第七話 主人公、人食い海賊団を壊滅させる

 僕たち「アウトサイダーズ」が怪盗ゴーストなる泥棒となり、元「槍聖」たち率いる海賊団から、宝や武器、海賊船など、ありとあらゆる財産を盗み出す作戦を決行してから十日目のこと。

 僕たちは元「槍聖」たち一行に予告状を送りつけ、元「槍聖」たち一行をサーファイ連邦国最東端の無人島、ピグミーシャーク島に誘き出し、連中を討伐する最後の作戦を決行することにした。

 僕たちは予告状を送りつけた日の朝、「海鴉号」に乗って、討伐作戦の舞台となるピグミーシャーク島へと向かった。

 僕が「海鴉号」を操縦していると、鵺とメルが一緒に手を繋いで、僕のいる操縦席へとやって来た。

 「パパー、今、どこに向かっているなの?」

 「ええっと、今ね、この船はサーファイ連邦国の一番東にある、ピグミーシャーク島って島に向かっているんだ。「女神リリアの黄金像」って言う、金ぴかの大きな像が建っているんだけど、知ってるかな?」

 「ううんとね、メル、前に天国にいるパパたちと一緒に見に行ったことがあるって、おばあちゃんから聞いたことがあるの。でも、よく覚えていないの。」

 「そっか。なら、今度はパパやお姉ちゃんたちと一緒に、もう一度「女神リリアの黄金像」を見に行こうか。パパもちょっとだけ興味があるんだ。あの憎たらしいリリアがどんな顔をしているか、この目で一度拝んでおこうと思ってね。」

 「やったー、なの!パパたちとおでかけなの!」

 「よく見ておくんだぞ、メル。黄金像はパパたちと一緒に見るのが最後になるだろうからね。」

 「は~い、なの。」

 「クククっ。「女神リリアの黄金像」なんて僕からしたら、何の価値もない像だ。せいぜい、沖水たちをぶっ殺すための盛大な罠の餌に利用させてもらおうじゃないか。」

 「パパ、笑っている、なの。ポーカーフェイスなの。」

 「ああ、これはただおかしくて笑っているだけだよ、メル。丈道お爺ちゃん直伝の、相手をビビらせるポーカーフェイスの笑顔はねぇ、調子に乗っている敵の前で使うモノなんだよ。だから、これはポーカーフェイスではないんだ。だけど、メルちゃんを悲しませる悪い海賊たちをこれからパパがみんなやっつけるから、その時、また、ポーカーフェイスの笑顔を見せてあげるから、よく見ているんだよ。」

 「はい、なの!」

 僕とメルが楽しそうに話をしていると、鵺が僕に話しかけてきた。

 「ポーカーフェイスを無垢な5歳児の娘に教え込む、丈君の教育方針はちょっと過激。だけど、そこが丈君らしくて私は好き。モンスターや悪党どもが蔓延る危険で過酷な異世界を生き抜くためには、悪党と戦う術と非情さも必要。丈君はメルの良いパパになる。」

 「ありがとう、鵺。明日の昼頃にはピグミーシャーク島へ到着予定だ。メルの家族として、メルを悲しませた元「槍聖」たちを僕たちで地獄のどん底に叩き落とすべく、入念に準備をしよう。そして、メルの目の前で沖水たちを破滅させてやろう。」

 「了解、丈君。私も全力で元「槍聖」たちの討伐に協力する。私たちのメルちゃんを悲しませた、あのゴミ以下の食人鬼どもは、絶対に抹殺する。丈君、今回は私が丈君と合体する。元「槍聖」たちはレベルアップのためだけに、多くの人間を食い殺した。人を不幸にする努力は本当の努力ではない。連中がやったことは、己の薄汚い欲望を満たすためだけの虐殺に過ぎない。この手で全力で屠らなければ、気がおさまらない。」

 鵺の表情はいつにも増して、真剣であった。

 「分かったよ、鵺。僕と一緒に合体して、沖水たちを倒そう。僕と鵺が力を合わせれば、あの外道以下の食人鬼たちをきっと地獄の苦しみを与えて、倒すことができる。よろしく頼むよ。」

 「ありがとう。こちらこそ、その時はよろしく、丈君。」

 僕と鵺は笑い合った。

 翌日の昼過ぎのこと。

 僕たち「アウトサイダーズ」は目的地であるピグミーシャーク島に着いた。

 「海鴉号」を小さな停泊所に泊めると、僕たちはクルーザーを降りて、ピグミーシャーク島へと上陸した。

 ピグミーシャーク島は小さな無人島だ。

 サーファイ連邦国の最東端にある島で、サーファイ連邦国において最も「魔の海域」に近い島である。

 海のSSランクモンスターやSランクモンスターが頻出する「魔の海域」に近いことから、島の頂上付近に、光の女神リリアへの祈りと魔除けを込めた、全身が純金でできた、女神リリアの姿を模した、巨大な黄金像、通称「女神リリアの黄金像」が建てられることになったと、観光ガイドブックに書いてあった。

