乗った、僕たち「アウトサイダーズ」のメンバーとメルの全員が、沖水たち一行の前に、突如として姿を現した。
「久しぶりだなぁ、沖水。それと、お仲間の六人も。この僕、怪盗ゴーストによる華麗なるショータイムを、楽しんでいただいているかな?」
僕は馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、沖水たちに向かって言った。
僕の姿を見て、沖水たち一行は驚き、慌てた表情を浮かべている。
「み、宮古野氏、き、貴様、いつの間に我が帝国へ来たなり!?い、いや、そんなことよりも、貴様が怪盗ゴーストだったのでござるかぁー!?」
「その通りだ。怪盗ゴーストの正体は、この僕と、この僕が率いる「アウトサイダーズ」だ。お前たちから財産を全て盗み、たった今、黄金像を盗んだのも、ご自慢の海賊船と戦艦を沈めたのも、手下の海賊たちを機雷で殺したのも、全部僕たちだ。そうそう、ついでにお前たち全員の大事なアソコを去勢したのも、この僕だ。宝を全て失い、海賊団も壊滅させられ、さらに大事なアソコまで奪われた気分はどうだ、変態食人鬼ども?ああっ、沖水、お前は頭の髪の毛まで奪われたんだっけ。本当に無様だな、お前ら。」
僕がそう言ってゲラゲラ笑うと、後ろにいる玉藻たち八人の女性たちも大声でゲラゲラと笑った。
僕から馬鹿にされ、笑われた沖水とその仲間たちは、股間の痛みも忘れ、激怒しながら僕に向かって、怒りをぶちまけた。
「おのれぇ、宮古野氏!貴様だけは絶対に許さんでござる!今すぐここで貴様の首を討ち取ってやるなり!」
沖水はそう言うと、聖槍のレプリカを構えながら、僕に槍の穂先を向けた。
僕はすかさず、霊能力を解放し、全身に霊能力のエネルギーを纏った。
「僕の首を討ち取るだって?やれるもんならやってみろよ?お前の鈍ら同然の槍なんて、僕には通用しないけどな。ついでに、他のお仲間の六人も一緒に攻撃してこいよ?どうせカスみたいな威力の攻撃しか撃てないだろうけど。」
僕がニヤリと笑みを浮かべながら、沖水たち一行を挑発した。
僕の挑発を受けて、沖水たち一行は全員怒り狂い、武器を構えると、ボートの上から僕目がけて攻撃を行った。
「我が輩を怒らせたその罪、死んで償うがいいなり!激流突貫!」
「死ねえ、大火炎斬突!」
「食らいやがれ、氷柱弾連射!」
「頭をぶち抜いてやるぜ、轟雷爆射!」
「行け、人形生成!」
「貫け、蛇槍追撃!」
「フヘヘヘ、変速結界!」
「槍聖」沖水の槍の穂先から、激流のごとく高圧水流のカッターが放たれた。
「槍術士」吉尾が、穂先に火炎を纏ったグレイヴを僕目がけて投げつけてきた。
「魔術士」志比田が魔法の杖から、先が鋭利に尖った1mほどの大きさの巨大な氷柱を何十個も生み出し、弾丸の雨のように発射してきた。
「弓術士」高城がロングボウから放った、雷を纏った矢が猛スピードで僕の頭めがけて飛んできた。
「魔術士」天神が、魔法の杖からオレンジ色の光線を海水に照射すると、身長5mほどの水でできた巨大な人造のゴーレムが僕の目の前に現れ、ゴーレムが巨大な右腕で僕を殴ってきた。
「槍術士」宮丸のパイクの穂先がグーンと伸びて、蛇のように蛇行しながら、50m先にいる僕を貫こうと襲ってきた。
「回復術士」金田の左手に持つ丸盾から、紫色の半球状の結界が発生し、僕の乗る「海鴉号」と沖水たち一行の乗るボートを包み込んだ。結界に包まれたことで、他の六人の仲間たちの攻撃のスピードが増した。
沖水たち一行の放った攻撃が僕に直撃し、ドーンという衝撃音が鳴り、水柱が上がった。
「フハハハ、チート能力を持つ異世界最強無敵の我が輩たちを虚仮にした罰なり!バラバラに吹き飛んで海の藻屑となるがいいでござる!」
自分たちの攻撃が僕に直撃し、僕が死んだと勘違いし、高笑いする沖水たち一行であったが、水柱が消えて、衝撃音が鳴り止んだ後、そんな沖水たち一行の前に、無傷で顔色一つ変えていない僕が姿を現した。
沖水の放った高圧水流のカッターと、志比田の放った巨大な数十個の氷柱の弾丸、高城の放った雷を纏った矢は、僕の体に直撃した直後、全て防がれ、威力を失った。
天神の作った巨大な水のゴーレムの巨大な右腕による殴打を、僕は左手に持っていた如意棒を咄嗟に直径80cmほどの黒い丸盾へと変形させ、防いだ。
宮丸のパイクの伸びた穂先は、僕の腹の上で止められていて、貫くこともなく制止している。
吉尾が投擲した穂先に火炎を纏ったグレイヴは、僕の右手で穂先ごと受け止められている。
「これが異世界最強無敵の力ねぇ。冗談も休み休み言え。この程度の攻撃で僕を倒せると思っていたのなら、勘違いもいいところだ、まったく。」
僕はそう言うと、目を丸めてポカンと口を開けて呆然と立ち尽くしている沖水たちの前で、左手に、死の呪いの効果を持つ黒い霊能力のエネルギーを生み出し、黒い霊能力のエネルギーを左手に持つ丸盾に纏わせた。
丸盾が纏った黒い霊能力のエネルギーに触れ、反魔力のエネルギーごと、魔法を無効化され、天神の作った水のゴーレムは一瞬で崩れ落ちた。
それから、僕は腹部で止まっている宮丸の伸びた槍の穂先を、左手に持つ丸盾をぶつけて、先端をパキーンとへし折った。
そして、吉尾の火炎を穂先に纏ったグレイヴの柄を右手で握ると、吉尾の左肩目がけて思いっきり投擲した。
僕が投げ返したグレイヴが猛スピードで突き進み、穂先に火炎を纏ったまま、吉尾の左肩を勢いよく刺し貫いた。
「ギャアアアーーーー!?い、痛ええーーーー!?熱いぃーーー!?」
グレイヴに左肩を貫かれた吉尾は、大声で悲鳴を叫びながら、ボートの上でのたうち回っている。
吉尾が僕にやられ、隣でのたうち回る姿を唖然とした表情で見ている沖水たち一行に、僕は笑いながら話しかけた。
「チート能力を手に入れたとか自慢していた割に、全然大したことないなぁ。お前たちご自慢の魔力を無効化する「反魔力」もこの僕には全く通用しない。大体、僕が「ドクター・ファウストの魔導書」を盗んだ怪盗ゴーストの正体だと分かった時点で、この僕がメフィストソルジャーになって「反魔力」を操るお前たちに、何の対策もせずに挑んでくるわけないのは、すぐに分かることだろ?沖水、天才ゲーマーを自称していたくせに、敵への分析や対策が全くなっていないぞ。攻略本だの攻略wikiだの、チートアイテムだのに頼りっぱなしで、自分だけの力で敵を攻略して倒す、その発想と努力がお前には欠けている。まぁ、碌にモンスターを一匹も討伐したことがない、対人戦も「反魔力」頼みの、自称天才ゲーマーのクソ雑魚元勇者のお前らしい、馬鹿で間抜けで無様な戦い方だな、おい。」
僕は沖水に向かって馬鹿にするように笑いながら言った。
僕の言葉を聞いて、沖水は顔を真っ赤にして怒り狂った。
「お、おのれぇ、宮古野氏の分際でこの我が輩を侮辱するとは許せんなり!天才ゲーマーのこの我が輩をクソ雑魚呼ばわりするとは許せんでござる!今度は船諸共、貴様をバラバラに吹き飛ばしてやるなり!」
激高し、ふたたび槍を向ける沖水に向かって、僕は止めの一言を口にした。
「いくら攻撃したって無駄だって言ってるだろ?お前の「反魔力」も攻撃も、もう通用しない。弱点だってとっくの昔に世界中にバレているんだよ。それにだ、お前が今乗っているボートの周りに、僕特製の視えない機雷をたっぷりとばらまいておいた。僕がちょっと指を動かすだけで、手下の海賊たち同様、大量の機雷が一斉に爆発して、お前もお前のお仲間たちも木っ端微塵に吹き飛んで死ぬことになる。最初からお前たちは僕にここへ誘き出された時点で、すでに詰んでいたんだよ。海の藻屑になって、地獄に落ちる覚悟はできたか?」
僕の止めの一言を聞いて、沖水と沖水の他の六人の仲間たちも、ボートに乗っている海賊の部下二人も、途端に青ざめた表情を浮かべながら、恐怖で震えだした。
「み、宮古野氏、いや、「黒の勇者」殿、待つでござる!?ここは一時休戦といくなり!我が輩たちと手を組む気はござらんか?貴殿の力と我が輩たちの力が合わされば、この異世界を支配することは容易いことなり!我が輩たちとともに新たな帝国を築こうではないか?もし、腹の虫がおさまらんなら、ここにいるベトレー宰相を殺すがいいなり!このベトレー宰相こそ、海賊団の真のボスなり!コヤツの首を貴殿に差し出すなり!だから、爆破は中止してくれなり!」
「そ、そんな、陛下、海賊団の首領はあなたです。ダーク・サーファイ帝国の皇帝、キャプテン・ダーク・ジャスティス・カイザーだってあなたではありませんか?私だけに責任を押し付けるとは、それでもあなたは一国の皇帝ですか?」
「だ、黙れ!?我が輩たちはただ貴様に協力してやっただけなり!我が輩たちは貴様の甘言に騙されていただけなり!我が輩たちは異世界を救う勇者なり!貴様ごとき海賊と手を組むのはもうお終いなり!」
