第十一話 主人公、聖女と再会する、そして、復讐する
僕たち「アウトサイダーズ」は、「聖女」花繰たち一行のダンジョン攻略を阻止すべく「土の迷宮」へと入った。
そして、「聖女」たち一行より先にダンジョン攻略に成功、聖盾を破壊し、「聖女」の覚醒を防ぐことに成功した。
さらに、「土の迷宮」の奥に隠されていた第九階層を発見、僕は光の女神リリアの天敵を名乗る、闇の女神イヴと出会い、彼女の封印を解くとともに、彼女と主従契約を結んだ。
一癖も二癖もある新しい仲間の加入に、少々殺気立っている他のメンバーたちではあったが、イヴとの親睦はこれからゆっくりと深めていけば問題ないと思う。多分。
僕たちは、今回の謎の奇病の流行騒ぎを起こした元凶である「聖女」たち一行を討伐すべく、「聖女」たち一行のいる第六階層へと向かっていた。
イヴがダンジョン内部に生み出した闇のせいで視界を完全に奪われ、闇の牢獄に捕らわれた「聖女」たち一行は身動きがとれずにいるそうだ。
僕たちは階段を下りて、第六階層の出口へと着いた。
第六階層のフロア全体は暗い闇に覆われて、1m先も見えない状況だった。
イヴの能力で、僕たちの半径5m以内だけが明るく照らされている。
「イヴ、第六階層の闇だけを取り除いてくれ。」
「分かった、婿殿。」
イヴは右手の指をパチン、と鳴らすと、第六階層全体を覆っていた闇が一瞬で消え、薄明りに照らされた石壁の広い部屋が現れた。
広い室内の床には何百人という数の騎士たちと冒険者たちの死体が転がっていた。
さらに、第六階層の入口付近には、「聖女」たち一行と、「聖女」たちのダンジョン攻略に協力する騎士たちと冒険者たちが200人近くいた。
徐々に近づいてくる僕たちの姿を見て、「聖女」花繰たち一行は全員、驚いた表情を浮かべた。
「み、宮古野君!?う、嘘!?そんなはずない!?宮古野君は死んだって皇帝陛下から連絡があったわ!?宮古野君が生きているはずない!?」
「聖女」花繰 優美が信じられないといった表情で慌て始めた。
他の五人も同様に慌て始めた。
「久しぶりだな、花繰。他の五人もな。言っておくが、僕はこの通りピンピン生きている。足だって付いている。幽霊でもリッチーでもないからな。大体、この僕が爆弾程度で死ぬわけないだろ?爆弾で死んだと思われたのは僕の分身、ダミーだ。お前たちの行動は全部筒抜けなんだよ。ところで、一つ質問だが、僕たちは今、ダンジョンの最上階から下りてきた。さて、僕たちは一体、何をしてきたでしょうか?制限時間30秒以内に回答をどうぞ。」
僕が馬鹿にした笑みを浮かべながら、困惑する花繰たちに質問をした。
玉藻たち六人は、僕の花繰たちへの質問を聞いて、皆クスクスと笑っている。
質問をしてから、30秒が経過した。
「時間終了~。そんなに難しい質問だったか?正解は、ダンジョンを攻略して聖盾を木っ端微塵に破壊した、でした。ダンジョン攻略もできず、聖盾まで失い、お前たち全員もう二度と勇者には戻れませ~ん。残念だったな。」
僕が答えを発表した途端、玉藻たち六人は大声でゲラゲラと笑い始めた。
一方、僕に聖盾を破壊されたと聞いて、花繰たち一行は全員、真っ青な表情へと変わった。
「そ、そんな!?聖盾を木っ端微塵にしたって!?も、もう私が「聖女」として覚醒することはできなくなった!?ひ、ひどいよ、宮古野君!?何で、何でそんなひどいことをするの!?聖盾は異世界の人たちを守るための大事な聖武器なんだよ!?宮古野君だって同じ勇者なんだから分かるでしょ!?私たちへの復讐のためにこんなひどいことをしたの?」