 自称光の女神で、世界に混乱をばらまいた元凶であるクソ女神のリリアを模した像などに、海の安全を祈願しても全く効果はない、そう思う僕であった。

 無人島には建物は一つもなく、「女神リリアの黄金像」がある頂上付近へと続く石の階段があるのみであった。

 僕たちは階段を上りながら、島の頂上を目指した。

 15分ほど階段を上ると、「女神リリアの黄金像」がある、ピグミーシャーク島の頂上付近へと着いた。

 僕たち九人は、高さが50mもある「女神リリアの黄金像」を見上げながら、それぞれ感想を口にした。

 「女神様の像なの~!すっごい金ぴかで、大っきいなの!」

 「そうだねぇ、メル。しっかし、リリアの像なんかに黄金を使うなんてもったいない。普通の石像で十分だろ?こんなにデカくなくてもいい。10㎝くらいでも十分だろ?それと、これがリリアの顔かぁ?まぁ、実際は違うかもしれないけど、おおよそのイメージはついた。清楚な女神の皮を被った邪神め、いつか必ず復讐してやる。待っていろ、クソ女神。」

 「ふむ。婿殿の言う通りだ。あの馬鹿女の像をこのように豪華に作る必要はない。リリアは普段、もっと吊り上がった目付きをしている。機嫌を悪くすると、癇癪を起こし、ヒステリックになる。その時のリリアの顔ときたら、妾もドン引きするほどの乱れ様だ。こんなにあの女の顔は美人ではない。多少、整ってはいるが、性格は最悪で、このような儚げな表情を浮かべているところなど、見たことがないぞ。美化しすぎだ、まったく。」

 「これが光の女神リリアですか?丈様、そして、わたくしたち共通の怨敵ですか?この者があの外道以下の元勇者たちに勇者の力を与えなければ、この異世界が混乱に陥ることも、丈様が処刑されることも起きなかったはずです。諸悪の根源たるこの女神の顔、しかと私の脳裏に刻み込みました。いずれ必ず、天誅を下してやりましょう。」

 「こいつがリリアか?ゴブリン以下のクソ野郎どもを勇者にした張本人か?このクソ女神の顔は俺も覚えたぜ。いつか必ずこの澄ました面をぶっ潰す。」

 「これがリリア、諸悪の根源である女神。この女だけは絶対に許さない。あのゴミ以下の食人鬼たちに勇者の力を与えた、クソ女神は必ず抹殺する。私たちと丈君の怒りと憎しみをたっぷりと味わわせてから、バラバラに斬り刻む。」

 「我も丈殿や先輩方と同意見だ。この世界の混乱の原因にして諸悪の根源は正しく、この光の女神リリアだ。狂った女神を討たないかぎり、我らの世界に安息が訪れることはない。いつか必ず、皆とともに女神リリアを成敗してくれる。」

 「アタシらを騙して、散々苦しめてきたこの女神だけは絶対に許さねえ。世界中で元勇者たちが暴走した原因は、間違いなくあの外道の悪人どもを勇者に選んだリリアのせいだぜ。アタシの槍でいつか必ず、この自称女神のクズを串刺しにしてやるじゃんよ。」

 「み、皆様、女神リリア様は決して皆様が思うような悪い御方ではありません。元勇者たちの暴走は確かに問題ではございますが、リリア様の責任だけではございません。どうか、リリア様への怒りをお鎮めになってください。リリア様は皆様と事を構える気はないと仰っていることですし。落ち着いてください。」

 マリアンヌが、女神リリアへの怒りを口にする僕、イヴ、玉藻、酒吞、鵺、エルザ、グレイに対して、リリアへの怒りを鎮めるよう、慌てた様子で言った。

 メルはそんな僕たちの様子を不思議そうに見ていた。

 「パパは女神様のことが嫌いなの?パパは勇者様だから、女神さまは味方じゃないの?」

 「ああっ、メル。パパはねぇ、女神様のことが、光の女神リリアが大っ嫌いなんだ。パパのことを殺そうとした上に、都合が悪くなったら、パパに勇者になって悪者たちを退治してくださいと勝手に頼んで押し付けてくる、本当は悪い女神様なんだ。メルのおばあちゃんや、サーファイ連邦国のたくさんの人たちを殺した元勇者を勇者に選んで、世界中で悪いことが起きているのも、このリリアのせいなんだ。メル、本当の良い女神さまはねぇ、メルちゃんのすぐ傍にいる、イヴお姉ちゃんなんだよ。女神様にお願い事をしたい時はイヴお姉ちゃんにお願いするように。後、他の人の前で、リリアが悪い女神だとは言っちゃ駄目だよ。パパたちがリリアの悪口を言ってたのは内緒だからね。約束できるかな?」

 「分かりました、なの!約束する、なの!」

 「よ~し、良い子だね、メル。いつか悪い女神はパパがぶっ飛ばしてあげるからねぇ。」

 僕はメルの頭を撫でながら言った。

 「メルよ、女神様にお願いしたいことがあれば、いつでも闇の女神である妾にお願いするがいい。ママが欲しければ、この妾がお前のママになってやってもいいのだぞ?」

 「う~ん、今はパパがいるから寂しくないなの!ママはまだ、欲しくはない、なの。」

 「そ、そうか!?くっ、やはりそう簡単にはいかぬか?」

 「イヴさん、残念ですね。どうやら、あなたにメルさんのママを名乗るチャンスは当分来ないようです。私たちから抜け駆けしようとした罰です。」

 「残念だったなぁー、イヴ。メルのママの座はそう簡単には手に入らないぜ。俺たちを出し抜こうなんて、100万年早いぜ。」

 「フっ。女神の力だけでメルちゃんのママになろうなど、笑止千万。この私がいる限り、メルちゃんのママの座は簡単には手に入らない。」

 「我らの前で抜け駆けしようとしても無駄だ。我らからメル殿のママになる権利を簡単に奪えるとは思わぬことだ。」

 「へっ。いい気味だぜ。闇の女神の力も、メルの心を掴むことだけはできないみてえだな。アタシほどの女子力がなければ、メルの求める理想のママにはなれないじゃんよ。ご愁傷様。」