青いオールバックの中年男性、ベトレー宰相が、沖水にこれまでの悪事の責任を押し付けられ、そのことに抗議している。
沖水と沖水の他の六人の仲間たちは、縋り付くベトレー宰相の手を振り払い、僕にベトレー宰相を売り渡そうとする。
「お前たちと手を組むなんて断固お断りだ。都合が悪くなったら、自分より立場の弱い者に責任を転嫁して逃れようとする、その腐った性根は健在みたいだな。お前たちもベトレー宰相も、何の罪もない大勢の人間を傷つけ、殺した大罪人だ。お前たち全員、問答無用で殺す。それとだな、光の女神リリア様より先日、新たな神託が下った。世界中で暴走するお前たち元勇者全員を、この僕「黒の勇者」に討伐させ、世界の平和を守れ、とのことだ。つまり、お前たちは女神様から完全に見放され、女神様に反逆する世界共通の神敵となったわけだ。もうお前たちは二度と勇者に戻ることはできない。全員、世界の平和を乱す悪党として処刑する。僕を処刑した恨みも込めて殺してやる。分かったか、クソ食人鬼ども。」
僕の最後通告に、沖水の他の六人の仲間たちは愕然とし、沖水に関しては悔しさと怒りを交えた表情を浮かべながら、その場で地団駄を踏んだ。
「お、おのれぇ、この我が輩が、「槍聖」にして「水の勇者」が女神にクビを宣告されるなど、くそっ!?」
「そういうわけだ。地獄に落ちる覚悟はできたようだし、全員まとめて爆破してぶっ殺してやる。じゃあな、クソ食人鬼ども。」
「パパー、そんな奴ら、ドカンとぶっ飛ばしちゃえー、なの!」
「ああっ、待ってろよ、メル。今、コイツらをドカンとぶっ飛ばしちゃうからねぇ。」
後方で僕と沖水たち一行のやり取りを見ていたメルが、僕にエールを送ってくれた。
「め、メルたん!?な、何故、我が輩の愛しのメルたんが貴様の船に!?おのれぇ、我が輩の愛しのメルたんまで横取りしようとは、宮古野氏、貴様だけはやはり許さんなり!」
「黙れ、変態食人鬼。僕の娘をいやらしい目で見るんじゃない。僕の大事な娘の名前を、その臭い口で気安く呼ぶんじゃない。目障りだ。さっさと死ね。」
僕が機雷を点火しようとした瞬間、沖水が急に気味の悪い笑みを浮かべながら、笑い出した。
「グフフフ、宮古野氏、いや、「黒の勇者」、我が輩たちを爆弾程度で殺せると思っているなら笑止!我が輩たちが隠していたとっておきの切り札にて、貴様を倒してやるなり!」
沖水は左手を握りしめながら、左の手の甲に書かれた、小さな魔法陣を僕に見せた。
沖水の他の六人の仲間たちも、沖水同様、左の手の甲に書かれた、小さな魔法陣を僕に向かって見せるのだった。
「行くでござる!魔法陣、起動!」
次の瞬間、沖水たちの左の手の甲に書かれた小さな魔法陣が眩い光を放った後、ボートの上にいたはずの沖水たち七人の姿が一瞬で消えた。
「はぁっ!?もしかして、アイツら逃げたのか?逃げるが勝ち、なんていう言葉は確かにあるけど、僕を倒す切り札だとか言っておいて、結局逃げるのかよ。しっかし、食人鬼の連中をこのままおめおめと逃がすわけにはいかないな。よっと!」
僕は、「海鴉号」のデッキから50m先のボートまで跳躍して、ベトレー宰相と手下の海賊一人が乗っているボートに乗り移った。
僕はベトレー宰相の胸倉を掴み上げると、ベトレー宰相を尋問した。
「おい、ベトレー宰相、沖水たちがどこに逃げたか、おとなしく吐け!腹心だったお前なら、連中の居所については心当たりがあるはずだ。正直に話すなら、命だけは見逃してやる。断るなら、今すぐこの場で殺す。後ろにいる部下に聞きだせばいいだけだからな。さて、返答を聞かせてもらおうか?」
僕の尋問に、ベトレー宰相は額から大量の冷汗を流し、震えながら答えた。
「お、恐らくですが、ワイヒー・ライアー氏の御屋敷ではないかと思います。ワイヒー氏と陛下たちはエロ写真を一緒に作る仲で、インゴット王国にいた時からの知り合いだと聞いております。ワイヒー氏は個人のクルーザーを所有していまして、推測ですが、ワイヒー氏とともに船で逃げる気かと?」
「ワイヒー・ライアー、あの変態野郎の性犯罪者の屋敷か?なるほど、連中が他に頼れる当てはないし、可能性は高いな。じゃあ、お前は用済みだ。部下と一緒に仲良く死ね。」
「そ、そんな、約束が違う!?」
「黙れ。国を裏切り、大勢の人間を殺した元軍人の悪党との約束なんて、この僕が守るわけないだろ?お前に裏切られた人たちの悲しみと怒りと苦痛をたっぷりと味わって死ね。じゃあな、クズ野郎。」
僕はベトレー宰相を突き放すと、ボートから跳躍して、「海鴉号」へと飛び移った。
そして、直後に右手の指をパチンと鳴らし、ボートの周りに敷き詰めておいた、霊能力のエネルギーで作った視えない20個の機雷を一斉に点火した。
点火した瞬間、機雷が一斉に爆発し、ボートごと、ボートに乗っていたベトレー宰相と、手下の海賊一人を木っ端微塵に吹き飛ばした。
背中越しに爆発音を聞きながら、僕はイヴに訊ねた。
「イヴ、ベトレー宰相が沖水たちは、ワイヒー・ライアーの屋敷に逃げ込んだのでは、と言っていた。ここから君の千里眼で、沖水たちがワイヒーの屋敷にいるか、確認してもらえるかい?」
「ふむ。少々待て。ああっ、婿殿、確かに元「槍聖」たちが全員、ワイヒーとか言う男の屋敷にいるぞ。しかも、全員、真っ青な顔をして震えている。恐らく、先ほど魔法陣を使った副作用だろう。セーレ転送魔法陣というヤツを使ったに違いない。」
「セーレ転送魔法陣?何だ、それは?」
「先日、婿殿が元「槍聖」たちから盗み出した「ドクター・ファウストの魔導書」の300ページ目に書いてあった。空いている時間を使って、悪魔の魔導書と呼ばれるあの本をひと通り呼んでみた。転移魔法の魔法陣の超小型化を目的にしたものだと、書いてあった。魔法陣を刻んだ2点間の場所を、移動距離の制限なしに転移して移動できる効果があるそうだ。魔法陣を人体の一部に刻み、持ち運びもできる。ただし、セーレ転送魔法陣を使用する場合、人体の血液の30%と、Aランクレベルの魔力、この二つをエネルギーとして消費する必要がある。人体の血液の30%を失えば、人間は呼吸不全や虚脱症状の発症、あるいは失血死する恐れがある。おまけに、Aランクレベルの魔力まで消費し、魔力切れを起こし昏倒する恐れまである。あの魔法陣は使用者に生命の危機をもたらす重大な副作用があるため、緊急時の脱出程度にしか使えない、諸刃の剣とも言える代物だ。はっきり言って、欠陥品だ。元「槍聖」たちはあの魔法陣を使った副作用で全員、死にかけているようだ。」
「逃亡用の魔法を使って、逆に死にかけるって、アイツら本当に馬鹿だな。このまま放っておけば、連中は勝手に自滅するかもしれないが、連中全員、食人鬼だ。近くの人間を襲って食い殺して回復を図ろうとする可能性もある。それに、サーファイ島には多くの島民がいる。すぐに元「槍聖」たちを追いかけて、確実に息の根を止めるとしよう。イヴ、ひとまず、この船ごと、僕たちをサーファイ島の南側の港へと転送してくれないか?」
「任せよ、婿殿。」
イヴが右手の指をパチンと鳴らすと、目の前の景色がグニャリと歪んだ後、僕たちの乗る「海鴉号」は、サーファイ島の南側の港へと一瞬で転送された。
港の停泊所に「海鴉号」を僕は停泊させた。
それから、認識阻害幻術を僕たち全員と「海鴉号」にかけると、僕たちはマリアンヌとメルを「海鴉号」に残し、サーファイ島の首都の南側にある、ワイヒー・ライアーの屋敷へ、残りのメンバー全員で向かうことを決めた。
「マリアンヌ、メルと一緒にこの船で待機していろ。メルのことを頼んだぞ。メル、パパたちはこれから逃げたあの悪者たちをやっつけてくるから、マリアンヌお姉ちゃんとこの船で良い子にして待っているんだぞ。メルのおばあちゃんの仇は必ず、パパたちが討つからね。」
「かしこまりました、ジョー様。どうかご武運を。」
「分かったなの!パパ、頑張って、なの!」
「それじゃあ、みんな、食人鬼退治に取りかかるとしようか。」
僕がみんなに声をかけると、鵺が僕に声をかけてきた。
「待って、丈君。私との約束、覚えてる?元「槍聖」たちは私と合体して一緒に倒す、と二人で約束した。今すぐここで合体して、あのゴミ以下の変態食人鬼どもを一緒に始末する。」
「そうだったね。では、合体して奴らを一緒に地獄のどん底まで叩き落とすとしよう。」
僕の右隣に鵺が立つと、僕は両手を合わせて、胸元で合掌した。
僕は鵺と合体するための呪文を唱える。
「契約に捧げし贄は我が命、我が命食らいし式を我が半身と為して、眼前の敵を討ち滅ぼす悪鬼羅刹を顕現せよ、鵺降臨!」
呪文を唱え終えると同時に、僕と鵺の体が光り輝き、青白い大きな光に一緒に包まれた。