「その通りだよ。お前たちクソ勇者どもに復讐するために決まってるだろ。それにだ、お前たち勇者の皮を被ったテロリストに聖盾を渡したりしたら、どうせ悪用されるのが落ちだ。そうなる前に破壊した方が世界の平和を守ることになる。花繰、そして、取り巻きの五人、お前たちがインゴット王国の国立博物館から盗み出した「レイスの涙」で死の呪いをズパート帝国にばらまいたことはすでに分かっているんだ。インゴット王国政府がお前たちに「レイスの涙」を盗まれたことを素直に白状したぞ。今頃は、ズパート帝国新政府とラトナ公国、ペトウッド共和国によって、全世界にお前たちの悪事が暴露されていることだろうな。おっと、それとついでに、お前たちの悪事に加担していた皇帝と皇帝に味方する連中は僕たちで全員、始末した。皇帝は死んで、ナディア皇女率いる皇女派のクーデターは成功した。もうお前たちに味方する連中はいない。逃げ道も完全に塞いだ。500万人もの大勢の罪のない人間を殺したお前たちだけは絶対に許さない。全員、この場でぶっ殺してやる!覚悟しろ、テロリストども!」
僕は「聖女」たち一行に怒りを露わにし、全員殺すと宣言した。
僕の話を聞いていた、騎士たちと冒険者たちが驚いた表情で花繰たちを取り囲み、花繰たちに質問や罵声を浴びせた。
「一体、どういうことだ!?死の呪いを国中にばらまいただと!?お前ら、俺たちを騙していたんだな?」
「呪いを治療するたびに高い金を払わせやがって!サリム殿下とグルになって金儲けするために死の呪いをばらまいたのか?ふざけるな、この野郎!」
「俺たちにモンスターを押し付けて盾代わりに使いやがって!死の呪いをばらまいた張本人だと分かっていたら、誰がテメエらテロリストに協力なんかするかよ!テメエらのせいで大勢の仲間が死んだんだ!今すぐ、ぶっ殺してやらあ!」
武器を構えながら、花繰たち一行を、怒った騎士たちと冒険者たちが取り囲み、今にも花繰たち一行を嬲り殺しにしようとしている。
自分たちを嬲り殺そうとしている騎士たちと冒険者たちに取り囲まれ、花繰たち一行は恐怖で縮み上がっている。
「花繰たちは全員、僕が殺すと言ったはずなんだが。大体、理由はどうあれ、死んだクズ皇帝から汚い金を受け取って皇帝と花繰たちの悪事に直接的でも間接的でも協力した時点で、あの騎士たちと冒険者たちも同罪だろ。アイツらも皇帝と花繰たちに次ぐ、殺すべき悪党だ。僕が聖盾を破壊した事実も聞かれちゃったしね。アイツらも一人残らず殺さなきゃだな。」
僕が、花繰たちや騎士たち、冒険者たちの姿を見ながらそう呟くと、僕の左隣にいたイヴが話しかけてきた。
「邪魔者の始末は妾に任せるがいい、婿殿。金と権力を振りかざす悪党に尻尾を振る小悪党どもに生きる価値はない。婿殿の復讐を邪魔する者はこの妾が排除しよう。」
イヴはそう言うと、右手の指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、床一面が黒い闇で覆われ、騎士たちと冒険者たちが悲鳴を上げながら、黒い闇の中へと引きずり込まれていった。
黒い闇に飲み込まれ、騎士たちと冒険者たちは一斉に姿を消した。
よく見ると、床に転がっていた騎士たちと冒険者たちの死体も全部、消えている。
「イヴ、今のは一体?」
「何、邪魔な騎士たちと冒険者たちを妾の闇に引きずりこんだまでだ。連中全員の足元に人一人通れるほどの穴の大きさの小さなブラックホールを生み出したのだ。ブラックホールの重力で連中はブラックホールに引きずり込まれ、そのまま宇宙の塵となった。ついでに邪魔な死体も掃除しておいた。さぁ、舞台は整えた。思う存分、復讐するがいい、婿殿。」
「ぶ、ブラックホールを作っただって!?超小型ブラックホールを200個以上作って騎士たちを一掃するなんて、さすがは闇の女神だ。やることのスケールが違う。でも、おかげで助かったよ。ありがとう、イヴ。」
「どういたしまして、婿殿。何せ、妾は闇の女神にして「黒の勇者」の妻だからな。この程度のこと、出来て当然だ。」
僕とイヴは笑い合った。
「むぅ。イヴさんの実力は本物のようです。悔しいですが、認めざるを得ませんね。」
「ブラックホールとやらを作ったそうだな。初めて見たが、確かにアレは半端ない力だぜ。ムカつくが、実力は認めるぜ。」
「イヴはまだ全力を出していない。それでも、あのブラックホールの力は凄まじかった。力だけなら、丈君のお嫁さん候補になる実力はある。それ以外は認めないけど。」