 「話題が逸れたのは結構ですが、メルさんのママになるこの戦いだけは絶対に譲れません。リリア様の「巫女」であるこの私こそ、メルさんのママにふさわしいと、必ず証明してみせます。」

 他の女性メンバーたち7人が、急にメルのママの座をかけて争い始めた。

 「ええっと、みんながそんなにメルを気に入ってくれたのは嬉しいよ。ただ、メルの気持ちを無視して、自分たちの気持ちを押し付けないようにね。それじゃあ、船に戻るとしようか。みんなで一緒に船で昼食を食べることにしよう。その後は、二日後の作戦に向けて、打ち合わせをしよう。打ち合わせが終わった後は、各自任務についてもらうから、よろしく。」

 それから、僕たちは無人島の頂上から降りると、船に戻って、みんなで一緒に昼食を食べた。

 パーティーメンバー全員とメルを加えて、こうしてゆっくりと食事をとるのは久しぶりのことであった。

 船の操縦やデッキでの見張り役、怪盗ゴースト作戦の任務、メルのお世話などで、みんな揃って、顔を突き合わせて食事をとれるのは久しぶりのことであった。

 昼食を終えると、ピグミーシャーク島を離れ、船の操縦を酒吞、デッキでの見張り役をエルザに任せ、僕たちはメインキャビンで、二日後の元「槍聖」たち率いる海賊団の討伐作戦について会議を行った。

 「当初の予定通り、作戦は二日後の午前12時ちょうどに開始する。今回の目的は、元「槍聖」たち一行と、元「槍聖」たち率いる海賊団を討伐することだ。作戦内容だが、まず、午前12時ちょうどになったら、ピグミーシャーク島の頂上付近に設置してある「女神リリアの黄金像」を、イヴのブラックホールで、元「槍聖」たち一行の目の前で跡形もなく消し去る。僕たちはピグミーシャーク島や海賊団から少し離れた位置の海上から、様子を窺う。元「槍聖」たちと海賊団が黄金像を消され、混乱しているところを、認識阻害幻術を使って姿を消しながら、奇襲攻撃をかける。奇襲攻撃の方法だが、この「海鴉号」にちょっとした細工を施して、この船で連中の海賊船と戦艦を一気に沈める。後は船を沈められ、脱出した元「槍聖」たちと海賊たちを追跡して、全員始末するだけだ。元「槍聖」たち率いる海賊団の戦力だが、海賊船が20隻に、海軍から奪った大型戦艦が1隻、海賊団の構成員は6,000人から7,000人ほど、武器弾薬は船に積んであるもののみ、ということだ。だけど、この「海鴉号」と僕たちの力があれば、連中を殲滅することは可能だ。連中もまさか、怪盗ゴーストが自分たちの命を狙って襲ってこようとするとは思っていないはずだ。陽動作戦だとも知らず、のこのこと予告状に誘き出されてやって来た人食い海賊団を罠に嵌めて、連中全員を海の藻屑にしてやろうじゃないか。みんなから他に質問はあるかい?」

 「私からは特にございません。「海鴉号」を使った丈様の作戦をこの目で拝見するのが楽しみです。」

 「私も質問はない。元「槍聖」たちが無様な姿で海を逃げ回る姿が目に浮かぶ。今から楽しみ。」

 「アタシも特に質問はなし。この海を連中の血で赤く染めてやろうじゃんよ。」

 「妾も質問はない。婿殿の指示に従うまでだ。婿殿の手の平の上で踊らされているとも知らず、馬鹿面を下げてやってきた元「槍聖」たちが罠に嵌められ、悶え苦しみ、破滅する様を見るのが楽しみだ。期待しておるぞ、婿殿。」

 「私も質問はありません。女神リリア様の像を犠牲にするのは少々心が痛みますが、元「槍聖」たち討伐のため、世界平和のためなら、致し方ありません。この私も微力ながら、最後までお手伝いさせていただきます。」

 「パパならきっと、悪い海賊さんたちをコテンパンにやっつけちゃう、なの。絶対、パパが勝つなの。」

 玉藻、鵺、グレイ、イヴ、マリアンヌ、メルがそれぞれ、作戦への意気込みなどを語った。

 「みんな、協力をよろしく頼むよ。それから、エルザとマリアンヌには後で、各国政府に連絡してもらいたいことがある。今回の作戦の決行日時と同時に、各国から元「槍聖」たちの討伐隊を派遣してもらいたい。サーファイ連邦国側に悟られぬよう、秘かに準備を進めてほしい。ラトナ公国、ペトウッド共和国、ズパート帝国、インゴット王国が同時に討伐隊を派遣したことを、サーファイ連邦国政府、元「槍聖」たちに一斉に伝えるんだ。この四カ国が同時に海賊討伐の声明を発表すれば、元「槍聖」たちはさらに混乱するはずだ。ラトナ公国とズパート帝国には僕から相談する。インゴット王国の方はマリアンヌ、お前に任せる。エルザにも後からペトウッド共和国からの討伐隊の派遣をお願いしてもらうつもりだ。四カ国に本当に討伐をしてもらう必要はない。あくまで討伐隊の派遣は威嚇だ。元「槍聖」たちの討伐が終わったら、途中で各討伐隊には引き返してもらう。作戦は以上だ。それでは、各自解散。」