僕たち二人の体を包む光が、船上を明るく照らし続ける。
やがて光がおさまると、鵺との合体を終えた僕が姿を現した。
黒色をベースとした銀色のストライプの入った着物を纏い、両手には銀のストライプが加わった黒いグローブ、両足には銀色のストライプが加わった黒いブーツを身に着けている。腰には銀色の帯を巻いている。
髪の色は銀色に変わっている。
両目は鵺と同じ、右目が緑色の瞳、左目が黒色の瞳のオッドアイに変わっている。
腰の左側と帯の間には鵺と同じ、刀身が80cmほどの長さの、反りが入った、黒い刀身と黒い鞘の、黒い日本刀、黒い太刀を下げている。
「霊装天鵺ノ型!」
僕の変化した姿に、その場にいた全員が驚いた。
僕の変化した姿を見て、玉藻、酒吞は喜んだ。
「ついに鵺が丈様との合体に成功しましたか。鵺の天候を操作する能力と飛行能力まで身に着ければ、丈様に空中戦で敵う相手はいないでしょう。さらなる成長が楽しみです。」
「ようやく鵺との合体にまでこぎ着けたか。これで俺たち妖怪三匹の能力を丈は使えるようになる。まだまだ、トレーニングは必要だが、丈の強さはますます進化することになる。これからの成長を見るのが俺も楽しみだぜ。」
イヴ、エルザ、グレイは興味深そうに、僕の変化した姿を見ていた。
「ほう。これが婿殿と鵺の合体した姿、新たな力か。早く新しい力とやらを見たいものだ。期待しておるぞ、婿殿。」
「今回は鵺殿と合体したわけか。一体、どんな力を秘めているのか、我も興味がある。」
「これが、ジョーと鵺の姉御が合体した姿か。中々イカしてんじゃんよ。ホント、つくづく規格外だぜ、ウチの「黒の勇者」様はよ。さて、今回はアタシらに一体、何を見せてくれるのか、楽しみで仕方ないぜ。」
マリアンヌとメルは、僕と鵺の合体を見て、ただただ驚きを隠せないでいる。
「ジョー様と鵺さんが合体!?そ、そのような能力までお持ちなのですか!?「黒の勇者」の力、あまりに凄すぎます!正に規格外、常識をはるかに上回るお力と言えます!これが、リリア様の仰っていた切り札の力、というわけですか。」
「パパと鵺お姉ちゃんが合体したなのー!超カッコいいなの!」
「さて、それでは改めて食人鬼どもを退治しに行こう。イヴ、ワイヒーの屋敷の前まで、僕たちを転送してくれ。」
「了解だ、婿殿。」
イヴが右手の指をパチンと鳴らした。
直後、僕たち六人は首都の南側にある、ワイヒーの屋敷の前へと転送された。
「さてさて、食人鬼どもの間抜け面を拝みに参りましょうか。」
僕はそう言うと、ワイヒーの屋敷の門をくぐり、屋敷の敷地内へと入っていった。
玉藻、酒吞、エルザ、グレイ、イヴの五人も、僕の後に続いて、屋敷の門をくぐって屋敷の敷地内へと入っていった。
一方、時は少し遡り、15分ほど前のこと。
セーレ転送魔法陣を使い、ハッタリをかまして、「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈と「アウトサイダーズ」の前から、首都のワイヒー・ライアーの屋敷内へと逃亡した、元「槍聖」沖水たち一行であったが、禁術の魔法陣を使用した副作用で、呼吸不全に虚脱症状、さらに反魔力切れを起こし、青い表情を浮かべながら、全身を震わせ、生死の境を彷徨っていた。
「ぜぇ、ぜぇ、こ、このまま、では、我が輩たちは、し、死んでしまう、なり。は、早く、血肉を、せ、摂取せねば。」
沖水たち一行が呻き声を上げていると、沖水たちの呻き声を聞いたワイヒーが、沖水たちのいる部屋、エロ写真のモデルたちを撮影するスタジオ用の部屋へと入ってきた。
セーレ転送魔法陣の行き先の魔法陣を、沖水たち一行はワイヒーの屋敷のスタジオ用の部屋の床に、こっそりと書いていたのであった。
苦しそうな表情を浮かべ、怪我まで負っている沖水たち一行を発見し、ワイヒーは驚き、沖水たち一行に慌てて駆け寄り、声をかけた。
「我が同志、オキミズ氏よ!一体、何があったのです!?何故、そのように苦しそうにしているのですか?それに、何故、私の屋敷の中にいるのです?確か、怪盗ゴーストの捕縛にピグミーシャーク島へと向かわれたと聞きましたが、いつお戻りになられたのですか?とりあえず、すぐに手当てをいたしましょう。」
ワイヒーが沖水たち一行に事情を訊ねながら、手当てをしようと近づいた瞬間、沖水たち七人は一斉にワイヒーに襲いかかり、ワイヒーの体に噛み付き、反魔力をワイヒーの体へ注ぎ、ワイヒーの肉体を反魔力で一瞬で汚染すると、ワイヒーを生きたまま食べ始めた。
「お、オキミズ氏、や、止め、我が同志よ、助けて、フギャアアアーーー!?」
ワイヒーの説得も抵抗も虚しく、ワイヒーは生きたまま、血肉に飢えた沖水たち一行によって、無惨に食い殺されたのであった。
頭部を半分残した状態になるまで、ワイヒーの体を貪り食って、ワイヒーの血肉を摂取して飢えを満たした沖水たち一行は、腹が満たされ、体力も回復し、落ち着きを取り戻したのであった。
「ゲプゥー。ふぅー、これで体力は回復したなり。危うく死にかけるところでござった。ワイヒー氏よ、貴殿の死は決して無駄にはしないでござるよ。貴殿の血肉を糧に、我が輩たちは生き延び、再起を図るなり。貴殿の遺したエロ写真のコレクションと財産は我が輩たちが有効活用するなり。貴殿のクルーザーもいただくなり。クククっ、宮古野氏、いくら貴様でもここまですぐに追いつくことはできまい。戦略的撤退というヤツなり。今回の勝負は引き分けなり。我が輩たちはさらなるパワーアップを果たし、いずれ貴様との決着を着けるでござる。皆の者、これよりワイヒー氏のコレクションと財産を回収した後、ワイヒー氏のクルーザーにて、この国を脱出するなり。そして、魔族のいる魔国へと向かうでござる。愚かな女神は我が輩たちを見捨て、我が輩たちの命を狙う愚行を始めたなり。故に、我が輩たちは勇者を辞め、魔族との協力戦線を結び、「黒の勇者」と女神の打倒を目指すでござる。魔族に上手く取り入れば、魔王の側近のポストを手に入れることも夢ではないなり。ゆくゆくは、隙を見て、この我が輩が魔王となり、魔族どもを配下に、我が輩たちに仇なす異世界の愚かな人類と女神に天誅を下し、そして、異世界を我らが手中に収めるのである。皆の者、我が輩たちの異世界無双はここから新たな再スタートを始めるなり。この我が輩の辞書に不可能の文字はないのでござる。」
沖水が、笑いながら異世界での再スタートに向けて、他の六人の仲間たちの前で宣言した。
「フヘヘヘ。さすがはキャプテン。転んでもただでは起きない、その図太さは天晴だよ。勇者から魔王の側近にジョブチェンジ、良いんじゃない?そっちの方が面白そうだし、僕たちには案外、向いてるかも。」
「確かにな。魔王の側近になれば、これまで通りプレイヤーキルを楽しめるわけだし、良いと思うよ。僕もキャプテンの意見に賛成っと。」
「メフィストソルジャーの僕たちは即戦力で即採用間違いなしってわけだ。僕たちは魔族にとって、人間を殲滅する有能な人材、いや、切り札の一つになり得る。なら、さっさと魔国とやらに行こうぜ、キャプテン?」
金田、天神、吉尾の三人が、沖水の提案に賛同した。
高城、宮丸、志比田の、残り三人のメンバーも笑顔でうなずいている。
「では、皆の者、すぐに支度へ取りかかるなり!いざ、行かん、魔国なり!」
沖水が大声で、魔国へ行くことを皆の前で宣言した。
その時だった。
「なぁーにが、いざ、行かん、魔国なり、だ。お前たちイカれた変態食人鬼どもをそう簡単に逃がすわけないだろ?魔族だって、お前たち馬鹿で無能で変態の食人鬼を雇おうと思うわけないだろが?いい加減、ちっとは現実を見ろっての。」
突然、浮かれていた沖水たち一行の耳に、聞き慣れた、恐ろしい天敵の声が聞こえてきた。
「ま、まさか、その声は!?」
慌てふためく沖水たちの前に、突然、スッと部屋の入り口から、「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈と、その仲間の五人が一斉に姿を現した。
「よう、また会ったな、沖水。後、お仲間の六人。セーレ転送魔法陣を使ってまんまとこの僕から逃げおおせたと思ったらしいが残念だったな。単純なお前らの行動パターンはすでに予測済みだ。自滅するかもしれない禁術まで使ったのに、簡単に追いつかれた気分はどうだ?お前らに最初から逃げ道なんてどこにもないんだよ。お前らが大好きなゲームみたいに、すぐリセットするなんてできないんだよ、現実は。それで、地獄に落ちる覚悟はできたか?」
「み、宮古野氏!?き、貴様、一体どうやってここまで来たでござる!?そ、それにその姿はい、一体なんなり!?」