「闇の力とは実に恐ろしい。今の我の力で、あのブラックホールとやらに対抗できる自信はない。悔しいが、イヴ殿の手腕は認めざるをえまい。」
「ちっ。新入りのくせに目立ちやがって。だが、アタシも素直に認めるぜ。イヴの闇の力は本物だ。アタシより実力がずっと上なのは認める。だが、いつか対等にやり合えるように強くなってやるじゃんよ。」
玉藻、酒吞、鵺、エルザ、グレイも、イヴの実力を認めた様子だった。
イヴの生み出したブラックホールに飲み込まれ、悲鳴を上げながら消滅した騎士たちと冒険者たちの最後の姿を見て、「聖女」花繰たち六人は、皆、恐怖で体を震わせ、その場で腰を抜かしていた。
怯える花繰たちを見ながら、僕は言った。
「500万人も殺したテロリストが何を震えているんだ?お前たちのやったことに比べたら可愛いもんだろ、ええっ?言っておくが、お前たちに逃げ場はない。邪魔者も片づけた。それじゃあ、とっとと全員殺すとするか。」
「俺も手を貸すぜ、丈。あの卑劣で外道な「聖女」どもはこの手でぶっ殺してやりてえと、ずっと思ってたんだ。丈、俺と合体しようぜ?誰かを守る本当の力ってヤツを、正義の鉄槌ってヤツを連中の体に教えてやろうぜ。」
花繰たちへの復讐を始めようした僕に、僕の右隣にいた酒吞が声をかけてきた。
「分かったよ、酒吞。なら、僕に力を貸してくれ。一緒に花繰たちを倒そう。」
「おう、よろしくな、丈!」
僕は両手を合わせて、胸元で合掌した。
僕は酒吞と合体するための呪文を唱える。
「契約に捧げし贄は我が命、我が命食らいし式を我が半身と為して、眼前の敵を討ち滅ぼす悪鬼羅刹を顕現せよ、酒吞降臨!」
呪文を唱え終えると同時に、僕と酒吞の体が光り輝き、青白い大きな光に一緒に包まれた。
突然目の前で起こった眩しい光を目に受けて、花繰たちは困惑した。
「な、何!?一体、何が起こったの!?」
僕たち二人の体を包む光が、薄暗い第六層階の広い室内を明るく照らし続ける。
やがて光がおさまると、酒吞との合体を終えた僕が姿を現した。
黒色をベースとした赤色のストライプの入った着物を纏い、両手には赤のストライプが加わった黒いグローブ、両足には赤色のストライプが加わった黒いブーツを身に着けている。腰には赤色の帯を巻いている。
髪と瞳の色も赤色に変わっている。
右手には酒吞と同じ、大きさが2mほどの黒い鬼の金棒を持っている。
「霊装剛鬼ノ型!」
僕の変化した姿に、その場にいた全員が驚いた。
僕の変化した姿を見て、玉藻、鵺は喜んだ。
「ついに酒吞が丈様との合体に成功しましたか。酒吞の怪力まで身に着ければ、丈様に腕力で敵う相手はまずいないでしょう。さらなる成長が楽しみです。」
「酒吞に先を越されたけど、丈君が強くなったのなら、私は嬉しい。次に合体するのはこの私。これからがますます楽しみ。」
イヴ、エルザ、グレイは興味深そうに、僕の変化した姿を見ていた。
「ほう。主従契約を結ぶと、婿殿と合体ができるようになるのか。実に面白い。合体した婿殿から、力強く、それでいて神々しい力を感じる。フフフ、良いことを知った。闇の女神であるこの妾と合体すれば、婿殿は神をも凌駕する力を手に入れることだろう。妾も楽しみだ。」
「あれは以前、玉藻殿と合体した時の姿と似ている。今回は酒吞殿と合体したわけか。一体、どんな力を秘めているのか、我も気になるところだ。」
「ジョーと酒吞の姉御が合体しただと!?そんなことまでできんのかよ?ホント、つくづく規格外だぜ、ウチの「黒の勇者」様はよ。さて、アタシらに一体、何を見せてくれるのか、楽しみじゃんよ。」
僕は右手に持っていた鬼の金棒を思いっきり地面に突き刺した。
それから、霊能力を解放した。
いつもの青白い色から、赤い色へと霊能力のエネルギーが変化し、赤い霊能力のエネルギーが僕の全身を包み込んだ。
そして、僕の背後に、巨大な鬼の顔のマークが浮かび上がった。
