【中間選考突破!!】異世界が嫌いな俺が異世界をブチ壊す ~ジョブもスキルもありませんが、最強の妖怪たちが憑いているので全く問題ありません~
第十一話 【処刑サイド:勇者たち&国王たち】国王、王都壊滅に絶望する、そして、勇者たちは牢獄にぶち込まれる
第十一話 【処刑サイド:勇者たち&国王たち】国王、王都壊滅に絶望する、そして、勇者たちは牢獄にぶち込まれる
勇者たちがハズレ依頼を受け続けてから3週間が経ったその日のお昼過ぎのこと。
インゴット王国の王都は勇者たちが原因で侵入してきたボナコンの群れが暴れ回り、多大な被害を受けている真っ最中であった。
王都中から聞こえる国民の悲鳴と、王都中を漂うボナコンの糞の悪臭が、王城の自身の寝室で臥せっていた国王にも伝わってきた。
「な、なんだ、この悲鳴は!?それにこのひどい臭いは!?一体、何が起こった!?」
国王はベッドから体を起こし、急いで服に着替えた。
国王が会議室へ走って向かっていると、廊下で自身を呼びに来たと思われるブラン宰相と出くわした。
「陛下、ちょうど呼びに向かっていたところです!大変です!王都をボナコンの群れが襲っております!その数90匹とのことです!現在、騎士たちと冒険者たちに緊急招集をかけ、事態の対応に当たっております!ですが、このままでは王都の被害は甚大なものになると予測されます!早急に復興策を練る必要がございます!」
「事態はおおむね分かった。今は事態の対応を優先する。各大臣たちは集まっているか?」
「はい、すでに全員会議室に集まっております。陛下の到着を待っております。」
「よし、すぐに向かうとしよう。」
国王とブラン宰相は急いで会議室へと向かった。
会議室には各大臣たちが集まり、緊急対策会議の体制が整っていた。
国王は大臣たちに向かって言った。
「皆の者、全員集まっているな。これより、ボナコンの群れの王都襲撃に関する緊急対策会議を開催する。軍務大臣、報告を頼む。」
国王に言われ、新任の軍務大臣が報告を始めた。
「ご報告いたします。現在、王都を90匹のボナコンの群れが襲っております。ボナコンたちは市民や建物を襲い、すでに甚大な被害が出ております。ボナコンたちの攻撃を受け、一般市民や騎士たち、冒険者たちに多数の死傷者が発生している模様です。また、ボナコンたちが排出する大量の糞により、悪臭被害、火災、建物の倒壊等の被害が併せて発生しているとのことです。王都にいる騎士たちや冒険者たちに総出でボナコンの侵攻に当たらせておりますが、戦況は非常に厳しい状況です。王都が壊滅的被害を受けることは避けられない見通しです。ボナコンたちは王都近郊の東の草原地帯にいたとの報告がギルドより寄せられております。尚、ボナコンたちが王都へ侵入した原因は、勇者様たちがギルドの制止を無視してボナコンたちの討伐依頼を勝手に遂行し、討伐も出来ぬまま、ボナコンたちを凶暴化させ、凶暴化したボナコンたちが王都へと逃げ帰った勇者様たちを追ってきたためとのことです。」
軍務大臣の説明を聞いて、国王は座っていた椅子から思わずひっくり返った。
「い、痛たた!?な、何、勇者たちが原因だと!?あの異世界人どもめ、またしてもとんでもないことをやらかしおって!?勇者ともあろう者がモンスターを討伐できず、おめおめと逃げ帰り、挙句の果てに凶暴化したモンスターを引き連れ、王都へ戻って来るとは何たる無様だ!勇者たちは今どこにおる!?何をしておる!?勇者たちはボナコンたちと戦っているのか?」
軍務大臣が顔を顰めながら国王に言った。