「先に質問したのはこちらだ。お前たちにいちいち、僕の能力をご丁寧に説明する気はない。知りたきゃ、自分たちで戦って調べろ。大体、敵に自分の手の内を明かして戦う奴なんているわけないだろうが?ゲームのチュートリアルでもやってるつもりか?お前がゲームに頭を毒され過ぎた、現実の見えていない馬鹿だとしか聞こえない質問だぞ、沖水。もう一度聞くぞ、お前ら、地獄に落ちる覚悟はできたか?できた奴から前に出てこい。一瞬で楽にしてやる。」
僕は呆れた表情を浮かべながら、沖水たちに訊ねた。
沖水たち一行は、僕たちに追い詰められたことにようやく気が付き、慌てて奥の部屋へと続くドアへと殺到し、我先にと逃げ出そうとしている。
そんな情けない沖水たちの姿を見ながら、僕はイヴに指示した。
「イヴ、僕たちとあの連中をピグミーシャーク島へと転送してくれ。処刑ショーのフィナーレを始めるとしよう。」
「フフっ、了解だ、婿殿。」
イヴが右手の指をパチンと鳴らした瞬間、僕たちと沖水たち一行は、イヴの瞬間移動の力でピグミーシャーク島の浜辺へと転送された。
突然、ワイヒー氏の屋敷からピグミーシャーク島へと転送され、沖水たちは驚き、混乱している。
「なっ!?こ、ここはピグミーシャーク島なり!?何故、我が輩たちはまた、この島に戻ってきたなり!?」
混乱する沖水たちに向かって、僕は笑みを浮かべながら、声をかけた。
「混乱しているところ悪いが、これより僕たちとお前たちで一つ、ゲームを始めようじゃないか?ゲームのタイトルは、「サバイバル鬼ごっこ」だ。ルールは簡単。僕たち「アウトサイダーズ」のメンバー六人が鬼になる。そして、お前たち七人は、僕たち鬼から殺されないよう逃げる役だ。舞台はこのピグミーシャーク島、制限時間は1時間。1時間以内に、鬼である僕たちから殺されないよう、逃げ切ってみせろ。1時間後に無事、僕たちから殺されず、生き延びた奴は命だけは助けてやる。死刑囚確定の捕虜扱いだけどな。もちろん、僕たち鬼への反撃はOKだ。ただし、この島の外へ逃げ出すのは禁止だ。泳いで逃げようとしたり、セーレ転送魔法陣を使って逃げようとしたりした時点で即、失格、ゲームオーバーとみなし、容赦なく殺す。ゲームマスター兼ラスボスはこの僕だ。お前たちの大好きなゲームでチャンスを与えてやろうと言うんだ。感謝しろよ。それでは、これより1分後、午後2時ちょうどにゲームを開始する。ルール説明は以上だ。」
懐中時計を見ながら、僕が沖水たちに、生き残りをかけたデスゲームの開催を宣言した。
沖水たち七人はポカンと口を開けていたが、デスゲームが始まると知り、慌ててバラバラにそれぞれ走って逃げ始めた。
逃げる沖水たちの背中を見ながら、僕はパーティーメンバーの五人に声をかけた。
「みんな、聞いての通りだ。これから、変態食人鬼どもを狩るゲームを始める。本当は処刑ショーのフィナーレなんだけどね。鬼として存分に力を発揮して、連中を殺してくれ。僕はゲームを盛り上げるため、最大限の演出をするつもりだ。よろしく頼むよ、みんな。」
「かしこまりました、丈様。丈様の用意したこのデスゲームに、毒の花を添えて御覧に入れます。」
「了解だぜ、丈。本物の鬼の怖さって奴を連中の体と心にぶち込んでやるぜ。」
「承知した、ジョー殿。我が剣技にて、食人鬼どもを成敗してくれる。」
「OK、ジョー。ついにクソ勇者どもをアタシの槍で串刺しにしてぶっ殺す日が来たじゃんよ。アドレナリンが止まらないじゃんよ。」
「了解だ、婿殿。妾にかかれば、あの程度の雑魚どもを始末するのは容易いこと。婿殿のゲームマスターとしての采配ぶりをじっくりと見物させてもらうとしよう。」
玉藻、酒吞、エルザ、グレイ、イヴの五人が、それぞれ元「槍聖」たちの討伐への意気込みを語った。
「では、ゲームスタートだ。みんなの活躍を期待しているよ。1時間以内にターゲットを見つけて殺すことを忘れないように。それじゃあ、散開!」
僕が指示を出すと、玉藻たち五人は、逃げた沖水たち一行を追って、それぞれ別れた。
僕は霊能力を解放し、銀色の霊能力のエネルギーを全身に纏った。
「天鵺行空!」
銀色の霊能力のエネルギーを纏った僕の体がフワリと宙に浮かぶと、僕はそのまま島の上空まで一気に空を飛んだ。
島の中心の真上、島の上空100mほどの地点の空中で、僕は一旦制止した。
そして、島の上空から、「霊視」による透視などを使いながら、ゲームの進行状況を確認した。
「ふーん、なるほどね。島の東側の茂みに金田が隠れているな。沖水は、島の北側に向かって逃走中か。吉尾は、島の頂上に続く階段の中腹の傍の林の中、高城は、「女神リリアの黄金像」があった頂上付近、階段の傍の林の中か。宮丸は島の西側の森の茂みの中に隠れているな。天神は、島の一番西側の茂みに隠れているな。志比田は、北西方向に向かって逃走中か。隠れてやり過ごすか、不意打ち狙いか、ただ逃げ回っているか、という感じか?まぁ、お前たちの思い通りにさせるわけないけどな。お前たちにとって人生最悪最後のゲームを楽しませてやろう。」
僕は黒い日本刀を腰の鞘から抜いた。
刀を頭上に掲げると、刀全体が銀色に一瞬、光り輝いた。
「天鵺創造!」
右手に持つ日本刀の先を中心に黒い雷雲が発生し、ピグミーシャーク島の空を覆い隠した。
そして、黒雲から一斉に、沖水たち七人の背後へと雷が落ちた。
自分たちのすぐ背後に雷が落ちてきたため、沖水たち一行は全員、その場で驚き、恐怖で硬直している。
そんな沖水たち一行の反応をよそに、雷雲から次々と沖水たちの周囲に雷が連続して落ちた。
沖水と志比田以外の隠れていた五人は、自分たちのすぐ傍に雷が連続して落ち、感電死寸前に追いやられたことで、たまらず隠れていた茂みや林の中から飛び出した。
沖水と志比田はと言うと、自分たちの前後左右に雷が落ちてきたため、落雷で感電死するかもしれないという恐怖に襲われ、二人とも腰を抜かしている。
隠れている連中の炙り出しと、連中を狙う落雷の恐怖の演出が成功し、僕は笑った。
「ハハハ!ゲームマスターであるこの僕の演出は最高だろう?僕が用意したこのゲームは、お前たちが常に不利になるよう、出来ているんだよ。自称天才ゲーマーでイカれた妄想に頭をやられているお前たちに、リアルの恐ろしさをたっぷりと味わわせてやる。おっと、早速戦闘が始まりそうだ。お前たちが苦痛と恐怖と絶望で顔を歪めながら、無様に殺される姿をこの目で拝見させてもらうとしよう。」
僕はそう言って笑いながら、上空からパーティーメンバーと沖水たち一行との戦闘を、ワンサイドゲームの処刑ショーを観戦することにした。
午後2時10分。
島の東側の浜辺にて、酒吞と金田が遭遇、戦闘が開始された。
20mほど前方にいる酒吞の姿を見ながら、金田は急に興奮し、口元をニヤケさせながら言った。
「フ、フヘヘヘ、ぼ、僕の相手が、僕好みの筋肉っ娘なんて、超ラッキーなんだな。日焼けした健康的な肌、たくましい筋肉、見事に割れたシックスパック、筋肉の付いた胸に載った巨乳、虎柄のセクシーなビキニアーマー、マジ最高だよ。よだれが止まらないよー。ジュルリ。」
口元をニヤケさせ、よだれを垂れ流し、いやらしい目付きで舐めまわすように自分の体を見てくる金田に、酒吞が強い不快感を露わにした。
「変態食人鬼が、いやらしい目でこっちを見るんじゃねえ。俺の心も体も丈の物だ。テメエみたいなチ〇ポもキ〇タマも度胸もねえ、情けねえ変態のクソガキなんぞ、相手するだけで不愉快だ。とっととぶっ潰して地獄に送るとするか。」
酒吞はそう言うと、金田の方に向かって真っ直ぐ歩き始めた。
「フヘヘヘ、気の強い筋肉っ娘は大好物なんだな。殺すのは惜しいけど、君のことは僕の脳内フォルダにしっかり保存して、後でオナネタに使わせてもらうからね。食らえ、変速結界!」
金田の左手に持つ丸盾から、紫色の光を放つ、直径50mほどの大きさの半球状の結界が発生し、金田と酒吞の二人を包み込んだ。
「フヘヘヘ、僕の結界の中に一度入ったら、君の攻撃もスピードも回復力も、全部速さが半減するんだ。おまけに、反魔力の追加効果で、君はその内、体が動かなくなる。逆に、僕の攻撃とスピードと回復力は2倍にまで上がるのさ。動けなくなった君をたっぷり虐めた後、楽にしてあげるよ。フヘヘヘ、その腹筋を撫でまわすのが楽しみだよ。」
金田が薄気味悪い笑顔を浮かべ、腰のベルトの鞘からダガーナイフを抜いて、右手でダガーナイフを持ちながら、酒吞が動けなくなるのを待ち構えた。
だが、金田の予想に反し、酒吞は特に結界を気にする様子もなく、余裕綽々といった感じで、全くスピードを落とすことなく、金田の目の前まで歩いて近づいていく。
「な、なんで、ぼ、僕の結界に入っても動けるんだ?は、反魔力が効かないのは、宮古野の奴だけなんじゃ?」