「剛鬼乱舞!」
全身に力がみなぎってくる。
全身の筋肉が盛り上がり、血管が浮かび上がり、全身のあらゆる身体能力が強化される。
赤い霊能力を全身に纏いながら、僕はゆっくりと花繰たちの方へと真っ直ぐに歩いて近づいていく。
「待たせたな。全員、今すぐぶっ殺してやる。度胸があったら、かかってこい!」
花繰たちは後方の入り口の方を振り返ってみるが、入り口も階段も、第五階層から下の全ての階層は、光で照らすことはできないイヴの闇に覆われていて、視界が全く確保できない、真っ暗な闇が広がっていた。
逃げ道がないと分かり、花繰たちは僕と戦わざるを得なくなった。
「みんな、サポートするから力を貸して!聖光結界!」
「聖女」花繰が、聖盾のレプリカを構えると、オレンジ色の光を放つ球状の結界が、花繰たちを包み込んだ。
「くそっ!?戦うしかねえのか!?行くぜ、熱解剣盾!」
「盾士」祝吉 楽が、右手に装着してある、刀身の長さが60cmほどの剣と、長さが30cmほどの鋸歯状の長いスパイクが丸盾に付いたランタン・シールドを構えた。
祝吉の右手のランタン・シールドが、全体が熱を持ったように真っ赤に染まった。
「やむを得まい!援護するぞ、楽!手裏剣盾!」
「盾士」上川 順の左手に装着している丸盾が紫色の光を放ちながら、丸盾から四枚の紫色の光の刃が現れ、手裏剣状に変化した。
「私らを舐めんじゃないわよ!巨人盾!」
「盾士」郡元 鈴が叫ぶと、郡元の右手に装着している丸盾が水色に光り輝くと、郡元の右腕の周りに、水色の魔力のエネルギーで構成された、5mくらいの巨大な光の腕が現れた。
「宮古野なんかに殺されてたまるかっての!拘束結界!」
「回復術士」小松原が、左手に持った縦1mほどの長方形型の大盾を構えた。
小松原の構えた大盾から、花繰たち全員の前に、黄色い光の壁のような結界が現れた。
「私たちは絶対に死なない!大火炎結界!」
「回復術士」千町 愛が、左手に持った長方形型の大盾を構えると、花繰たちの周りをグルっと囲むように、炎の壁のごとき結界が現れた。
僕は花繰たち六人との間の距離を詰めるように、ゆっくりと歩いて近づいていく。
僕と花繰たちとの間が残り10mを切った。
「どうした?ただ、構えて突っ立っているだけしかできないのか?やっぱり所詮は低レベルのくせに勇者を名乗ろうとした、身の程知らずの馬鹿というわけか?」
「調子に乗るんじゃねえ、陰キャ野郎!」
僕の挑発を受けて、激怒した祝吉が、熱せられたランタン・シールドの剣先を僕に向けながら突っ込んできた。
「馬鹿っ!迂闊に突っ込むな!くそっ!」
祝吉を援護すべく、光の刃を発する手裏剣と化した丸盾を、上川が僕目がけて投げてきた。
「死ねえ!宮古野!」
祝吉が右手のランタン・シールドを振りかざし、ランタン・シールドの熱せられた剣先が、僕の左肩に直撃した。
だが、祝吉のランタン・シールドの剣は、僕の左肩に直撃した瞬間、粉々に砕け散った。
「な、何!?」
「そっちのスパイクは使わないのか?ほら、試しにそれで僕の心臓を突いてみろよ?まぁ、無駄だけどな。」
僕は右の人差し指で自分の心臓を指さしながら、祝吉を挑発した。
「お望みどおりにしてやらぁ!」
祝吉がランタン・シールドに付いているスパイクで、僕の心臓を突き刺そうとした。
しかし、スパイクは僕の心臓の前で止まり、そのまま粉々に砕け散った。
「な、砕けただと!?」
「だから、言ったろ?無駄だって。お前らの攻撃なんて僕には痛くも痒くもない。ノーガードで十分なんだよ。」
祝吉を圧倒する僕の背中に、上川の放った手裏剣状の盾が何度もぶつかってくるが、僕の背中に刺さるどころか、傷ひとつ付けることができず、盾がどんどんボロボロになっていく。
「さっきから背中に何度もぶつかってきて、うっとおしいなぁ。そんな茶地な飛び道具で僕を倒せるわけないだろ?ちょこまか飛び回って迷惑だ。」
僕はそう言うと、後ろを振り返り、僕目がけて飛んでくる、手裏剣状に変化した丸盾を両手でキャッチした。