 それから、僕はラトナ公国大公のクリスに連絡し、二日後の午前12時ちょうどに、ラトナ公国から海賊団討伐のための討伐隊の派遣と、討伐隊派遣の声明をサーファイ連邦国政府に向けて発表することを頼んだ。クリスからズパート帝国のラトナ公国大使館経由で、ズパート帝国皇帝のナディア医師に、同様の依頼を頼んだ。

 エルザとマリアンヌの方も、それぞれペトウッド共和国とインゴット王国に討伐隊派遣に関する依頼に成功した、との報告を後から受けた。

 舞台は全て整った。

 後は獲物にのこのこと釣られてやって来た、元「槍聖」たち率いる海賊団を罠に嵌めて、全員始末するだけだ。

 これから始まる処刑ショーのことを考え、笑みを浮かべる僕であった。

 二日後。

 作戦決行日当日。

 午前11時頃、元「槍聖」沖水たち率いる海賊団が、海賊船20隻と戦艦1隻に乗って、ピグミーシャーク島のある海へとやって来た。

 ピグミーシャーク島から北西に少し離れた海の上から、僕たちは認識阻害幻術で自分たちと船の姿を消しながら、元「槍聖」たち一行の動向を窺った。

 メインキャビンの操縦席で船を操縦しながら、僕は海賊団の様子を観察した。

 副操縦席にはメルが座り、デッキには見張り役のグレイを残し、他のパーティーメンバーたちはメインキャビンへと入り、僕と一緒に海賊団の様子を窺っていた。

 「犯行予告日時の一時間前にようやくご到着か。随分と呑気なもんだなぁ。来るなら、もっと急いでこいよ。完全に怪盗ゴーストを、僕たちを舐め切っている証拠だ。何か犯行を防ぐ対策でも思いついたのか?まぁ、対策しても無駄だけどな。像が消し飛ぶことになるとも知らず、のこのこやって来やがって。連中の慌てふためく姿を見るのが目に浮かぶな。」

 「パパ~、一番おっきな船から、ちっちゃいお船に乗って、島に誰か向かっているなの。」

 メルに言われて、戦艦の方を見ると、白髪の男性六人と、スキンヘッドの男性一人、それに、海賊風の男が二人、戦艦を降りて、ボートに乗ってピグミーシャーク島へと向かっていた。

 「あれは間違いなく沖水たちだな。わざわざピグミーシャーク島に向かったということは、自分たちで黄金像を警備するつもりか?いくら警備したって無駄なのにな。メル、あの頭が禿げている男が、悪い海賊の頭で、メルのおばあちゃんの仇だ。周りにいる白い髪の男たちもそうだ。必ず、パパがあの悪者どもを退治するからね。」

 「あの男の人たちがおばあちゃんの仇・・・、メル、おぼえたなの!パパ、絶対、アイツらをやっつけてなの!」

 「ああっ、もちろんだとも。絶対にパパたちがあの悪者たちを退治して、地獄に叩き落としてやるからね。」

 メルが沖水たちを睨みながら、僕に沖水たちを倒すよう、頼んできた。

 元「槍聖」沖水たち一行はボートでピグミーシャーク島に上陸すると、島の頂上付近へと階段を上って向かった。

 それから、頂上付近へ到着すると、頂上付近にある「女神リリアの黄金像」の周りを丹念に調べ始めたのが、遠目から見えた。

 「アイツら、もしかして、怪盗ゴーストが何か仕掛けでも施していると思っているのか?そりゃ、普通は考えるだろうし、悪い考えとは言わない。だけど、この僕に散々宝を盗まれておいて、この僕が間抜けなお前らに簡単に見つかるような仕掛けを施すわけないだろ?自分たちで調べるなら、もっと早く来いよ。犯行予告時間まで残り1時間切ってから調べ始めたり、警備を始めたり、どんだけ考えが甘いんだよ?脳みそお花畑なのか、連中は?」

 呆れた声を出す僕に、イヴが近づいて言った。

 「婿殿、連中の声を拾って聞いてみたが、手品がどうだの、仕掛けが見当たらないだの、ブツブツと何か言いながら、あの黄金像を調べ回っているぞ。元「槍聖」が仕切りに命令しているが、怪盗ゴーストの施したはずの仕掛けが見つからず、周りの者たちに八つ当たりしている。おっ、島中を隈なく探すよう、命令し始めたぞ。」

 「確かに小さい無人島だけど、犯行予告時間まで後30分だぞ。今から島中を探せ、なんて阿保か、沖水?それに、探したところで仕掛けなんて、何もないっての。怪盗ゴーストが邪魔なら、大砲で島を総攻撃して、怪盗ゴーストを殺すとかでもいいだろうに。いや、連中は今、一文無しだし、あの黄金像を溶かして金の延べ棒にでも換えて、資金にするつもりか?なら、攻撃はできないな。まぁ、こっちはとっくに作戦の準備はできているし、連中を始末するだけだから、連中がいくら悪足掻きしても関係ないけどな。」