反魔力で作った自身の「変速結界」の中でも平然と動く酒吞の姿を見て、金田は困惑した。
困惑する金田の目の前に、余裕の表情の酒吞が立ち塞がった。
困惑する金田の頭を、右手でアイアンクローのように掴み、金田の全身を持ち上げながら酒吞は言った。
「反魔力だったか?そんなモン、この俺には通用しねえんだよ、変態食人鬼のクソガキが。こんな茶地な結界で俺を動けなくするとかほざいていたが、俺には蚊ほどの痛みもねえな。じゃあな、変態食人鬼。」
酒吞はそう言うと、金田の頭を掴む右手に思いっきり力を加えた。
「痛てて、た、助けて!?」
酒吞に頭を掴まれ、酒吞に怪力のアイアンクローを食らい、あまりの痛さにジタバタともがき、命乞いをする金田であった。
金田が命乞いをした瞬間、一気に酒吞が、さらに右手に力を込めた。
そして、アイアンクローで金田の頭を一瞬で握りつぶした。
グシャっ、という音を立てて、頭蓋骨を粉々に砕かれ、脳みそもグシャグシャに潰され、大量の血と一緒にグシャグシャに潰された脳みそを頭部から垂れ流し、頭の半分を無惨に潰されて殺された金田の死体が、酒吞の右手に掴まれていた。
金田の死体をポイっとその場に投げ捨てると、酒吞は海の水で、血で汚れた右手を洗いながら呟いた。
「死ぬ直前まで変態丸出しだったな、コイツ。こんなド変態野郎の食人鬼に殺された連中が不憫に思えてくるぜ、まったく。とりあえず、一匹始末完了だな。他の連中の様子でも見に行くとするか。」
酒吞は立ち上がると、他のパーティーメンバーたちの戦いを見に、浜辺をゆっくりと歩いていくのであった。
上空から酒吞と金田の戦闘を観ていた僕は呟いた。
「さすがは酒吞、わずか3分で金田を片手だけで殺してみせた。全力を出したなら、恐らく3秒もかからなかっただろうけど。でも、金田の馬鹿で無様な最期を見れて大満足だ。さて、次は、エルザを見に行くとしよう。」
僕は、エルザと天神がいる、島の一番西側の浜辺へと上空を移動した。
午後2時15分。
島の一番西側の浜辺にて、エルザと天神が遭遇、戦闘が開始された。
50mほど前方にいるエルザの姿を見て、天神は大興奮し、口元をニヤケさせながら言った。
「分かる、分かるよ!その鎧の下に隠された君の美しい貧乳が!その鎧の胸の厚さから察するに、恐らくAカップ!貧乳マスターの僕であるこの僕の目に狂いはない!貧乳女子、最高!ビバっ、貧乳!」
自分の胸を見ながら、何度も貧乳、貧乳と大声で言って興奮する天神に対して、エルザはロングソードを構えながら、激怒した。
「だ、誰が貧乳だ!?我は決して貧乳ではない!我にいやらしい目を向けてきた上に、貧乳と言って侮辱したこと、絶対に許さん!今すぐ、我が剣にて成敗してくれる!」
激怒するエルザに対して、天神は笑いながら言った。
「貧乳は決して恥じることのない、女性において至高の美の証だと言うのに。君のような美しい貧乳女子を手にかけることは心苦しいけど、許してくれよ。君の貧乳だけは傷つけないようにして殺してあげるからさ。」
天神が右手に持つ、青い魔石を先に嵌めた木製の魔法の杖からオレンジ色の光線が、地面の砂に向かって照射されると、砂でできた身長5mほどの人造ゴーレムが100体、天神を守るように、天神とエルザの間に次々と出現した。
「反魔力で作った僕の人造ゴーレムに、魔力を使った斬撃は通用しないよ。コイツら一体一体が、Aランクに匹敵する力を持っている。君に打つ手はないよ、貧乳のお嬢さん?」
余裕の表情を浮かべる天神であったが、そんな天神の軽口をエルザは軽く受け流した。
「その程度の砂人形を作った程度で我が剣を破れると思っているのなら、笑止。貴様に見せてやろう、我が編み出した新たな剣技を。」
エルザはロングソードを中段に構えながら、魔力を解放し、魔力のエネルギーを両腕と両足に集中させた。
エルザの両腕と両足が、白く光り輝いた。
エルザの背後に、巨大な狼の顔のようなマークと、巨大な猿の顔のようなマークが左右に浮かび上がると、二つのマークが重なり合った。
「冥土への土産にとくと見るがいい!百獣剣舞・狼猿獣人剣!」
エルザが叫んだ直後、エルザが超高速で走り、100体のゴーレムたちの前へと移動した。
そして、目にも止まらぬ超高速でゴーレムたちの間を移動しながら、剛腕から繰り出される重い剣の一撃で、ゴーレムたちを次々に粉砕していく。
エルザの超高速の俊足と、剛腕から繰り出される剛剣によって、たった一撃で、自分の生み出したゴーレムたちがあっという間に殲滅される光景を見て、天神は慌てた。
「そ、そんな馬鹿な!?反魔力で作ったゴーレムたちが倒されるわけが!?な、何なんだ、あのスピードとパワーは!?くそっ、魔力を使った剣は効かないんじゃないのかよ!?」
自慢のゴーレムたちを殲滅され、すぐに追加のゴーレムを作ろうとした天神であったが、取り乱す天神の真っ正面に、一瞬でエルザが現れ、ロングソードで天神を頭から縦に一刀両断した。
「ハアっ!」
「ガハっ!?」
エルザの「狼猿獣人剣」の一撃を食らい、体を縦に一瞬で真っ二つに斬り裂かれて、天神は死亡した。
真っ二つに斬られた天神の死体を蔑むような目で見下ろしながら、エルザは呟いた。
「我が剣にて地獄へと落とされたことがせめてもの救いだったと思うがいい、この変態食人鬼めが。我を貧乳と侮辱したその罪、地獄でじっくりと裁きを受けるがいい。」
エルザと天神との戦闘を上空から観ていた僕は、呟いた。
「エルザの編み出した新技の威力は本当にすごいな。たった5分で敵を殲滅するとは、さすがだよ。天神の奴、エルザを貧乳だとか言って挑発するわ、反魔力で大量にゴーレムを作って油断するわ、ざまぁないな。魔力も使い方次第で、反魔力に対抗できる物理攻撃を可能にするんだよ。魔力を纏った斬撃が効かないことはすでに知った上で対策してきているんだよ、僕たちは。反魔力への対策は僕だけしかしていないと本気で勘違いしていやがる、あの食人鬼ども。さてと、次は玉藻と宮丸の戦いを観に行くとしよう。」
僕は、島の西側の森の中にいる、玉藻と宮丸の下へと向かった。
午後2時22分。
島の西側の森の中にて、玉藻と宮丸が遭遇、戦闘が開始された。
森の中を必死に逃げていた宮丸を発見した玉藻が、宮丸のすぐ後方から声をかけた。
「いい加減、無駄な悪足掻きはお止めなさい、変態食人鬼の下郎めが。おとなしく観念なさい。」
10mほど後方にいる玉藻の姿を見て、宮丸は大興奮し、口元をニヤケさせながら言った。
「マジかよ、本物のケモ耳娘じゃんかよ!しかも、狐耳でフサフサの尻尾付き、おまけに着物とか、クオリティ半端ねえ!ケモナーの僕にどストライクじゃんか!こんな娘と戦わないといけないとか、マジ最悪だよ!宮古野の奴、こんな可愛いケモ耳娘を独占しやがって!マジでムカつくぜ!」
自分をいやらしい目で見てくる宮丸に、玉藻は嫌悪感を露わにした。
「この私にいやらしい目線を向けてきた上、欲情してくるとは、実に不快です。何より、この私の前で愛しい丈様を侮辱したその態度、絶対に許しません。すぐに地獄へと葬ってあげましょう。」
玉藻は着物の懐から鉄扇を取り出し、宮丸への敵意、否、殺意を剥き出しにした。
「はっ!あんなクソダサい陰キャのぼっちのどこがいいんだよ?すぐに僕の方が良いって分からせてやるよ!蛇槍追撃!」
柄の長さが7m、折れた穂先のパイクを両手で構えながら、宮丸がパイクを突き出し、折れた穂先を玉藻へと向けた。
宮丸の折れたパイクの穂先がグーンと伸び、玉藻を貫かんと追撃してきた。
宮丸のパイクによる攻撃をサッと横に飛んで交わすと、玉藻は認識阻害幻術を発動し、姿を消した。
「無駄だ!僕の「蛇槍追撃」は、敵の体温を感知して、どこまでも敵を蛇のごとく追跡するんだ!姿を消したところで、僕の槍はどこまでもお前を追いかけて貫くんだ!観念するのはそっちなんだよ、ケモ耳娘ちゃんよぉ!」
自信満々の表情で勝利を確信する宮丸であったが、宮丸の伸びたパイクの穂先は、一向に動かず、穂先がさらに伸びることもない。
宮丸のパイクの穂先は、姿を消した玉藻の体温を感知できず、止まってしまった。
「はぁっ!?な、何で動かねんだよ!?「蛇槍追撃」は発動したままだ!僕の槍が敵を見失うわけないんだ!?」
激しく混乱する宮丸の喉元に、突然、10㎝ほどの金色の針が突き刺さった。
「ガっ!?」
宮丸が呻き声を上げると同時に、宮丸の全身に激痛が走った。
あまりの激痛に、パイクを手放し、地面で転げ回る宮丸の体が、急速に溶け始めた。
髪が抜け落ち、顔や手足の皮膚が溶け、眼球や鼻、指が溶け落ちていく。
喉を潰され、悲鳴を上げることもできず、肉も骨も、玉藻の放った毒針の猛毒で体を溶かされ、激痛を味わい、苦しむ宮丸であった。