僕は両手に力を込めると、丸盾を両手で握りつぶし、野球ボールぐらいの大きさの金属の玉へと変形させた。
盾だった金属の玉を、驚く上川の足元へとポイっと投げ捨てた。
「そ、そんな!?俺の盾が、俺の盾が、ただの玉にされただと!?こ、こんなの嘘だぁーーー!?」
「いや、嘘じゃなくて間違いなく現実だから。大体、ダンジョンを自分たちだけじゃ攻略できないからって軍隊に頼るようななんちゃって勇者のお前たちの攻撃が、ダンジョンを余裕で攻略できる僕に通用すると考える方がどうかしていると思うぞ?上川、お前、元いた世界ではクールキャラぶっていたけど、結構馬鹿だったんだな。祝吉と大差ない馬鹿さ加減だな、本当に。」
上川は僕にご自慢の盾をただの金属の玉に変えられたことが受け入れられず、ショックで放心状態になり、その場で崩れ落ちた。
そんな上川を呆然と見つめる祝吉に向かって僕は言った。
「よそ見をしている場合か、祝吉?随分と余裕があるなぁ。じゃあ、次はこっちから行くぞ。歯ぁ、食いしばれよ。」
僕は右の拳を握りしめた。
「うわあああーーー!?や、止めろうーーー!?」
僕は恐怖でしり餅を突き、ランタン・シールドで顔を隠し身構える祝吉に向かって、右の拳を振り下ろした。
「セイヤーーー!」
僕の振り下ろした右の拳が、ランタン・シールドにぶつかると粉々にシールドを砕き、そのまま一直線に祝吉の顔面に直撃した。
僕の右の拳と、床に挟まれながら祝吉の頭部は押しつぶされ、木っ端微塵に吹き飛んだ。
祝吉の頭部があった場所の床には穴が開いた。
僕は祝吉を殺すと、そのまま放心状態で崩れ落ちている上川へと近づいた。
上川の前で立ち止まると、右足を大きく引き、サッカーボールを蹴るような体勢をとった。
サッカーボールを蹴るような態勢から右足で、僕は上川の体を思いっきり蹴り飛ばした。
「セイっ!」
「ぐえええーーー!?」
僕の右足の蹴りが腹に直撃すると、上川は叫び声を上げると同時に、口から大量の血を吐き出し、腹に大穴を開けられながら、部屋の壁まで吹っ飛ばされていった。
腹に大穴を開けられ、口から大量の血を吐いた上川の無惨な死体があった。
「よし、まずは二人っと。残りは四人か。覚悟はいいか、クソ女ども。」
祝吉と上川を殺害し、僕はニヤリと笑みを浮かべながら、花繰たち四人に声をかけた。
祝吉と上川が僕に無惨に殺される姿を見て、花繰たち四人は全員、青い顔をして震えていた。
僕は笑顔を浮かべながら、ゆっくりと花繰たちの傍へと近づいていく。
「殺されてたまるかぁーーー!」
焦った表情の郡元が、右腕に纏った水色の巨大な光の腕を、僕目がけて振り下ろした。
僕は左手で、郡元の振り下ろす巨大な光の腕を受け止めた。
「う、嘘!?私の巨人盾が受け止められた!?く、くそっ、離しなさい、このっ!?」
「巨人の腕ねぇ。巨人という割に大した力じゃないな。まぁ、こっちは巨人よりもっと怖い鬼の王の力だけども。鬼の拳、たっぷりと味わえよ。」
僕は左手で郡元の巨大な光の腕を掴んだまま、左手だけで郡元を天井に向かって真っ直ぐ放り投げた。
「キャアアアーーー!?」
僕はアッパーカットの構えをとると、落下してくる郡元の真下で待ち構えた。
そして、落ちてきた郡元の胴体目がけて右の拳からアッパーカットを叩き込んだ。
「ゲブゥゥゥーーー!?」
僕のアッパーカットで胴体を貫かれ、口から大量の血を吐き出しながら、郡元は絶命した。
郡元の死体を投げ捨てると、僕は、恐怖で顔を歪める花繰たちを見ながら言った。
「これで、三人っと。もう半分か。残るは防御と回復専門といったところか?どうせ、紙っぺらみたいな結界だろ?そんな茶地な結界、僕には無意味だぞ?僕の頑丈さは今、その目でよく確かめたはずだ。無駄な抵抗は止めて、おとなしく全員、僕に殺されろ。一瞬で楽にしてやる。抵抗する分、苦しみが増すだけだぞ?覚悟のできた奴から、とっとと前に出ろ。」
僕は、抵抗する花繰たち三人に最後通告を行った。