 僕はそんなことをいいながら、作戦を決行する時がやってくるのを皆とともに待った。

 午前11時55分。

 作戦開始5分前。

 僕はデッキで見張り役をしていたグレイを、メインキャビンへと呼んだ。

 グレイがメインキャビンへと入ってくると、僕は操縦席から振り返り、みんなに話しかけた。

 「みんな、作戦開始5分前だ。作戦は事前に説明した通りだ。まず、午前12時ちょうどに、イヴがブラックホールで「女神リリアの黄金像」を消し飛ばす。同時に、ラトナ公国、ペトウッド共和国、ズパート帝国、インゴット王国の四カ国が海賊団の討伐隊を派遣、海賊団にその情報が伝えられる。黄金像を盗まれ、世界四カ国から海賊団の討伐隊が派遣された情報が伝わり、混乱に陥った海賊団を、この「海鴉号」を使って奇襲攻撃をかける。この「海鴉号」の装甲は全て、魔力の伝導率が高く鋼鉄より頑丈な希少金属、オリハルコンでできている。窓も全て特殊な強化ガラスだ。この「海鴉号」全体に僕の霊能力のエネルギーを纏わせ、最高スピードで一気に海賊船に突っ込む。「海鴉号」を巨大な魚雷に代えて、海賊船と戦艦に大穴を開けて一気に沈める。後は、命からがら脱出してきた海賊どもを一人残らず始末するだけだ。元「槍聖」たちの目の前で、アイツらご自慢の海賊団を容赦なく叩き潰し、絶望を味わわせた後、元「槍聖」たちを始末する。では、みんな船にしっかりと掴まっていてくれ。怪盗ゴーストによる最後のショータイムを始めよう。」

 僕は最後の作戦決行をみんなの前で高らかに宣言した。

 5分後。

 午前12時ちょうど。

 作戦決行の時がついにやって来た。

 僕はイヴに指示を出した。

 「イヴ、時間だ。ブラックホールで「女神リリアの黄金像」を消し飛ばしてくれ。くれぐれも、傍で警備をしている元「槍聖」たちは消し飛ばさないでくれ。大事な処刑ショーのメインディッシュだからね。」

 「了解だ、婿殿。」

 イヴはそう言うと、右手の指をパチンと鳴らした。

 次の瞬間、黄金像の台座の下に、黄金像を飲み込むほどの大きさの穴が開いたブラックホールが出現し、黄金像はブラックホールの重力に引きずりこまれ、ブラックホールの穴の中へと吸い込まれて、跡形もなく消滅した。

 一方、黄金像の傍で警備をしていたはずの元「槍聖」沖水たち一行は、いつの間にか、ピグミーシャーク島の停泊所に近い、島の浜辺へと、イヴの瞬間移動の能力で、一瞬で転送された。

 突然、島の頂上付近から島の浜辺へと転送され、さらに目の前で「女神リリアの黄金像」が消えていくのを見て、沖水たちは訳が分からず、その場で混乱した。

 「い、一体、何が起こっているでござる!?な、なぜ、我が輩たちが浜辺にいるなり!?どうして、黄金像が消えてしまったなり!?黄金像が、島に吸い込まれていったなり!?何がどうなっているでござる!?」

 「きゃ、キャプテン、もしかしたら、怪盗ゴーストの奴は手品の仕掛けなんて、最初から使っていなかったかもしれない!?こ、これは間違いなく魔法だ!転移魔法って奴だ!怪盗ゴーストは転移魔法を使って、僕たちを一瞬でこの浜辺に移動させたんだ!黄金像を消したのも、恐らく転移魔法、いや、収納魔法か何かかもしれない!アイツは魔法のプロだって話だったろ?手品じゃなく、魔法を仕込んでいたんだ。恐らく、頂上付近に見えないように魔法陣を仕込んでいたか、あらかじめ魔法をかけていたんだ!完全にしてやられた、くそっ!?」

 「魔術士」天神 良が、悔し気な表情を浮かべながら、怪盗ゴーストの犯行の手口について推理した。

 「ま、マズいよ、キャプテン!?黄金像を盗まれて、その上、怪盗ゴーストにまで逃げられたら、僕たちはもう一巻の終わりだよ!?早く怪盗ゴーストを捕まえないと!?」

 「回復術士」金田 優が、慌てながら沖水に向かって言った。

 「お、おのれぇ、怪盗ゴースト!?こうなったら、何が何でも捕まえてやるなり!皆の者、すぐに船に戻るなり!怪盗ゴーストはまだ、この島の近くにいるはずなり!海賊どもも使って、徹底的に辺りを捜索するなり!奴を必ず捕まえるなり!」

 沖水たち一行はすぐに停泊所に泊めてあるボートに乗ると、怪盗ゴーストを捕まえるため、急いで自分たちの戦艦へと戻っていった。

 沖水たち一行が戦艦へと戻ると、ベトレー宰相が慌てた様子で沖水たち一行に駆け寄り、それから、衝撃の報告を伝えてきた。

 「た、大変です、陛下!インゴット王国、ラトナ公国、ペトウッド共和国、ズパート帝国の四カ国が、我が国に対して、海賊団の討伐隊を派遣したとの声明を発表しました!現在、世界四カ国が我がダーク・ジャスティス・カイザー海賊団を討伐するため、大規模な討伐隊を派遣し、首都のあるサーファイ島へ向かっているとのことです!国際秩序を乱す、メフィストソルジャーが率いる海賊団を排除すると、各国とも申しております!これは恐らく、怪盗ゴーストが仕組んだ罠です!我々を亡き者にするため、怪盗ゴーストが我々の情報を四カ国に売り渡し、四カ国が徒党を組んで我が帝国の侵略に乗り出したと思われます!ここは一時、怪盗ゴーストの捕縛作戦は中止し、四カ国の討伐隊を迎え撃つ必要がございます!すぐにサーファイ島へ戻り、迎撃の用意を整えなければ、我が帝国は壊滅いたします!」