1分後、玉藻の毒針の猛毒で全身を骨も残すことなく、完全に溶かされて、宮丸は死体も残さず、消滅した。
宮丸の服と武器、装備品だけが後には残された。
宮丸の死を確認し、認識阻害幻術を解除した玉藻が、スゥーっと、姿を現した。
「体温を感知して敵を追撃する槍、面白い技ではありましたが、大したことはありませんね。プロの暗殺者であるこの私にとって、己の体温を消すことなど、容易いことです。敵に悟られるようなミスをこの私が犯すことはありません。大勢の人間を食い殺した罪、大勢の女性を己の性欲のために傷つけた罪、丈様を処刑した罪、丈様を侮辱した罪、地獄にて悔い改めなさい、薄汚い変態食人鬼めが。」
そう言うと、玉藻は上空から戦いの様子を観ていた僕に向かって手を振ってみせた。
上空から玉藻と宮丸の戦闘を観ていた僕は、玉藻に手を振りながら呟いた。
「さすがは玉藻だ。わずか2分足らずで宮丸を瞬殺した。不意打ちで仕留めたなら、1秒で決着が着いただろうな。敵の体温を感知してどこまでも伸びて追撃する槍か。反魔力が加わることで、より威力が増すだろうが、相手が悪かったな、宮丸。己のスキルと反魔力を過信したこと、後、戦闘中に欲情するその馬鹿丸出しのお頭も、お前の敗因ではあるな。それにしても、はるか上空にいる僕の気配を察知するとは、やっぱりすごいな、玉藻は。我がパーティー最強の暗殺者だけのことはある。さてと、それじゃあ、ゲームの進行状況を参加者の皆さんにアナウンスするとしますか。」
僕は一気に島の中央まで飛んで移動すると、50mほど高度を下げた。
それから、大声で島中に聞こえるようにアナウンスを行った。
「ゲームの参加者の皆様にお知らせいたします!現在、時刻は午後2時25分!ゲーム開始から25分が経過いたしました!ただいまのゲームの進行状況ですが、プレイヤー側から3名の方が脱落されました!金田君、天神君、宮丸君、以上3名の方が死亡、脱落しました!残るプレイヤーの方は4名、鬼は6名となっております!制限時間まで残り35分、プレイヤーの皆様は無事、生き残ることができるか、健闘を祈っております!以上、ゲーム運営本部兼ゲームマスターからのお知らせでした!引き続き、ゲームをお楽しみください!」
僕はアナウンスを終えると、ふたたび島の上空100m付近まで飛び上がり、上空から島の様子を窺った。
「おっ、残り四人は大分慌てているな。高城とグレイ、吉尾とイヴがそれぞれ戦闘に入りそうだな。志比田と沖水はその場から動かずか。まぁ、隠れても僕が雷を落として炙り出そうとするから、隠れたくても隠れられない状況だしな。逃げ道もないし、迎え撃つ以外に手詰まりといったところか。グレイとイヴの活躍も見たいけど、そろそろ僕もゲームに本格参戦するとしよう。手始めに、志比田、お前から殺すとしよう。ゲームマスター兼ラスボスの僕が直々にお前を地獄に落としてやるよ。ラスボスの乱入イベントはお前たちの大好物だろうしな。」
僕は笑いながら、島の北西の浜辺にいる志比田の方へと向かって飛んでいった。
午後2時27分。
島の頂上に続く階段の中腹にて、イヴと吉尾が遭遇、戦闘が開始された。
階段の中腹で、グレイヴを右肩に担いだ吉尾が、階段を上ってくるイヴを待ち構えた。
「婿殿も皆もゲームを楽しんでいるようだ。さて、最初は不意打ちなんぞ考えて、コソコソと隠れていた卑怯者の腰抜けが、逃げ道がないと知って、切羽詰まって姿を現しおった。変態食人鬼の惨めな死に様を見られれば、妾は満足だ。死ぬ覚悟は決まったか、下劣な食人鬼の小僧よ?」
10mほど階段の下にいるイヴの姿を見て、吉尾は大興奮し、口元をニヤケさせながら言った。
「ははっ!言いたい放題、言ってくれんじゃんよ、ババアが!僕好みのスタイル抜群のババアが相手とか、マジ最高じゃないか!ババア、お前はこの僕が殺してやるよ!ババアの泣き喚く姿を見ると、超興奮するんだよね、僕!」
吉尾がイヴのことを何度もババアと連呼したのを聞いた途端、イヴが鬼のような形相に変わった。
「あ゛ぁっ!?誰がババアだと!?」
吉尾を睨みつけると、イヴは右手の指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、吉尾の足元に、人一人通れるほどの大きさの穴の、超小型ブラックホールが出現し、ブラックホールの重力に吉尾の体は引っ張られ、ブラックホールに引きずり込まれていくのだった。
「な、何だ、これ!?く、くそっ、吸い込まれる!?た、助けて!?」
悲鳴を上げる吉尾であったが、ブラックホールの重力には逆らえず、ブラックホールに全身を吞み込まれ、ブラックホールの超重力で全身を一瞬でバラバラにされ、宇宙の塵と化して、あっけなく消滅したのであった。
吉尾をブラックホールで消し飛ばした後、イヴは吉尾が立っていた場所を、怒りの表情を浮かべながら、睨みつけていた。
「変態食人鬼の分際で、この妾をババア呼ばわりするなど、万死に値する。この若くて美しい、闇の女神である妾のどこがババアだと言うのだ。一息に殺さず、もっと残酷な方法でいたぶり抜いた後、究極の苦痛と恐怖を味わわせてから、より惨めで無様な姿にして殺せば良かった。まぁ良い。後で婿殿にいっぱい慰めてもらうとしよう。地獄に落ちた変態食人鬼のことなど、妾はもう興味はない。さて、婿殿の活躍を見物に行くとするか。」
吉尾を殺し、ひとまず気分が落ち着いたイヴであった。
午後2時27分。
「女神リリアの黄金像」があった島の頂上付近にて、グレイと高城が遭遇、戦闘が開始された。
階段の一番上で、ロングボウを左手に持ち、矢をつがえて構えた高城が、階段を上ってくるグレイを待ち構えていた。
「ようやく念願のクソ勇者を殺す時が来たじゃんよ。おい、そこの変態食人鬼、テメエはこのアタシの槍で串刺しにして地獄に送ってやるじゃんよ。覚悟しな。」
15mほど階段の下にいるグレイの姿を見て、高城は興奮し、口元をニヤケさせながら言った。
「ヒュー、ツイてるな、これは!僕好みのヤンキー系ビッチギャルが相手とか最高じゃん!パンクヘアに腕のタトゥーとか、マジ、ヤンキービッチじゃないか!口の悪さもヤンキー娘そのものだ!こんな極上のヤンキービッチを殺すのは惜しいなぁ。ねぇ、君、降参して僕の彼女にならない?」
高城からヤンキービッチと呼ばれたことで、グレイは激高した。
「誰がヤンキービッチだと、コラァー!?このアタシをヤンキーだの、ビッチだの、気色悪い面で好き放題言いやがって!誰が玉無しの変態食人鬼の彼女になるかよ!自分の醜い面と、無様に去勢されたアソコを見てから物を言えや、童貞玉無し食人鬼が!」
グレイの言葉に、高城は顔を顰めた。
「せっかく助けてあげようと言っているのに、この僕の申し出を断るなんて、これだからリアルのヤンキービッチは扱いにくくて困るよ、まったく。しょうがない、この僕の手で一瞬で楽にしてあげるよ。じゃあね、ビッチちゃん。」
高城がグレイに狙いを正確に定め、矢を発射しようとする。
高城の矢が雷のエネルギーを纏うと、高城はグレイ目がけて勢いよく矢を発射した。
「轟雷爆射!」
高城の、雷を纏った矢が音速を超えるスピードでグレイ目がけて発射された。
グレイはすかさず、両足に魔力のエネルギーを集中させ、高城が放った矢をサッと横に交わした。
「Lv.100のメフィストソルジャーとか言う割に、大したことはねえな。じゃあ、今度はこっちから行かせてもらうじゃんよ。」
グレイはそう言うと、パルチザンを両手で構えながら、両足にさらに魔力のエネルギーを集中させ、圧縮した。
グレイの両足が大きく光り輝いた。
グレイの背後に、巨大な走る狼の絵のようなマークが浮かび上がった。
「行くぜ!狼牙爆槍・疾風!」
直後、高城の目の前からグレイの姿が突如、消えた。
「消えた!?くそっ、どこだ!?」
階段下にいたグレイが突如、自分の目の前から消え、困惑する高城は、慌てて背中の矢筒から矢を取り出し、弓に矢をつがえて、グレイを迎撃すべく、弓を構え、必死にグレイの行方を追った。
高城が次の矢を発射しようと構えたその直後、高城の背後から、グレイのパルチザンの穂先が、高城の首を刺し貫いた。
「グっ!?」
パルチザンの穂先が首から引き抜かれ、目を見開き、口から血を流しながら、高城は階段の下へと転げ落ち、絶命した。
階段下に落ちている高城の死体を見下ろしながら、グレイは呟いた。
「トロいんだよ、変態食人鬼。アタシのスピードに目が追いついていないなんて、弓術士失格だぜ。目は悪いし、狙いはバレバレだし、次弾を発射するのも遅えし、本当にコイツ、Lv.100の弓術士か?反魔力とやらに頼り過ぎて、碌に腕を磨いていない証拠だぜ。大体、このアタシのどこがヤンキーでビッチなんだよ?どっからどう見ても、オシャレでピュアな乙女だっつーの。けど、ようやく、クソ勇者をこの槍で串刺しにして地獄に送ってやったじゃんよ。気分最高じゃん、まったく。そいじゃあ、アタシも他の奴らの様子を見に行くとするか。」