「ま、待って、宮古野君!私の話を聞いて!あなたを処刑したことは謝るから!本当にごめんなさい!あの時、あなたを処刑しなければ、他のみんなも殺される危険があったの!私たちは国王たちから処刑を強制されただけなの!あなたを助けられたなら、私たちは助けたいと、本気で思っていたの!お願い、助けて!私たち、クラスメイトでしょ?」
「宮古野、私らは本気でアンタを処刑するつもりなんてなかったの!誰かが途中で止めるだろうって思ってたの!本当に処刑するとは思っていなかったの!許して、お願い!」
「宮古野、私たちはアンタを処刑したことを本当に後悔している!あの時の私たちは正常じゃなかった!処刑したことは謝る!本当にごめんなさい!だから、命だけは助けて!お願い!」
花繰、小松原、千町の三人が命乞いを始めた。
そんな三人に向かって、僕は冷たい目で見つめながら言った。
「今更謝っても遅い。お前たちは僕を処刑しただけでなく、死の呪いをばらまいて、ズパート帝国の何の罪もない大勢の人間を殺した。お前たちの、勇者の地位の奪還と、金儲けというくだらない目的のために、500万人もの人間が死んだんだ。お前たち三人に生きる価値は全くない。無駄な命乞いは止めろ。お前らは死刑がすでに確定したテロリストだ。死刑以外に、お前たちが罪を償う方法はない。さぁ、三人まとめて地獄に送るとしますか。」
僕は後ろを振り返ると、後方の床に突き刺さっている鬼の金棒の姿へと変形した如意棒に向けて、右手を向けた。
「来い、如意棒!」
如意棒が赤く光ると、床から浮かび上がり、僕の方へと飛んできた。
僕は如意棒が変形した鬼の金棒を右手に掴んだ。
「全員、ミンチにしてやるよ。楽しい処刑ショーのフィナーレと行こう。」
鬼の金棒を右肩に担ぎ、笑いながら、僕は花繰たちの張った結界を突き破っていく。
「ほ、炎が効いてない!?な、何で炎の中でも平気なのよ?」
「くそっ!?止まれ、止まれっての!?私の拘束結界が破られた!?どうして、何でなのよ!?」
千町、小松原の二人が、自分たちの張った結界を破られ、慌て出した。
「残る結界は一つか。ソイヤー!」
花繰の張ったオレンジ色の球状の結界に向けて、軽く金棒を振り下ろした。
パリーン、という音を立てて、花繰の張った結界が粉々に砕け、崩れ落ちた。
「「フェニックスの涙」を使って強化した結界の割には脆いな。所詮は借り物の力というわけか。偽聖女のお前らしい、嘘で塗り固められた張りぼて以下の結界、といったところだな。」
僕は馬鹿にしたような口調で、花繰に向けて言った。
全ての結界を僕に破壊され、花繰たち三人はその場で泣き崩れた。
「泣いても無駄だ。女の涙は僕には通用しない。」
僕はそう言うと、まず、千町に向けて思いっきり鬼の金棒を振り下ろした。
グシャっ、という音を立てて、千町は頭から全身を金棒で潰され、肉塊となった。
続いて、間髪入れずに小松原に向けて、僕は思いっきり鬼の金棒を振り下ろした。
グシャっ、という音を立てて、小松原も頭から全身を金棒で潰され、ただの肉塊へと姿を変えた。
肉塊となった仲間たち二人の死にざまを見て、花繰は僕の前で土下座を始めた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!もう、悪いことはしません!だから、許して!お願いします!」
「駄目だ。主犯格のお前は一番、惨い殺し方で殺すと最初から決めていた。お前は絶対に反省などしない。生かしておけば、自分の欲望を満たすためにまた、大勢の人間を殺そうとするはずだ。善人面をして悪事を働くお前みたいな悪党が一番、質が悪い。人を呪わば穴二つ、と言う言葉があるが、死の呪いをばらまいて500万人もの人間を呪い殺したお前の場合、499万9999個分の墓穴を掘らなきゃいけないな。いや、一度お前に殺されかけた僕の分も加えれば、ちょうど500万個になるな。500万人分の報復を受けて死ぬ人間なんて、歴史に残る悪党だな。自分でもそう思わないか、花繰?」