 ベトレー宰相からの報告を聞き、沖水たち一行は全員、顔が一気に青ざめた。

 「四カ国が組んで我が帝国を侵略!?我が輩の帝国が壊滅するだと!?い、いや、我が輩たちがメフィストソルジャーであることが敵にバレた!?ま、マズいなり、これは!?こ、このままでは我が輩たちは破滅するなり!?お、おのれぇ、怪盗ゴーストめぇ、や、奴が「ドクター・ファウストの魔導書」を盗んで、我が輩たちがメフィストソルジャーであることをバラしたに違いないなり!?この我が輩を亡き者にするためのアヤツの罠に嵌められたということでござるか!?くそっ!?」

 怪盗ゴーストの罠に嵌められ、さらに世界四カ国が自分たち海賊団討伐のために大規模な討伐隊を派遣し、四カ国によって自分の築いた帝国が侵略され、自身が破滅するかもしれないと知り、沖水はショックで怒り狂った。

 他の六人の仲間たちも、自分たちが怪盗ゴーストによって罠に嵌められ、破滅の瀬戸際まで追い詰められたと知って、慌てた。

 「くそっ!?今は我が帝国を守り抜くことが先決なり!ベトレー宰相、急いでサーファイ島へ引き返すなり!そして、各国の討伐隊を迎え撃つなり!」

 沖水から指示を受け、ベトレー宰相と他の海賊たちは、首都のあるサーファイ島へと戻るべく、急いで船を反転させる準備を始めた。

 一方、その頃、沖水たち一行が怪盗ゴーストの罠にまんまと嵌められ、慌てふためく姿を、「海鴉号」の操縦席から、「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈は笑って見ていた。

 「ようやく、自分たちが罠に嵌められたことに気が付いたらしいな。それじゃあ、予定通り、海賊船を沈めるとしますか。さぁ、楽しい処刑ショーの開幕だ!」

 僕はハンドルを両手で握ると、それから全身より霊能力を一気に解放した。

 僕の解放した霊能力のエネルギーが「海鴉号」の船体を流れ、包み込んだ。

 オリハルコンの装甲に霊能力のエネルギーが流れ込み、「海鴉号」を青白い霊能力のエネルギーが覆い、クルーザーの形をした霊能力を纏った巨大な視えない魚雷へと変えた。

 「霊船爆走弾!」

 僕は霊能力のエネルギーをさらに解放し、一気に船のスピードを上げた。

 「みんな、しっかり捕まっているんだ!一気に突っ込む!」

 最高時速100ノットのフルスピードで、僕は一気に、元「槍聖」沖水たち一行の乗る、鋼鉄製の大型戦艦へと突っ込んだ。

 霊能力のエネルギーに覆われ、フルスピードで走る「海鴉号」が、巨大な一発の視えない魚雷となり、沖水たち一行の乗る戦艦の船体の横側へとぶつかり、戦艦の装甲を突き破り、大穴を開けた。

 僕は「海鴉号」を急旋回させると、さらにもう一撃を加えるべく、「海鴉号」で戦艦へと突撃した。

 「食らえ!ドッカーン!」

 「ドッカーン、なの!」

 副操縦席に乗るメルが、楽しそうに笑いながら、僕の真似をして声を上げる。

 ふたたび、巨大な魚雷となった「海鴉号」が戦艦にぶつかり、戦艦の装甲を突き破り、戦艦の船体の横側に二つ目の大穴を開けた。

 戦艦に開いた二つの大穴から海水がどんどん、戦艦へと入り込み、沖水たち一行の乗る戦艦はどんどん沈んでいく。

 「よっしゃー!まだまだ行くぞー!派手にぶっ飛べ、ドッカーン!」

 「ドッカーン、なの!」

 戦艦を沈めると、僕は「海鴉号」を残りの海賊船20隻へと向け、フルスピードで突撃をかました。

 巨大な視えない魚雷となった「海鴉号」の突撃を食らって、海賊船は次々に船体に大穴を開けられ、海に沈んでいく。

 10分ほどで、戦艦1隻と海賊船20隻、元「槍聖」たち率いる海賊団の全ての船が、僕の操縦する「海鴉号」の突撃、「霊船爆走弾」を受けて、船体に大穴を開けられ、海の中へと沈んでいった。

 「どうだった、メル?海賊船と戦艦を全部、沈めてやったぞ!面白かっただろ?」

 「うん、すっごい、面白かったなの!また、お船をドッカーン、してやりたい、なの!」

 「よ~し、また機会があったら、一緒にドッカーン、しような?」

 「はい、なの、パパ!」

 僕とメルは海賊船を沈めたことを笑って喜んだ。

 「作戦が成功したのは喜ばしいのですが、丈様のメルさんへの教育は少々、過激すぎるような気が。海賊船を沈めるのを遊びと称して教えるのはいかがなものかと思いますが?」

 「玉藻殿の言う通りだ。ジョー殿の教育方針はいささか過激すぎる。メル殿が将来、戦闘狂のようにならないか、少々不安である。非戦闘職のジョブ持ちではあるが、将来、過激思考の軍人になったら、大変である。ジョー殿と一度、メル殿の教育方針について話をすることを提案する。」

 「俺も同意見だ。丈は時々、無意識にやり過ぎるところがある。メルが変な方向に育たないよう、ママとして、俺たちがしっかり教育をフォローしなきゃいけないと思うぜ。」

 玉藻、エルザ、酒吞が、主人公の行動がメルの教育に悪影響を及ぼすのではないか、と懸念を口にした。

 鵺、グレイ、イヴ、マリアンヌの他の四人も、うんうんと、首を縦に振って同意した。

 そんなことは露知らず、主人公、宮古野 丈は、次の復讐を進めるべく、準備へと移った。

 「さてと、それじゃあ、第二幕の仕上げに入るとしますか。酒吞、僕と操縦を代わってくれ。船を沖水たちのいる、戦艦の傍まで近づけて待機しといてくれ。僕は処刑ショーのフィナーレに向けて、準備をしてくるよ。みんな、楽しみに見ていてくれ。」