「いえ、陛下、勇者たちはボナコンたちと戦ってはおりません。自分たちで王都にボナコンたちを呼び寄せておきながら、責任をとって戦おうともせず、王城へ逃げ帰り、全員城の自室に閉じこもっている始末です。陛下に申し上げます。あの勇者たちは真の勇者とはとても思えません。ただ国の金を使って遊び惚け、碌に戦いもせず、モンスターも討伐できずに逃げ帰る腰抜けです。ボナコンたちへの対処が終わり次第、勇者たちは全員勇者から解任することを進言いたします。ここにいる大臣全員が同じ思いです。何卒、勇者の解任をお願いいたします。」
軍務大臣、外各大臣が立ち上がり、国王に頭を下げて頼んだ。
大臣たちを見ながら、国王は言った。
「全員頭を上げよ。私も皆と同じ思いだ。勇者たちは全員本日をもってただちに勇者から解任する。光の女神リリア様からの神託はマリアンヌが不在のため分からんが、例え神託が下ったとしても、女神さまもきっと勇者たちの勇者解任を我々に命じるはずだ。必ず勇者たちは解任する。それでは引き続き、ボナコンへの対応策並びに王都の復興策について会議を続ける。」
国王と大臣たちはその後、ボナコンへの対応策並びに王都の復興策について会議を続けた。
二時間後、会議が終了すると、各大臣は会議室を出て行った。
会議室に残った国王とブラン宰相が、勇者たちへの処遇について話した。
「ブラン宰相、ボナコンへの対処が完了し次第、ただちに勇者たち全員の身柄を拘束せよ。決して一人たりとも逃すな。全員を拘束後、勇者たちを王の間へと連れてこい。そこで私から勇者たちに処分を直接下す。良いな?」
「かしこまりました。ボナコンを追い払い次第、すぐに騎士たちを集めて勇者たちを拘束させます。勇者たちへの処分、何卒お願いいたします。」
ボナコンたちが王都を去ってから二時間後、王城の自室に引きこもっていた35人の勇者たち全員が騎士たちによって拘束された。
勇者たちは全員、手錠をはめられ、国王のいる王の間へと騎士たちによって連行された。
王の間では、玉座に座る国王が、連行されてきた勇者たちを睨みつけ、怒りの形相を浮かべていた。
国王は勇者たちに向かって怒りをにじませながら言った。
「よくも私が治めるこの国を滅茶苦茶にしてくれたな。貴様たちが引き寄せたボナコンどものせいで王都は壊滅的被害を受けた。王都は荒らされ、王都にいる多くの民が傷つき、死んでいった。王都の復興費用には最低2兆リリスがかかるという大損害を受けた。おまけに、馬鹿な「剣聖」たちのせいで聖双剣が失われ、我が国は勇者を犯罪者にするほどずさんな教育と管理をしていると各国から非難され、さらにはラトナ公国からは1兆リリスの損害賠償金を請求された。貴様たち無能な勇者のせいで我が国は破綻寸前だ。私は世界中から笑いものにされる始末だ。貴様たち全員を勇者の任から解任する。そして、全員を国家反逆罪の罪で投獄する。マリアンヌが戻り、女神さまから処刑の許可が下りれば、貴様ら全員即刻処刑する。覚悟しておくがいい!」
国王から投獄と処刑が言い渡され、島津率いる勇者たちは慌てた。
「お、お待ちください、国王陛下!僕たちは間違いなく女神さまに選ばれた勇者です!今回の一件は作戦通りにいかない、不測の事態が起こったためです!今回の失態は必ず挽回してみせます!それに僕たち勇者がいなければ魔族討伐は不可能なはずです!どうか僕たちにもう一度チャンスをください!お願いします!」
「ウチらはいっぱい頑張って戦ったし!勇者がいないと魔族と戦えないって言ってたじゃん!ウチらにチャンスをくれたら、絶対に魔族を滅ぼすから、許してだし!」