僕は花繰を嘲笑った。
「わ、私はただ、勇者として、「聖女」としてみんなを助けたかっただけなの!?死の呪いをばらまくことを思いついたのは祝吉君と上川君なの!私や他の皆は止めたけど、他に方法はないって、邪魔をしたらお前たちも殺すって、あの二人に脅されて仕方なく従っていただけなの!私は広告塔として利用されただけなの!お金儲けすることは皇帝が勝手に言い出して始めたことなの!私も被害者の一人なの!お願い、私を助けて、宮古野君!」
「レイスの涙」をインゴット王国博物館から盗み出し、死の呪いをズパート帝国の帝都全域にばらまくことを計画したのは、花繰自身である。
新皇帝サリムと結託し、謎の奇病の流行騒ぎを起こして一緒に金儲けをすることを承諾したのも花繰である。
にも関わらず、死んだ仲間たちや皇帝に責任を転嫁し、自分は悪事に巻き込まれた被害者である、などという嘘を、涙を浮かべながら平然と主人公の前でつく花繰であった。
反省の欠片など微塵もない、自身が生き延びるためなら死んだ仲間たちや、死んだ元恋人の皇帝さえも平然と裏切る、「聖女」の皮を被ったおぞましい悪魔の姿があった。
だが、そんな悪魔の声に耳を貸す主人公ではなかった。
「見え透いた嘘をつくな!死の呪いをばらまく大量殺戮テロ事件の主犯はお前だ!「七色の勇者」の一人で「聖女」でもあるお前を他の連中が脅すわけがない!他の勇者の仲間たちにとって、お前は一番、重要な存在だ!六人の中で発言権が一番上なのも「聖女」のお前だ!それに、お前は常に周囲の人間に媚びを売って利用しようとするところがある!お前に媚びを売られ、他の五人も皇帝もお前の企んだ悪事に加担した、それが真相だ!この期に及んでみっともない悪足掻きをするな、この悪魔が!」
僕は悪足掻きを見せる花繰に向かって罵声を浴びせた。
「ああっ、もう、くそがぁ!?キモい陰キャが私に説教するなぁーーー!?はぁ、はぁ、私を否定するな!私を馬鹿にするな!私を必要としない奴はみんな死ねばいいんだ!私の役に立たない人間なんて存在する価値すらねえんだよ!ウゼェんだよ、ゴミカスどもがぁ!」
僕の言葉に激怒し、ついに花繰が醜悪な本性をさらけ出した。
「それがお前の本性か。自分を否定する人間や役に立たない人間はみんな死ねばいい、そんな身勝手が許されるわけないだろ。人の命を何とも思わない、他人を自分にとって都合の良い道具程度にしか思っていない真性のサイコパスこそお前の正体だ。もういい。サイコパスの顔なんぞ、二度と見たくない。例え同じ地獄に落ちても、お前の顔だけは絶対に見たくない。地獄のどん底まで叩き落してやる。」
僕はそう言うと、赤い霊能力をさらに解放し、赤い霊能力のエネルギーを右腕と、右肩に担いでいる鬼の金棒に集中させ、赤い霊能力を纏った。
赤い霊能力を纏った鬼の金棒の先に、巨大な鬼の顔のようなマークが浮かび上がった。
「地獄に落ちろ!剛鬼奔放!」
僕は花繰の頭目がけて、鬼の金棒を勢いよく振り下ろした。
「く、くそがあぁーーー!?」
それが、花繰の最後の言葉となった。
僕の振り下ろした鬼の金棒の直撃を受け、花繰は頭から全身を粉々に潰された。
肉も骨も残さず、血の塊となって、花繰は死んだ。
花繰を潰した衝撃で床が崩れ落ち、ダンジョンの壁にヒビが入り、天井も崩れ始めた。
「剛鬼奔放」の破壊の余波で、「土の迷宮」が崩壊し始めた。
「やり過ぎた!みんな、急いで脱出だ!このままだとダンジョンの崩落に巻き込まれる!本当にごめん!」
僕は、玉藻たち五人に脱出するよう指示を出した。
「慌てるでない。今、外に出してやる。」
後方にいたイヴがそう言うと、右手の指をパチン、と鳴らした。
次の瞬間、僕たち全員の視界がグニャリと歪んで見えた直後、いつの間にか、「土の迷宮」の外へと僕たちは出ていた。
外はすっかり夕方で、日が沈み始めた頃であった。
オレンジ色の夕陽の光を浴びながら、「土の迷宮」が崩壊していくのを僕たちは黙って見つめていた。