 「了解、丈。お前の演出をこの目で拝見させてもらおうじゃねえか。」

 僕はそう言うと、酒吞と操縦を代わった。

 メインキャビンを出て、デッキへと出ると、僕は足裏に霊能力のエネルギーを集中させ、圧縮し、ジェット噴射のように一気に解放した。

 「霊飛行!」

 僕は「霊飛行」を使って、一気に上空へと飛び上がり、海賊船と戦艦の真上、上空50mほどの地点で、ホバー飛行の要領で、空中高くで制止した。

 真下を見ると、沖水たち一行と海賊たちは、ボートに我先にと乗り込み、必死な姿でボートへと乗って避難している真っ最中であった。

 海上には、ボートに乗れなかった海賊たちの一部が、必死に泳いでボートにしがみつこうとしている。

 僕は右手に霊能力のエネルギーを集中させると、圧縮し、直径1mほどの、霊能力の玉を作り出した。霊能力の玉には、認識阻害幻術も施し、視認できないようにした。

 「こいつは、「霊爆拳」で作った、熱エネルギーの効果を持たせた小さな機雷だ。点火は僕の任意のタイミングででき、爆発する。僕特製の視えない機雷をたっぷりと味わうがいい。」

 僕はそう言うと、霊能力で作った視えない機雷を海賊たちのいるボートの傍へと空から落とした。

 それから、次々に同じサイズの霊能力の視えない機雷を100個ほど作り出し、海賊たちの乗るボートの周りへと落とした。

 自分たちの乗るボートの周りに、僕の作った視えない霊能力の機雷が大量に浮かんでいるとも知らず、海賊たちはボートを漕いで、ピグミーシャーク島へと逃げようとする。

 「それじゃあ、処刑ショーの第二幕の開幕だ!まずは海賊ども、お前たちを地獄に叩き落す!」

 僕はそう言うと、右手の指をパチンと鳴らした。

 次の瞬間、海賊たちのボートの周りに浮かんでいた100個の機雷が一斉に爆発した。

 機雷の大爆発に巻き込まれ、海賊たちのボートは、乗っていた海賊たち諸共木っ端微塵に吹き飛んだ。

 ボートの周りで泳いでいた海賊たちも機雷の爆発に巻き込まれ、全身を粉々に吹き飛ばされて死んでいった。

 海には爆発音と海賊たちの断末魔の叫び声が大音量で鳴り響いた。

 焼き焦げて木っ端微塵に吹き飛んだボートの破片と、海賊たちの焼死体や、吹き飛んだ手足が海を漂っていた。

 僕の作った視えない霊能力の機雷の大爆発で、元「槍聖」たち率いる海賊団の手下の海賊たちは、全員、爆破に巻き込まれて死亡した。

 僕は海賊たちの殲滅を確認すると、上空からボートの上で腰を抜かしている沖水たち一行の姿を確認し、連中の乗っているボートの周りに、20個ほど、機雷を作ってばらまいた。

 機雷を追加で巻き終えると、僕は上空から「海鴉号」のデッキへと戻った。

 メインキャビンのドアを開けると、僕はみんなに声をかけた。

 「どうだった、みんな?僕の作った視えない機雷の威力は?手下の海賊たちを全員、木っ端微塵に吹き飛ばしてやったよ。最高の爆破ショーだったろ?追加で、元「槍聖」たちのボートの周りにも機雷をばらまいてやったよ。連中にもう逃げ場はない。さぁ、処刑ショーのフィナーレをみんなで楽しもうじゃないか?」

 僕は笑いながら、メインキャビンにいるみんなに向かって声をかけた。

 副操縦席から、メルが走って僕のところにやってきた。

 「パパ、さっきの爆発、とってもすごかったなの!海賊さんたちがバラバラに吹っ飛んでいったの!ドドド、ドッカーン、って、もの凄い大きな音で、大爆発したの!パパは本当にすごい、なの!」

 メルが興奮した様子で、僕に感想を言った。

 「そうだろ、メル?パパの作った視えない爆弾の威力はすごいだろう。パパが本気を出したら、戦艦だって、一撃でバラバラに吹き飛ばすことだってできるんだぞ。あれでも手加減した方だからね。いつか、機会があったら、もっとすごい爆発を見せてあげるからね。」

 「わーい、なの!パパの爆弾、最高なの!」

 僕とメルは爆弾の話で盛り上がった。

 「爆弾を玩具感覚で教え込む、丈君の教育はやっぱり過激。だけど、私は嫌いじゃない。メルは少々、過激なモノが好きだと分かった。私も今度、竜巻を披露する。ママとしての好感度UP、間違いなし。」

 「爆弾ならアタシだって作れるぜ。アタシの「狼牙爆槍・咆哮」の爆発を見せてやるじゃんよ。メルは爆弾が好き、良いこと知ったじゃんよ。」

 「しょ、正気ですか、お二方?メルさんの教育はもっと穏便にするべきと先ほど皆で納得したはずでは?私は断固反対です。危険な武器を玩具のように幼い子供に見せるのは良くありません。メルさんはまだ5歳の女の子です。先にきちんと常識を教えることがママの役目だと私は主張します。」