グレイはパルチザンを担ぎながら、階段を下りていくのであった。
午後2時30分。
島の北西の浜辺にて、敵を待ち構える志比田の前に、上空から銀色の霊能力のエネルギーを全身に纏った、主人公、宮古野 丈が突如、降りてきて、姿を現した。
主人公の空からの登場に、志比田は困惑しながら言った。
「み、宮古野!?お、お前、空を飛べるってのは本当だったのかよ!?ラスボスのお前がどうして現れるんだよ!?まさか、僕以外、全員死んだってのか!?」
青ざめた表情を浮かべ、困惑する志比田に向かって、ニヤリと笑みを浮かべながら、僕は言った。
「別にまだ全員、死んだわけじゃあない。僕がお前の前に現れたのは、このゲームを盛り上げるための演出だ。ほら、お前らの大好きなゲームによくある、ラスボスの乱入イベントってヤツだよ。ゲームマスター兼ラスボスの僕を倒すことができれば、お前はこのゲームを終わらせ、生き延びることができる。ただし、僕をこの場で倒すことができなければ、お前は僕に殺され、即ゲームオーバーとなる。さぁ、地獄へ落とされるか否かを決める楽しいイベントを始めるとしよう。」
「乱入イベントだと!?舐めやがって、くそがっ!?宮古野の分際で調子に乗るな!」
志比田はそう言うと、20mほど前方にいる僕に、水色の魔石が先端に嵌め込まれた魔法の杖を向けながら、魔法での攻撃を始めた。
「食らいやがれ!氷柱弾連射!」
志比田の周囲に、長さ1mほどの、先が鋭利に尖った巨大な氷柱が次々に生まれ、僕目がけて発射された。
何百発もの巨大な氷柱の弾丸が連射され、僕の体に直撃する。
しかし、僕の体に直撃するたびに、志比田の発射する氷柱の弾丸は全弾、粉々に砕かれてしまうのであった。
「くそっ!死ねっ、死ねっ、死ねっ・・・・・・」
必死の形相を浮かべ、氷柱の弾丸を連射する志比田だが、僕に全くダメージを与えることができず、焦るばかりであった。
僕は静かに両目を閉じると、右足を前に出し、中腰になった。
腰の帯の左側に、佩刀の状態の、刃が下に来るよう鞘に入れ腰に下げた状態の黒い日本刀、黒い太刀の鞘を左手で握り、左の親指で鍔を柄の方向に押し出した。
そして、黒い太刀の柄にそっと右手をかけた。
居合抜きのような構えをとりながら、銀色の霊能力のエネルギーを黒い太刀へと流し込み、集中させた。
黒い太刀全体が銀色の霊能力のエネルギーを纏い、銀色に光り輝き、冷気を帯びた。
僕は両目を開けると同時に、黒い太刀の柄を右手で握りしめ、正面に見える志比田に向かって素早く刀を抜いた。
「鵺寒地獄!」
抜刀した瞬間、僕の半径100m以内の空間が、絶対零度まで一瞬で気温が下がり、半径100m以内に存在する、草木や地面、生き物たちが一瞬で凍り付いた。
それから、20mほど前方にいた志比田が絶対零度の寒さで全身が瞬時に凍り付き、魔法の杖を構えて立ったまま、その場で凍死したのであった。
氷像のように凍り付き、凍死している志比田まで歩いて近づくと、僕は凍死した志比田の死体を刀で袈裟切りに斬り裂いた。
太刀で斬り裂かれた瞬間、志比田の凍死体は粉々に砕け散った。
「氷の魔法を操る魔術士が凍死するとは傑作だな。馬鹿でかい氷柱を闇雲にたくさん作ってぶつける程度で、この僕を倒せると本気で思っているんだから、どうかしてるよ、まったく。スキルと反魔力に頼り過ぎで、魔法自体はレパートリーに欠けている。戦い方に創意工夫が全く見られない。お前がゲームをプレイしていた時は、敵キャラに応じて色んな攻撃をしていただろうに。ゲームに費やした努力をリアルに反映できれば、もう少しマシな攻撃ができたかもな。とりあえず、変態食人鬼を一匹始末した。現在の時刻は、午後2時36分か。制限時間まで残り24分。ゲームの進行状況を確認するとしよう。」
僕は志比田の戦いを終えると、島の上空100mの地点まで飛んだ。
真下に見える島を見下ろしながら、ゲームの進行状況を「霊視」も使って確認した。
「吉尾の姿が全く見えないな。イヴが島の北側の浜辺を歩いているな。ということは、吉尾の奴はイヴのブラックホールで跡形もなく消し飛ばされたか。グレイも走って、島の北側に向かっている。頂上付近の階段のところに高城の死体が見える。志比田はたった今、僕が殺した。生き残っているのは、島の北側の浜辺にいる沖水だけか。鬼役のみんなは続々と島の北側に向かっているな。ようやく、このゲームと言う名の処刑ショーのフィナーレの幕を下ろす時が来たようだ。それじゃあ、最後のアナウンスを行うとしよう。」
僕は沖水のいる、島の北側の浜辺へと向かった。
午後2時40分。
沖水のいる、島の北側の浜辺の上空へと到着すると、50mほど高度を下げ、それから真下に見える沖水に特に聞こえるように、大声で島中に向けて最後のアナウンスを僕は始めた。
「ゲームの参加者の皆様にお知らせです!ゲームの進行状況を皆様にお伝えいたします!現在、時刻は午後2時40分。プレイヤー側より新たに3名の方が脱落いたしました!吉尾君、高城君、志比田君の3名がゲームより脱落、死亡いたしました!残るプレイヤーは沖水君一人となってしまいました!鬼は6名全員が健在です!制限時間までは残り20分!これより、島の北側の浜辺にて、ゲームの最終ステージを行います!参加者の皆様は全員、島の北側の浜辺へとお集まりください!以上、ゲーム運営本部兼ゲームマスターからの最後のお知らせでした!」
僕はアナウンスを終えると同時に、上空を青ざめた表情で見上げる沖水を見下ろしながら、沖水より10mほど離れた浜辺へと着陸した。
「よぅ、沖水。僕の用意した「サバイバル鬼ごっこ」は楽しんでもらえているかな?お知らせしたとおり、残念ながら生き残ったプレイヤーはお前一人だ。お仲間の六人は全員、僕たち鬼役がきちんと地獄に叩き落してやったぞ。せっかくお得意のゲームでチャンスを与えたのに、あっという間に全滅に追い込まれるとは、惨めだな、本当。食人鬼になってまで手に入れた「反魔力」は全く役に立たず、ご自慢の海賊団は潰され、エロ写真を売買する裏ビジネスは完全にご破算、お仲間の六人は全員死亡、頼みの綱である女神からも見放され、破滅の瀬戸際まで追い詰められた。そうそう、言い忘れていたが、「水の迷宮」は僕たちが攻略して、聖槍はすでに破壊済みだ。夢だったダンジョン攻略もできず、本物の聖槍を手に入れる機会まで失った。異世界を無双するだの、異世界で天下を取るだの、くだらない無意味な妄想を口にしていたが、本当に無意味な夢のまま終わったな、お前の異世界生活。憧れだった異世界で人生ゲームオーバーになる気分はどうだ、ええっ、自称天才ゲーマーの間抜けなクソ雑魚食人鬼さん?」
僕が笑いながら、馬鹿にしたような口調で沖水を挑発した。
僕から挑発され、沖水はその場で怒り狂った。
「おのれぇ、この我が輩が貴様ごときに敗北して殺されるなど、そんなことあっていいわけがないでござる!我が輩は完全無欠、天下無敵、「槍聖」にして「水の勇者」、ダーク・ジャスティス・カイザー海賊団の船長、ダーク・サーファイ帝国の皇帝、偉大なる異世界の覇王、キャプテン・ダーク・ジャスティス・カイザーなり!宮古野氏、貴様のような女神からチート能力を与えられ、良い気になっているぽっと出の勇者とは格が違うなり!この我が輩をクソ雑魚食人鬼と愚弄したその愚行、我が輩の天下無双の槍にて後悔させてくれるわ!」
「天下無双の槍ねぇ。その槍の攻撃が僕に全く通用しなかったのはすでに証明したはずなんだが。大体、キャプテン・ダーク・ジャスティス・カイザーって、意味不明だし、名前長すぎだろう?はっきり言ってクドい。キャプテンとカイザーって役職名なんだからさ、どっちか一つに統一しろよ。大勢の人間を食い殺して、サーファイ連邦国を海賊団を使って占拠して、違法ポルノを販売していた、ジョブが「犯罪者」のお前のどこが、ジャスティスなんだ?完全に悪党だろうが、お前は。それに、ダークの要素もほとんどないぞ。鎧も槍も持ち物もほとんどブルーだろうが。ああっ、犯罪者としての汚い自分の心をダークと言っているのか?要は自虐ネタか?まぁ、正直、お前のあだ名なんてどうでもいいことだ。後、僕は別に女神からチート能力なんてもらっていないんで。ジョブもスキルも持っていない。僕の戦闘能力は生まれつき持っていたモノだ。けど、これから僕に殺されるお前にいちいち詳しい説明をする気は全くない。時間の無駄だしな。それじゃあ、とっととこのゲームと言う名の処刑ショーのフィナーレの幕を閉じるとしよう。」