「助かったよ、イヴ。イヴがいなかったら、ダンジョンの崩落に巻き込まれるところだった。本当にありがとう。」
「この程度、大したことではない。妾の空間操作の力を使えば、瞬間移動など簡単なことだ。婿殿のフォローをするのは妻である妾の当然の役目。これからも遠慮なく妾に頼るがいい、婿殿。」
イヴが自慢気な表情を浮かべながら、僕たちに向かって言った。
「ぐぬぬぬ。瞬間移動の能力まで持っているとは。闇の女神の力はやはり侮れませんね。さり気なく丈様のフォローと自身のアピールまで行うとは。ですが、
「イヴ、思っていた以上にデキる女。瞬間移動ですぐに丈君をフォローし、正妻アピールを成功させた。だけど、丈君の妻の座は絶対に譲らない。ここから一気に巻き返す。」
「瞬間移動の能力を持っているとは驚いた。さすがは闇の女神、恐るべき力の持ち主だ。しかし、我も負ける気はない。ジョー殿の伴侶に一番ふさわしいのはこの我であることをいずれ証明してみせようぞ。」
「ちっ。ちっ。ちっ。瞬間移動できるからって威張りやがって。腕っ節の強さだけが魅力じゃあねえんだよ。アタシには女子力という立派な武器があるんだ。今に目に物見せてやるじゃんよ。」
玉藻、鵺、エルザ、グレイが、自慢気な表情を浮かべるイヴを悔しそうな顔で見ながら、ブツブツと何か、呟いていた。
イヴの活躍が面白くない、といったところなんだろうが、一応、新しい仲間なんだから、もう少し穏便にイヴと接してはもらえないだろうか、と思う僕であった。
「おっと、いけない。合体を解かないと。」
僕は酒吞との合体を解くことにした。
両手を合わせ、胸の前で合掌した。
「酒吞、解放!」
呪文を唱えると同時に、僕の体が青白く光り輝き、僕は元の姿へと戻った。
僕の右隣に、酒吞が姿を現した。
「お疲れ様、酒吞。酒吞が力を貸してくれたおかげで、「聖女」たちを無事、倒すことができた。僕はまた復讐の旅を一歩前進させることができたよ。本当にありがとう。」
「お疲れ、丈。俺も「聖女」どもをぶっ殺せて、気分がスカッとしたぜ。俺と合体したことで、お前はこれから俺の能力も使えるようになった。力の扱い方に困った時はいつでも相談しろ。鬼の怪力には繊細なコントールが必要なんだ。最後の「聖女」に止めを刺した一撃は、お前の想像以上の破壊力で驚いたはずだ。上手くコントロールできるようになれば、狙った標的だけを粉砕できるようになる。トレーニングに付き合ってほしいなら、いつでも俺に声をかけてくれていいからな。」
「ありがとう。よろしく頼むよ、酒吞。」
僕と酒吞は、互いに笑い合った。
「さてと、それじゃあ、仕事も終わったことだし、みんなで一緒に帝城へ帰ろう。ナディア先生たちも首を長くして報告を待っているはずだしね。」
僕たちは移動用の魔法陣を使い、ズパート帝国の帝城へと帰った。
こうして、僕は「土の迷宮」を攻略して、聖盾を破壊した。
そして、「聖女」花繰たち一行に死と言う名の復讐を遂げた。
僕はまた一つ、異世界への復讐計画を完遂したのだった。
ざまぁみやがれ、花繰。勇者たち。インゴット国王たち。光の女神リリア。
僕は復讐が成功したことを喜び、笑みを浮かべた。
だがしかし、僕の異世界への復讐は終わらない。
僕を虐げる異世界の悪人どもはまだまだ大勢いる。
今回、「聖女」外5名、計6名の勇者を殺した。
これで、残る勇者は20名、半分となった。
姫城たちに続き、花繰たちまで僕に殺されたと聞けば、残りの勇者どもは恐怖で震えあがるに違いない。
勇者たち、インゴット王国の王族たち、光の女神リリア、僕と敵対する異世界の者たち。
僕は必ずお前たち全員に復讐する。
この広い異世界のどこに逃げようが無駄だ。
決して一人たりとも逃がしはしない
必ず追い詰めて、絶望を味わわせてから、全員地獄に叩き落としてやる。
僕の異世界への復讐の旅は続いていくのであった。
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