「わ、私たちは悪気があったわけじゃないんです!勇者としてこの国の人たちの役に立ちたかっただけなんです!投獄とか処刑とか、考え直してください!お願いします!」
「私たちは精一杯戦いました!万全な準備を整え、作戦を実行したのですが、作戦通りに討伐が進まなかっただけです!チャンスをいただけたら、次こそは必ず完璧な作戦の下、モンスターたちを討伐してみせます!魔族だって、必ず討伐して御覧に入れます。どうか、お考え直しください、陛下!」
「わ、我が輩たちは勇者でござる!今回はたまたま上手くゆかなかっただけでござる!我が輩たちを殺せば、魔族討伐はできないなり!考え直すなり!」
「お、俺たちは悪くないんだなぁ~!あの牛たちがしつこく追っかけてきたのがいけないんだなぁ~!俺たち勇者を処刑したら、後で大変なことになるんだなぁ~!」
勇者たちはみっともなく、全員国王に命乞いをした。
おまけに、自分たちは悪くない、責任はないと言い、ボナコンたちによる王都襲撃事件が自分たちのせいであることを棚に上げる始末だ。
国王は勇者たちの無責任な態度に激高した。
「ええい、黙れ、この偽勇者どもが!そもそも元をたどれば、貴様らが召喚された際、「黒の勇者」を呪われている存在だなどとこの私に偽りを申したことが始まりだ!貴様らの嘘に騙され、「黒の勇者」を処刑しなければ、王都が壊滅することは無かった!きっと「黒の勇者」が問題なくボナコンどもを殲滅してくれたに違いないのだ!貴様らのせいで我が国は真の勇者である「黒の勇者」を失うハメにまでなった!何が能無しの悪魔憑きだ、貴様らこそ能無しの悪魔憑きだ、この偽勇者どもが!モンスターを一匹も倒せず、おめおめと逃げ帰るわ、国の金を使って遊び回るわ、平気で犯罪行為に手を染めるわ、国を破綻寸前にまで追い込むわ、貴様らのような疫病神はもはや不要だ!可能性は低いが、我が娘マリアンヌが「黒の勇者」を迎えに行っている!「黒の勇者」が我が国にマリアンヌとともに戻ってきたら、あの者をただちに次の勇者に任命する!マリアンヌとも結婚させるつもりだ!勇者は「黒の勇者」一人で十分だ!分かったら、私の前からとっとと消え失せろ、この能無しどもが!」
国王は勇者たちの訴えを跳ね除け、勇者たちを無能と呼んで切り捨てた。
そして、「黒の勇者」を次の勇者に任命したいとも言った。
勇者たちの勇者解任に投獄、処刑は免れないことが確定した。
「この偽勇者たちを城の地下牢に放り込め!」
国王が騎士たちに命じた。
騎士たちは勇者たちを地下牢へと投獄すべく、勇者たちを地下牢へと引っ張っていく。
「お待ちください、陛下!僕たちにチャンスを、もう一度チャンスをください!お願いします、陛下!」
だが、国王の意思は変わらなかった。
「せいぜい地下牢で処刑が来る日を待っているがいい。貴様たちにかけたその手錠は魔力を吸収する特別な手錠だ。スキルを使って脱走しようとしても無駄だ。処刑の日を楽しみにするがいい、能無しの反逆者ども。」
勇者たちは必死に何度も国王たちに呼びかけるが、国王は勇者たちに冷たい眼差しを向け、勇者たちの訴えを無視した。
勇者たちは騎士たちに連行され、全員王城の地下牢に投獄された。
武器や装備を全て没収され、手には魔力を吸収する手錠をはめられ、魔力を込めてもスキルが使えず、脱出もできない。
勇者たちは暗い地下牢に投獄され、皆絶望した。
島津は目には涙を浮かべ、歯ぎしりをしながら悔しがった。