「チート能力をもらっていないなりと!?生まれつきの戦闘能力なりと!?き、貴様、一体、それはどういうことなり!?」
混乱する沖水を無視して、僕は空中高く飛び上がった。
一気に高速で空を飛行し、沖水の頭上、上空1,000mほどの地点で制止した。
地上にいる沖水が、右手に持つ聖槍のレプリカの穂先から、高圧水流のカッターを発射するが、上空1,000mにいる僕には全く届くことはなかった。
「大勢の人間を食い殺し、大勢の女性たちを私利私欲のために傷つけ、メルのおばあちゃんを殺し、そして、僕を処刑した罪、今、償わせてやる。地獄に落ちる時間だ、イカれた変態食人鬼!」
僕は腰の鞘から黒い太刀の柄を右手で握り、刀を抜いた。
黒い太刀を両手で握り、上段に構えながら、太刀全体に銀色の霊能力のエネルギーを注ぎ込み、集中させた。
刀身の先から黒い雷雲が発生し、黒い雷雲から雷が僕に向かって放たれた。
膨大な雷のエネルギーを全身と太刀に僕は纏った。
「鵺雷一閃!」
次の瞬間、稲妻のごとき超スピードで一気に上空から急降下し、一瞬で沖水の頭上へと移動した僕は、刀身に雷を纏った刀の斬撃で、沖水を頭から縦に一刀両断した。
「プギャアアアーーー!?」
僕の雷を纏った刀で頭から体を縦に真っ二つに斬り裂かれ、全身に雷を浴びた沖水は、断末魔の悲鳴を上げながら、全身を黒焦げに焼かれるまで感電し、体を斬り裂かれて絶命した。
体を真っ二つに斬り裂かれ、黒焦げになった沖水の死体を見下ろしながら、僕は呟いた。
「異世界は紛れもない現実の世界だ。異世界は決して自分に都合の良いだけの、夢物語のような世界じゃない。お前が大好きなゲームの世界でもない。良いこともあれば、辛いこともある、元居た世界と大して変わらない、努力と根性なしには生きられない、ただの現実なんだよ。チート能力を使って異世界を無双する、そんな無意味でくだらない現実逃避の妄想に執着して、力を欲して人間を辞め、大勢の人間を傷つけて殺したお前は、現実を受け入れることのできない狂ったケダモノに過ぎない。異世界に召喚されたことが己の不幸だったことを噛みしめながら、地獄でたっぷりと裁きを受けてろ、クソ以下の変態食人鬼野郎。」
懐から懐中時計を取り出すと、時刻は午後2時59分。
制限時間1分前に、ゲームと言う名の処刑ショーのフィナーレはようやく幕を閉じることができた。
元「槍聖」沖水たち一行の討伐が終わり、ホッと一息ついた僕の前に、玉藻たち五人が姿を現した。
「元「槍聖」たち一行の討伐、お疲れ様でございました。最後の元「槍聖」を斬り裂いた稲妻の如き一太刀、実にお見事でした。丈様のさらなる成長とご活躍をこの玉藻、心より応援しております。」
「お疲れ、丈。宣言通り、見事制限時間内に変態食人鬼どもを一匹残らず退治できたな。鵺との合体も大成功だったし、万々歳ってヤツだな。俺も嬉しいぜ。」
「お疲れ様であった、ジョー殿。元「槍聖」との最後の戦い、本当に素晴らしかった。貴殿の雷を纏いし剣技に我も思わず見惚れてしまった。変態食人鬼どもは全員、成敗した。これで世界はまた平和へと一歩近づいたわけだ。本当にお疲れ様であった。」
「お疲れさん、ジョー。アタシもようやくこの槍でクソ勇者どもを串刺しにして地獄に叩き落すことができて、大満足だぜ。ジョー、お前の見せた元「槍聖」への止めの一撃、イカしてたじゃんよ。最高のゲームだったぜ。」
「お疲れ様だ、婿殿。あの無礼で下劣な変態食人鬼どもを殲滅することができ、妾も嬉しい限りだ。元「槍聖」たちの無様に破滅する姿を見られて、最高のデスゲーム、然り、処刑ショーであった。婿殿の活躍する姿まで見られて、妾も大満足だ。」
「みんなもお疲れ様。元「槍聖」たちの討伐に協力してくれてありがとう。変態食人鬼の連中の相手はある意味、大変だったと思うけど、討伐をありがとう。おっと、鵺との合体を解かなきゃ。今回の処刑ショーに大貢献してくれたし、御礼を言わなきゃだね。」
僕は鵺との合体を解くことにした。
両手を合わせ、胸の前で合掌した。
「鵺、解放!」
呪文を唱えると同時に、僕の体が青白く光り輝き、僕は元の姿へと戻った。
僕の右隣には、鵺が姿を現した。
「お疲れ様。そして、ありがとう、鵺。君のおかげで沖水たちを無事、倒すことができた。最高の処刑ショーのフィナーレを飾ることができた。力を貸してくれて、本当にありがとう。」
「お疲れ様、丈君。私も丈君と一緒に元「槍聖」たちを討伐することができて嬉しい。私たちの努力と絆の勝利。ゴミ以下の変態食人鬼どもは一匹残らず、駆逐された。これからも残りのクソ勇者どもを一緒に駆逐しよう。私から受け継いだ能力のコントールで困ったことがあれば、いつでも相談に乗るから安心して。」
「本当にありがとう、鵺。これからもよろしく頼むよ。それじゃあ、みんな、無事討伐も完了したことだし、「海鴉号」に戻るとしよう。マリアンヌとメルに討伐成功の報告をしよう。後、みんなで一緒に昼食を食べよう。さっきからお腹が空いてしょうがないんだ。」
僕の言葉に、鵺と他のメンバーたちは笑った。
元「槍聖」沖水たち一行の討伐を終えた僕たちは、イヴの瞬間移動で、サーファイ島の南側の港に停泊してある「海鴉号」へと戻った。
「海鴉号」へと戻ると、メインキャビンでマリアンヌとメルが、僕たちが帰るのを待っていてくれた。
僕たちがメインキャビンへ入るなり、マリアンヌとメルが僕の方へとやって来た。
「ただいま、二人とも。元「槍聖」たちの討伐を今さっき、完了したところだ。手下の海賊団も壊滅したことだし、後は事後処理を終えれば、ひとまず事件解決だ。マリアンヌ、メル、二人とも本当にお疲れ様。」
「お疲れ様でした、ジョー様。無事、元「槍聖」たちの討伐が完了したと聞き、私もホッといたしました。リリア様もさぞ、お喜びになると思います。皆様も討伐、お疲れ様でございました。」
「パパ、お疲れ様でしたなの!悪いヤツらをやっつけてくれて、ありがとう、なの!」
傍にやってきたメルを抱っこすると、僕はメルに言った。
「メルのおばあちゃんの仇は、パパがこの手で討ったから、もう安心だ。あの禿げ頭の悪者はパパが真っ二つに斬り裂いてやっつけたからな。お姉ちゃんたちも悪者退治を手伝ってくれたんだよ。パパたちはお昼ごはんを食べた後、もう少しお仕事をしなきゃいけないから、良い子で待っているんだぞ。お仕事が全部終わったら、みんなでどこか遊びに行こうね。」
「お姉ちゃんたち、悪者をやっつけてくれてありがとう、なの!お仕事が終わったら、パパとお姉ちゃんたちといっぱい一緒に遊ぶなの!」
「ああっ、楽しみに待っててね、メル。」
それから、僕たちは大分遅めの昼食をみんなで一緒に食べることにした。
みんなで、元「槍聖」たち一行と海賊団を討伐した話や、仕事が終わったらみんなでどこへ遊びに行くかという話などをしながら、仲良く一緒に昼食を食べたのであった。
こうして、サーファイ連邦国での僕の復讐劇は無事、フィナーレを終えた。
「水の迷宮」を攻略して、聖槍を破壊した。
「槍聖」たち率いる海賊団を壊滅させた。
そして、「槍聖」沖水たち一行に死と言う名の復讐を遂げた。
リアルの苦痛と恐怖と絶望をたっぷりと味わわせて、全員地獄に落としてやった。
僕はまた一つ、異世界への復讐計画を完遂したのだった。
ざまぁみやがれ、沖水。勇者たち。インゴット国王たち。光の女神リリア。
僕は復讐が成功したことを喜び、笑みを浮かべた。
だが、僕の異世界への復讐は終わらない。
僕を虐げる異世界の悪人どもはまだまだ大勢いる。
今回、「槍聖」外6名、計7名の勇者を殺した。
これで、残る勇者は13名となった。
姫城たち、花繰たちに続き、沖水たちまで僕に殺されたと聞けば、残りの勇者どもはさらに恐怖で震えあがるに違いない。
自分たちを勇者に選び、勇者の力を与えた、頼みの綱である女神リリアからも見捨てられ、女神と人類の共通の敵となったお前たち勇者は、この異世界での居場所を完全に失くした、死刑確定の犯罪者だ。
残りのクソ勇者ども、クソ女神から処刑人のお墨付きまでいただいたのだ、全員、より惨たらしい方法でこの僕が処刑してやる。
勇者たち、インゴット王国の国王たち、光の女神リリア、僕と敵対する異世界の悪党たちよ。
僕は必ずお前たち全員に復讐する。
この広い異世界のどこにもお前たちの逃げ場はないのだ。
お前たち全員、この僕の復讐から逃れることはできない。
必ず追い詰めて、嫌と言うほど絶望を味わわせてから、全員地獄に叩き落としてやる。
僕の異世界への復讐の旅は続いていくのであった。
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