 鵺とグレイが、メルに過激な攻撃を玩具や遊びのように披露しようと考えたことについて、マリアンヌはメルの教育に良くないと反対した。

 玉藻、酒吞、エルザ、イヴの四人はと言うと、メルからママとして見られるなら、好感度UPが狙えるなら、メルの前でちょっとくらい、過激な攻撃技を披露するのもありではないかと、心の中で判断に迷っていた。

 「みんな、デッキに出てくれ。処刑ショーのフィナーレはここからだ。酒吞、鵺、メルのボディーガードを頼むよ。メル、酒吞お姉ちゃんと鵺お姉ちゃんの傍を離れちゃ駄目だぞ。さて、元「槍聖」たちの絶望と恐怖と苦痛で染まった顔をみんなで見て楽しもう。」

 僕たちはメインキャビンを出て、「海鴉号」のデッキへと出た。

 沈んだ戦艦の横、「海鴉号」から50mほど離れた海の上に、元「槍聖」沖水たち一行と、青いオールバックに赤いアロハシャツを着た40代前半くらいの中年男性、それと海賊団の手下の海賊一人が、避難用のボートの上で、全員青ざめた表情を浮かべながら、腰を抜かして震えている。

 僕はジャケットの左の胸ポケットから如意棒を取り出すと、如意棒を左手に持った。

 それから、如意棒に霊能力のエネルギーを注ぎ込み、黒いロングボウへと変形させた。

 僕は沖水たち七人に向けてロングボウを構えた。

 それから、霊能力のエネルギーの矢を生み出した。

 「霊弓必射!」

 僕は霊能力で作った矢を次々に生み出すと、沖水たちの股間に狙いを定め、連続して発射した。

 高速で発射された霊能力の矢が、次々に沖水たちの股間に向けて発射され、沖水たちの男性器を射抜き、破壊した。

 「「「「「「「ギャアアアーーー!?」」」」」」」

 沖水たちは僕の発射した霊能力の矢で男性器を射抜かれ、破壊された激痛で、悲鳴を上げ、苦悶の表情と涙を浮かべ、股間を抑えながら、ボートの上でのたうち回っている。

 「変態食人鬼ども、お前たちの大事なアソコを去勢してやったぞ。罪もない女の子たちを攫って、違法ポルノのエロ写真を作って、性のはけ口や金儲けに利用した罰だ。女の子たちを傷つけた報いを、たっぷりと味わうがいい。」

 僕が沖水たちの男性器を矢で射抜いて去勢したのを見て、他の皆はゲラゲラと大声で笑っていた。

 「女性を食い物にした罰です。あのような下劣極まりない連中は去勢されて当然です。」

 「エロ写真なんぞ作ってたくさんの女たちを泣かせた罰だ。チ〇コもキ〇タマもあの変態どもからは没収して当然だぜ。ざまぁみろ。」

 「ゴミ以下の変態野郎の性犯罪者は去勢して当たり前。女を泣かせた罪は万死に値する。去勢程度はまだ生温い方。ここからが処刑の本番。」

 「元「槍聖」たちは罪もない多くの女性たちを傷つけた。我ら全世界の女性の敵だ。去勢されて当然である。男を名乗る資格は全くない。」

 「乙女たちを食い物にして傷つけたあの変態野郎どもには良い薬だぜ。ついでケツの穴にもキツい一発をお見舞いしてやるのもいいじゃんよ。」

 「クククっ。男のシンボルを奪われたあの元「槍聖」たちの泣き叫び、苦しむ姿は実に滑稽だ。さすがは妾の婿殿だ。あの変態どもへの効果的な復讐をよく分かっている。女の敵は去勢するのが一番の罰だ。」

 「元「槍聖」たちは違法ポルノを製造し、売買を行おうとしていた大罪人です。彼らのせいで罪もない大勢の女性たちが犠牲になりました。さらに、彼らは誉ある勇者の歴史に泥を塗りました。去勢程度の罰は受けて当然です。即刻、処刑すべき存在です。」

 「おばあちゃんやみんなを苦しめたアイツらだけは絶対に許せない、なの。もっと、もっと苦しめてやらなきゃダメなの。」

 玉藻、酒吞、鵺、エルザ、グレイ、イヴ、マリアンヌ、メルが、去勢されて苦しむ元「槍聖」たちを見ながら、元「槍聖」たちへの怒りを露わにした。

 「さてさて、それじゃあ、いよいよ最後の仕上げといこうか?お前たちの、さらに絶望と恐怖と苦痛で歪んだ顔を見せてもらおうか?」

 僕は、元「槍聖」たちの討伐という名の処刑ショーのフィナーレの仕上げに取りかかることを決めた。

 沖水、お前のご自慢の海賊船は全て沈めた。

 手下の海賊たちもほぼ全員、始末した。

 お前の海賊団は完全にこの僕が壊滅させた。

 お前とお仲間たちの乗るボートの周りは、僕特製の視えない機雷が敷き詰められ、逃げ場はない。

 おまけに、大事なお前たちの男性器を去勢してやった。

 リアルの苦痛と恐怖と絶望の味が少しは分かっただろう。

 だが、僕の復讐はこれからが本番だ。

 さらなる苦痛と恐怖と絶望をたっぷりと味わわせてから、お前たち全員、地獄に叩き落してやる。

 異世界というリアルな世界で、本物の死がゲームオタクのお前たち全員を待ち受けているのだ。

 僕がお前たちに正義と復讐の鉄槌を、その狂った脳天にぶち込んで殺してやる。

 僕の異世界の悪党への復讐が、これからフィナーレを迎えようとしていた。























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