「くそ、どうして「勇者」の僕が投獄されなきゃいけないんだ!?この僕を処刑するだと!?宮古野を次の勇者に任命したいだと!?マリアンヌと宮古野を結婚させるだと!?ふざけるな!?真の勇者は僕だ!?マリアンヌと結婚するのも僕だ!お前だってそう言ってただろ、国王!?どうして、どうしてこの僕が落ちこぼれの宮古野に負けなきゃいけないんだ!?僕は女神に選ばれしエリートなんだぞ!?こんなことはおかしい、絶対に間違っている!?」
島津は自身の転落の原因が全て自業自得にも関わらず、それを棚に上げて、主人公、宮古野 丈を逆恨みする言葉を吐く始末だった。
「宮古野、必ず脱獄してお前に復讐してやる!待っているがいい!」
島津を含む勇者たちは、「黒の勇者」こと、主人公、宮古野 丈へ憎悪の炎を心に燃やしていた。
勇者たちが投獄されたその日の深夜、一人の勇者が脱獄に向けて動き始めた。
「弓聖」鷹尾 涼風は、靴底に隠していたヘアピンを取り出すと、器用にヘアピンを使って、両手の手錠を開けてみせた。
彼女は同じ牢獄にいた勇者たちに声をかけると、一人一人の手錠を開けた。
次に、牢獄の鍵をヘアピンでこじ開けると、他の地下牢にいる勇者たちの牢の鍵を開け、他の勇者たちの手錠を開けて回った。
鷹尾によって、勇者たちは手錠を外し、地下牢から出ることに成功した。
「ありがと、涼ちん!ピッキングなんてマジでどこで教わったん!?」
「魔導士」姫城 麗華が鷹尾に声をかけた。
「しっ!声が大きい!私はこれでも警察署長の娘よ。犯罪学に関する本や資料を読んで独学で身に着けたのよ。自分が誘拐された時の対抗策も準備しているわ。それより、地下牢は出たけど、地下牢への入り口には、看守役の騎士たちが二人立っているわ。あなたと若葉さんは人を眠らせる魔法が使えたわよね。杖はないけど、頑張ってあの騎士たちを二人の魔法で眠らせてちょうだい。そしたら、脱獄できるわ。」
「了解、涼ちん。ウチと夏っつんに任しとき~よ。」
鷹尾の指示に従い、「大魔導士」姫城 麗華と、「魔術士」若葉 千夏の二人が、看守役の騎士たちの背後に近づいていく。
そして、そっとスキルを使い、魔法をかけた。
「無限詠唱!」
「睡眠誘導!」
姫城と若葉の睡眠魔法をかけられ、看守役の騎士たちがその場で眠り始めた。
「ありがとう、二人とも。みんな、今のうちに脱獄するわよ。ついでに城の宝物庫へ向かうわよ。投獄される前に、騎士たちが私たちの武器と装備を宝物庫へしまうと言っていたわ。武器と装備を宝物庫から回収したら、みんなでこっそり城を脱出するわよ。宝物庫の場所は分かっているから、私に付いてきて。」
鷹尾を筆頭に勇者たちは、場内を静かに移動し、城の宝物庫へと着いた。
鷹尾がピッキングで宝物庫の錠を開けると、勇者たちは自分たちの武器と装備を取り返し、それと宝物庫にあった現金6億リリスを盗んだ。
そして、闇夜に紛れ、勇者たちは王城を脱出した。
朝になって、交代の看守役の騎士たちが、勇者たちのいる地下牢へ赴くと、先に番をしていた看守役の騎士たちが入り口で眠っていて、地下牢を覗くと、地下牢に投獄されているはずの勇者たちの姿はどこにも見当たらなかった。
勇者たちの脱獄はたちまち国王の耳に伝わり、すぐさま脱獄した勇者たちを捕えるため、非常線が張られた。
だが、国王たちは脱獄した勇者たちを捕えることはできなかった。
国王と冒険者ギルドは、脱獄した勇者たちを脱獄犯として指名手配した。
勇者たちは世界中に指名手配され、お尋ね者となった。
勇者一人につき、1億リリスの懸賞金がかけられることにもなった。
こうして、勇者たちの転落劇がいよいよ始まった。
だがしかし、勇者たちの不幸はこれだけでは終わっていなかったのだった。
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